大国に売られた聖女

紫宛

文字の大きさ
上 下
2 / 44

第2話 聖女の能力

しおりを挟む
馬車でルナファルナに向かう途中……いくつかの村や町に泊まるのだと将軍様に聞きました。聖女の私に何かあると困るからと。部屋の前と窓のそばに兵士の方が立つそうです。

もしかしたら、守るじゃなくて……逃げないように、じゃないかな?と私は思いました。まぁ、逃げませんけど……

「将軍様は……」
「……ゾファロだ」
「え?」
「お前は聖女だろ。俺に敬称をつける必要は無い」
「……どうしてですか?」
「なに?」

聖女と言えど、身分は平民です。
貴族の方や、平民の出でも将軍様等の肩書きのある方には、敬意を払い平伏するよう厳しく言われています。

それを将軍様に言えば

「なんだそのクソみたいな指導は!」

と憤ってました。

なんだ、と言われても……それが教会の教えでしたし。……とその時、馬車が急に止まりました。
窓から外を除くと、前から豪華な馬車と護衛?と思しき人達が馬車の周りを走ってきました。

その馬車は、私たちの馬車の横に並ぶと止まり、ゾファロ将軍様が「はぁ」と溜息をつくと外に出て行きました。すると、豪華な馬車の中から怖そうな男の人が降りてきました。

濃い紫色の髪に、金色の目をした男性です。睨まれてる訳じゃないのに、自然と畏縮してしまう。逃げ出したいのに、逃げれない……そんな感覚です。

「__、_」

外で怖そうな男の人と、将軍様が話しています。いつの間にか、護衛の人がこっちを見ていて目が合ってしまいました。この人達も、凄く怖そうな顔をしています。

私は、やはり歓迎されてないのでしょうか。ここでも、無能と言われるのでしょうか。仕方ありません……言われた事は真面目に何でもやっていきましょう。もしかしたら、少しは認めてくれるかも知れません。

ルナファルナは、実力主義とも聞きますから…。

だから……平民でも将軍になれるから、徴兵率が高く強いんです。……ソルシエラは、戦っても勝てないと分かってたはずなのに…さっさと降伏すれば良かったのに…戦って多くの人の命を失って……
それでやっと、負けを認めたんです。

……全部、私の責任になりましたけど。

ガチャと音がして、将軍様が入って来ました。

「出ろ、王がお前に会いたいと出向いて来た」
「……はい?」

一瞬なんて言われたのか理解出来なかった。

王様が?私に?会いに来た?なんで?

将軍様は私に手を伸ばして、早く下りるように指示して来ました。訳が分からなくなりながらも急いで馬車から下りましたよ。

遅れれば処罰の対象です。……ソルシエラでは、ですが。

「…まぁ、一応はお忍びらしいから、そんなに畏まる必要はない。あまり、礼儀も知らんのだろ?」
「は、はい」

そうですね、貴族様の相手はクレアが担当していましたので、マナーとか礼儀とかは何も知りません。


「陛下、連れて来ました」
「ああ」

正面から対峙すると、はっきり言って怖さが増します。

「お前が聖女だと聞いた」
「はい、ソルシエラで聖女をしていましたメシアです。よろしくお願いします」

今後は、この方が…ルナファルナの王様ナファール様が私の主になるのですね。

教会に属していましたが、指示をするのは王様です。王様の要請で、私達聖女の認定を受けた者が魔窟に出向いたり人々の治療をしたりするんです。王様の指示がない時は、教会の司祭様が指示を出してました。

