大国に売られた聖女

第19話

ザファジ様が、笑顔の私が可愛いと色んな人に吹聴したみたいで……

本気になった方々がいました……

それは……

「セイラ様、こちらのドレスは如何でしょう？メシア様の美しい髪色に合うと思いますの」

アリンナ侯爵令嬢様が、空色で肩紐の無いスカート部分が広がった綺麗なドレスを手に持っている。大人っぽい感じで……私には合わない気が……

「あら、アリンナ様。メシア様には、こちらのレースシフォンも可愛いくて良いと思いますの」

逆にセイラ公爵令嬢は、桃色のふんわりした可愛いドレスを手に持っていました。胸元がレースになっていて、スカート部分にもレースがあしらわれており大人可愛いデザインです。……こちらも、似合わないと……

「まぁ、お二人共。私わたくし的には、こちらをオススメしますわ」

……そう言って、
翡翠色の片方だけに肩紐があり、腰の部分にリボンがあしらわれ、裾が大きく拡がったドレスを手に持った王妃……エリス様が居た。

(……何故いるのですか……エリス様)

「「「メシア様！どのドレスが良いですか？！」」」

(どれって……言われても……)

どうしてこうなったのでしょうか……

あの日、ザファジ様が笑顔になった私を可愛いと連呼して、色んな人に「メシア様の笑顔、めっちゃ可愛かったんだ！羨ましいだろ？」と王様達や貴族の令嬢達に自慢したのだそうです。

それを聞いた王様が、王妃様が、そして令嬢達が、自分達も見たいと言い出して……
特別に、社交パーティーを開く事になったそう……

理由はそれだけじゃなく、前のお茶会で令嬢達には私の紹介は出来たけれど、他の貴族の方から自分達も紹介して欲しいと王様の元に願い書？が多数届いていたそうです。

それで、魔獣の討伐のお祝いと、国民へのお披露目も兼ねてと聞きました。昼は、帝都内を馬車で巡るパレード？をすると……そして夜は、お城で社交パーティをすると聞きました。

その……ドレス選びです。
昼のパレードは聖女の服装があるらしくて、そちらを着ることになりました。ソルシエラにもあったんですけど、私はよく汚すので、聖女のローブは着させて貰えませんでした。……豪華で高い衣装なので仕方ありませんね。

ソルシエラとルナファルナでは、聖女のローブが違うみたいです。

ソルシエラでは、白を基調とし黄色や橙色を差し色に使ったローブでした。一度、何かの催しで着させて貰いましたが、サイズが合わない上にあまり似合いませんでしたね。
ルナファルナでも、白を基調としてるみたいですが、差し色に使っているのは、黒や濃い青みたいです。落ち着いた色合いで私は、こっちの方が好きですね。

形も、少し違います。
ソルシエラでは、レースや刺繍がふんだんに使われて豪華な感じでした。ルナファルナもレースや刺繍を使ってはいるようですが、ソルシエラと違いささやかなもののようです。

全体的に、ソルシエラは華美で豪華な感じで、ルナファルナはシンプルでありながら、所々にレースや刺繍が施された感じかな？と思います。

聖女のローブって、一律では無いんですね。って言ったら、国の特性が出てて良いでしょう？と言われました。

国によっては、気候などもあり大幅に違う所もあるみたいです。一度、全てのローブを見てみたいです。

「あの、どれも綺麗で、私には似合わない気が……」
「「「いいえ！」」」
「絶対に、似合いますわ！」
「もういっその事、パーティー中に衣装替えしちゃいます？」
「あら、いいわね。それから、私わたくし達の衣装も、メシア様に合わせて似た感じにしましょうか」
「でしたら、私は青のドレスを」
「私は、桃色を」
「ならば、私わたくしが緑ですわね」

もう、止められる雰囲気ではありませんね。
どちらにしても、パレードもパーティーも出るのは決定事項のようですし……

でもナファール様は、街に出るのあんなに反対していたのに……良いのでしょうか？

・

・

「構わない。ゾファロ、ザファジ、ブルースクがお前につく。ルジャイは俺とエリスを護る役目があるから、お前には他の将軍を付けよう。当然、ロクや他の腕の立つ兵士も付ける」

…………

護衛の域を超えてる気がしますよ？

……なんて、陛下が決定した事に口を挟めるはずもなく。それに、最近の陛下は少し怖いので…
私に怒ってる訳じゃないとは思いますが、ちょっと近寄り難い雰囲気を醸し出しているんです。

将軍様やロクさん達までもが、張り詰めたようなピリピリした雰囲気を出していて……

私が話しかければ、皆さん普通に笑顔で答えてくれますが……

パレードの当日まで、全くもって聞ける雰囲気ではありませんでした。もちろん、当日はもっと聞ける雰囲気では無かったですけど……ロクさん、笑顔なのに周りに神経を集中させてるし。

……やっぱり、居るのかな？あの人。……ロクさん達、私にあの人を近付けさせないようにしてるんだよね？



パレード用の屋根のない馬車に、ロクさんと兵士さんと一緒に乗り込み、パレードに出発しました。
湖を渡り、街を時計回りに一周して戻って来るルートです。

ナファール様とエリス様の馬車が1番前に、私が乗った馬車が2番目、その後ろを王太子であるファサリス様と、ご婚約者であるセイラ様が乗った馬車と続き、一台一台の馬車を囲むように兵士さんが。
ルジャイ様は国王夫妻の傍、ゾファロ様、ザファジ様は私の傍、ブルースク様は姿を動物に変えて私の膝の上に。ファサリス様の傍には、ルジャイ様が鍛え上げた兵士が付くそうです。

良いのでしょうか？ファサリス様は王族なのに、将軍様を付けなくて……って疑問が顔に出ていたのでしょうね。

「問題ないよ。だってメシア様が、僕達の為に結界石をくれたじゃないか。この石は伝説級の代物だよ」
「私にも、いざと言う時の為にと治療石を下さいましたわ。これも伝説級の代物ですわね」

ファサリス様とセイラ様がそう言って見せたのは、お2人の馬車に将軍様が護衛につかないと聞いた時に渡したもの。

私が作った、石です。
結界の力を込めた結界石と、治癒の力を込めた治療石です。数回しか使えないですし、結界石は人間には効果がありませんので気休め程度のものです。

それなのに2人は、伝説級の代物だと大切にすると言ってくれました。お2人が自慢？したみたいで、王様達に変な目で見られましたね。みんなの分も作ると言ったら、無理しなくていいといつも通りの言葉が帰ってきました。

もちろん、無理なく時間のある時に作りますよ！
……と、また話しが逸れました。私の悪い癖です。

とにかく、鉄壁の守りでパレードは順調に進んで行きました。