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第6話 神様……仲直り?

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『これが、真相だよ』
『ボクたちは……人間が好き……』

ソル様と、レヴォネ様が語った昔話に私は驚きが隠せませんでした。
御二方が獣神だと言うことも、目の前にいる小さな銀色の龍が真龍神様だということも……私はまだ飲み込めずにいました。

『人間と仲良うするなど、妾が……っ!!』

真龍神様が物凄い形相で、私に突進して来ました!突然の事で私はどうすることも出来ずに、ただただ真龍神様を受け止めようと手を伸ばすと…

『妾の愛し子に何をするのじゃっ!』

後ろから物凄い勢いで飛んで来た何かが、真龍神様にぶつかりました。

『な、なんじゃ?!』

真龍神様にぶつかった何かは、炎の鳥でした。
処刑場から助け出して下さった、炎の聖獣様です。

『なんじゃ?!では無いわ!其方!妾の愛し子に攻撃しよったな?!』
『お主には関係ないわっ!邪魔するでない!』
『なんじゃと?!』

炎の鳥と銀の龍が、絡み合って喧嘩を始めてしまいました?!

「ど、とうしましょう?」
「放っておけ」

竜王陛下であるラファール様が「気にするな」と仰いますが、罵りあいの喧嘩は取っ組み合いの喧嘩に発展していました。

(本当に放置して良いのでしょうか?!)

『全く、騒々しいぞ』
『まぁ、そう言うなって』
『……』

そこに更に、声がかかりました。
後ろを振り返ると、頭に角を生やした青髪で長身の青年男性と、頭に耳を生やした黒と白の髪をした青年男性、長い黒い髪をした長身の中年男性が居ました。……中年は言い過ぎでしょうか?ですが、他の男性よりも歳がいってると思うのです。

この方々は……


『小娘が!妾に意見するでない!』
『小娘じゃと?!年増が偉そうにっ!』
『なっ?!妾を年増じゃと?!』

喧嘩の論点が、先程からズレていますが……喧嘩は更に熱を帯び、遂に周りに影響が出始めました。2人の喧嘩で、ガシャンと何かが砕けて割れる音が響いたんです。

喧嘩する2人に視線を戻すと、龍神様の尻尾や聖獣様の羽や足が、棚や机に当たって物を落としたり書類を破いたり……被害が拡大していました。

ナファール様が頭を抱えていますが、諦めたような視線を2人に向け私と目が合うと首を振り「仕方ありません」と口だけ動かしました。

「それで、お前はこれからどうするつもりだ?」

陛下も特段気にした様子はなく話を続けます。
私は……2人の喧嘩も、その前に現れた男性達のことも気になるんですけれど……

「……仕事を、探します」

この国の獣人達は人間を嫌っています。だから、先ずはこの国を出て仕事を探すしかありません。

「この国から出て行くのか?」
「私が居たら、真龍神様もこの国の民も嫌がりますでしょう?」
「……」

『…………』
『隙あり!じゃっ』
『何をするんじゃ!小娘!』

真龍神様がよそ見した隙に炎の聖獣様が、嘴で真龍神様の尻尾に噛み付きました

『よそ見をするからじゃ!』

炎の聖獣様は翼を広げ、得意げに大笑いしました。

『……』
「だから、早々に離れようと思いまして……」
『リアがそう決めたなら、僕も付いていくよ!』
『ボクも……』
『妾もじゃっ!!』

3人の男性も頷きました。

『紹介が遅れたな、俺はヴァン。風と西を司る聖獣だ』
『我はクヴェレ。水と東を司る聖獣』
『私は、ローシュと申します。土と北を司っております』
『妾は、ラヴァじゃ。炎と南を司っておる』

黒と白の髪をした男性がヴァン様
頭に角があって青髪の男性がクヴェレ様
長身黒髪の中年男性がローシュ様

炎の鳥が人型を取ると、褐色の肌をした赤い髪の妖艶な美女の姿を取りました。

この御方は……

思い出すのは、処刑場……手に打ち付けられた杭を溶かしたあの場面でした。
辛く悲しいあの出来事は、私の心に深い傷を残しました。やってもいない罪を捏造され、糾弾されたあの日……

「っ……」
『……ええぃ!その様に重苦しい空気をかもし出すでない!』

急に声を荒らげたのは、ラヴァ様と喧嘩していた真龍神様でした。

「え?」
『妾は人間が嫌いじゃ!獣神も嫌いじゃ!じゃが、別に其方が嫌いな訳じゃない!』
『えー、僕達はファサリスの事、嫌いじゃないよ?』
『妾は、あの日の事を許してはおらぬ!』
『……ちぇ』
『グラムノートも裏切りおってっ!』

グラムノート様?

私が首を傾げていると、レヴォネ様が教えて下さいました。何でも、ソルレヴォネ様が人間についてから数年後に人間と恋に落ち結婚したそうです。
魔神グラムノート様と生きるため、奥様は半神半人になったそうです。

それよりも気になる言葉が、真龍神様より発せられた気がします。

「真龍神様?」
『お主の事は、嫌いでは無いのじゃ。……本当は分かっておるのじゃ……これでも妾は、竜王の傍で其方そなたを見てきた。嘘は言わぬ、嫌な事も嫌な顔をせず引き受ける。自身を嫌ってる獣人にも優しくする。妾は、そんなお主をずっと見て来たのじゃ……嫌いに、なれるはずないのじゃ…』
「真龍神様……」
『妾の事は、ファサリスと呼ぶが良い。其方なら許そう。……じゃが、ソルレヴォネはダメじゃ』

まだ許してはやらぬと真龍神様、いえファサリス様が言いました。

『えー!?』
『なんで、ボクらだけ……』
「そういう事だ、ラフィーリア殿。お前の存在は俺の国では認められている。だからこそ、国の民とてお前に嫌悪を抱いてる者はいない」

ソル様レヴォネ様が文句を言う中、竜王陛下がこともなげに言ってのけました。

そして、更に驚くことを言ったのです。


_____

タイトルを改名予定です。
聖女の存在が、ほぼ一瞬でしたので……
聖女の名の必要性に疑惑が出ると思いましたので(*ᴗˬᴗ)⁾
ご了承ください。
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