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番外編
甘くて可愛い小瓶の誘惑
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どうしてこうなった。普段は理知的な笑顔が印象的な彼女が満面の笑顔で自分にもたれてくるのを支えつつ、ヴロシェーハイム王国の次期宰相筆頭候補、ゴドウィン・オーヴィルは目の前の酔っ払いが出来上がった過程を遠い目で思い出していた。
そもそもの始まりは、あまり回数は多くないブランシェ家の定例の夜会にゴドウィンも招待されたことから始まる。
ヴロシェーハイムで歴史の記録を任されているブランシェ家はその役割故に、社交シーズンは王都のあちこちで行われる夜会に出席しては、その様子を記録していくことに忙しく、ブランシェ家そのものが夜会を主催する、という機会は非常に少ない。
ただ、そんな中でも例外はある。社交シーズンもちょうど中頃に入り、やや落ち着く頃に毎年開かれるこの夜会もそんな例外の1つだった。
とは言うものの、そもそもブランシェ家は王家に相当特別な扱いを受けてはいるものの基本的には男爵家。上位貴族のように派手で華やかな夜会を多くの招待客を招いて行う程の財力もなければ、そういったことを好みもしない。やや暑さが厳しくなるこの季節に行われる夜会も基本的には、定例の国史編集会議の後に行われるものであり、主な出席者はブランシェ家の親戚筋や知り合いといった面々が中心である。これに加えてブランシェ家が歴史の造詣が深い家であることから、学者の姿も多く見られるのは特徴と言えるだろう。
全体的に落ち着いた調度でありながら、所々に年季を感じさせる大広間を眺めつつ、ゴドウィンは手にしていたグラスに残っていたワインを飲み干し給仕に渡した。先程までは楽団が奏でる音楽に合わせて、ダンスに興じる人も多かったのだが、夜も更けてラストダンスも終わり、今は皆思い思いの場所でグラスを片手に談笑している。音楽も完全に雰囲気が変わり静かな曲がゆっくりと演奏されるのが耳に心地よい。
かくいうゴドウィンもついさっきまではハンナとラストダンスに興じていたわけである。普段は夜会に来るとあちこちを回ってはメモをとるのに忙しく、なかなかダンスの輪に入ってくれない彼女だが、今日は違ったらしい。たまには夜会を純粋に楽しもう、ということなのだろう、ブランシェ家主催の夜会については記録にしない、というのがこの家の昔からの伝統であり、ハンナも今日ばかりは筆をおき、普段はなかなか楽しめないダンスを目いっぱい楽しんだようだ。
「今日は何曲も連続して踊るな、って怒らないんだね、ハンナ」
「まぁ、いつもみたいに記録して回る必要もありませんし、社交も普段からよく会う方ばかりなので挨拶回りさえすればお役御免ですし、この機会を逃すとなかなかゆっくり楽しむことは出来ませんから。それにあなたが私に求婚して下さったことも、その後も一部始終も我が一族ではもはや誰もが知るところですから?何曲も連続して踊ったところで今更なのですわ」
そう言って笑うと、また楽しそうにステップを踏む。ちなみに言うと、ゴドウィンの求婚劇の顛末がブランシェ中に広まっているのは、なるべく早く外堀を埋めたかったゴドウィンの努力によるものでもあることは、ハンナも気付いているようなのだが、親戚中から質問攻めにあったり、ブランシェ家の特技を生かして調べまわられるよりはいくらかマシ、と思ったのか何も言われていなかった。
普段はメモを片手に忙しそうな彼女であるが、基本的に華やかな空間は好きな女性である。あまりあれこれと気にせず夜会を楽しめるこの時間を最大限に楽しもうとしているようだった。
