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第242話
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◆神坂春華 視点◆
「それにしても、フユにどんどん置いていかれるよね。
あたしには恋愛が良くわからないし、どうしたもんだろう?」
美波ちゃんたちがあたし達の誕生日会の準備をしてくれて待っている時間に手持ち無沙汰になったというフユがあたしの部屋に来てふたりだけで話をしている。
冤罪事件で絶縁に近い状態になっていた関係も少しずつ良くなってきているのは実感しているし、一時期のような罪悪感だけで心が苦しくなるようなことはなくなってきているとは言え、それでも以前と全く同じという気持ちにもなれず戸惑っていたら『双子はこういったところは気が合うんだね』と言ってくれて感極まって抱き着いてしまった。
それでもフユは嫌な顔ひとつせず受け止めてくれて、思いを言葉に出したら美晴お姉のおかげという話の流れになり、心に余裕が生まれてきたから聞きたいと思っていたことを口にした。
美晴お姉がこんなことをするのかと驚かされた尻尾が生えていた事を茶化しつつもフユがどういう気持ちでいたのかを聞けた。
さすがにセンシティブなところはぼやかしたけど、おおよその気持ちはわかったと思う。
フユは美晴お姉を貶めてまで自分を良く見せようとはしないし、オブラートに包んだ上でも美晴お姉が今までのイメージとは違って積極的になっていることが感じ取れた。
恐らく美晴お姉はフユと初めて体験するまで『そういった』事には縁遠かっただろうし、そうすると21歳までそういった経験がなくていきなり好きな人とそういうことをしたから一気にのめり込んでしまって性欲オバケみたいな状態になっているように思う。
それはあたしにとっても他人事ではなくて、このまま21歳・・・それどころかもっと歳を重ねてから経験したら、美晴お姉よりものめり込んでしまう可能性を感じてしまう。だからといって、そのためだけの遊びの関係を持ちたいとは思わないし、やっぱり好きな人とだけそういうことをしたい・・・そういう考えが口をついて出た。
「僕の場合は、ずっと傍に美波がいて幼い時からずっと恋愛感情を意識していたからね。
相手は美晴さんになったけど、それだってその下地があったからだと思う。
ハルは誰か良いなと思う男子はいないの?」
「うーん、いないかなぁ?
ほら、あたしってお姉や美波ちゃんがずっと傍にいたから、あまり男子から注目されてなかったと思うんだよね」
「そうかな?
たしかに、姉さんは昔からずっと注目を集める感じだったし、だからか後から学校へ上がる僕らは姉さんの弟妹という目で見られがちだったのはあると思うけど、同じ学年や下の学年だとハルを見ている男子はいたよ」
「えー、美波ちゃんじゃなくて?」
「僕が言うのも難だけど、ハルには親しみやすさみたいのがある様に思うよ。
僕ら3人は学校の外だとずっと一緒だったし、3人揃って人見知りがちではあるけど、それでも美波よりはハルの方が社交的で学年の男子からは好かれていたように感じてる」
「それって『神坂夏菜』の妹としてじゃなくて?」
「そんな事ないって。実際、ローラン君なんかは姉さんなんか関係ない感じでハルへの好意を見せてるじゃない」
「たしかに、ローラン君はね」
「新谷君だって、ローラン君ほどじゃないけどハルへの好意が見えるよ」
「うーん・・・新谷君も生徒会では手助けしてくれるし、いい人だと思うけど、ほんとにあたしのことを好きなのかな?
なんかお姉のことを好きな人って印象なんだよね」
ローラン君はたしかにあたしへの好意を大きく表現してくれるけど、日本でアニメの話ができた最初の友達だからじゃないかなと思うところもあるし、新谷君は生徒会執行部のお手伝いをしていた時にお姉に『会長!』ってすぐに聞きに行っていた印象が強いので、あたしへの好意があると言われても何ともしっくりこない。
「それじゃあ、幸博君は?」
「ユッキー?」
「たぶんだけど、幸博君は昔からハルの事が好きだったと思うよ」
「そうかなぁ?」
「考えてもみなよ。幸博君がわざわざ秀優高校に進学するのって何が目的だったと思う?」
「東京に住みたかったから?」
「僕が中3の時は家族と離れて暮らすなんて考えられなかったよ?
