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嗚咽

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センタールームで3日ぶりに加賀見は、
織多さんと一緒にいた。
「加賀見さん、例の件ですが、
過去108回の航海のうち、
帰還者がいた比較的情報の
多いものにはなかったです。
事務局員を含めた帰還者0の航海に
この世界と符合する点が多い航海が1点だけありました」
とぎこちなく語る織多さん。

加賀見は、自分の行いのせいとはいえ、
織多さんとの会話に壁を感じ、自分の行動を悔いた。

とにかく、今はデータの方だと思い、
加賀見は、その公開されているデータを閲覧するが、
情報量の少なさに驚いた。

「渡航船ミラーワールド9号ですか、
つまり第九回の航海ということですね。
これは閲覧制限がかけられていますね。
大気や地勢データ、公開されている日誌からすると、
非常に似ていますね。
ただ、異形種のようなものはでてきませんね」

「不思議ですよね、ミラーワールド9号自体は、
自動運行モードで地球に戻っていますから。
当時の制御技術ですと、かなり運も良かったのですかね」
と織多さんは感想を述べた。

「秘匿されている情報に何が記述されているか
気になりますね。船が戻っている以上、
もっと詳しい情報があるはずですし、
無限に広がる多鏡面世界で同じ世界に
偶然で繋がるとは考えにくいですが、、、、」
言葉を濁す加賀見。

「加賀見さん、他のグループは、
どうやら新技術や未知の生物や植物の捕獲より、
有益な鉱物資源の研究や確保に舵を
切り替えたそうですよ。私たちはどうしますか?」
織多さんは、加賀見に尋ねた。

「そういった点を諦めるのはまだ、
早いような気もしますが。まだ、到着して、一か月ですよ。
ただ、確かにあの鉱物を調べて、有益そうなものを
中心に持ち帰るのが一番、利益を得られそうですね。
織多さんは、当初の目的と違えますが、
大丈夫でしょうか?」
と加賀見は織多さんに尋ねた。

「仕方ありません。ないものねだりしても
しょうがないので。自分の開発研究が難しいなら、
利益を得られるようにがんばります。
そういった点には疎いので、
加賀見さんよろしくお願いします」
とにこやかに答えた。

「はい、お願いされました。
それと、織多さん、シャワー室での件は、
本当にすみませんでした。深くお詫び申し上げます。
以後、絶対にあのようなことはいたしません」
真摯な表情で加賀見は、伝えた。

「絶対ねえ、せめて、できる限り気を
付けます位にしておいた方がいいんじゃないですか?
考えてみれば、会って1か月程度ですし、
まあ、加賀見さんが恋人ってわけでもないですしね。
ちょっと、あれは、女性が不快に
感じる程度のことですよ」
何となく織多さんは、泣きそうな声で答え、続けた。

「でもまあ、短い時間でしたけど、加賀見さんの事、
ちょっといいなぁなんて
感じちゃったんです。
こんな男性が彼氏だったらなぁって。
いつも一緒にいて、恋人と勘違いしちゃった。
単なるビジネスパートナーなのになんか夢見ちゃった。
ごめんなさい」
と言って、織多さんの頬を涙が流れはじめた。

「本当にすみません」
と言って加賀見は、ハンカチで織多さんの涙を拭った。

「いいんです。もういいですから、大丈夫です」
と涙を拭って貰いながら、織多さんは答えた。

加賀見は織多さんが泣き止むまで、
無言で涙を拭い、再度、頭を下げた。

「伝説のCセットも食べられたことですし、
良しとしましょう。ついでに加賀見さんが
昼食のB定食についてくるデザートを
どうやら提供してくれそうですしね」
と無理に笑顔を作って織多さんは答えた。
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