ラストダンスは当然のようにハンナと踊ったその後、もう少しハンナと話してからブランシェ家を後にしようかと考えていたゴドウィン出会ったが、その前にハンナは、少し用があると言って、どこかへ言ってしまった。てっきり誰か別に話さなければならない人がいるのか、と思っていたゴドウィンであったが程なくして、こちらから誘わなくても自分の元へと戻ってきたハンナが手に持っていたものは意外なものだった。
「ハンナが持っているのは・・・・・・お酒のグラスかい?」
「はい、実はこの前の誕生日にお父様からお祝いだということでとても可愛い瓶に入ったワインを頂きまして、でもご存知の通り私は普段お酒を口にする機会がないでしょう?」
そう言ってハンナは一緒にいる侍女が持つ瓶を見た。ゴドウィンもその視線の先に目をやるとなるほど、小鳥と緑色の葉を付けた小枝を図案化したラベルが貼られた、ピンク色の可愛らしい小瓶がそこにある。瓶自体の意匠もなかなか複雑で明らかにプレゼント用のものだと分かった。
成人した子供に対するプレゼント、としてお酒は確かに一般的だがゴドウィンは一抹の不安を覚える。夜会を初め人が多く集まる機会では、記録を録ることに専念しなければならないブランシェ家の面々は、お酒を飲みながらでも仕事ができるぐらいお酒に強いか、もしくは最初からそういった場ではお酒を口にしないようにするかのどちらかであることが多い。ハンナは後者だ。
ゴドウィンとしては、お酒を飲んでいるところなど見たこともない彼女がお酒を口にして気分でも悪くなってしまったらどうしようか、と思い一瞬止めようかとも思ったのだが、目の前でそれはそれはニコニコと少なくとも久しぶりの体験に心を踊らせている無邪気な彼女を見て、それを止めることは出来なかった。
どうしようか?と思ったゴドウィンはふと周りを見回し、そこにハンナの父親を見つける。思わず目で合図をすると特に何を気にするでもなく会釈を返された。正直なところ苦手な部類に入る彼のその行動はやや不安を増幅させるのだが、少なくとも彼にハンナを止める気は無さそうだ、と感じたゴドウィンは、せっかくの楽しみを奪わずひたすらハンナを見守る方向にシフトする。
そんな彼の葛藤をよそに、ハンナは楽しそうに、壁際にいくつか置かれたテーブルセットの1つに腰を下ろした。周囲を見ると周りも既に歓談モードであり、皆思い思いの人と好きな飲み物を交わしつつ、談笑している。この状況であれば、仮にハンナが直ぐに酔ってしまって、退席したとしても、もう問題はない。ゴドウィンは一安心して、ハンナの動きを見た。
テーブルにつき侍女がこれまた細工の施された細いワイングラスを用意すると、薄い桃色がかったワインを注いでいく。一方、想像はしていたが、女性向けのワインなのだろう。ゴドウィンの前にもグラスがおかれ別の白ワインが注がれた。
ハンナは瞳をキラキラさせながらグラスに注がれるワインを見つめ、そして侍女が離れると私と乾杯する。そして香りを楽しんでから一口そのワインを口に含んだ。
「とっても甘くて美味しいですわ、ゴドウィン様。」
「それは良かった、ハンナ。でも飲みすぎたらダメだよ」
「もうっ、ゴドウィン様は私のこと何歳だと思っているんですか?」
そんな軽口を交わしながら1杯目のグラスを空けていく。ところがその一杯目を空けないうちから何だかハンナの様子がおかしくなってきた。
元々今日は、普段の物事を見通すような目ではなく、ニッコリとした笑顔でいることが多かったが、その目がさらにとろけるようなものに変わり出す。そしてその瞳は真っ直ぐにゴドウィンを写し、あろう事がしっかりと取られていた礼儀正しい距離を彼女の方から詰めて、ゴドウィンのすぐ側による。
「ハンナ?・・・・・・婚約者でもないのにあんまり距離を詰めるのは良くないんじゃなかったかい?」
「私に婚約しようって言ってくださったのはゴドウィン様の方じゃないですか?それとも私に近くに来られるのはいやになってしまいましたか?」
一瞬、ニコニコとしていた顔が憂いを帯び、下を向く。ゴドウィンは慌ててフォローをした。
「そんな訳はないじゃないか、それでなくても最近一緒にいる時間は増えても、話す時間は減る一方なんだ。君の方から近づいてくれるなんて、夢のようだよ」
