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第1章『リンゴンの街編』

第17話 ほっこりおでかけタイムです

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 冒険者向けのアイテム全般をあつかう、装備屋にやってきた。
 棚には、いろんなかたちやサイズのガラス瓶。
 その前で、緑色があざやかな双葉リボンのバンダナが、ぴょこぴょことゆれてる。

「ソラくん、底がひろい空き瓶をさがすのです。ちょっとおっきめのやつで!」

「はーい。底がひろいもの、底がひろいもの……」

 シュシュが棚の下のほうを見てるから、僕は上のほうをさがしてみよう。
 とりあえず左から右へ見てみると、丸底フラスコ型のガラス瓶を発見した。

「あ、これとかどう? ポーション用で、落としても割れにくいんだって。思ったより軽いし、もち運びもしやすそう」

「よいではないですか。じゃあ、1ミットル容量のものにしましょう。店主のおじさん! これ、肩かけの水筒みたいに、ひもをつけてもらうことってできますか? それと、ガラス栓もコルク栓にしたりとか」

「お安いごようさ。オプション加工でプラス1,050ペイかかるけど、いいかい?」

「だいじょうぶです。あ、そうだ! あと、水の魔石アクア・ジェムもほしいです。Sサイズを……替えもふくめて、5個くらい!」

「あいよー!」

 いっぱい買うものがあるってシュシュが言ってたから、荷物もちのつもりだったんだけど、その必要はなかったみたいで。

「ほい、まいどあり!」

「ありがとうございますです。おねがいしていいですか? ポポちゃん」

「ビヨン!」

 どっさり買い込んだ紙袋を、シュシュの肩に飛びのり、「ンアー」と口をあけたポポが、次々と『ぱっくん』していく。

「んっ? 『スライム』に食べさせちまうのかい?」

「ノンノン、『スライム』ではありません。ポポちゃんは、水の妖精『パプル』です。物を溶かすことはできませんけど、たくさん入れて、ためることができるんです」

「ほぉ、『空間圧縮』に『重量軽減』の能力があんのかい。そりゃあマジック・バッグいらずだな。たいしたもんだ!」

 カウンターにひじをついて興味深そうにのぞき込んでた店主さんも、「感心感心!」ってうなずいてる。

「うちの子ですから! あっでも、もう荷物が入らないってなったら、ポポちゃんも『イヤイヤ』してくださいね?」

「ビィ!」

 楽しそうにやりとりをするシュシュたちを見て、僕までほっこりする。そんな昼下がりだった。


  *  *  *


『テイマー』は、モンスターに名前をつけて『服従』させる。
 それに対して『召喚士』は、精霊や妖精から名前を教えてもらって、『契約』するんだって。

『パプル』の名前はポポ。
 ポポが僕たちといっしょに来ることをえらんで、早いもので、もう2日だ。

「お水よーし、浄水用の水の魔石アクア・ジェムよーし。ではでは、これはソラくんに託しましょう。名づけて『ポポちゃんワクワクおさんぽセット』です」

 装備屋を出てすぐ、加工してもらったポーション瓶を託された。
 なかには8分目くらいまでの水と、水の魔石アクア・ジェムが1個、それからポポが道ばたでじーっと見つめてた、白とピンクのお花が入ってる。
 水の魔石アクア・ジェムの影響か、重力とは関係なしにお花がふわっと浮いたり、ひらひら舞うから、ハーバリウムみたいだ。

「ビヨヨンッ!」

 つぶらな瞳を輝かせたポポが、まんまるいガラス瓶にぽちゃん、と飛び込んできた。
 お花が舞う水中で、ふよん、ふよん、と楽しそうに泳いでる。

「んふふっ、はしゃいでますねぇ、やっぱり水の妖精さんですから、お水があるとうれしいですよねぇ。かわいいですぅ」

「ねぇシュシュ、僕『召喚士』じゃないけど、ポポをまかせてもらっていいの?」

「いいんですよ。契約した『召喚士』の指示のもとであれば、だれでも精霊や妖精のお世話ができます。もちろん制限もありますけど、身のまわりのお世話なら問題ナシナシです」

「ンン……ビヨン!」

 キュポン、と気持ちいい音がして、ポポがガラス瓶から顔を出す。コルク栓にしてもらったのは、ポポが出てきやすいようにするためだったみたいだ。
 コルク栓もひもでガラス瓶とつないであるから、落としてなくすこともなさそうだね。

「っていうか、ジャストフィットしてる……あははっ!」

「ビビ?」

「瓶の口にハマッたポポちゃんが、ソラくんのツボにハマッたもようです。シュシュもほっこり……」

 こんどは僕たちを見て、シュシュがほっこりする番だったみたい。
 瓶の口にハマッたまま、つぶらな瞳をぱちくりさせているポポ。
 きみは、みんなをほっこりさせる天才だね!
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