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婚約破棄(シエル)
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ルーナお義姉様に会いに、父様達を置いて一足先に会場に来てみれば、何やら騒がしいですわ。
何かあったのかしら?
う~ん、まぁ今は良いですわ。
それより、お義姉様です!何処にいるのかしら?
「ねぇ、貴方」
「シエル王女殿下!なんでしょうか?」
近くにいた令嬢に声を掛ければ、綺麗なカーテシーで挨拶をされたので私も返しました。
「ルーナお義姉様を見かけませんでしたか?」
すると、青白い顔をしながらも、その方は教えて下さいました。
彼女が指し示した場所は…先程から騒ぎになっていたあの場所で……
まぁ、何かしら?本当に……
集まっていた人々をかき分け、騒ぎの元に近付けば…中央に1人の令嬢とルーナお義姉様が立っていた。
あの令嬢……見た事がありますわ。
確か……アイナ・トラント伯爵令嬢でしたわね。呼んでも無いのに王城に来て、変なことを言っては、お兄様に付き纏って近衛兵に摘み出されてましたわね。
そもそも、なんで王城に入れたのよ…
一介の令嬢が……警備が甘いんじゃないのかしら?
「何を騒いでるのかしら?」
人の影から声を掛ければ、私の存在に気が付いた人々がサッと左右に避けた。
目の前の騒ぎに集中していて、私の存在に気付かなかったみたいね。
優雅に微笑み、お義姉様の側まで歩いて行った。お義姉様は、切なそうに微笑んで私を見てきました。
どうしましたの?お義姉様……この女に何言われたんですの?お義姉様を傷付けるなら、私が懲らしめて差し上げますわ!
「まぁ、ルーナお義姉様!どうしたんですの?!」
私が問いかければ、お義姉様は答えてくれましたが…その言葉に、淑女に有るまじき声が漏れましたわ。
だって……
『ソレイユ様が、私との婚約を破棄したいのだと、アイナ様が仰いまして…』
ですわよ?!!
有り得ませんわ!!
お兄様に限ってっ!!
だってお兄様は、ルーナお義姉様にゾッコンですのに!!
毎日毎日、私や父様達に惚気を吐きやがりますのに!!
なのに、絶対有り得ませんのに…!
ルーナお義姉様は、何故だか納得してますのよ?!何故ですの?!お義姉様を前にすると、デレデレして締りのない顔をしておりますのにっ!
「何を馬鹿なことを、嘘をつくのなら、もっとマシな嘘をつきなさいよ」
私はお義姉様の前に立ち腰に手を添えて、アイナを見据えた。
言葉が少し、令嬢らしからぬかも知れませんが気にしないわ。お義姉様が一番大事!
すると、この女が!
またおかしな事を言い出しましたわ。
「嘘じゃないわ!昨日も会って、お話しましたもの!」
確かに来ましたわね。
でも、お話って……一言交わした…いえ、『お前と話すことは何も無い、帰れ』と突き放し、近衛を呼んで摘み出された。が正解ですわね。
「昨日は、お姉様とお兄様と3人でお茶してました」
でも、それを話す必要性はありませんわね。
ほんの数秒の出来事ですもの。
「全く、出鱈目もいい加減になさいませ。貴方の頭は飾りですの?耳はちゃんと付いてます?耳もお飾りなのかしら?」
目も飾りかも知れませんわね!自分に都合の良い物しか映さないのならっ!
口も、嘘しか吐けないのなら、ただの飾りですわ!
「何を騒いでいる?」
アイナが何かを言おうとした時、お兄様の声が響いた。
「ソレイユ様……」
「ソレイユ様ぁ!」
「遅いですわよ?お兄様」
全く、遅いですわよ!お兄様!
お義姉様が大変な時なんですから、さっさと来て下さいまし!
お義姉様は、悲しそうな顔をしてますし……
まさか…!
アイナの言うことを信じてますの?!
冗談じゃありませんわ!お義姉様が、お義姉様じゃなくなるなんて、私が認めませんからね!
「シエル…」
なんですの?お兄様……
振り返るとお兄様の目が、またお前か…と、問題を起こした残念な妹を見る目になってますわ!
ちょっと!違いますわよ?!
今回はどちらかと言えば、お兄様の問題ですわ!