その言葉に満足したらしいハンナは、顔を上げ、再び満面の笑みに戻る。
「でも、私は良くても、ハンナが後で困るんじゃないかい?ほら、親戚の皆さんもまだ大勢いらっしゃるし、後ではしたないって思われたら大変だよ?」
そんな困り顔のゴドウィンもハンナはどこ吹く風だ。
「大丈夫ですわ、親戚しかいないから多少の無礼は許して頂けます。ほら、周りを見てください、みんなあんなに仲良さそうにして、みんなだけずるいですわ」
そう言うと、さらにゴドウィンに近づくようにし、片手に片手にグラスを持ったままゴドウィンの方に体を任せてきた。
咄嗟にグラスを手から抜き取り、もう片方の手で、さっと彼女を支えるゴドウィンはさすがだが、そんな彼の内心は穏やかではない。
彼女にダンス以外の時間でこんなふうに触れるのって初めてな気がする。ダンスの時と違い完全に力を抜いて、体を預ける彼女の柔らかさを意識しないという訳にも行かない。一方で恐らくそんな一部始終をみているハンナの父親のことを考えると、何とか適切な距離感に戻すことを考えなければ行けなかった。
どうすれば良いのか?、と少し頭が冷静になった所で、ふ、と言葉が出た。
「もしかして・・・・・・ハンナ酔ってる?」
「まだグラス1杯も飲んでいませんわぁ、これくらいで酔う程弱くありませんわよ」
ニコリと笑った、ハンナがグラスを取り返そうとしつつ、答える。その様子が何よりの答えだった。ゴドウィンはもしかして?と思い没収したグラスに口を付けてみる。可愛らしい瓶のお酒はその見た目に反して結構強い場合がある。ハンナの父親がそんなものを与えるとも思えないが念の為だ、と口にしたのだが、
「甘い・・・・・・」
「えぇ、とぉっても甘くてスルスルと喉を通ってしまいますわ。お酒ってこんな感じなんですねぇ」
ゴドウィンは微妙な顔をした。甘い、むしろ酒か疑うレベルだ。いや、確かに酒ではあるのだが、明らかにお酒にそんなに強くない人向けに作られた甘いジュースのようなお酒で、酒精もほどんど感じなかった。
「ハンナってもしかしてお酒飲むの初めて?」
「そんな訳ありませんわぁ、デヴュタントの時にしっかり美味しいワインを頂きましたわ。その時以降は確かに口に付けるぐらいしかしてませんが、酔っ払ったことなんてありません!」
その答えを聞きゴドウィンは納得した。デヴュタントの時には必ず振る舞われるお酒があり、それで乾杯をするのがこの国の伝統でもあるのだが、デヴューしたての少年、少女がその後の大事な夜会に支障がないように特注されたワインはもはや酒ではない。一応酒精が入っている程度の言わば乾杯のための品だ。
つまりハンナは実際のところ、今日初めて本格的にお酒を飲んだのだろう。そして正直な所彼女はお世辞にもお酒に強い、とは言い難いということも現在進行形で理解している真っ最中だ。
「ゴドウィン様はいつも夜会ではお酒を口になさってますよねぇ、やっぱり男の人はお酒につよいんですね。そのお酒って美味しいんです?」
「あっ、これはダメだよ。ハンナはこっちを飲んでいなさい」
「もうっ、ゴドウィン様のケチ」
ゴドウィンが飲んでいるちゃんとしたお酒に興味を持ったらしい、ハンナの手から自分のグラスを遠ざけ、こっちの方がましだろう、とハンナが元々飲んでいたグラスを手渡したゴドウィンはそっと遠くをみやった。
とりあえずこの1杯を飲み切ったら、グラスを侍女に返して、果実水でも頂こう。
ケチと言いつつも素直に渡されたグラスを手にし、ゆっくりと飲んでいるハンナは可愛い。普段は気にしている幼さめな顔立ちが、トロンと蕩けていると、幼い見た目なのにどこか艶も感じる。そんな状態で無意識にピッタリとひっついてこられたらいい加減ゴドウィンもどうにかしてやろうか、という衝動に駆られてくるものである。最もそんなことをしたら周りで何気ない風を装いつつバッチリ監視している、ハンナの父上をはじめとした過保護な親戚一同の目がおそろしいし、何より正気に戻ったハンナになんて言われるか分からない。結局ゴドウィンは、ハンナを上手く支えつつ、その姿を瞳に焼き付けるしか出来なかったのだった。