「さて、お前に聞くが」
「はい」
「何が出来る」
「え?」

王様は、私の目を見つめながら「何が出来る?」と聞いてきました。

何が……

「怪我や病気の治療と、魔窟の結界と、大地や魔瘴気の浄化と……あとは…………」
 「待て」
「はい?」

更に続けようとしたら待ったがかかりました。
どうしたんでしょうか?
私を連れてきた将軍様や、王様、王様の護衛として付いてきた方々が驚いたような顔をしています。

「お前……そんなに、色々出来るのか?」
「?、はい。ソルシエラでは、普通でしたよ?」
「魔獣によって侵された毒や、状態異常も治せるのか?」

殊の他真剣な顔で、王様は私に聞いてきました。
魔獣によっては、攻撃に毒や状態異常をかけてくるものがいます。

猛毒、麻痺、睡眠、石化、氷結、瘴気。

猛毒は、そのままの意味ですね。侵されれば徐々に命を蝕みます。傷が治っても続きます。

麻痺は、痺れですね。傷を受けた場所が痺れて動きが鈍くなります。傷が治っても続きます。

睡眠は、そのままの意味ですね。眠ったまま起きなくなります。食事も水分も取れない状態が長く続けば命に係わります。

石化も、そのままの意味です。傷を受けた所から石に変わっていきます。全てが石に変われば死に至ります。

氷結も、そのままの意味です。傷を受けた所が冷たい氷に覆われます。酷くなればその部分を切断する事もあります。

瘴気は、2つの害があって……1つは火傷の様な症状です。傷を受けた所が黒く変色し焼け爛れた様な感じになります。こちらも、酷くなると切断する必要が出てきます。

2つ目の害は、魔瘴気と呼ばれ体内に蓄積される事で起こる弊害です。魔獣から受けた怪我は、大小関わらず瘴気を体内に取り入れてしまいます。それが体外に排出できず体内に留まることで、体に変調を来します。

これらは、魔獣被害で聖女の力で治せます。
また、聖女の力を薬草と掛け合わせることで、薬を作ることが出来、聖女が居なくても医者が治すこともあります。

殆どの症状は、軽ければ聖女が居なくても薬で治せます(重症だと無理ですが……)
石化と瘴気だけは薬で症状を遅らせる事は出来ても、聖女でなければ治せません。

私は、そういった事態も経験済みなので治せます。

「治せます」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~

こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。 召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。 美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。 そして美少女を懐柔しようとするが……

影の聖女として頑張って来たけど、用済みとして追放された~真なる聖女が誕生したのであれば、もう大丈夫ですよね?~

まいめろ
ファンタジー
孤児だったエステルは、本来の聖女の代わりとして守護方陣を張り、王国の守りを担っていた。 本来の聖女である公爵令嬢メシアは、17歳の誕生日を迎えても能力が開花しなかった為、急遽、聖女の能力を行使できるエステルが呼ばれたのだ。 それから2年……王政を維持する為に表向きはメシアが守護方陣を展開していると発表され続け、エステルは誰にも知られない影の聖女として労働させられていた。 「メシアが能力開花をした。影でしかないお前はもう、用済みだ」 突然の解雇通知……エステルは反論を許されず、ろくな報酬を与えられず、宮殿から追い出されてしまった。 そんな時、知り合いになっていた隣国の王子が現れ、魔導国家へと招待することになる。エステルの能力は、魔法が盛んな隣国に於いても並ぶ者が居らず、彼女は英雄的な待遇を受けるのであった。

悪役聖女のやり直し~冤罪で処刑された聖女は推しの公爵を救うために我慢をやめます~

山夜みい
ファンタジー
「これより『稀代の大悪女』ローズ・スノウの公開処刑を始める!」 聖女として長年頑張って来たのに、妹に冤罪をかけられました。 助けてくれる人は誰もおらず、むざむざ殺されてしまいます。 目覚めた時、なぜかわたしは二年前の秋に戻っていました! わたし、もう我慢しません。 嫌な仕事はやめます。わたしを虐めた奴らは許しません。 聖女として戻ってきてほしい? もう遅いです。 自業自得ですよね。あなたたちは勝手に破滅してください。 わたしは今、推し活で忙しいので。 死神と呼ばれる冷酷な公爵様と一つ屋根の下なので。 ふふ。 邪魔をする輩はどんな手を使っても排除しますね。 推しを救うためならどんな手だって使っちゃいますから。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです

山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。 今は、その考えも消えつつある。 けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。 今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。 ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

処理中です...