12 / 54
神聖王国と砂漠の国
第8話 奴隷令嬢、銀狼と出会う
しおりを挟む
ゆっくりと振り返る。
「…………っ!」
太陽の光に反射し輝いていたのは、大きな狼だった。見惚れる程に美しい狼。
銀色の毛に覆われ、金色の瞳でこちらを見ながら唸っている。
(綺麗…………でも、嫌がられてるのかしら?)
手を伸ばせば、後ろに下がり唸り声をあげる。
私は、立つことは出来ない。
「……ご…ごめ……ん……」
上手く話せないし、言葉が通じるかも分からない……けれど何故だか、相手に伝わってる気がした。
未だ唸る狼に背を向けて、這うように離れる。
「ギャウ!」
吠える声に振り返ると、金色の瞳と目が合う。狼は私を鋭く見ている……?
いえ、違う………上?
すると影が落ちる。ふと顔を上げると、そこに居たのは
「…………ぁ」
先程襲ってきた魔獣が、目の前にいた。牙から血が滴り落ちてきた。馬を平らげ私を追ってきたのだろう
(今の私に、戦う力など…)
恐怖が全身を支配する。
カタカタカタ
動けない。魔獣が腕を振り上げる。
容赦なくソレが振り下ろされる瞬間
「ギャァウ!」
「つっ!」
狼が私に体当たりをしてきて、間一髪、魔獣の爪から逃れる事が出来た。
(……助けて、くれましたの?)
「ガァウ!ギャウ!」
怯むことなく、銀狼は魔獣に向かって行く。
爪を魔獣の首目掛けて振り下ろし、噛み付く。魔獣も対抗し爪や牙で、攻撃してくる。
銀狼は、攻撃しては離れ、離れては攻撃する…を繰り返している。
魔獣の攻撃が銀狼には当たらない、魔獣の体に無数の傷が刻まれていく。魔獣から、勢いが無くなり暫くすると息絶えた。
銀狼は、魔獣を倒し終えると、こちらを見てきた。先程のように唸ってはいない。
私は、その場から動けないまま狼を見つめていた。狼もまた、私を見つめてくる。
お互いに視線を逸らせないまま、時間が過ぎる。先に沈黙を破ったのは、狼の方だった。
「ギャウゥ」
静かに、こちらに歩み寄り、顔を覗き込んでくる。鼻先を、髪の中に隠れた顔に近づけ頬をグイグイされる。
(……な、何ですの?)
「クゥン、キャウ」
ベタベタの髪を上げ、覗き込む狼にさらけ出す。すると、狼はペロペロと顔を舐め始める。
(もしかして……)
「け…けが……して…な」
「だい……じょぶ」
「ギャウ?」
「ガウ、ギャウ」
銀狼は、それでも舐めるのを辞めなかった。
私は、安心したのでしょう、意識が遠くなるのを感じた。あの日から、心休まる日など来なかった。痛めつけられ、罵倒され、挙句に魔獣に襲われるなんて。
銀狼の姿に、安心するなんて…
パタン
「ギャ!ガァウ、ギャァウ!!」
倒れた私に向かって、焦ったように吠える声。
(本当に、人間みたい…ね)
そこで私の意識は、途切れた。
「…………っ!」
太陽の光に反射し輝いていたのは、大きな狼だった。見惚れる程に美しい狼。
銀色の毛に覆われ、金色の瞳でこちらを見ながら唸っている。
(綺麗…………でも、嫌がられてるのかしら?)
手を伸ばせば、後ろに下がり唸り声をあげる。
私は、立つことは出来ない。
「……ご…ごめ……ん……」
上手く話せないし、言葉が通じるかも分からない……けれど何故だか、相手に伝わってる気がした。
未だ唸る狼に背を向けて、這うように離れる。
「ギャウ!」
吠える声に振り返ると、金色の瞳と目が合う。狼は私を鋭く見ている……?
いえ、違う………上?
すると影が落ちる。ふと顔を上げると、そこに居たのは
「…………ぁ」
先程襲ってきた魔獣が、目の前にいた。牙から血が滴り落ちてきた。馬を平らげ私を追ってきたのだろう
(今の私に、戦う力など…)
恐怖が全身を支配する。
カタカタカタ
動けない。魔獣が腕を振り上げる。
容赦なくソレが振り下ろされる瞬間
「ギャァウ!」
「つっ!」
狼が私に体当たりをしてきて、間一髪、魔獣の爪から逃れる事が出来た。
(……助けて、くれましたの?)
「ガァウ!ギャウ!」
怯むことなく、銀狼は魔獣に向かって行く。
爪を魔獣の首目掛けて振り下ろし、噛み付く。魔獣も対抗し爪や牙で、攻撃してくる。
銀狼は、攻撃しては離れ、離れては攻撃する…を繰り返している。
魔獣の攻撃が銀狼には当たらない、魔獣の体に無数の傷が刻まれていく。魔獣から、勢いが無くなり暫くすると息絶えた。
銀狼は、魔獣を倒し終えると、こちらを見てきた。先程のように唸ってはいない。
私は、その場から動けないまま狼を見つめていた。狼もまた、私を見つめてくる。
お互いに視線を逸らせないまま、時間が過ぎる。先に沈黙を破ったのは、狼の方だった。
「ギャウゥ」
静かに、こちらに歩み寄り、顔を覗き込んでくる。鼻先を、髪の中に隠れた顔に近づけ頬をグイグイされる。
(……な、何ですの?)
「クゥン、キャウ」
ベタベタの髪を上げ、覗き込む狼にさらけ出す。すると、狼はペロペロと顔を舐め始める。
(もしかして……)
「け…けが……して…な」
「だい……じょぶ」
「ギャウ?」
「ガウ、ギャウ」
銀狼は、それでも舐めるのを辞めなかった。
私は、安心したのでしょう、意識が遠くなるのを感じた。あの日から、心休まる日など来なかった。痛めつけられ、罵倒され、挙句に魔獣に襲われるなんて。
銀狼の姿に、安心するなんて…
パタン
「ギャ!ガァウ、ギャァウ!!」
倒れた私に向かって、焦ったように吠える声。
(本当に、人間みたい…ね)
そこで私の意識は、途切れた。
0
お気に入りに追加
1,253
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる