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本編

閑話 メルフィ(R15)

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今回のお話は、メルフィの視点です。
暴力、暴言あります。
苦手な方は読まなくても、大丈夫です(*ᴗˬᴗ)⁾

─────

どういう事よっ!

もう5日目になるのにっ!
コイツは名前以外、一言も話さないしっ!
周りの奴らは私を避けるしっ!

私が何したのよっ!

私は精霊妃になるのよ?!どうして、誰も媚びてこないのよっ!アレク様もセルジュ様も、いつも見当たらないしっ!

私は最初の選定の時、1番大きくて1番輝いていた卵を手にしたのよ!?
アイツらよりは遅くなったけど、無事に孵ったわ!

まぁ、手荒かったかもしれないけれどっ!

なのに、あのクソジジイっ!
あの時、報告に行けば「本日のお披露目には、間に合いません。最終日までお待ち下さい」よっ!

ふざけんじゃないわよっ!

『……』
「くそっ!あんたがっ!さっさと!孵ってればっ!」

メルフィは持っていた鞭で、太陽の精霊妃グレイスを叩き続ける。

部屋の入り口付近では、王城の騎士が苦しそうで辛そうな顔をしながら、その光景を見ていた。

騎士たちは、候補に危害が加えられない限り手出しは出来ない決まりだ。
故に、メルフィがグレイスに危害を加えても止めることは出来ない。

その事で、騎士が咎められることは無いにしても、彼らは止められない自分たちを責めていた。

(申し訳ありませんっ!!グレイス様っ)

「しかもっ!何がっ……『貴方の精霊の名はグレイス様で間違いないですか?』よっ!」

前の精霊妃と同じ名前だからって、なんか問題あんの!?しかも!「名付けはしてませんね?」よっ
アイツらは、名付けしたってこと?!

クソっムカつくっ!

メルフィは、持っていた鞭をグレイスに投げつけた。



その日の夜、ロビーで待ち伏せすればっ!

あのクズっ!

あんな良いドレス着て、アクセサリーだってっ!私が着けたことの無い、豪華な宝石の付いたピアスやネックレスなんて身につけてっ!

あのクズには勿体ないから、私が変わりに貰ってあげようとしただけなのにっ!

そばにいた騎士が私の手を握りしめるしっ!すごく痛かったのよ?!それを、騎士団長に報告したのにっ!

あの図体がでかいだけの男っ!

「あなたが、セラフィ様に手を出すからだ」

ですってぇ?!

貴族の私の事じゃなく、あんな奴らの言い分を信じるっていうの?!

「残念ですがその場には、ネリス様、ネリス様の騎士、ネリス様の精霊様…更に、たまたまその場を見た侍女数名が証言しています」
「うるっさい!お前らは、私の言う事をハイハイ聞いてればいいの!」
「貴族の言うことを聞けと言うなら、公爵令嬢のネリス様の方が貴方より身分は上ですよ」

サレフのその言葉にカッと頭に血が上るが……

彼らは、真剣に取り合わなかった。仕事の片手間に彼女の話を聞いていたが……我儘で、自分の思い通りに動かないと駄々をこねる幼子の戯言たわごとと切り捨てた。

彼らも暇ではない、多くの騎士が護衛に出払っている今、城内警備、見回りとやる事が山積みなのだ。

「はぁ、用が済んだなら帰りなさい」

話は終わりと言わんばかりに、席を立ち部屋を出て行くブラッド達にメルフィは、舌打ちして出ていった。

「全く、伯爵家は何をしてる…」
「流石に、自分勝手すぎますね…」

目的地に向かう途中で、2人はため息をついた。



執務室を追い出されたメルフィは、周りの迷惑も考えず、大きな声で文句を言いながら部屋に戻った。その後会いに来た伯爵夫妻に、騎士の態度やセラフィが生意気だと言うことを泣きながら訴え続けた。



お披露目のあった次の日、私はアレク様を探して庭に来たの。
そこで目にしたのは……っ!

あのクズがっ
アレク様とセルジュ様とお茶してるところよっ!

コーネリアって子も一緒で、楽しそうに笑うアレク様……あのクズも笑っている。

(ムカつく……っ)

私の方が良い女なのに、胸だってあのクズよりあるのに、なんで?!……どうして私とは会ってくれないのよっ!?

