異世界にもあった鬼畜な会社の鬼畜な業務異世界転移してきたのに変わらぬ社畜生活

美男美女

加賀見は、聞き耳を立てているのは、
どのグループも同じだなと思った。
二人のうち、男性は、すらりとした知的な男性で、
女性の方は、スレンダーな美人であった。
二人ともモデルやタレントのようなレベルの容姿であった。

「ええ、そうですよー一応、
公開されている報告書の中で、
異形種と火の件について、言及しているのは
加賀見さんの報告書だけですからねー」
なんと言うか織多さんが自分のことのように
自慢げに話す。

「席をご一緒にしても？」
と男性が尋ねてきた。

加賀見は、拒否する必要もないと思い、
席から立って、軽く頭を下げて、
「どうぞ、ワンダーランド社派遣の加賀見と言います」
と自己紹介した。

織多さんは、突然の加賀見の会社員的な
挨拶についていけず、「国定第7大学の織多です」と
「研究生」を言い忘れて、
ぎこちなくぺこりと頭を下げて、答えていた。

「ジェットプロダクションカンパニーの
笹野宮といいます。俳優をしています。」
「ジェットプロダクションカンパニーの
鴨宮といいます。モデルをしています。」
二人が揃って、自己紹介をした。

「ええっーーーーーあの本格派、
大俳優や大女優を輩出しているところじゃないですかー。
他の方々も参加されているんですか？」
と織多さんが興奮気味に尋ねた。

「いえ、私と彼女、あとは、金重という
マネージャーです。彼は部屋で寝ていると思います」
と笹野宮が答えた。

「そうそう、私たちは、本日のオフを満喫中。
と言ってもここでは楽しみも
限られていますけどね。」
と続けて鴨宮が答えた。

「そうですか、私も今日は、お休みでして。
ジェットプロダクションカンパニーさんは、
どういった目的で参加されたのでしょうか？」
とか加賀見は、あたりさわりのない話を振った。

「うーん、もちろん、貴重な発見でもあれば、
最高にハッピーだけど、一応、生き延びることを
前提としたドキュメンタリーの制作かな。
もちろん、帰還後は、映画やドラマに
展開できれば、ベストなんだけどね」
笹野宮がにかッと笑って答えた。
白い歯が照明の明りを反射したように
加賀見には、感じられた。

笹野宮の話を受けて、鴨宮が追加した。
「正直、私たちでは、発見したものが、
貴重なものかどうかを判断もできませんし、
有害なものを船に持ち込むより、
冒険譚を得る方が今後の人生に
プラスかなと思っているわけで。
そんな感じですので、加賀見さんの
異形種との実体験には、非常に興味がそそられました。
そして、お話を伺うチャンスがあれば、
是非ともお願いしたいところで」

加賀見は、思案していた。
2年という期間は、長いようで短い。
そして、貴重な発見が見つからなかった時、
この世界での実体験に価値が出てくる。
過去の探索でも冒険譚として、企業が色々と
展開して利益を上げていた。
安易に話して、剽窃されては、たまったものではない。
加賀見は如才なく答えた。
「すみません、報告書以上の内容はございません。
文才もなければ、巧みな表現力もございませんから、
あまりお力になれるようなことは。
どうしてもと言うのでしたら、契約書を取り交わして、
お話できると助かります。
実体験とはいえ、こちらの織多さんとの
共同の財産になりますので」

一瞬、笹野宮が鋭い視線が加賀見を捉えたが、
ごまかすように笑いながら、
「それもそうだ！ここでの実体験は、売れますからね。
契約とかそういったものにとんと疎くて、
金重を介して、是非ともお話を伺いたいものですな。
では、また、後日」
「お互いに良い休日を」
と鴨宮が続き、テーブルを去った。

ポカーンと言う言葉が正しいのだろうか、
織多さんがそんな表情で見送っていた。