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発情

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 渡航船ミラーワールド109号の付近に
引き千切られたサバイバルスーツが散乱していた。
ここでの経験から加賀見は、それが何を
意味しているか理解できた。
車内から、二人の事務局員が周囲を警戒しながら、
帰投の最終確認を渡航船と取っていた。

「加賀見さん、確か私たちが出発した時点では
探索に出るグループはなかったと思いますが?これは一体」
と織多さんが呟いた。

「多分ですが、リアルタイムに私たちの
探索が公開されていたのでしょう。
それを見て、一先ず解析より確保しようとしたのでしょうね。
そこを異形種に狙われたのかもしれません」
と加賀見は思案顔で答えた。

「かがみぃー、帰投の了解でたよ。どうする?」
とロベリオが尋ねてきた。

「異形種が戻ってくる前に帰投しましょう」
加賀見は即座に答えた。

探索車両がミラーワールド号に
向かって最短距離で走り出し、
散乱している探索者の遺物を踏み潰して、
進んだ。誰しもが無言であった。
彼らは、何事もなく、母船に帰投し、車両を
出るとエアシャワーを浴びる場所に向かった。

「かがみぃーから、どうぞ。
覗かれるとちょっと恥ずかしいぃ」
とロベリオ加賀見に最初にエアシャワーを
浴びるように促した。
加賀見は了解して、シャワールームに向かった。
基本、何も着ずにシャワーを浴びる。
母船への未知の生命体の侵入を防ぐのが目的であった。

 シャワーが動作し始めると、背中に温かみを感じた。
加賀見は、慌てて後ろを振り向くと、裸体のロベリオがいた。
 
ロベリオは、加賀見と向き合い、身体を密着させ、
左手を鼠蹊部にあてて、ゆっくりと動かし始めた。
ロベリオは、耳元に口を近づけて、囁いた。

「どう?気持ちいい、そのまま、
身を任せて。気持ち良さそうさにして」

加賀見は硬直して、動けず、ハァハァと息を荒げた。
エアシャワーの音が煩く、加賀見の吐息をかき消した。

「よく聞いて、あなたがたは監視されている。
体よく利用もされているわ、副船長にね。
それと過去の探索履歴を調べてみるといいわぁ」
そう言うと、ロベリオが加賀見の耳たぶを
激しく、舐めあげた。

「ううっ、それは、それは、どっどういう、あっああー」
加賀見は質問をしようとしたが、久々の快楽に声が
上擦ってしまい、まともに話すことができなかった。

 加賀見の両腕が強く、ロベリオを締め上げ、
腰を振るい、雄叫びをあげると、ロベリオの左手に
大量の白い粘性の体液が放出された。

お互いに息が乱れながら、エアシャワー室を後にした。

その後ろ姿を冷たい目で織多さんが睨み付けていた。
カーリンは、そんな織多にエアシャワーを浴びるように促した。

 エアシャワー後、解散となり、明日、ミーティングが
行われることになった。
加賀見と織多さんは、お互いに言葉少なに
各々の部屋に戻った。

「ふふっ、一人前に嫉妬していましたね。
ロベリオ、少々、お痛が過ぎますよ」
とカーリンは、言って、冷笑した。

「多少の役得が加賀見にもないと、可哀そうじゃん。
一応、言われたことはやったよ」
とヘラっと笑って答えた。

加賀見は部屋に戻ると簡単な内容であるが、
本社への報告書を送った。詳細は分からないが、
探索中にかなりの人数が亡くなったようだった。
夕食時の各テーブルの話題は、そのことが主であった。

探索の疲れとシャワールームの件が相まって、
加賀見は気だるさを感じ、スリープボックスに
転がるとすぐに眠ってしまった。
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