「ほら、美味しかったね。じゃあ一旦このグラスは返そうか」
「えっ、もうですの?」
コテん、と首を傾げつつも言うことには素直に従うハンナはやっぱり可愛い。ただこれ以上飲ませるとハンナの体調も心配だし、何より自身の理性が警報を鳴らしているので、当初の決心に従いグラスを返す。侍女は優秀で既に小瓶は片付けられていたし、交換するように水のグラスが手渡された。
はい、という風に手渡すと、ハンナは水のグラスを手にし、口にする。
そう言えば普段はかなり控えめな服装をすることが多いハンナだが、今日は、光沢のあるグリーンのやや華やか目なドレスを来ていた。普段は礼儀を失わない程度までしっかりと詰められている胸元は彼女にしてはかなり大胆に開いているし、背中もレースで隠れてはいるものの、素肌を見せている部分も多い。それに彼女の侍女が渾身の技で結い上げたであろう髪型のおかげで項も見ることが出来、今更ながらゴドウィンはドギマギとしてきた。
「そう言えば、今日はドレスの趣向が違うんだね?」
そう言うと、ハンナはやっと言ってくれたというようにニッコリと笑い、ふと立ち上がったかと思うとその場でくるっと1回転する。
「あら、やっとその話をして下さったんですねぇ。装いは褒めてくれても、普段との違いには何一つ触れないから社交辞令でしかないのかと。恐れ多くもこの夜会の話をしたらソフィア様が見立ててくださったんですよ。だから今日はいらしてませんがソフィア様とおそろいなんです。」
今日のハンナが浮かれていたのは、普段とは少し違う装い、それもソフィアとおそろい、という部分も関係していたのだろう。よく考えると光の入ったような薄いグリーンはリアン殿下の瞳の色でソフィア様がよく着る色だ。この色を選んでくださるということはソフィア様は本当にハンナが大好きなんだな、と少し感慨深くなる。
しかし、それもつかの間、酔っ払いがくるっと回ったせいか、ハンナはやや足をもつれさせてようだ。コケたりしたら大変、と慌てて支え、咄嗟に自分の傍に座らせる。しかしもはやハンナは何も意識していないせいかさっきよりさらに密着して座ることになってしまった。
「あ、ありがとうございます、ゴドウィン様」
「う、うん。危ないから大人しくしているんだよハンナ」
「もうっ、また子供扱いして。でもゴドウィン様ってもしお兄さまがいたらこんな感じなのかなっとも思います。私、兄弟がいないからお兄さまって憧れるんですよね、もちろん親戚のお兄様方はよくしてくださいますけど。」
そんなふうに言いながら自分にもたれかかってくるソフィア。信頼しきったように自分に力を預けながらもお兄さんみたいと言ってくる無邪気なハンナに
「自分の気も知らずに」
と思ったゴドウィンがその旋毛に軽く口付けたのはもはや無意識だった。
「あっ」
「あらっ、どうかしましたの?何かついてますか」
ハンナはなにが起こったのか分かっていないらしい。一瞬疑問の顔をしたが、直ぐに上機嫌に戻り、また自分にまとわりついてくる。
一方、口付けてようやく我に帰ったゴドウィンは慌てて当たりを見回す。こちらの方をさりげなく見やっているであろうハンナの父上の方を見ると、特になんの合図も送られなかった。
とりあえずセーフだったようだ。そう安堵したゴドウィンはこれ以上のおいたをうっかりしてしまわない為にも完全に酔ってしまったハンナを侍女に預け、部屋に戻してもらい、自身はさも、何もありませんでした、という風を装って、自邸に帰ったのだった。
翌日、ブランシェ男爵から何故か大量に積まれた仕事と、それを見て不思議そうな顔をするリアン殿下を見て、ゴドウィンは自分の行動はセーフではなかったらしい、と気づいたのだった。
