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雑談の多い会議

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 加賀見は、先ほどの尾賀の言葉を反芻していた。 
「加賀見さん、今まで通りであなたは構いませんよ。
ただ、必要に応じて協力して頂きます」
尾賀はこの言葉通りのことを
もとめているのだろう。
元宮は誰かに依存して動く方が会っているのだろう。
今までの印象では、さほど抵抗を
感じていないようであった。

「さて、なるべく不満が表情に
出ないようにしないとな。
ここでは、めんどくさくなっても
退職して退散もできないし」
少し息苦しさを感じる加賀見であった。

 とある会議室で、ミーティングが行われていた。
メンバーは、事務局員6名と
ジェットプロダクションカンパニーの二人だった。

「金重さん、流石に他社さんが
探索に動き始めているなかで、
あなた方2名は、何の行動もせずとは一体、
どういうことですかな」
と事務局員の一人が詰問した。

「いえ、なかなか、協力関係を
築けずに2名では如何とも」
と額に汗を滴らせて、もごもごと
答える金重であった。

「ですから!その協力関係を作るのに
行動をしているのですか!
前に同行した企業やメンバーに声を
かけるとかあるでしょ」
と金重が一括された。

「はあ」
と気のない返事をする金重だった。
彼の本心は、探索などせずに過ごし、
安全に地球に戻ることであった。
金重は用意されていたコーヒーを一口、飲んだ。

「ほら、加賀見さんとか織多さんに
声をかけてみては如何ですか?
確か同行していますよね。
彼らは中々に優秀ですよ。
それにあの二人は仲がよろしくて、
彼らも同行者を探すのに
難儀しているようですし」
と別の事務局員が提案した。

その言葉に笹野宮がピクリと反応した。
そして、酒臭い息を吐きながら、言った

「あんな糞と同行できるか。
こっちが異形種だったかなんかの
餌にされちまうわ。
まあ、織多くらいならいいけどな」

「あの二人は公私ともに
パートナーのようですよ。
あなたと鴨宮さんでしたっけ、
残念なことになってしまいましたが。
あなた方とおなじですよ。
あっちの関係も含めて、
別行動はむずかしいでしょうなあ」
と事務局員が言った。

その言葉を聞いて、笹野宮は、
用意されていたコーヒーを
一気に飲み、カップをテーブルに
叩きつけて、
「あの屑が。玲子にいやらしい声を
かけるに飽き足らず、織多とまで、
楽しんでいやがったのか!くそがぁ」

「まあまあ、落ち着いて、笹野宮さん。
笹野宮さんと同じで、加賀見さんも
中々のプレーボーイでして、彼女以外にも
事務局員の女性が彼の手におちているんですよ。
笹野宮さんも女性に困らないでしょう。
まあ、しかし、どちらが上なんでしょうねぇ」
と笹野宮を少し煽るように事務局員が言った。

金重は、話が探索の件から、下世話な雑談になり、
少しほっとした。探索を強要されたら、
生きてこのミラーワールド109号に
戻る自信がなかった。
そのため、このまま会議が終わることを願った。
強いて言うならば、笹野宮の薄っぺらな
プライドをあまり刺激せずに終わらせてほしかった。
とばっちりはご免だった。

 笹野宮は興奮していた。
こんな訳のわからない世界にいるのも苦痛だし、
加賀見ごときと比較され、若干だが下風に
見られているのも癪だった。
「ああっ、加賀見より上だってことを見せてやるよ。
奴の女かどうか知らないが、織多を
俺の女にすれば俺が上ってことだろう」

事務局員の何人かが顔を見合わせて笑っていた。
それが笹野宮には、どうもできないことを言うなと
馬鹿にされているように見えた。
それが彼を更にイラつかせた。
金重はどうも妙な展開になっているなと思いつつ、
口を挟むことをしなかった。
関わりたくない気分が心を支配していた。
そしてなぜか話題の中心たる織多の身体つきを
思い出して、しばらく女性に触れていないせいか
妙にそわそわしていた。

「そうそう、本当は見せてはいけないのですが、
ここには男しかいませんし、加賀見さんの
アレの動画をお見せしましょうか?」
と事務局員の一人が下劣な声で言うと、
笹野宮が反応して、
「何っ、そんなことを映るようなところで
やっているのか、あの屑が。見せろ」

動画が再生された。織多、ロベリオそして、
先日の尾賀との絡みが編集されたシーンが流れた。

笹野宮の反応は異常だった。
顔を異常に歪めて、
「探索の件は、後日、話し合いましょう」
と言うと、挨拶もなく会議室を出て行った。
金重は軽く会釈をすると慌てて、笹野宮の後を追った。

事務局員たちは薄笑いを浮かべるだけで誰も引き止めなかった。
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