上 下
12 / 12
本編

第8話 本当に家族

しおりを挟む
「……だれ……ですか?」
「こら貴方達、カイムが不審がっていますよ」
「あ……俺、レライエだよ!会えてマジ嬉しい!俺の可愛いいも……」

バチンッ

(いも……?)

「レライエ、気が早いですよ」

水色の男の人に注意されて、最初に駈けてきた男の人がレライエと名乗った。他にも何か言おうとしてたけど、同じ髪色の男の人に頭を叩かれ言葉は途中で途切れた……でも、いもってなんだろぅ?

「僕は、レヴィです」

レライエさんを殴った男の人は、何事も無かったようにレヴィと名乗った。

「……おれは、ベリアル」
「私は、シトリーです」
「……私は、カイム……です」

他の人達も、レライエさんが殴られた頭を抱えしゃんがんでいるのを気にもせず名乗り始めた。そして、話があるからと、近くのお店に入ることになったの。

けれど……シトリーさんが、ふと立ち止まり私の隣に視線を向けて……

「そうだ。君の名前も、教えてくれる?」

そう、問いかけた。
姿も見せて欲しいと……

「っ……」
「……」
「どうしたの?」
「……だ、ダメなの……」
「ダメ?どうして?」
「……魔族……だから」

私は周りに聞こえないように、小さな、本当に小さな声で魔族だからと伝えた。私の言葉を聞いたシトリーさんは、一瞬驚いた顔をしたけどすぐに元の顔に戻って微笑んで、気にしなくて大丈夫だと言った。

「え?」
「もし他人の目が気になるなら、別の場所に移ろうか…僕達が止まってるホテルとか」

そうすれば、併設されているレストランで個室が取れるからと、どうかな?と、シトリーさんは言いました。

「ほら、こっちにおいで」
「う、うん」

私に手を伸ばして、エスコートするように背中に手を回し移動を促した。……けれど、地面には未だ蹲るレライエさんが……

「レライエ、いつまでそうしてるんですか。さっさと起きなさい」
「ちょ、レヴィ兄!蹴飛ばさないで!起きるからっ」
「…レライエ……」
「ベリアル兄ぃ~」

レヴィさんに蹴飛ばされて転がって、ベリアルさんって方が起こしてあげて、それでもシトリーさんやレヴィさんは無視して、私を促して歩き始めた。

そんな私達の後ろを、レライエさんとベリアルさんがついてきた。

「オネェ……」
「どうしよ……大丈夫、大丈夫だよね」
「ウン……ニゲルトキは、僕ガンバルッ」
「ありがとう……でも、私も頑張るからね。爆弾の一個や二個はあるんだからっ」

……師匠が、私が森に採取に行く時に持たせてくれたもの……あの時は、結局使わなくて済んだから。







シトリー達が止まるホテルに到着し、私達は個室に案内された。何故私を知ってるのか、何故声をかけてきたのか、私は……この時、真実を知った。

「ごめんね、急に」
「い、いえ……大丈夫です」
「君も、もうローブを外して大丈夫だよ」

その言葉に、マルバくんはローブを外した。

「デモ、ヘイキ?ココノヒト、怒ラナイ?」
「怒りませんよ。私達はハイディオス帝国の人間で、このホテルはハイディオス帝国の人間が運営してますからね」

内緒ですよ?と、唇に人差し指を当ててシトリーさんは笑った。けれど私達は、彼らがハイディオス帝国の人間って事に、ホテルの運営がハイディオス帝国の人間という事に驚きを隠せなかった。

何故なら、ヴィロン王国の人間はハイディオス帝国の人間を嫌っているから。ハイディオスの人間を、ヴィロンに入れることすら嫌っているから。

なのに、ヴィロン王国でハイディオス帝国の人間が店をやるなんて……本来なら不可能……
それをやってのけるなんて、シトリーさん達は何者なんだろう……

「ふふ、ハイディオスの悪口を言えば、ヴィロン王国の人間は信じ込みますからね。入り込むのは意外と簡単なんですよ」

私が、疑いの目を向けたからかな。シトリーさんが、言葉を付け加えた。……そんな事で入り込めるなんて……ヴィロン王国は、意外と……ちょろい?のかな。

……それより、彼らがハイディオス帝国の人間だという事にも驚いた。

「さて、本題に入りますね」
「は、はい」
「実はね、私達はある人を探してハイディオス帝国に来たんだ」
「ある人……?」

『サガス、カゾク』

……まさか……
うぅん、そんなはずない。
……だって、私は、捨てられたんだから……

「妹です。僕達の大切な……」
「……誘拐されたんです…… 赤ちゃんの頃に……」
「ずっと、探してたんだ!ハイディオスには居なかったから、ヴィロンを探しに来たんだよ!」

誘拐……?

