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プロローグ
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「あら?貴方まさか、その格好で社交デビューするつもりかしら?やめて頂戴、恥ずかしい」
今日は義妹の社交デビューの日。
昼から念入りに磨き上げた義妹イリアは、今ドレスに着替えている。
「そうだな、お前は具合が悪くて来れないと陛下に伝えておく」
本来なら私は、もっと早くに社交デビューしているはずだった。お母様が生きていれば……
「ねぇ、お義父様お母様。もしお義姉様が、自分でドレスを用意したら、連れて行って差し上げては?フフ」
「そうねぇ。用意出来たら、会場に来ても良いわよ?出来たら……ね」
そう言って、私を屋敷の外に放り出した。
どうせ、用意出来ないと思っているんだろう。まぁ、出来ないと思うけど……でも……
『必ず、社交デビューするのよ?お父様に頼んで…そうすれば、あの方は貴方を必ず見つけて下さる』
「良いわね?」と言った、お母様の最後の言葉……
「無理だと思うけど……伯父様やウォルター様に頼んでみましょう」
伯父様は、お父様のお兄様に当たります。お父様は、お母様の家に嫁ぎ伯爵になったんです。その母は死に、お父様は新しいお母様を娶りました。
お母様のご両親は、お父様のご実家に頭が上がらないらしく、誰にも文句を言われること無く今のお義母様がやって来ました。
義妹イリアと共に……
私は、伯父であるフラウスキー侯爵家に向かった。
私の家は伯爵家で、侯爵家のタウンハウスまでは同じ貴族街に住んでいても遠いです。
漸く辿り着いた時には、もう夕方で……
無駄だと知りつつも、門番さんに声をかけました。
門番の人は、私をひと睨みすると「去れ!物乞いめがっ」と言いました。
「ち、違いますっ!私はシアラと言います。フランセル伯爵の娘、シアラ・フランセルです!」
「なにぃ?」
門番は、私の顔をジッと見つめ小さく舌打ちをしました。
「伯父様に、会わせて欲しくて……」
「何の用で?」
私達は、ほぼ同時に言葉を発しました。
「旦那様は、もうお出になられる。話なら今度にしろ」
「少しで良いので、お願いします!」
私と門番が話している間に、門の向こうから馬車が来ていました。
門番が門を開けると、馬車の窓が開き中から伯父様が顔を出しました。
「何の騒ぎだ?」
「旦那様、それが……」
門番が私の顔を横目でチラッとみる。
次いで、伯父様も私を見た……途端にゴミを見るような目に変わり、伯父様が降りてきました。
「貴様が何用でここにおる?」
「伯父様、お願いがあります。ドレスを一着下さいませんか?お願いします」
私は頭を下げました……ですが、伯父様は人に物を頼む態度ではないと言いました。
人に物を頼むなら、土下座をするべきだと……
……私は、地面に膝を着いて頭を下げました。
どうしても、社交デビューしなきゃいけないんです。それが、亡くなったお母様とした最後の約束。
今まで、1度たりと許して貰えなかった社交デビューが、今回はドレスを用意すれば参加しても良いと言ってくれたのです。
次は、いつ参加してもいいと言ってくれるか分かりません……
「お願い、します」
でも、私のそんな思いは、相手に通じる訳がありませんでした。伯父様は、私の手を踏みつけ蹴り飛ばすと「消え失せろ」と言ったのです。
そのまま馬車に乗り込み、行ってしまいました。
門番も、私を無視し去っていきました。
「つっぅ……」
(ごめんなさい、お母様……約束、守れそうにありません)
蹴られたお腹が痛い
踏まれた手が赤くなる
私はゆっくりと立ち上がり、前を向きました。
(え?)
