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衝撃

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 元宮は、小型探索機を操作して、
謎のオブジェに近づけた。
加賀見たち4人は、これが、十中八九、
事務局が設置したものと考えていた。

「ったく、本当に無駄。
おそらく、彼らの楽しみのためによくもまあ、
こんなものを製作して、設置したわよ。
資源の無駄」
と尾賀が吐き捨てるように言った。

加賀見もその意見と同じだった。
無駄な投資と労力としか思えない処置だった。
この設置物からそれらに見合う結果を
得られるものであればいいのだが、
そのために自分たちが使い捨てにされるのは、
ご免こうむりたいと加賀見は思った。

「周囲を旋回させましたが、特に反応なし。
あのオブジェというか物体の上に着陸させます」
と言って、元宮が操作した。

 小型探索機が着陸した瞬間、
オブジェを中心として周囲に大量のミストが散布された。
その光景に4人は、一瞬、思考が止まってしまい、
じーっとその光景に見入ってしまった。

 いままで聞いた中で最大のボリュームで
あのギィーコギィーコという音が聞こえてきた。
その音は、不快であったが、歓喜の響きが
混じっているように感じられた。
そして、何百もの異形種が草原から
立ち上がってきたように加賀見たちには見えた。

「こっこれは」
と元宮が放心したように言うと、

「加賀見、車を出しなさい、全速力で!
織多、発砲の準備を。
奴らが攻撃範囲にあるようなら、攻撃しなさい。
元宮も同様になさい。あの小型探索機は破棄」
と言って、尾賀は、事務局向けに
緊急の連絡を取ろうとした。

「織多さん、おそらく何匹かはマーキングによって、
こちらに迫ってくるでしょう。躊躇せずに撃って」
と加賀見は全速力で車両を操作しながら、
織多さんへ言った。

「了解です、加賀見さん、、、」
と織多さんは言って、攻撃を始めた。
元宮は、いまだに衝撃から回復できおらず、
ぼやっとモニターを見つめていた。

「くっ、回線がつながらない。
元宮ぁー、何してるの」
と尾賀が元宮に怒声を浴びせて、引っ叩いた。

他社のことながら、場所が場所なら、
パワハラだよなぁと加賀見は
場違いな感想を抱いていた。
織多さんは周囲の警戒と索敵に
それどころではいないようだった。

「ふひゃぁ、無理っぽ。
むりむりりむり。もう終わりだ」

「元宮、事務局との回線を復旧させなさい。
手段は問わないわ。
織多さん、もう少し一人でよろしく。
すぐにサポートに回ります」
と幾分、落ち着いたのか尾賀がそう言った。

「ふうぅー死ぬ時まで、コンピュータをいじるのか。
死ぬまで趣味が仕事かぁ」
幾分、回復したのか、ふらふらした足取りで、
自前のコンピュータの方へ向かった。
それを見て、尾賀も警戒の業務についた。

異形種がオブジェに纏わりついて、
小高い山が形成されていた。
おそらく、上空に散布された液体を
入手すべく異形種が集まった結果であろう。
難しい思考がプログラムされていないのか、
地上で待つということが無いのだろうか
それとも別の理由からか、加賀見には
判断する材料がなかった。

「尾賀さん、元宮さんも警戒に
参加させた方がと思いますが」
と織多さんが言うと、

「駄目ね、元宮はもうさっきの衝撃と恐怖に
飲み込まれたわ。
回復にはおそらく適切な治療と時間が必要ね。
それにとにかく後々のために事務局へ
私たちがコンタクトを取ったことを
残しておかないと」
と尾賀が説明をした。

「まったく、事務局も余興のために
ろくでもないことをしてくれますね。
燃料は本当にぎりぎりですね。
少し歩くことになるかもしれません」
と加賀見がそのことを伝えて、ため息をついた。

「こんなことをして、なんの意味が
あるのか全然、わかりません。嫌がらせ?」
と織多さんが言うと、

「事務局の暇つぶしよ。
私たちの慌てふためくところ見て、
楽しんでいるのでしょう。
最悪、生還する企業を当てる
賭け事くらいしているかもね」
と尾賀は言って、ため息をついた。

近づく異形種を撃ち倒しながら、
加賀見たちは渡航船ミラーワールド109号に向かった。



 









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