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2話
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そこに……
「きゃあぁ!ヴェル様ではありませんか!?お茶してますの?私もお邪魔してもよろしいですよね?」
いや、
良くないだろう……
普通、婚約者同士のお茶会に妹とはいえ、部外者が参加するものじゃない。
それに、俺の名を勝手に呼ぶな。許可してないだろう。
チラッと護衛の騎士に目配せすれば、意図を理解したシルヴァンとフェリクがメディアーナを止めに入る。
「何ですの?貴方たち。私がランドルーガ公爵令嬢と知っての事ですか?」
「知っていますよ。ですが、俺たちに命令したのは王太子殿下です。この意味が分かりますね?」
「命令って……ヴェル様は何も発してないでは無いですか!邪魔しないで頂けます?」
「悪いが、それはできかねる」
「いい加減になさい、メディ。貴方、ヴェルグ様に許可を頂いていないのに、愛称で呼びましたね?不敬罪と問われても文句は言えなくてよ?」
「何よ!悪役令嬢は黙っててよね!私はヴェル様に用があるんだから」
「!!」
(悪役令嬢?ってなんだ?)
よく分からないが、相変わらず図々しい女だ。再びリディアーナを盗み見ると……じっとメディアーナを見ていた。
彼女の心の声は……
《なぜ殿下はメディを許してるのでしょうか?愛称呼びも拒んでませんでしたし。まさか!?殿下は妹が好きなのかしら…?私とは、もうダメなのかしら……?こんなにも愛してますのに…》
「え」
《ヴェルグ様、お慕いしておりますから…傍にいて、離れていかないで……お願いですわ》
俺は、別に許可なんてしてないが、注意をしなかったから、彼女は誤解をしてしまったようだ。
悲しげな声で訴える声に顔を上げるが、彼女の顔は変わっておらず相変わらずの無表情。
だが、彼女の心が発する声は、とても悲しげだった。
「リディ……」
「ヴェル様ぁ」
「っ!シルヴァン!フェリク!早く連れて行け」
隙あらば俺に抱きついてこようとする女の手を避け騎士を呼ぶ。
シルヴァンとフェリクはメディアーナの腕を手に取り下がらせて行く。
「ちょっ、離しなさいよ!ばか!私はヒロインなのよ!ヴェル様も私の虜になるんだから!」
(なるか!)
連れ出されてもなお、叫ぶ女の声に思わず突っ込んでしまった。
リディはというと、固まっていた。
「リディ」
俺はもう一度、婚約者の名を呼ぶ。メディアーナのあの言葉を間に受けてしまったのだろうか?
彼女の心の声は、なんと言っている?
俺の心が不安に揺れる。
彼女はハッとして顔を上げた。
《ヴェルグ様が、私の愛称を?!なんて素敵な日なの!今日この日は私の大切な思い出ですわ。忘れないように日記に認めましょう》
表情は分からなくても、彼女から聞こえてくる声は嬉しそうで、俺も嬉しくなる。
良かった、先程のメディアーナの言葉にショックを受けてるわけじゃなさそうだ。
神の悪戯か、理由は分からないが……これは僥倖だ。
卑怯かもしれないが、彼女の心の声を頼りに、俺達の関係の改善に努めよう。
来週から学園も始まる。
メディアーナも、拒んだ所で来るだろう。
リディの表情が無くなったのは?
メディアーナが急に付きまとうようになったのは?
リディの心の声が聞こえるようになったのは?
分からないことだらけだが、これから先の未来が少し待ち遠しく感じた。
彼女と再び笑い合える毎日が送れると思うと、嬉しく思う。
公爵家に来るまでは、彼女を苦手に感じていたのに今は……ふっ、我ながら単純な男だな。
「きゃあぁ!ヴェル様ではありませんか!?お茶してますの?私もお邪魔してもよろしいですよね?」
いや、
良くないだろう……
普通、婚約者同士のお茶会に妹とはいえ、部外者が参加するものじゃない。
それに、俺の名を勝手に呼ぶな。許可してないだろう。
チラッと護衛の騎士に目配せすれば、意図を理解したシルヴァンとフェリクがメディアーナを止めに入る。
「何ですの?貴方たち。私がランドルーガ公爵令嬢と知っての事ですか?」
「知っていますよ。ですが、俺たちに命令したのは王太子殿下です。この意味が分かりますね?」
「命令って……ヴェル様は何も発してないでは無いですか!邪魔しないで頂けます?」
「悪いが、それはできかねる」
「いい加減になさい、メディ。貴方、ヴェルグ様に許可を頂いていないのに、愛称で呼びましたね?不敬罪と問われても文句は言えなくてよ?」
「何よ!悪役令嬢は黙っててよね!私はヴェル様に用があるんだから」
「!!」
(悪役令嬢?ってなんだ?)
よく分からないが、相変わらず図々しい女だ。再びリディアーナを盗み見ると……じっとメディアーナを見ていた。
彼女の心の声は……
《なぜ殿下はメディを許してるのでしょうか?愛称呼びも拒んでませんでしたし。まさか!?殿下は妹が好きなのかしら…?私とは、もうダメなのかしら……?こんなにも愛してますのに…》
「え」
《ヴェルグ様、お慕いしておりますから…傍にいて、離れていかないで……お願いですわ》
俺は、別に許可なんてしてないが、注意をしなかったから、彼女は誤解をしてしまったようだ。
悲しげな声で訴える声に顔を上げるが、彼女の顔は変わっておらず相変わらずの無表情。
だが、彼女の心が発する声は、とても悲しげだった。
「リディ……」
「ヴェル様ぁ」
「っ!シルヴァン!フェリク!早く連れて行け」
隙あらば俺に抱きついてこようとする女の手を避け騎士を呼ぶ。
シルヴァンとフェリクはメディアーナの腕を手に取り下がらせて行く。
「ちょっ、離しなさいよ!ばか!私はヒロインなのよ!ヴェル様も私の虜になるんだから!」
(なるか!)
連れ出されてもなお、叫ぶ女の声に思わず突っ込んでしまった。
リディはというと、固まっていた。
「リディ」
俺はもう一度、婚約者の名を呼ぶ。メディアーナのあの言葉を間に受けてしまったのだろうか?
彼女の心の声は、なんと言っている?
俺の心が不安に揺れる。
彼女はハッとして顔を上げた。
《ヴェルグ様が、私の愛称を?!なんて素敵な日なの!今日この日は私の大切な思い出ですわ。忘れないように日記に認めましょう》
表情は分からなくても、彼女から聞こえてくる声は嬉しそうで、俺も嬉しくなる。
良かった、先程のメディアーナの言葉にショックを受けてるわけじゃなさそうだ。
神の悪戯か、理由は分からないが……これは僥倖だ。
卑怯かもしれないが、彼女の心の声を頼りに、俺達の関係の改善に努めよう。
来週から学園も始まる。
メディアーナも、拒んだ所で来るだろう。
リディの表情が無くなったのは?
メディアーナが急に付きまとうようになったのは?
リディの心の声が聞こえるようになったのは?
分からないことだらけだが、これから先の未来が少し待ち遠しく感じた。
彼女と再び笑い合える毎日が送れると思うと、嬉しく思う。
公爵家に来るまでは、彼女を苦手に感じていたのに今は……ふっ、我ながら単純な男だな。
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