「今回は、お兄様がやらかしたんですのよ?私ではありませんわ」
「なに?」
ルーナお義姉様が事情を説明したら、お兄様の顔が物凄く怖いものになりましたわ。
ルーナお義姉様との婚約に固執しているのはお兄様ですもの。例えお義姉様が、婚約破棄したいと申し出ても、お兄様がどんな手を使っても却下する程にですわ。
「……ルーナと婚約破棄する気は無い。俺はルーナを愛しているのでな」
お兄様のお義姉様への溺愛を思い出していたら、いつの間にかお兄様が惚気けてましたわ。いつもの事だと気にしてませんでしたけど、ルーナお義姉様が驚いてお兄様の顔を見つめました。
「え?」
え?
なぜ、お義姉様が驚いているんですの?
「初めて聞きました」
初めてぇ~~~?!
ちょっと!どういう事ですの?!
お兄様を睨み付ければ、バツが悪そうに顔を逸らしお義姉様に愛を囁きましたわ。
お互いの気持ちを確かめ合って、2人は強い絆で結ばれましたけど……1歩間違えば、大変な事になってましたわ。
お兄様には、後でキツく言っておかなければ。
その後どうなったかと言えば、アイナとか言うふざけた女は、会場を追い出される直前まで変な事を喋り続け、一旦貴族牢にに入れられましたわ。その後、ご実家より勘当、修道院に送られたそうですわ。
そして1年後、お兄様とお義姉様はご結婚し、毎日幸せそうですわ。
そして今日、嬉しいお知らせを聞きましたの!お義姉様のお腹にお子が出来ましたのよ!!
嬉しいですわ!!
……私は、色々と事情があって結婚出来ませんし…子も出来ぬ体ですから、仕方ありませんわね。
だって私……王女ではありませんもの!
だって俺は……本当は、男だからね!!
第2王子として生を受けたけれど、事情があってさ…まぁ、一部の信頼出来る人間は知ってるけどね。
もちろん私の事は、お義姉様も知ってますわよ?
私の事情は公表出来ませんからね、死ぬまで女として生きて行きますの。
お兄様とお義姉様、そして2人の子どもを愛でながら。
~完~
何かあったのかしら?
う~ん、まぁ今は良いですわ。
それより、お義姉様です!何処にいるのかしら?
「ねぇ、貴方」
「シエル王女殿下!なんでしょうか?」
近くにいた令嬢に声を掛ければ、綺麗なカーテシーで挨拶をされたので私も返しました。
「ルーナお義姉様を見かけませんでしたか?」
すると、青白い顔をしながらも、その方は教えて下さいました。
彼女が指し示した場所は…先程から騒ぎになっていたあの場所で……
まぁ、何かしら?本当に……
集まっていた人々をかき分け、騒ぎの元に近付けば…中央に1人の令嬢とルーナお義姉様が立っていた。
あの令嬢……見た事がありますわ。
確か……アイナ・トラント伯爵令嬢でしたわね。呼んでも無いのに王城に来て、変なことを言っては、お兄様に付き纏って近衛兵に摘み出されてましたわね。
そもそも、なんで王城に入れたのよ…
一介の令嬢が……警備が甘いんじゃないのかしら?
「何を騒いでるのかしら?」
人の影から声を掛ければ、私の存在に気が付いた人々がサッと左右に避けた。
目の前の騒ぎに集中していて、私の存在に気付かなかったみたいね。
優雅に微笑み、お義姉様の側まで歩いて行った。お義姉様は、切なそうに微笑んで私を見てきました。
どうしましたの?お義姉様……この女に何言われたんですの?お義姉様を傷付けるなら、私が懲らしめて差し上げますわ!
「まぁ、ルーナお義姉様!どうしたんですの?!」
私が問いかければ、お義姉様は答えてくれましたが…その言葉に、淑女に有るまじき声が漏れましたわ。
だって……
『ソレイユ様が、私との婚約を破棄したいのだと、アイナ様が仰いまして…』
ですわよ?!!
有り得ませんわ!!
お兄様に限ってっ!!
だってお兄様は、ルーナお義姉様にゾッコンですのに!!
毎日毎日、私や父様達に惚気を吐きやがりますのに!!
