異世界にもあった鬼畜な会社の鬼畜な業務異世界転移してきたのに変わらぬ社畜生活

ゆうた

文字の大きさ

大中小

19 / 179

探索検討

しおりを挟む

加賀見は織多さんへ尋ねた。
「彼らの報告書はありましたか？」
「そういえば、見当たりませんでしたねー
まだ、探索をしていなのですかね？」
と織多さんの意見を聞き、加賀見は、思案にふける。

多分、彼らは、安全が報告書によって、
確認できたら、探索をする予定だったのだろう。
しかし、実際には、相当、早いペースで死者が出ており、
自力での探索に躊躇している可能性がある。
だとすると、体験者の話を脚色して、
近場で探索を終わらせて、ドキュメントを制作し、
あとは船内で安全に過ごすことを考えているのだろう。

織多さんにそう伝えると、
「加賀見さん、すごっ。あの少しの時間で
そこまで考えたたんですかー」
と驚きの声をあげた。

「二人とも多分ですが、なかなか、
芸能関係で芽が出ないのでしょう。
だから、この渡航に参加して、起死回生の手を
打とうとしているのでしょう。
ただし、亡くなって、評されても仕方ありませんから、
安全策にシフトしたのでしょうね」
加賀見は、あの二人の容姿を確かに美男美女であるが、
人を惹きつける何かが足りないのだろうと感じた。

「イケメンに美人なのに、芸能界も大変ですねー。
ところで加賀見さんは、これからどうしますか？
私も息抜きしようかなー。センタールームで
映画でも一緒に見ませんか？」
織多さんに尋ねられて、特に決めていることもないので、
一緒にセンタールームに向かうことにした。

まず、センタールームで事務局からの
お知らせを読んでいると、行方不明者が増えていた。
中小企業が一社、昨日より、行方不明になっているようだった。

人数は5名で、無人探索機で調べたところ、
森の奥地へ向かう途中に持ち運んでいた道具が
サバイバルスーツも含めて、放置されているようだった。

「裸になって、亡くなったということですかね？
でもこんなところで、サバイバルスーツを
脱いだんですかねー」

息抜きのつもりが、嫌な情報を見てしまい、
加賀見は、情報を集めるために、
自分たちも無人探索機を周辺に飛ばすことにした。

うまく仕事とプライベートを割り切れない加賀見であった。

どうやら彼らが行方不明になったのは、
初日のキャンプ地のようであった。
物資が手つかずのままのため、回収依頼の募集が事務局から
告知されるかもしれない。
加賀見は、募集された場合、参加することを
織多さんへ伝えた。

「過去の探索でも物資の回収ミッションは
あったようですねー。成功すると結構、
優遇されるみたいですね。
AランチからCコースに食事が
ランクアップするかもしれません」
にっこにこの織多さんだった。

「まあ、過去の事例からしますと、
毎回、成功報酬が違っているようですね。
この規模の物資ですと、10人程度の募集に
なりますかね」
加賀見は、無人探索機で
残された物資をモニターして、答えた。

「うーんうーん、何故でしょうか？
乾物の食料は残っているのに水の容器は
残っていませんねー」
その言葉に反応した加賀見は、
「水ですか。そう言えば川も
この地には見当たりませんね。
足りなくなった場合に現地で調達が
可能であるとすれば、大気から
収集するくらいですかね」

「流石にそれは、ちょっと、コストが
かかりすぎますよー。水は、備蓄で十分に
賄えるって聞いていますから、大丈夫ですよー」

最後に周りの音を拾ってみると、
木々の枝は、揺れていないのに
激しい風切り音が聞こえてきた。
その音がなんだか行方不明者たちの
怨嗟の声に聞こえ、加賀見は気分が
悪くなり、音を切った。

しおりを挟む