あまりにもムカついたから、近くにいた精霊を蹴り飛ばした。
何度蹴っても、気分は晴れなかったけど…っ

クズとアレク様が離れたから、私も離れたわ…さっき蹴飛ばした精霊は、未だ地面に倒れ伏したまま……

「ちょっと!グズグズしないで!行くわよっ」

精霊妃グレイスはフラフラと立ち上がり、メルフィを追いかけていく。
 

なぜ彼女は気付かないのだろうか…
精霊への敬意が全くないのに、精霊妃になれるとどうして思えるのだろうか。

近くに控える城の騎士や侍女は、凄く疑問だった…。


この時既に、精霊妃グレイスは限界を超えていた。

﹣ああ酷い…こんな扱いをあの子は、ずっと……﹣
﹣グレイス……﹣
﹣ソル、ごめんなさい…ね。選定終わるまでたないかも知れないわ……﹣

グレイスは、念話で太陽の精霊王ソルレヴェンテに、随時報告していた。
当然他の精霊妃も自分の王に、報告をしている。

﹣仕方あるまい…だが、その時は我も抑えが効かぬやもしれぬ…﹣
﹣オプスキュリテ様には、迷…惑かけてしまうわね……﹣
﹣……我の方から詫びを入れておく﹣

グレイスは、ソルレヴェンテも辛いのを理解していた。

自分と王は絆で繋がっている。

私の苦しみも悲しみも、ソルには伝わっている…とうぜん、体に与えられる痛みもまた……ごめんなさい、ソル…もう少しだけ耐えて…

グレイスは小さく微笑み、念話を切った。


そして次の日の夜、メルフィの苛立ちは最大値に達していた。

そしてその苛立ちの矛先は……


精霊妃グレイスだった……


取り出した鞭で叩く、蹴るを繰り返した結果

遂に……

精霊妃グレイスは、ぐったりと動かなくなった。

メルフィは、動かなくなったグレイスに鞭を放り投げ「使えない」と吐き捨てた。

その瞬間、

真夜中にも関わらず、眩い光が辺りを照らしだした。その光はメルフィの部屋を強く照らし、収まることは無かった。

「きゃあぁぁ」
「メルフィ様っ!」
「目がっめがぁぁぁ!」

騎士が駆けつけるが、メルフィは叫ぶばかりで事情を把握出来ない。

「……?」
「?」

騎士達は、メルフィが何故こんなにも苦しんでいるのか分からなかった。一瞬目が眩んだし、今も目は開けられないが、それでも耐えらると。


未だ収まらない強力な光……


部屋の中で倒れていたライオン(グレイス)は既に消え、その場所には赤い血が所々残っているだけだった。

それでも、光は収まらない……


メルフィの叫びが収まり、騎士がメルフィに振り向くと2人とも驚いた顔をしていた。

メルフィの目が……
白く変色していたからだ……

「な、なに?なんなの?!何も見えないんだけどっ!私の目、どうなったの?!医者を呼んでっ!」

騎士もそうしたいが、光は依然として収まってはいない。この状況で精霊の力なくして動き回るのは得策ではない。

ましてや、たとえこの少女がそもそもの原因だとしても、死なせる事だけは防がねばならない。

ソルレヴェンテの事だから、本気で望んでいるかも知れないが、怒りのまま消させる訳にはいかないのだ。


暫くすると、光が収まり始めた…


﹣貴方の怒りは分かるけれど、これ以上はダメよ。それよりも、グレイスちゃんの手当を優先してあげなさい?﹣
﹣すまない…止めてくれて感謝する﹣
﹣良いわよ、私の後輩ちゃんの為だもの。それに、セラフィの為に1人耐えてくれたグレイスちゃんのため、ね?﹣

完全に光は収まったが、なぜ収まったのか騎士は分からなかった。


─────

﹣﹣で挟まれた会話は、精霊王と精霊妃もしくわ精霊王同士にしか伝わっていません。他の人間には聞こえていませんので、よろしくお願いします。

次話も閑話になります。
短めなので、本日中に更新します(*ᴗˬᴗ)⁾
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