なのに、絶対有り得ませんのに…!
ルーナお義姉様は、何故だか納得してますのよ?!何故ですの?!お義姉様を前にすると、デレデレして締りのない顔をしておりますのにっ!
「何を馬鹿なことを、嘘をつくのなら、もっとマシな嘘をつきなさいよ」
私はお義姉様の前に立ち腰に手を添えて、アイナを見据えた。
言葉が少し、令嬢らしからぬかも知れませんが気にしないわ。お義姉様が一番大事!
すると、この女が!
またおかしな事を言い出しましたわ。
「嘘じゃないわ!昨日も会って、お話しましたもの!」
確かに来ましたわね。
でも、お話って……一言交わした…いえ、『お前と話すことは何も無い、帰れ』と突き放し、近衛を呼んで摘み出された。が正解ですわね。
「昨日は、お姉様とお兄様と3人でお茶してました」
でも、それを話す必要性はありませんわね。
ほんの数秒の出来事ですもの。
「全く、出鱈目もいい加減になさいませ。貴方の頭は飾りですの?耳はちゃんと付いてます?耳もお飾りなのかしら?」
目も飾りかも知れませんわね!自分に都合の良い物しか映さないのならっ!
口も、嘘しか吐けないのなら、ただの飾りですわ!
「何を騒いでいる?」
アイナが何かを言おうとした時、お兄様の声が響いた。
「ソレイユ様……」
「ソレイユ様ぁ!」
「遅いですわよ?お兄様」
全く、遅いですわよ!お兄様!
お義姉様が大変な時なんですから、さっさと来て下さいまし!
お義姉様は、悲しそうな顔をしてますし……
まさか…!
アイナの言うことを信じてますの?!
冗談じゃありませんわ!お義姉様が、お義姉様じゃなくなるなんて、私が認めませんからね!
「シエル…」
なんですの?お兄様……
振り返るとお兄様の目が、またお前か…と、問題を起こした残念な妹を見る目になってますわ!
ちょっと!違いますわよ?!
今回はどちらかと言えば、お兄様の問題ですわ!
「今回は、お兄様がやらかしたんですのよ?私ではありませんわ」
「なに?」
ルーナお義姉様が事情を説明したら、お兄様の顔が物凄く怖いものになりましたわ。
ルーナお義姉様との婚約に固執しているのはお兄様ですもの。例えお義姉様が、婚約破棄したいと申し出ても、お兄様がどんな手を使っても却下する程にですわ。
「……ルーナと婚約破棄する気は無い。俺はルーナを愛しているのでな」
お兄様のお義姉様への溺愛を思い出していたら、いつの間にかお兄様が惚気けてましたわ。いつもの事だと気にしてませんでしたけど、ルーナお義姉様が驚いてお兄様の顔を見つめました。
「え?」
え?
なぜ、お義姉様が驚いているんですの?
「初めて聞きました」
初めてぇ~~~?!
ちょっと!どういう事ですの?!
お兄様を睨み付ければ、バツが悪そうに顔を逸らしお義姉様に愛を囁きましたわ。
お互いの気持ちを確かめ合って、2人は強い絆で結ばれましたけど……1歩間違えば、大変な事になってましたわ。
お兄様には、後でキツく言っておかなければ。
その後どうなったかと言えば、アイナとか言うふざけた女は、会場を追い出される直前まで変な事を喋り続け、一旦貴族牢にに入れられましたわ。その後、ご実家より勘当、修道院に送られたそうですわ。
そして1年後、お兄様とお義姉様はご結婚し、毎日幸せそうですわ。
そして今日、嬉しいお知らせを聞きましたの!お義姉様のお腹にお子が出来ましたのよ!!
嬉しいですわ!!
……私は、色々と事情があって結婚出来ませんし…子も出来ぬ体ですから、仕方ありませんわね。
だって私……王女ではありませんもの!
だって俺は……本当は、男だからね!!
第2王子として生を受けたけれど、事情があってさ…まぁ、一部の信頼出来る人間は知ってるけどね。
もちろん私の事は、お義姉様も知ってますわよ?
私の事情は公表出来ませんからね、死ぬまで女として生きて行きますの。
お兄様とお義姉様、そして2人の子どもを愛でながら。
~完~
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