真っ黒でした。
顔を上げると、目の前が真っ黒で……私はもう夜が来たのかと、一瞬思ってしまいましたが……でも違いました。
男の人です。
黒の礼服を着た、背の高い男の人がすぐ目の前に立っていました。
「最悪だ……嫌な物を、見てしまった……」
頭上で、男の人が呟きました。
私のせいで、この方の気分を害してしまったみたいです。……着ている服からして、凄く身なりが良いので高位貴族だと思います。
「申し訳ありません……」
「…………」
男の人が、何も言わず私を見つめます。
私も、男の人の目を見ました。
青色の綺麗な目です…
「紫……」
最悪だ……と、小さく男の人は呟きました。
そして、私の手を掴み「来い」と言って引っ張って行きました。連れてかれたのは、彼が乗って来たと思われる馬車です。
﹣くそっ……あのバカ共…。分かってて、こんな仕打ちをしたのか?知らなかったとは言わせないぞ……﹣
向かいに座った男の人は、ブツブツと小さく呟き続けていました。
今日は義妹の社交デビューの日。
昼から念入りに磨き上げた義妹イリアは、今ドレスに着替えている。
「そうだな、お前は具合が悪くて来れないと陛下に伝えておく」
本来なら私は、もっと早くに社交デビューしているはずだった。お母様が生きていれば……
「ねぇ、お義父様お母様。もしお義姉様が、自分でドレスを用意したら、連れて行って差し上げては?フフ」
「そうねぇ。用意出来たら、会場に来ても良いわよ?出来たら……ね」
そう言って、私を屋敷の外に放り出した。
どうせ、用意出来ないと思っているんだろう。まぁ、出来ないと思うけど……でも……
『必ず、社交デビューするのよ?お父様に頼んで…そうすれば、あの方は貴方を必ず見つけて下さる』
「良いわね?」と言った、お母様の最後の言葉……
「無理だと思うけど……伯父様やウォルター様に頼んでみましょう」
伯父様は、お父様のお兄様に当たります。お父様は、お母様の家に嫁ぎ伯爵になったんです。その母は死に、お父様は新しいお母様を娶りました。
お母様のご両親は、お父様のご実家に頭が上がらないらしく、誰にも文句を言われること無く今のお義母様がやって来ました。
義妹イリアと共に……
私は、伯父であるフラウスキー侯爵家に向かった。
私の家は伯爵家で、侯爵家のタウンハウスまでは同じ貴族街に住んでいても遠いです。
漸く辿り着いた時には、もう夕方で……
無駄だと知りつつも、門番さんに声をかけました。
門番の人は、私をひと睨みすると「去れ!物乞いめがっ」と言いました。
「ち、違いますっ!私はシアラと言います。フランセル伯爵の娘、シアラ・フランセルです!」
「なにぃ?」
門番は、私の顔をジッと見つめ小さく舌打ちをしました。
「伯父様に、会わせて欲しくて……」
「何の用で?」
私達は、ほぼ同時に言葉を発しました。
「旦那様は、もうお出になられる。話なら今度にしろ」
「少しで良いので、お願いします!」
私と門番が話している間に、門の向こうから馬車が来ていました。
門番が門を開けると、馬車の窓が開き中から伯父様が顔を出しました。
「何の騒ぎだ?」
「旦那様、それが……」
門番が私の顔を横目でチラッとみる。
次いで、伯父様も私を見た……途端にゴミを見るような目に変わり、伯父様が降りてきました。
「貴様が何用でここにおる?」
「伯父様、お願いがあります。ドレスを一着下さいませんか?お願いします」
私は頭を下げました……ですが、伯父様は人に物を頼む態度ではないと言いました。
人に物を頼むなら、土下座をするべきだと……
……私は、地面に膝を着いて頭を下げました。
どうしても、社交デビューしなきゃいけないんです。それが、亡くなったお母様とした最後の約束。
今まで、1度たりと許して貰えなかった社交デビューが、今回はドレスを用意すれば参加しても良いと言ってくれたのです。
次は、いつ参加してもいいと言ってくれるか分かりません……
「お願い、します」
でも、私のそんな思いは、相手に通じる訳がありませんでした。伯父様は、私の手を踏みつけ蹴り飛ばすと「消え失せろ」と言ったのです。
そのまま馬車に乗り込み、行ってしまいました。
門番も、私を無視し去っていきました。
「つっぅ……」
(ごめんなさい、お母様……約束、守れそうにありません)
蹴られたお腹が痛い
踏まれた手が赤くなる
私はゆっくりと立ち上がり、前を向きました。
(え?)
真っ黒でした。
顔を上げると、目の前が真っ黒で……私はもう夜が来たのかと、一瞬思ってしまいましたが……でも違いました。
男の人です。
黒の礼服を着た、背の高い男の人がすぐ目の前に立っていました。
「最悪だ……嫌な物を、見てしまった……」
頭上で、男の人が呟きました。
私のせいで、この方の気分を害してしまったみたいです。……着ている服からして、凄く身なりが良いので高位貴族だと思います。
「申し訳ありません……」
「…………」
男の人が、何も言わず私を見つめます。
私も、男の人の目を見ました。
青色の綺麗な目です…
「紫……」
最悪だ……と、小さく男の人は呟きました。
そして、私の手を掴み「来い」と言って引っ張って行きました。連れてかれたのは、彼が乗って来たと思われる馬車です。
﹣くそっ……あのバカ共…。分かってて、こんな仕打ちをしたのか?知らなかったとは言わせないぞ……﹣
向かいに座った男の人は、ブツブツと小さく呟き続けていました。
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