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神聖王国と砂漠の国

第21話 兄、現状を語る2

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俺は、兄上と別れた後ロズ・ロゼリアに会いに行ったんだ。
まず、紅薔薇と呼ばれるライラシア様に会いに行くことにした。屋敷に着くと、今日はローザ様の所と聞いたので王城に急ぎ向かった。

王城に行くと、メイドや執事の様子がおかしかった。家の使用人と同じだ。
彼らと話しても「うー」や「あー」としか言わない為、放置してローザ様の部屋に行く。
本来は、ローザ様に許可を貰わないといけないが緊急事態だ。

ローザ様の部屋の前には騎士が立っており、人払いしているようだ。
俺は、騎士に話しかける。
会話が成り立たなかったらどうする?と思ったが、普通に「少々お待ち下さい」と言われて拍子抜けだった。
騎士が扉を開き、中に案内してくれる。
これも、本来ならメイドがやるのだが…

「アルベルト様!」
「アルベルト殿!」
白薔薇のローザ様と紅薔薇のライラシア様が、揃って出迎えてくれた。白薔薇のローザ様は、この国の王女でフェルナンド様の妹君だ。
「ローザ様、ライラシア様、急の訪問、申し訳ありません」
俺は、跪き頭を垂れる。
「良いのです。さぁ、顔を上げて下さい」
「アルベルト殿、王城の変貌ぶりに驚いただろう?」
「はい、それで、話をお聞きしたいのですが…」
顔を上げて立ち上がると、早速切り出した。
2人は顔を見合わせ、悲しそうに話し出した。

「私達も、よく分かりませんの」
「気付いた時には、もうこうなっていたのだよ」
どういう事だ?
「メイドも執事も」
「街の人々も」
「ある日急に態度が激変したんだ。私達にも何が何だか…」
頭を振り、抱え、俯くライラシア様は悲壮な面持ちで続けた。
「もうこの国で、豹変していないのは」
「私達と、部屋の前に居た騎士ディック」
「後は、政務官リチャードだったよ」
「だった?」
「政務官のリチャード様は、追放されましたわ」

(…………嘘だろ)

「……アルベルト様、恐らく時間がありませんから必要な事だけお伝えしますわね」
そう言って伝えられた話に、俺は衝撃を受けた。急ぎ兄上と合流し、この国を離れなければ!
「俺達兄弟と父上は、シアに貰ったピアスがあります」
「私達も、持っていますわ」
髪を耳にかけると、彼女達の耳には白と紅のピアスが付けられていた。
「!では、俺達と会話が?」
「出来ると聞いてますわ」
「アルベルト殿、私達も後を追う先に行っててくれ」
「分かった」

彼女達に感謝し、城を出て兄上と連絡を取った。


謁見の間で、国王、宰相、軍司令官、軍団長は黙って俺達の話を聞いていた。
「数時間後、私達は追っ手を差し向けられ国を出たのです」
「俺達を相手にするには、実力が足りなかったがな」
「ロズの御二方が馬を手配してくれていたらしく、すぐに国を出れました」
「その後は、父上とロズの2人と連絡を取り合い、砂漠の国に来たんだ」

謁見室に沈黙が降りる。
みな、口を開く事が出来ないでいた。
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