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模擬戦
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トレーニングルームに到着した加賀見と織多さんは、
サバイバルスーツに着替えを始めた。加賀見は、尾賀より
支給されたスターテクノロジーズ社製のスーツを装着した。
標準よりもフィット感はあるが、より身体のスタイルを
露わにすることが難点ではあった。
「これって、股下まで、こんなに
ジャストフィットさせる必要があるのか」
加賀見は愚痴をこぼしながら、着替えていた。
着替えた後、ルームに戻り、織多さんを待った。
「ひゃっ!加賀見さん、サバイバルスーツを
変更したんですね!
随分と大胆なタイプですねー。
それって、スターテクノロジーズのですよね」
と織多さんはびっくりしたのか、一気呵成に言った。
「ええ、前回の探索でスーツがかなりの
ダメージを負ってしまい、
使えなくなってしまったんです。
事務局からの標準品を支給して貰うことも
検討したのですが、無償供給でなく、
かなりの費用が必要だったので、
尾賀さんから頂きました」
と加賀見は細部までの事情を端折って説明した。
「でもそのタイプだと、なかなか、女性が
装着するには勇気がいるかなー。
モデルタイプの身体つきじゃないと
ちょっと、きびしかなぁ」
とため息をついて感想を述べた。
「さてと、今日はどうしますか?」
と加賀見が尋ねると、
「加賀見さんが早くスーツに
慣れるよう模擬戦でどうでしょうか?」
と提案した。
加賀見は異存がなかったために、
了解の旨を伝えて、織多さんと移動した。
模擬戦を始めると、織多さんは、
鬼気迫る勢いで攻め立てきた。
加賀見は、圧倒され、何度も倒されていた。
それなりの時間を模擬戦に費やした二人だった。
加賀見は息が上がっていたが、
めずらしく織多さんも息が上がっていた。
「はぁはぁ、織多さん?そろそろ、終了しましょうか?
度を超すと身体にわるいですよ」
と織多さんを見て伝えると、
泣き叫んで織多さんが言った。
「訳わかんないですよ。
目が覚めたら、誰も知っている人いないし。
復讐しようとしたあの二人は、
これ以上ない恐怖に囚われながら、
殺されているし。
あれって、何かの実証実験のようだったし。
もう何がなんだかよくわからなくてー」
加賀見は、ゆっくりと近づいて、
織多さんを抱きしめた。
「ひっ」
と一言、放ち、固まる織多さん。
加賀見は、背中を軽くぽんぽんと叩いて、
「もう、大丈夫ですよ」と囁くと、
織多さんは両手で加賀見の背中を
強く握りしめて、わーわーと大声を
出しながら、泣いていた。
しばらくして泣き止むと、加賀見から離れて、
「やっぱりそのスーツって、標準より
体線がしっかりとトレースされるんですね」
と言って、更衣室に向かった。
加賀見もそんな後ろ姿を見守りながら、
更衣室に着替えに向かった。
そして、流石にこの借り物のスーツまでも
汚せないと思い、はち切れんばかりに形状を
露わにしている鼠径部周りを刺激しないようにして歩いた。
着替え終わった織多さんは、加賀見に
「さっきはその、ありがとうございました」
と言った。
「いえ、気になさらずに。部屋までも送りますよ」
と加賀見は言って、織多さんの手を握った。
二人の所作は、恋人同士のように自然であった。
歩きながら、織多さんは、
「あーあー、加賀見さんには、
返しきれないくらいの恩が貯まってます。どうしたら、
いいんでしょうねー。困ったなー」
とぶつぶつと困ったように呟いていた。
「織多さん、お返しはアレです。
お互いのためにアレにしましょう。
アレがいいです。察してください」
と加賀見は特に思いつくことが
無かったので、何となく言ってみた。
「えっ、アレですか。そっそのおう、
少し待って頂けませんか?
加賀見さんなら、大丈夫ですけど、
時間がほしいです。ごめんなさい」
と心底、申し訳なさそうに言った。
「そうですね。必ず帰還して、
色々とおすすめの漢方を買いに行くのに
付き合ってもらわないと!」
と加賀見は慌てて、伝えた。
「はっ?加賀見さん!」
と織多さん、言って、顔を真っ赤にして、
頬をぷくーと膨らませた。
作業を終えたロベリオは、カーリンの隣で
加賀見と織多さんの二人をモニターしていた。
「あーもう、痒いよう。
なんか手の届かないところが痒くなるよう。
ったく、この二人は、こんなじゃないのに。
特にかがみぃーは、エロエロがおもしろのに。
ってカーリン、聞いてるの?」
「うるさい、ロベリオ。
静かにできないなら、出て行きなさい」
とカーリンがいらただしげにロベリオに言った。
「カーリン、どしたの?」
「ふん、ネズミがシステムに干渉しているみたい。
確固たる証拠がつかめないのよね。
まあ、犯人は尾賀のところの
あのマゾヒスト君でしょうけどね」
「えっそれって、やばくない?
さっさと捕まえた方がいいんじゃない?
ってか副船長に伝えといた方がいいよ」
とロベリオが心配そうに言った。
「副船長には既にその存在は伝えてあるわよ。
その上でネズミを探しているの。
所詮は、底辺か落伍者のエンジニアだし、
大したことないわ。対策は済ませたわ。
3人ほど、システム系のエンジニアが
残っているけど、やりそうなのはあのマゾ君だけ。
確実な証拠が握れたら、また、あの面白いイベントが
見られるでしょう。
そのときは、尾賀も同じ運命ね」
とカーリンは無表情でロベリオに伝えた。
「カーリン、こわっ」
と一言、ロベリオが感想を述べた。
サバイバルスーツに着替えを始めた。加賀見は、尾賀より
支給されたスターテクノロジーズ社製のスーツを装着した。
標準よりもフィット感はあるが、より身体のスタイルを
露わにすることが難点ではあった。
「これって、股下まで、こんなに
ジャストフィットさせる必要があるのか」
加賀見は愚痴をこぼしながら、着替えていた。
着替えた後、ルームに戻り、織多さんを待った。
「ひゃっ!加賀見さん、サバイバルスーツを
変更したんですね!