そもそもの始まりは、あまり回数は多くないブランシェ家の定例の夜会にゴドウィンも招待されたことから始まる。
ヴロシェーハイムで歴史の記録を任されているブランシェ家はその役割故に、社交シーズンは王都のあちこちで行われる夜会に出席しては、その様子を記録していくことに忙しく、ブランシェ家そのものが夜会を主催する、という機会は非常に少ない。
ただ、そんな中でも例外はある。社交シーズンもちょうど中頃に入り、やや落ち着く頃に毎年開かれるこの夜会もそんな例外の1つだった。
とは言うものの、そもそもブランシェ家は王家に相当特別な扱いを受けてはいるものの基本的には男爵家。上位貴族のように派手で華やかな夜会を多くの招待客を招いて行う程の財力もなければ、そういったことを好みもしない。やや暑さが厳しくなるこの季節に行われる夜会も基本的には、定例の国史編集会議の後に行われるものであり、主な出席者はブランシェ家の親戚筋や知り合いといった面々が中心である。これに加えてブランシェ家が歴史の造詣が深い家であることから、学者の姿も多く見られるのは特徴と言えるだろう。
全体的に落ち着いた調度でありながら、所々に年季を感じさせる大広間を眺めつつ、ゴドウィンは手にしていたグラスに残っていたワインを飲み干し給仕に渡した。先程までは楽団が奏でる音楽に合わせて、ダンスに興じる人も多かったのだが、夜も更けてラストダンスも終わり、今は皆思い思いの場所でグラスを片手に談笑している。音楽も完全に雰囲気が変わり静かな曲がゆっくりと演奏されるのが耳に心地よい。
かくいうゴドウィンもついさっきまではハンナとラストダンスに興じていたわけである。普段は夜会に来るとあちこちを回ってはメモをとるのに忙しく、なかなかダンスの輪に入ってくれない彼女だが、今日は違ったらしい。たまには夜会を純粋に楽しもう、ということなのだろう、ブランシェ家主催の夜会については記録にしない、というのがこの家の昔からの伝統であり、ハンナも今日ばかりは筆をおき、普段はなかなか楽しめないダンスを目いっぱい楽しんだようだ。
「今日は何曲も連続して踊るな、って怒らないんだね、ハンナ」
「まぁ、いつもみたいに記録して回る必要もありませんし、社交も普段からよく会う方ばかりなので挨拶回りさえすればお役御免ですし、この機会を逃すとなかなかゆっくり楽しむことは出来ませんから。それにあなたが私に求婚して下さったことも、その後も一部始終も我が一族ではもはや誰もが知るところですから?何曲も連続して踊ったところで今更なのですわ」
そう言って笑うと、また楽しそうにステップを踏む。ちなみに言うと、ゴドウィンの求婚劇の顛末がブランシェ中に広まっているのは、なるべく早く外堀を埋めたかったゴドウィンの努力によるものでもあることは、ハンナも気付いているようなのだが、親戚中から質問攻めにあったり、ブランシェ家の特技を生かして調べまわられるよりはいくらかマシ、と思ったのか何も言われていなかった。
普段はメモを片手に忙しそうな彼女であるが、基本的に華やかな空間は好きな女性である。あまりあれこれと気にせず夜会を楽しめるこの時間を最大限に楽しもうとしているようだった。
ラストダンスは当然のようにハンナと踊ったその後、もう少しハンナと話してからブランシェ家を後にしようかと考えていたゴドウィン出会ったが、その前にハンナは、少し用があると言って、どこかへ言ってしまった。てっきり誰か別に話さなければならない人がいるのか、と思っていたゴドウィンであったが程なくして、こちらから誘わなくても自分の元へと戻ってきたハンナが手に持っていたものは意外なものだった。
「ハンナが持っているのは・・・・・・お酒のグラスかい?」
「はい、実はこの前の誕生日にお父様からお祝いだということでとても可愛い瓶に入ったワインを頂きまして、でもご存知の通り私は普段お酒を口にする機会がないでしょう?」
