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第二部
112.48 変革
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48 変革
ジョーカーは右足で地面を踏み鳴らす。
その瞬間だけ目で見えない波動のようなものが放たれ、波動は俺やケージェイを吹き飛ばすほどの威力を持ち合わせていた。さらにはHPも3割ほど吹き飛んで、その様子を見ていたジョーカーは笑みを浮かべる。
「これはBCOの第3大陸、サードカンティネンに登場するボススキル【巨人の踏み足】だ!効果は体で感じてもらえたかな?」
おそらくは大陸を舞台にした特超級のレイドバトル、それがサードカンティネンのボスの登場する場だったんだろう。
ケージェイは地面に膝を突き、俺も受身を取るが精一杯で攻撃できずにいた。
とてもじゃないがこのスキルを連発されると、いよいよ俺も奥の手を出さないと仕方がない。
HPをアンプルで回復して、また刀を避けるターンが続く。俺の槍は破壊不能の文字に阻まれ、ケージェイは簡単には戦線復帰は難しそうだ。
槍だけじゃなく、拳も蹴りもどうにもならないとなると、防戦一方になってしまう。
「力を使えよヤト――」
俺はチートを使わないと決めていた。それは人を斬ってしまった後悔か、命を奪った罪悪感からか――今はまだ答えが見つからない。
「どうにもならないか」
俺がそう呟いた時だった、ジョーカーの動きが止まった。
それがどうしてなのかは分からない。だが、確かにジョーカーは左手で頭を押さえて苦しみだすと地面に膝を突いて嗚咽を漏らす。何がどうなっているか分からないが、おそらくこれは唯一の好機。
「ケージェイ!」
「ああ!」
立ち上がり駆け出すケージェイ、ジョーカーは刀から手を放して両手で頭を押さえる。
「――はあ!!」
振り下ろされる大刀。
それは確かにimmortal objectと表示された絶対防壁を破壊した。
しかし、ジョーカーの体に大刀が当たることはなかった。
「こ、これは!?」
「転移……いや、ログアウトか」
エフェクトに包まれたジョーカーは、一瞬にして姿が消え失せる。
そして、響く聞き覚えのない声。
「こんにちは、お2人とも――私はバットマンと申します」
「……バットマン――だと?」
ケージェイはそう言うと、大刀を地面に叩きつけた。
「声だけではなく姿を見せたらどうだ!!」
バットマンと名乗る声の主は、ケージェイの言葉にその姿を現すことはなかった。
「いやはや、期待に答えることができず面目ないしだいですが、私は戦闘はいたしません、ジョーカーの回収が目的であっただけです。彼も非常に重要なファクターですので」
「助けに?演技かとも思ったが――どうやら違ったようだな」
「元々あなたたちの戦いは、ジョーカーが割って入っていいものではなかったのですが、彼も責任感の強い人間でしたから」
「でした?……それで、私たちは戦いを続ければいいのか?」
ケージェイの言葉に、バットマンは笑い声を漏らすと言う。
「はは~は!それでも構いませんが、今回はそれも中断いたします、お詫びにと言ってはなんですが、あなたたち2人だけに特別にいいことを教えて差し上げましょう」
「……お詫び?何をだ――」
俺がそう聞くと、バットマンは再び笑い声を出して言う。
ジョーカーは右足で地面を踏み鳴らす。
その瞬間だけ目で見えない波動のようなものが放たれ、波動は俺やケージェイを吹き飛ばすほどの威力を持ち合わせていた。さらにはHPも3割ほど吹き飛んで、その様子を見ていたジョーカーは笑みを浮かべる。
「これはBCOの第3大陸、サードカンティネンに登場するボススキル【巨人の踏み足】だ!効果は体で感じてもらえたかな?」
おそらくは大陸を舞台にした特超級のレイドバトル、それがサードカンティネンのボスの登場する場だったんだろう。
ケージェイは地面に膝を突き、俺も受身を取るが精一杯で攻撃できずにいた。
とてもじゃないがこのスキルを連発されると、いよいよ俺も奥の手を出さないと仕方がない。
HPをアンプルで回復して、また刀を避けるターンが続く。俺の槍は破壊不能の文字に阻まれ、ケージェイは簡単には戦線復帰は難しそうだ。
槍だけじゃなく、拳も蹴りもどうにもならないとなると、防戦一方になってしまう。
「力を使えよヤト――」
俺はチートを使わないと決めていた。それは人を斬ってしまった後悔か、命を奪った罪悪感からか――今はまだ答えが見つからない。
「どうにもならないか」
俺がそう呟いた時だった、ジョーカーの動きが止まった。
それがどうしてなのかは分からない。だが、確かにジョーカーは左手で頭を押さえて苦しみだすと地面に膝を突いて嗚咽を漏らす。何がどうなっているか分からないが、おそらくこれは唯一の好機。
「ケージェイ!」
「ああ!」
立ち上がり駆け出すケージェイ、ジョーカーは刀から手を放して両手で頭を押さえる。
「――はあ!!」
振り下ろされる大刀。
それは確かにimmortal objectと表示された絶対防壁を破壊した。
しかし、ジョーカーの体に大刀が当たることはなかった。
「こ、これは!?」
「転移……いや、ログアウトか」
エフェクトに包まれたジョーカーは、一瞬にして姿が消え失せる。
そして、響く聞き覚えのない声。
「こんにちは、お2人とも――私はバットマンと申します」
「……バットマン――だと?」
ケージェイはそう言うと、大刀を地面に叩きつけた。
「声だけではなく姿を見せたらどうだ!!」
バットマンと名乗る声の主は、ケージェイの言葉にその姿を現すことはなかった。
「いやはや、期待に答えることができず面目ないしだいですが、私は戦闘はいたしません、ジョーカーの回収が目的であっただけです。彼も非常に重要なファクターですので」
「助けに?演技かとも思ったが――どうやら違ったようだな」
「元々あなたたちの戦いは、ジョーカーが割って入っていいものではなかったのですが、彼も責任感の強い人間でしたから」
「でした?……それで、私たちは戦いを続ければいいのか?」
ケージェイの言葉に、バットマンは笑い声を漏らすと言う。
「はは~は!それでも構いませんが、今回はそれも中断いたします、お詫びにと言ってはなんですが、あなたたち2人だけに特別にいいことを教えて差し上げましょう」
「……お詫び?何をだ――」
俺がそう聞くと、バットマンは再び笑い声を出して言う。
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