随分と大胆なタイプですねー。
それって、スターテクノロジーズのですよね」
と織多さんはびっくりしたのか、一気呵成に言った。
「ええ、前回の探索でスーツがかなりの
ダメージを負ってしまい、
使えなくなってしまったんです。
事務局からの標準品を支給して貰うことも
検討したのですが、無償供給でなく、
かなりの費用が必要だったので、
尾賀さんから頂きました」
と加賀見は細部までの事情を端折って説明した。
「でもそのタイプだと、なかなか、女性が
装着するには勇気がいるかなー。
モデルタイプの身体つきじゃないと
ちょっと、きびしかなぁ」
とため息をついて感想を述べた。
「さてと、今日はどうしますか?」
と加賀見が尋ねると、
「加賀見さんが早くスーツに
慣れるよう模擬戦でどうでしょうか?」
と提案した。
加賀見は異存がなかったために、
了解の旨を伝えて、織多さんと移動した。
模擬戦を始めると、織多さんは、
鬼気迫る勢いで攻め立てきた。
加賀見は、圧倒され、何度も倒されていた。
それなりの時間を模擬戦に費やした二人だった。
加賀見は息が上がっていたが、
めずらしく織多さんも息が上がっていた。
「はぁはぁ、織多さん?そろそろ、終了しましょうか?
度を超すと身体にわるいですよ」
と織多さんを見て伝えると、
泣き叫んで織多さんが言った。
「訳わかんないですよ。
目が覚めたら、誰も知っている人いないし。
復讐しようとしたあの二人は、
これ以上ない恐怖に囚われながら、
殺されているし。
あれって、何かの実証実験のようだったし。
もう何がなんだかよくわからなくてー」
加賀見は、ゆっくりと近づいて、
織多さんを抱きしめた。
「ひっ」
と一言、放ち、固まる織多さん。
加賀見は、背中を軽くぽんぽんと叩いて、
「もう、大丈夫ですよ」と囁くと、
織多さんは両手で加賀見の背中を
強く握りしめて、わーわーと大声を
出しながら、泣いていた。
しばらくして泣き止むと、加賀見から離れて、
「やっぱりそのスーツって、標準より
体線がしっかりとトレースされるんですね」
と言って、更衣室に向かった。
加賀見もそんな後ろ姿を見守りながら、
更衣室に着替えに向かった。
そして、流石にこの借り物のスーツまでも
汚せないと思い、はち切れんばかりに形状を
露わにしている鼠径部周りを刺激しないようにして歩いた。
着替え終わった織多さんは、加賀見に
「さっきはその、ありがとうございました」
と言った。
「いえ、気になさらずに。部屋までも送りますよ」
と加賀見は言って、織多さんの手を握った。
二人の所作は、恋人同士のように自然であった。
歩きながら、織多さんは、
「あーあー、加賀見さんには、
返しきれないくらいの恩が貯まってます。どうしたら、
いいんでしょうねー。困ったなー」
とぶつぶつと困ったように呟いていた。
「織多さん、お返しはアレです。
お互いのためにアレにしましょう。
アレがいいです。察してください」
と加賀見は特に思いつくことが
無かったので、何となく言ってみた。
「えっ、アレですか。そっそのおう、
少し待って頂けませんか?
加賀見さんなら、大丈夫ですけど、
時間がほしいです。ごめんなさい」
と心底、申し訳なさそうに言った。
「そうですね。必ず帰還して、
色々とおすすめの漢方を買いに行くのに
付き合ってもらわないと!」
と加賀見は慌てて、伝えた。
「はっ?加賀見さん!」
と織多さん、言って、顔を真っ赤にして、
頬をぷくーと膨らませた。
作業を終えたロベリオは、カーリンの隣で
加賀見と織多さんの二人をモニターしていた。
「あーもう、痒いよう。
なんか手の届かないところが痒くなるよう。
ったく、この二人は、こんなじゃないのに。
特にかがみぃーは、エロエロがおもしろのに。
ってカーリン、聞いてるの?」
「うるさい、ロベリオ。
静かにできないなら、出て行きなさい」
とカーリンがいらただしげにロベリオに言った。
「カーリン、どしたの?」
「ふん、ネズミがシステムに干渉しているみたい。
確固たる証拠がつかめないのよね。
まあ、犯人は尾賀のところの
あのマゾヒスト君でしょうけどね」
「えっそれって、やばくない?
さっさと捕まえた方がいいんじゃない?
ってか副船長に伝えといた方がいいよ」
とロベリオが心配そうに言った。
「副船長には既にその存在は伝えてあるわよ。
その上でネズミを探しているの。
所詮は、底辺か落伍者のエンジニアだし、
大したことないわ。対策は済ませたわ。
3人ほど、システム系のエンジニアが
残っているけど、やりそうなのはあのマゾ君だけ。
確実な証拠が握れたら、また、あの面白いイベントが
見られるでしょう。
そのときは、尾賀も同じ運命ね」
とカーリンは無表情でロベリオに伝えた。
「カーリン、こわっ」
と一言、ロベリオが感想を述べた。
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