そう言ってハンナは一緒にいる侍女が持つ瓶を見た。ゴドウィンもその視線の先に目をやるとなるほど、小鳥と緑色の葉を付けた小枝を図案化したラベルが貼られた、ピンク色の可愛らしい小瓶がそこにある。瓶自体の意匠もなかなか複雑で明らかにプレゼント用のものだと分かった。
成人した子供に対するプレゼント、としてお酒は確かに一般的だがゴドウィンは一抹の不安を覚える。夜会を初め人が多く集まる機会では、記録を録ることに専念しなければならないブランシェ家の面々は、お酒を飲みながらでも仕事ができるぐらいお酒に強いか、もしくは最初からそういった場ではお酒を口にしないようにするかのどちらかであることが多い。ハンナは後者だ。
ゴドウィンとしては、お酒を飲んでいるところなど見たこともない彼女がお酒を口にして気分でも悪くなってしまったらどうしようか、と思い一瞬止めようかとも思ったのだが、目の前でそれはそれはニコニコと少なくとも久しぶりの体験に心を踊らせている無邪気な彼女を見て、それを止めることは出来なかった。
どうしようか?と思ったゴドウィンはふと周りを見回し、そこにハンナの父親を見つける。思わず目で合図をすると特に何を気にするでもなく会釈を返された。正直なところ苦手な部類に入る彼のその行動はやや不安を増幅させるのだが、少なくとも彼にハンナを止める気は無さそうだ、と感じたゴドウィンは、せっかくの楽しみを奪わずひたすらハンナを見守る方向にシフトする。
そんな彼の葛藤をよそに、ハンナは楽しそうに、壁際にいくつか置かれたテーブルセットの1つに腰を下ろした。周囲を見ると周りも既に歓談モードであり、皆思い思いの人と好きな飲み物を交わしつつ、談笑している。この状況であれば、仮にハンナが直ぐに酔ってしまって、退席したとしても、もう問題はない。ゴドウィンは一安心して、ハンナの動きを見た。
テーブルにつき侍女がこれまた細工の施された細いワイングラスを用意すると、薄い桃色がかったワインを注いでいく。一方、想像はしていたが、女性向けのワインなのだろう。ゴドウィンの前にもグラスがおかれ別の白ワインが注がれた。
ハンナは瞳をキラキラさせながらグラスに注がれるワインを見つめ、そして侍女が離れると私と乾杯する。そして香りを楽しんでから一口そのワインを口に含んだ。
「とっても甘くて美味しいですわ、ゴドウィン様。」
「それは良かった、ハンナ。でも飲みすぎたらダメだよ」
「もうっ、ゴドウィン様は私のこと何歳だと思っているんですか?」
そんな軽口を交わしながら1杯目のグラスを空けていく。ところがその一杯目を空けないうちから何だかハンナの様子がおかしくなってきた。
元々今日は、普段の物事を見通すような目ではなく、ニッコリとした笑顔でいることが多かったが、その目がさらにとろけるようなものに変わり出す。そしてその瞳は真っ直ぐにゴドウィンを写し、あろう事がしっかりと取られていた礼儀正しい距離を彼女の方から詰めて、ゴドウィンのすぐ側による。
「ハンナ?・・・・・・婚約者でもないのにあんまり距離を詰めるのは良くないんじゃなかったかい?」
「私に婚約しようって言ってくださったのはゴドウィン様の方じゃないですか?それとも私に近くに来られるのはいやになってしまいましたか?」
一瞬、ニコニコとしていた顔が憂いを帯び、下を向く。ゴドウィンは慌ててフォローをした。
「そんな訳はないじゃないか、それでなくても最近一緒にいる時間は増えても、話す時間は減る一方なんだ。君の方から近づいてくれるなんて、夢のようだよ」
その言葉に満足したらしいハンナは、顔を上げ、再び満面の笑みに戻る。
「でも、私は良くても、ハンナが後で困るんじゃないかい?ほら、親戚の皆さんもまだ大勢いらっしゃるし、後ではしたないって思われたら大変だよ?」
そんな困り顔のゴドウィンもハンナはどこ吹く風だ。
「大丈夫ですわ、親戚しかいないから多少の無礼は許して頂けます。ほら、周りを見てください、みんなあんなに仲良さそうにして、みんなだけずるいですわ」
