【完結】婚約破棄?

紫宛

文字の大きさ
上 下
2 / 7

婚約破棄(シエル)

しおりを挟む
ルーナお義姉様に会いに、父様達を置いて一足先に会場に来てみれば、何やら騒がしいですわ。

何かあったのかしら?
う~ん、まぁ今は良いですわ。
それより、お義姉様です!何処にいるのかしら?

「ねぇ、貴方」
「シエル王女殿下!なんでしょうか?」

近くにいた令嬢に声を掛ければ、綺麗なカーテシーで挨拶をされたので私も返しました。

「ルーナお義姉様を見かけませんでしたか?」

すると、青白い顔をしながらも、その方は教えて下さいました。
彼女が指し示した場所は…先程から騒ぎになっていたあの場所で……

まぁ、何かしら?本当に……
集まっていた人々をかき分け、騒ぎの元に近付けば…中央に1人の令嬢とルーナお義姉様が立っていた。

あの令嬢……見た事がありますわ。
確か……アイナ・トラント伯爵令嬢でしたわね。呼んでも無いのに王城に来て、変なことを言っては、お兄様に付き纏って近衛兵に摘み出されてましたわね。

そもそも、なんで王城に入れたのよ…
一介の令嬢が……警備が甘いんじゃないのかしら?

「何を騒いでるのかしら?」

人の影から声を掛ければ、私の存在に気が付いた人々がサッと左右に避けた。
目の前の騒ぎに集中していて、私の存在に気付かなかったみたいね。

優雅に微笑み、お義姉様の側まで歩いて行った。お義姉様は、切なそうに微笑んで私を見てきました。

どうしましたの?お義姉様……この女に何言われたんですの?お義姉様を傷付けるなら、私が懲らしめて差し上げますわ!

「まぁ、ルーナお義姉様!どうしたんですの?!」

私が問いかければ、お義姉様は答えてくれましたが…その言葉に、淑女に有るまじき声が漏れましたわ。

だって……
 
『ソレイユ様が、私との婚約を破棄したいのだと、アイナ様が仰いまして…』

ですわよ?!!

有り得ませんわ!!
お兄様に限ってっ!!

だってお兄様は、ルーナお義姉様にゾッコンですのに!!

毎日毎日、私や父様達に惚気を吐きやがりますのに!!


なのに、絶対有り得ませんのに…!
ルーナお義姉様は、何故だか納得してますのよ?!何故ですの?!お義姉様を前にすると、デレデレして締りのない顔をしておりますのにっ!

「何を馬鹿なことを、嘘をつくのなら、もっとマシな嘘をつきなさいよ」

私はお義姉様の前に立ち腰に手を添えて、アイナを見据えた。
言葉が少し、令嬢らしからぬかも知れませんが気にしないわ。お義姉様が一番大事!

すると、この女が!
またおかしな事を言い出しましたわ。

「嘘じゃないわ!昨日も会って、お話しましたもの!」

確かに来ましたわね。
でも、お話って……一言交わした…いえ、『お前と話すことは何も無い、帰れ』と突き放し、近衛を呼んで摘み出された。が正解ですわね。

「昨日は、お姉様とお兄様と3人でお茶してました」

でも、それを話す必要性はありませんわね。
ほんの数秒の出来事ですもの。

「全く、出鱈目もいい加減になさいませ。貴方の頭は飾りですの?耳はちゃんと付いてます?耳もお飾りなのかしら?」

目も飾りかも知れませんわね!自分に都合の良い物しか映さないのならっ!
口も、嘘しか吐けないのなら、ただの飾りですわ!

「何を騒いでいる?」

アイナが何かを言おうとした時、お兄様の声が響いた。

「ソレイユ様……」
「ソレイユ様ぁ!」
「遅いですわよ?お兄様」

全く、遅いですわよ!お兄様!
お義姉様が大変な時なんですから、さっさと来て下さいまし!
お義姉様は、悲しそうな顔をしてますし……

まさか…!

アイナの言うことを信じてますの?!
冗談じゃありませんわ!お義姉様が、お義姉様じゃなくなるなんて、私が認めませんからね!

「シエル…」

なんですの?お兄様……
振り返るとお兄様の目が、またお前か…と、問題を起こした残念なを見る目になってますわ!

ちょっと!違いますわよ?!
今回はどちらかと言えば、お兄様の問題ですわ!

「今回は、お兄様がやらかしたんですのよ?私ではありませんわ」
「なに?」

ルーナお義姉様が事情を説明したら、お兄様の顔が物凄く怖いものになりましたわ。

ルーナお義姉様との婚約に固執しているのはお兄様ですもの。例えお義姉様が、婚約破棄したいと申し出ても、お兄様がどんな手を使っても却下する程にですわ。

「……ルーナと婚約破棄する気は無い。俺はルーナを愛しているのでな」

お兄様のお義姉様への溺愛を思い出していたら、いつの間にかお兄様が惚気けてましたわ。いつもの事だと気にしてませんでしたけど、ルーナお義姉様が驚いてお兄様の顔を見つめました。

「え?」

え?
なぜ、お義姉様が驚いているんですの?

「初めて聞きました」

初めてぇ~~~?!
ちょっと!どういう事ですの?!

お兄様を睨み付ければ、バツが悪そうに顔を逸らしお義姉様に愛を囁きましたわ。

お互いの気持ちを確かめ合って、2人は強い絆で結ばれましたけど……1歩間違えば、大変な事になってましたわ。

お兄様には、後でキツく言っておかなければ。


その後どうなったかと言えば、アイナとか言うふざけた女は、会場を追い出される直前まで変な事を喋り続け、一旦貴族牢にに入れられましたわ。その後、ご実家より勘当、修道院に送られたそうですわ。

そして1年後、お兄様とお義姉様はご結婚し、毎日幸せそうですわ。
そして今日、嬉しいお知らせを聞きましたの!お義姉様のお腹にお子が出来ましたのよ!!

嬉しいですわ!!



……私は、色々と事情があって結婚出来ませんし…子も出来ぬ体ですから、仕方ありませんわね。



だって私……ではありませんもの!



だっては……本当は、男だからね!!
第2王子として生を受けたけれど、事情があってさ…まぁ、一部の信頼出来る人間は知ってるけどね。

もちろんの事は、お義姉様も知ってますわよ?

私の事情は公表出来ませんからね、死ぬまで女として生きて行きますの。
お兄様とお義姉様、そして2人の子どもを愛でながら。

~完~
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

【完結】聖女が世界を呪う時

リオール
恋愛
【聖女が世界を呪う時】 国にいいように使われている聖女が、突如いわれなき罪で処刑を言い渡される その時聖女は終わりを与える神に感謝し、自分に冷たい世界を呪う ※約一万文字のショートショートです ※他サイトでも掲載中

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

10日後に婚約破棄される公爵令嬢

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。 「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」 これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。 エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!? この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて… しかも婚約を破棄されて毒殺? わたくし、そんな未来はご免ですわ! 取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。 __________ ※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。 読んでくださった皆様のお陰です! 本当にありがとうございました。 ※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。 とても励みになっています! ※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

全部、支払っていただきますわ

あくの
恋愛
第三王子エルネストに婚約破棄を宣言された伯爵令嬢リタ。王家から衆人環視の中での婚約破棄宣言や一方的な断罪に対して相応の慰謝料が払われた。  一息ついたリタは第三王子と共に自分を断罪した男爵令嬢ロミーにも慰謝料を請求する… ※設定ゆるふわです。雰囲気です。

処理中です...