五人の適合者

アオヤカ

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力を求める者

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敵の殺意がひしひしと伝わってくる。
武器を持つ兵士達が歩きながら話し合っている。
「作戦を立てたぐらいで勝てると思うなよ。雑魚どもが…」
槍を回転させる。
血管が浮き上がっている男が地面をえぐりながらこちらに走ってくる。
「今こそ、クロスさんの戦術を生かすときだ!…散れ!」
アルムの合図でクロとアルムが突撃する。
後ろには月姫と天姫が武器を構えている。
「二人程度で…。」
アルムの剣と槍がぶつかり、火花が散る。
「お前が、俺を楽しませてくれるのか?それともあの斧の少年か?」
カリストレートは笑っている。
「お前は力を合わせることにかなり抵抗があるみたいだな。一人じゃない…全員だッ!」
アルムが剣で槍を弾く。
その瞬間、クロが後ろから十分な回転を加えて斬りかかる。
カリストレートは人間とは思えないほどに反応がよかった。そして、運動能力も異常だ。
体勢を崩されているのにも関わらず、クロの攻撃をかわした。
天姫はその瞬間に発砲する。
一直線に放たれた一撃は…槍に防がれる。

「拍子抜けだよ。…話にならないな。力を合わせると言ったな少年。」
カリストレートはアルムの剣を握り、クロの斧も槍で受け止められている。
「これが…お前たちの限界だ。弓の女もこれだけ仲間が集まっていれば撃てないんだろ?何せ、強力だもんな。あたりを全て吹っ飛ばす威力…凄まじいがコントロールが効かない。銃の女も力不足だ。お前達二人も戦術が甘すぎるッ!」
アルムはカリストレートの蹴りを顔に入れられる。
「ぐっ…は。」
アルムはそのまま、地面に倒れる。
クロが力を込めて斧に力を溜める。
「アルム!」
クロはカリストレートを睨む。
「愚かだな。」
カリストレートは一瞬のスキを槍で弾き、腹に刃を突き刺す。
そして、クロの頭を掴む。髪の毛がぐしゃぐしゃになる。
地面に血が滴り落ちる。
「お前はもう戦えないな。」
カリストレートはクロを離した。
崩れ落ちるようにクロは倒れる。
今の状況は、最悪になってしまった。
カリストレートはクロに槍を構えている。
「やはり、お前たちは無駄に力を使っているだけの愚か者達だ。」
クロはゆっくりとカリストレートの方を見る。
「…………どうかな。」
クロは笑みを見せる。
後ろの方で月姫が矢を放つ準備をしていた。
「だから…撃てないんだろッ!?ハッタリが効くと思うな!」
カリストレートはクロにトドメを刺そうとする。
すると月光の一撃が月姫から放たれる。
「…何!?…巻き込む気か!?」
クロは左手で、空間を操作する。
アルムと共に脱出すると月姫たちの元まで戻っていた。
月姫の一撃により、爆風が引き起こる。立ちのぼる煙でよく見えない。
煙が薄く消えていくと人の姿が確認できるようになる。
カリストレートは傷だらけで立っていた。ギリギリ防いだようだ。
「…いい作戦だが…致命傷には届かないな。」
正直、ここまでの相手だとは思わなかった。判断力も洞察力も人ではない。
カリストレートはカプセル型のドーピング剤を身体に取り込む。
カリストレートの身体は一秒ごとに傷が回復していく。
「ッはぁぁー。まぁ…腕が吹っ飛んでようが足が無くなろうとこの薬で治るから問題ないんだがな。」
カリストレートの回復力を目の当たりにする。
10秒もすれば完全に傷はなくなっていた。
「さぁ第2ラウンドだ。」
カリストレートは更に薬を飲む。何錠も口に入れて飲み飲む。
血管が弾けるぐらいに浮き上がっている。
人ではない何かに変わろうとしている。
「副作用が強くなるから嫌なんだが、こいつらは必ずここで消す。」
アルムは左手を使うことを決めた。
「影の王…影針ッ!」
地面から黒い影が広がり棘を地面から突き刺していく。
カリストレートは高くジャンプしてこちらに接近する。
天姫は標準を合わせてカリストレートを狙う。
「空力、50%暁。」
天姫の最大の一撃がカリストレートの脳天をぶち抜く。
血と脳みそが飛び散りながらこちらに倒れ込む。
「…倒した?」
クロはカリストレートの身体が動いたことに驚く。
「……まだ生きてる!」
カリストレートは起き上がると糸のような虹色の何が身体を修復していく。
「化け物め…。」
明らかに今までの敵の中で一番の強敵だ。
信じられない。
元に戻ったカリストレートはこちらを見て言った。
「俺はな。ドーピング以外にも他の能力があってな。ある条件が整うまで死なない。つまり、どれだけ死に近い攻撃をくらっても生き返るって訳だ。」
その言葉にその場の全員が絶望した。
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