そう言うと、さらにゴドウィンに近づくようにし、片手に片手にグラスを持ったままゴドウィンの方に体を任せてきた。
咄嗟にグラスを手から抜き取り、もう片方の手で、さっと彼女を支えるゴドウィンはさすがだが、そんな彼の内心は穏やかではない。
彼女にダンス以外の時間でこんなふうに触れるのって初めてな気がする。ダンスの時と違い完全に力を抜いて、体を預ける彼女の柔らかさを意識しないという訳にも行かない。一方で恐らくそんな一部始終をみているハンナの父親のことを考えると、何とか適切な距離感に戻すことを考えなければ行けなかった。
どうすれば良いのか?、と少し頭が冷静になった所で、ふ、と言葉が出た。
「もしかして・・・・・・ハンナ酔ってる?」
「まだグラス1杯も飲んでいませんわぁ、これくらいで酔う程弱くありませんわよ」
ニコリと笑った、ハンナがグラスを取り返そうとしつつ、答える。その様子が何よりの答えだった。ゴドウィンはもしかして?と思い没収したグラスに口を付けてみる。可愛らしい瓶のお酒はその見た目に反して結構強い場合がある。ハンナの父親がそんなものを与えるとも思えないが念の為だ、と口にしたのだが、
「甘い・・・・・・」
「えぇ、とぉっても甘くてスルスルと喉を通ってしまいますわ。お酒ってこんな感じなんですねぇ」
ゴドウィンは微妙な顔をした。甘い、むしろ酒か疑うレベルだ。いや、確かに酒ではあるのだが、明らかにお酒にそんなに強くない人向けに作られた甘いジュースのようなお酒で、酒精もほどんど感じなかった。
「ハンナってもしかしてお酒飲むの初めて?」
「そんな訳ありませんわぁ、デヴュタントの時にしっかり美味しいワインを頂きましたわ。その時以降は確かに口に付けるぐらいしかしてませんが、酔っ払ったことなんてありません!」
その答えを聞きゴドウィンは納得した。デヴュタントの時には必ず振る舞われるお酒があり、それで乾杯をするのがこの国の伝統でもあるのだが、デヴューしたての少年、少女がその後の大事な夜会に支障がないように特注されたワインはもはや酒ではない。一応酒精が入っている程度の言わば乾杯のための品だ。
つまりハンナは実際のところ、今日初めて本格的にお酒を飲んだのだろう。そして正直な所彼女はお世辞にもお酒に強い、とは言い難いということも現在進行形で理解している真っ最中だ。
「ゴドウィン様はいつも夜会ではお酒を口になさってますよねぇ、やっぱり男の人はお酒につよいんですね。そのお酒って美味しいんです?」
「あっ、これはダメだよ。ハンナはこっちを飲んでいなさい」
「もうっ、ゴドウィン様のケチ」
ゴドウィンが飲んでいるちゃんとしたお酒に興味を持ったらしい、ハンナの手から自分のグラスを遠ざけ、こっちの方がましだろう、とハンナが元々飲んでいたグラスを手渡したゴドウィンはそっと遠くをみやった。
とりあえずこの1杯を飲み切ったら、グラスを侍女に返して、果実水でも頂こう。
ケチと言いつつも素直に渡されたグラスを手にし、ゆっくりと飲んでいるハンナは可愛い。普段は気にしている幼さめな顔立ちが、トロンと蕩けていると、幼い見た目なのにどこか艶も感じる。そんな状態で無意識にピッタリとひっついてこられたらいい加減ゴドウィンもどうにかしてやろうか、という衝動に駆られてくるものである。最もそんなことをしたら周りで何気ない風を装いつつバッチリ監視している、ハンナの父上をはじめとした過保護な親戚一同の目がおそろしいし、何より正気に戻ったハンナになんて言われるか分からない。結局ゴドウィンは、ハンナを上手く支えつつ、その姿を瞳に焼き付けるしか出来なかったのだった。
「ほら、美味しかったね。じゃあ一旦このグラスは返そうか」
「えっ、もうですの?」
コテん、と首を傾げつつも言うことには素直に従うハンナはやっぱり可愛い。ただこれ以上飲ませるとハンナの体調も心配だし、何より自身の理性が警報を鳴らしているので、当初の決心に従いグラスを返す。侍女は優秀で既に小瓶は片付けられていたし、交換するように水のグラスが手渡された。