「でもまさか、こんな所で出会えるなんて思っていませんでしたね」
「えぇ、こんなに早く見つかるなら、もっと早くにヴィロンに目をつけるべきでしたね」
「……君は、どうしてこの村に?」
「私は、シャマイムのアトリエに元々居たのだけど、追い出されたから……マルバくんと一緒にハイディオス帝国に行こうと思って……」

私達がこの村に来た経緯を、シトリーさん達に説明すると、話の途中から皆さんの表情が怖くなっていって……話が終わる頃には、顔を真っ直ぐに見れないくらい険悪に変わっていた。

「……全く、ヴィロン王国はクソなアホ共ばかりですね」
「なぁなぁ、もうさ、やっちゃっても良くね?俺の魔銃なら狙撃も暗殺も可能だぜ?」

……は?いま、不穏な言葉を聞いたのだけど……狙撃?暗殺?

「僕も、そうしてやりたいのは山々ですけどね……」

険しい表情のまま、私をチラッと見てレヴィさんは「今は辞めときましょう」と言った。

「あ、あの」
「なに?カイム」
「話を聞いてる感じだと、皆さんが言ってる妹って……まさか……」

私の名前も知ってたし……もしかして、本当に?
でも、間違ってたら……
期待して、裏切られたら……
わたし、もう……立ち直れない……

だから……

「「「「君だよ」」」」

4人が、同じタイミングで……
同じように、言葉を発した。

「あの時……何があったのか、君は知る権利がある。でも、残念ながら……私達も全貌をまだ掴めていません。なので、私達が知る範囲で全てお話しますね」

……ここで知った内容に、私はまたも驚きを隠せなかった。だって私が……
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした

青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。 この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。 私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。 そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが…… 勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。 ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。

偽聖女と婚約破棄された令嬢は、隣国で苦難を乗り越え幸せを掴む

紫宛
恋愛
不定期更新。 自国で偽聖女と糾弾され、婚約破棄された公爵令嬢リィシャは他国に嫁ぐ事になった。 しかし、他国でも自国の偽聖女の噂が流れ……追い詰められていく。その上、嫁いだ男性セルシオン公爵には想いを寄せる女性までいた。 公爵と公爵が想いを寄せる女性が舞踏会で踊る姿は、絵姿にも描かれるような美しかった。 それを見たリィシャは、自らの運命を悟り…… ※ご都合主義、ゆるふわ設定※

ハプスブルク家の姉妹

Ruhuna
ファンタジー
ハプスブルク家には美しい姉妹がいる 夜空に浮かぶ月のように凛とした銀髪黒眼の健康な姉 太陽のように朗らかな銀髪緑眼の病弱な妹 真逆な姉妹だがその容姿は社交界でも折り紙付きの美しさだった ハプスブルク家は王族の分家筋の準王族である 王族、身内と近親婚を繰り返していた 積み重なったその濃い血は体質だけではなく精神も蝕むほどの弊害を生み出してきているなど その当時の人間は知る由もない

【完結】転生?いいえ違うわ……なぜなら…

紫宛
恋愛
※全5話※ 転生? わたし空は、車に轢かれて死にました。 でも、気がつくと銀色の綺麗な髪をした女性の体に入っていました。 ゲームの世界? 小説の世界? ラノベ的な展開? ……と期待していた部分は確かにありました。 けれど、そんな甘いものは無かったのです。 ※素人作品、ご都合主義、ゆるふわ設定※

めでたく婚約破棄で教会を追放されたので、神聖魔法に続いて魔法学校で錬金魔法も極めます。……やっぱりバカ王子は要らない? 返品はお断りします!

向原 行人
ファンタジー
教会の代表ともいえる聖女ソフィア――つまり私は、第五王子から婚約破棄を言い渡され、教会から追放されてしまった。 話を聞くと、侍祭のシャルロットの事が好きになったからだとか。 シャルロット……よくやってくれたわ! 貴女は知らないかもしれないけれど、その王子は、一言で表すと……バカよ。 これで、王子や教会から解放されて、私は自由! 慰謝料として沢山お金を貰ったし、魔法学校で錬金魔法でも勉強しようかな。 聖女として神聖魔法を極めたし、錬金魔法もいけるでしょ! ……え? 王族になれると思ったから王子にアプローチしたけど、思っていた以上にバカだから無理? ふふっ、今更返品は出来ませーん! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

悪役令嬢ですか?……フフフ♪わたくし、そんなモノではございませんわ(笑)

ラララキヲ
ファンタジー
 学園の卒業パーティーで王太子は男爵令嬢と側近たちを引き連れて自分の婚約者を睨みつける。 「悪役令嬢 ルカリファス・ゴルデゥーサ。  私は貴様との婚約破棄をここに宣言する!」 「……フフフ」  王太子たちが愛するヒロインに対峙するのは悪役令嬢に決まっている!  しかし、相手は本当に『悪役』令嬢なんですか……?  ルカリファスは楽しそうに笑う。 ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました

ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。 そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。 家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。 *短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

処理中です...