いくら歳の近い従兄弟の家があるからってそんな選択をするかな?
親元を離れてまでしたいことがあるからじゃないかな?」
「それがあたしと暮らすってこと?」
「僕はそうじゃないかと思ってるし、たぶん姉さんもそう思っていると思うよ。
あの姉さんがいくら自分の受験があるからって、それだけで幸博君の受験勉強の手助けをハルに任せきりにしないよ」
「でも・・・え?」
「それにさ、幸博君は僕のことは『冬兄』って呼んでくれるのに、ハルの事は『春華』って呼び捨てじゃない。
この間こっちに来てた時も変わってなかったけど、小学生男子によく見られる好きな女の子にカッコつけたい感じじゃないかと思って見てるよ」
たしかに、フユに言われるがままにユッキーの行動を整理してみると、ユッキーがあたしのことを好きだからしているという風にも考えられる・・・
え?
ユッキーが?
あたしのことを?
好き?
全然考えたことがなかった!
しかし、来月からこの家で一緒に暮らすというのにこのタイミングで気付かせるフユには恨めしい気持ちも湧いてくる・・・とは言え、心の準備もないままよりは良いのかもしれない。
まだ1ヶ月半くらいは猶予があるのだからじっくり考えよう。
・・・しかし、そう考えるとローラン君や新谷君も?
フユはそれ以上は突っ込んでこの話題を広げてこなかったので他愛のない話をし、途中からはお姉もやってきて3人で待っていたら美波ちゃんが呼びに来てくれて、あたしとフユの17歳の誕生日会が始まった。
「それにしても、フユにどんどん置いていかれるよね。
あたしには恋愛が良くわからないし、どうしたもんだろう?」
美波ちゃんたちがあたし達の誕生日会の準備をしてくれて待っている時間に手持ち無沙汰になったというフユがあたしの部屋に来てふたりだけで話をしている。
冤罪事件で絶縁に近い状態になっていた関係も少しずつ良くなってきているのは実感しているし、一時期のような罪悪感だけで心が苦しくなるようなことはなくなってきているとは言え、それでも以前と全く同じという気持ちにもなれず戸惑っていたら『双子はこういったところは気が合うんだね』と言ってくれて感極まって抱き着いてしまった。
それでもフユは嫌な顔ひとつせず受け止めてくれて、思いを言葉に出したら美晴お姉のおかげという話の流れになり、心に余裕が生まれてきたから聞きたいと思っていたことを口にした。
美晴お姉がこんなことをするのかと驚かされた尻尾が生えていた事を茶化しつつもフユがどういう気持ちでいたのかを聞けた。
さすがにセンシティブなところはぼやかしたけど、おおよその気持ちはわかったと思う。
フユは美晴お姉を貶めてまで自分を良く見せようとはしないし、オブラートに包んだ上でも美晴お姉が今までのイメージとは違って積極的になっていることが感じ取れた。
恐らく美晴お姉はフユと初めて体験するまで『そういった』事には縁遠かっただろうし、そうすると21歳までそういった経験がなくていきなり好きな人とそういうことをしたから一気にのめり込んでしまって性欲オバケみたいな状態になっているように思う。
それはあたしにとっても他人事ではなくて、このまま21歳・・・それどころかもっと歳を重ねてから経験したら、美晴お姉よりものめり込んでしまう可能性を感じてしまう。だからといって、そのためだけの遊びの関係を持ちたいとは思わないし、やっぱり好きな人とだけそういうことをしたい・・・そういう考えが口をついて出た。
「僕の場合は、ずっと傍に美波がいて幼い時からずっと恋愛感情を意識していたからね。
相手は美晴さんになったけど、それだってその下地があったからだと思う。
ハルは誰か良いなと思う男子はいないの?」
「うーん、いないかなぁ?