はい、という風に手渡すと、ハンナは水のグラスを手にし、口にする。
そう言えば普段はかなり控えめな服装をすることが多いハンナだが、今日は、光沢のあるグリーンのやや華やか目なドレスを来ていた。普段は礼儀を失わない程度までしっかりと詰められている胸元は彼女にしてはかなり大胆に開いているし、背中もレースで隠れてはいるものの、素肌を見せている部分も多い。それに彼女の侍女が渾身の技で結い上げたであろう髪型のおかげで項も見ることが出来、今更ながらゴドウィンはドギマギとしてきた。
「そう言えば、今日はドレスの趣向が違うんだね?」
そう言うと、ハンナはやっと言ってくれたというようにニッコリと笑い、ふと立ち上がったかと思うとその場でくるっと1回転する。
「あら、やっとその話をして下さったんですねぇ。装いは褒めてくれても、普段との違いには何一つ触れないから社交辞令でしかないのかと。恐れ多くもこの夜会の話をしたらソフィア様が見立ててくださったんですよ。だから今日はいらしてませんがソフィア様とおそろいなんです。」
今日のハンナが浮かれていたのは、普段とは少し違う装い、それもソフィアとおそろい、という部分も関係していたのだろう。よく考えると光の入ったような薄いグリーンはリアン殿下の瞳の色でソフィア様がよく着る色だ。この色を選んでくださるということはソフィア様は本当にハンナが大好きなんだな、と少し感慨深くなる。
しかし、それもつかの間、酔っ払いがくるっと回ったせいか、ハンナはやや足をもつれさせてようだ。コケたりしたら大変、と慌てて支え、咄嗟に自分の傍に座らせる。しかしもはやハンナは何も意識していないせいかさっきよりさらに密着して座ることになってしまった。
「あ、ありがとうございます、ゴドウィン様」
「う、うん。危ないから大人しくしているんだよハンナ」
「もうっ、また子供扱いして。でもゴドウィン様ってもしお兄さまがいたらこんな感じなのかなっとも思います。私、兄弟がいないからお兄さまって憧れるんですよね、もちろん親戚のお兄様方はよくしてくださいますけど。」
そんなふうに言いながら自分にもたれかかってくるソフィア。信頼しきったように自分に力を預けながらもお兄さんみたいと言ってくる無邪気なハンナに
「自分の気も知らずに」
と思ったゴドウィンがその旋毛に軽く口付けたのはもはや無意識だった。
「あっ」
「あらっ、どうかしましたの?何かついてますか」
ハンナはなにが起こったのか分かっていないらしい。一瞬疑問の顔をしたが、直ぐに上機嫌に戻り、また自分にまとわりついてくる。
一方、口付けてようやく我に帰ったゴドウィンは慌てて当たりを見回す。こちらの方をさりげなく見やっているであろうハンナの父上の方を見ると、特になんの合図も送られなかった。
とりあえずセーフだったようだ。そう安堵したゴドウィンはこれ以上のおいたをうっかりしてしまわない為にも完全に酔ってしまったハンナを侍女に預け、部屋に戻してもらい、自身はさも、何もありませんでした、という風を装って、自邸に帰ったのだった。
翌日、ブランシェ男爵から何故か大量に積まれた仕事と、それを見て不思議そうな顔をするリアン殿下を見て、ゴドウィンは自分の行動はセーフではなかったらしい、と気づいたのだった。
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彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
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*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
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