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群がるもの

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小型の探索機による現地の映像を
見た元宮は、絶句した。
そして、他の3人に映像を見るように促した。

加賀見は、一旦、停車して、映像を見ると、
元宮同様に絶句した。
それは、尾賀、織多さんも同じようだった。

「これは、、、あの探索車両に向かって、
救出作業をするのは無意味ですね。
元宮、探索機を戻しなさい。
加賀見さん、進路を母船に戻して」
と尾賀が映像を見ながら、命令した。

二人は無言で頷いた。織多さんも映像を
食い入るように見つめるだけで、
何も言わずに周囲への警戒を再開した。

何かしらの液体で濡れた探索車両には
異形種が数えるのも面倒になるくらいに群がっていた。
車両の周りにサバイバルスーツと
思わしきものの一部が散乱していた。
そして、車両の至る所に青色の体液が見受けられた。
その状況を見て、加賀見は、異形種に
追いつかれたのだろうかと思いを巡らせた。
そして、母船に戻って、彼らの行動履歴を
確認するしか、事の顛末はわからないだろうと判断した。
加賀見は、探索車両の運転をしつつ、
色々な想像を巡らせてしまった。
誰しもが何も話さず、車両内を沈黙が支配した。

「すみませんが、先ほど、中断した休憩を取ります」
と元宮がぽつりと言って、席を離れた。

「加賀見さん、こちら側のエリアは、
おそらくどのような場所からも異形種が
現れることができるんでしょうね。
理由はわかりませんが」
と織多さんが加賀見に話しかけた。

「あの探索車は、なんらかのトラブルか、
なんとか異形種の注意を逸らそうと、
液体を外部に撒いたのでしょうね。
しかしなぜ、車両本体があのように濡れていたのか」
と加賀見は先ほどの映像の感想を述べた。

先程から、あの不愉快な音は
小さくなりつつあった。
加賀見はあの探索車両より液体が十分に
回収できたためにこの地の何かが
満足したためだろうかと思った。
そして、このまま、何事もなく母船に
到着することを祈るばかりだった。

交代で休憩を取りつつ、残り100㎞付近まで
加賀見たちが到達すると、尾賀が急に車両を
停止する指示を出した。

「どうしました?」
と運転中の元宮が尋ねると、尾賀は、
「加賀見さんと運転を交代しなさい。
元宮、小型探索機を飛ばして、
これから指示する地点を調査しなさい。
織多さん、加賀見さんを至急、起こしてきて。
そしらた、すぐに周囲の警戒に戻って」
と答えた。

 加賀見は探索車両の速度を落とし、
元宮からの情報を待った。

「あれは、何でしょうね。
行きのときにはありませんでしたけど。
まあ、あの造りは、この世界のものでは
ないでしょうね」
と元宮が説明をした。

尾賀の指示したポイントには、
直径1000㎜、高さ2000㎜の
円筒形のものが設置されていた。

「元宮、探索機で近づくことはできそう?」
と尾賀が尋ねると、
「特に遮蔽物もないし、特に問題はないですけど、
いいんすか?」
と元宮は歯切れの悪い返事を返した。
「ええ、はじめて。小型機が何かしらの
ダメージを負って、損傷しても予備があるでしょう。
それより、この車両に何かあるより、
軽い損失で済むわ」

加賀見は嫌な予感がしたが、
尾賀の返答に納得し、賛同の意を示した。
織多さんも不安そうだったが、一応、
賛成の旨を伝えた。






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