ほら、あたしってお姉や美波ちゃんがずっと傍にいたから、あまり男子から注目されてなかったと思うんだよね」
「そうかな?
たしかに、姉さんは昔からずっと注目を集める感じだったし、だからか後から学校へ上がる僕らは姉さんの弟妹という目で見られがちだったのはあると思うけど、同じ学年や下の学年だとハルを見ている男子はいたよ」
「えー、美波ちゃんじゃなくて?」
「僕が言うのも難だけど、ハルには親しみやすさみたいのがある様に思うよ。
僕ら3人は学校の外だとずっと一緒だったし、3人揃って人見知りがちではあるけど、それでも美波よりはハルの方が社交的で学年の男子からは好かれていたように感じてる」
「それって『神坂夏菜』の妹としてじゃなくて?」
「そんな事ないって。実際、ローラン君なんかは姉さんなんか関係ない感じでハルへの好意を見せてるじゃない」
「たしかに、ローラン君はね」
「新谷君だって、ローラン君ほどじゃないけどハルへの好意が見えるよ」
「うーん・・・新谷君も生徒会では手助けしてくれるし、いい人だと思うけど、ほんとにあたしのことを好きなのかな?
なんかお姉のことを好きな人って印象なんだよね」
ローラン君はたしかにあたしへの好意を大きく表現してくれるけど、日本でアニメの話ができた最初の友達だからじゃないかなと思うところもあるし、新谷君は生徒会執行部のお手伝いをしていた時にお姉に『会長!』ってすぐに聞きに行っていた印象が強いので、あたしへの好意があると言われても何ともしっくりこない。
「それじゃあ、幸博君は?」
「ユッキー?」
「たぶんだけど、幸博君は昔からハルの事が好きだったと思うよ」
「そうかなぁ?」
「考えてもみなよ。幸博君がわざわざ秀優高校に進学するのって何が目的だったと思う?」
「東京に住みたかったから?」
「僕が中3の時は家族と離れて暮らすなんて考えられなかったよ?
いくら歳の近い従兄弟の家があるからってそんな選択をするかな?
親元を離れてまでしたいことがあるからじゃないかな?」
「それがあたしと暮らすってこと?」
「僕はそうじゃないかと思ってるし、たぶん姉さんもそう思っていると思うよ。
あの姉さんがいくら自分の受験があるからって、それだけで幸博君の受験勉強の手助けをハルに任せきりにしないよ」
「でも・・・え?」
「それにさ、幸博君は僕のことは『冬兄』って呼んでくれるのに、ハルの事は『春華』って呼び捨てじゃない。
この間こっちに来てた時も変わってなかったけど、小学生男子によく見られる好きな女の子にカッコつけたい感じじゃないかと思って見てるよ」
たしかに、フユに言われるがままにユッキーの行動を整理してみると、ユッキーがあたしのことを好きだからしているという風にも考えられる・・・
え?
ユッキーが?
あたしのことを?
好き?
全然考えたことがなかった!
しかし、来月からこの家で一緒に暮らすというのにこのタイミングで気付かせるフユには恨めしい気持ちも湧いてくる・・・とは言え、心の準備もないままよりは良いのかもしれない。
まだ1ヶ月半くらいは猶予があるのだからじっくり考えよう。
・・・しかし、そう考えるとローラン君や新谷君も?
フユはそれ以上は突っ込んでこの話題を広げてこなかったので他愛のない話をし、途中からはお姉もやってきて3人で待っていたら美波ちゃんが呼びに来てくれて、あたしとフユの17歳の誕生日会が始まった。
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