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救い
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カゲの軍勢をすべて消し去った。黄金の髪の少女はゆっくりと弓を首飾りに戻した。
「これが私の力…すべてを消し去る偽なる光の輝き。」
先程の明るさは無い。冷たい目でこちらを向いた。そして笑顔を見せた。アルムにはその一瞬を逃さない。彼女の言葉とその表情は何を表すのか…何を考えたのか。
でも、それは聞く必要は無い。
「さぁ帰ろう。守り抜いたんだから。」
アルムは村へ戻る。
「行きましょう!お姉様!」
天姫は月姫の手を取り、歩き出す。
日は昇る。村に危機は去ったのだ。
村長の罪はその村の人達に任せた。アルムの役割ではない。アルムは宿屋で牛肉のステーキとほかほかの白米を食べる。美味い。絶妙な塩加減が白米に合う。宿主に感謝するべきだろう。あんな時間でも笑顔で待っていてくれたのだから、そしてこんなにも美味い飯を作ってくれた。
本当にありがとう。
そして部屋に入った、途端に睡魔に襲われた。
目は重く静かに沈む。
夢を見た。遥か遠くの夢を見た。
「あれからどのくらいの時間がたったのか。どうして……救ってしまったのか……あの双子を…………あいつもきっと」
酷く冷たい。後悔と悲しみ、深い絶望か…城の中にいる男は目を曇らせてそう言う。
「見えるなら止めてくれ。これ以上、…行動しないでくれ。」
よく見えない。その姿は見えない、ただ恐ろしく怖いと思った。その目は何処までも遠い。アルムを見ているわけではない。笑う…笑う…笑う…理解できない…手の先が喜びに満ちている。ワラウワラウワラウワラウワラウワラウワラウワラウ足が離れている。光は無い。ミテイル。ミラレテイル。ダレが…誰を…何もないのに…あぁ喜びよ。
限りなくその両手は何処までも救いを求め続けた。
「彼は優しいだけなんだ。君のようにね。」
後ろから聞こえた声が現実にアルムを連れて行く。
「君はまだソノニイクベキデハナイ」
微笑みかける。それは悪夢を消した。
アルムは太陽の光で目を開けた。息を飲み、もう一度目を開けた。きっと意味のわからない夢だった。説明できない夢…毎回、夢を見ている時はよく覚えているのに、終わった途端に忘れてしまう。なんでだろうな。
アルムはベットから起き上がると支度を始める。頭に布を巻き付けて、笑った。剣を背負う。そして宿屋を出た。
アルムは村を出ようとする。すると、
「待って!」
村の方から声がする。振り向くと双子の姉妹が走ってくる。
「この村にいるんじゃないのか?」
アルムは二人の格好を見て言った。どう見ても動ける格好で旅の支度までできている。
「きみについて行くことにしたから!」
月姫はニコッとした。
「はい?」
アルムは首を傾げる。
「この村以外にも世界を見たいのです。あなたはカゲを追っているのですよね?私達の力であなたに協力したいです。あなたに助けてもらったのだから!」
天姫は想いを伝えてくれた。アルムは少し照れると
「わかったよ…ついてきてくれるのなら一緒に旅をしよう!」
二人はその言葉を聞くと笑顔でアルムについていく。
また長い旅になるだろう。地面を強く踏み、歩き出すのであった。
「これが私の力…すべてを消し去る偽なる光の輝き。」
先程の明るさは無い。冷たい目でこちらを向いた。そして笑顔を見せた。アルムにはその一瞬を逃さない。彼女の言葉とその表情は何を表すのか…何を考えたのか。
でも、それは聞く必要は無い。
「さぁ帰ろう。守り抜いたんだから。」
アルムは村へ戻る。
「行きましょう!お姉様!」
天姫は月姫の手を取り、歩き出す。
日は昇る。村に危機は去ったのだ。
村長の罪はその村の人達に任せた。アルムの役割ではない。アルムは宿屋で牛肉のステーキとほかほかの白米を食べる。美味い。絶妙な塩加減が白米に合う。宿主に感謝するべきだろう。あんな時間でも笑顔で待っていてくれたのだから、そしてこんなにも美味い飯を作ってくれた。
本当にありがとう。
そして部屋に入った、途端に睡魔に襲われた。
目は重く静かに沈む。
夢を見た。遥か遠くの夢を見た。
「あれからどのくらいの時間がたったのか。どうして……救ってしまったのか……あの双子を…………あいつもきっと」
酷く冷たい。後悔と悲しみ、深い絶望か…城の中にいる男は目を曇らせてそう言う。
「見えるなら止めてくれ。これ以上、…行動しないでくれ。」
よく見えない。その姿は見えない、ただ恐ろしく怖いと思った。その目は何処までも遠い。アルムを見ているわけではない。笑う…笑う…笑う…理解できない…手の先が喜びに満ちている。ワラウワラウワラウワラウワラウワラウワラウワラウ足が離れている。光は無い。ミテイル。ミラレテイル。ダレが…誰を…何もないのに…あぁ喜びよ。
限りなくその両手は何処までも救いを求め続けた。
「彼は優しいだけなんだ。君のようにね。」
後ろから聞こえた声が現実にアルムを連れて行く。
「君はまだソノニイクベキデハナイ」
微笑みかける。それは悪夢を消した。
アルムは太陽の光で目を開けた。息を飲み、もう一度目を開けた。きっと意味のわからない夢だった。説明できない夢…毎回、夢を見ている時はよく覚えているのに、終わった途端に忘れてしまう。なんでだろうな。
アルムはベットから起き上がると支度を始める。頭に布を巻き付けて、笑った。剣を背負う。そして宿屋を出た。
アルムは村を出ようとする。すると、
「待って!」
村の方から声がする。振り向くと双子の姉妹が走ってくる。
「この村にいるんじゃないのか?」
アルムは二人の格好を見て言った。どう見ても動ける格好で旅の支度までできている。
「きみについて行くことにしたから!」
月姫はニコッとした。
「はい?」
アルムは首を傾げる。
「この村以外にも世界を見たいのです。あなたはカゲを追っているのですよね?私達の力であなたに協力したいです。あなたに助けてもらったのだから!」
天姫は想いを伝えてくれた。アルムは少し照れると
「わかったよ…ついてきてくれるのなら一緒に旅をしよう!」
二人はその言葉を聞くと笑顔でアルムについていく。
また長い旅になるだろう。地面を強く踏み、歩き出すのであった。
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