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2話 ドジっ娘が正義であり俺の直球
しおりを挟むあれから数日間、ただただ指輪にアビリティを付与しては消失までの時間の法則やらなんやらを確かめつつ、早く帰りたい気持ちで過ごしていた。
こっちの図書館の本の言葉とか、聖書の文面とかを記入すれば、何かしら神の加護的なものも発動させられるかもなんて考えたり。
色々試しにつけてはみたものの、結局、自分が身に着けている法衣や指輪の効果は発動しているのかすら分からない。
ボーっと屋敷の中を歩いていると、窓の外に忙しそうに剣や防具に何かをしている委員長の姿があった。
「委員長……何やってんだろう」
興味本意で声をかけると、彼女はいつものように笑みを浮かべて俺を呼びかえす。
「委員長、何してるの」
「あ、羽生くん」
彼女はこっちに来てから不安を誤魔化すように忙しそうに働いている。
「私は調律士でエンチャント付与を得意とするクラスだから、数も少ない職業らしいので……騎士さんたちの手伝いをしているんだよ」
そう笑みを浮かべる彼女に、「へ~」と返した俺は、こっちに来てから付いたであろうメガネの左のレンズにヒビが入っているのに気が付いた。
「メガネどうした?落としちゃったとか?」
「違うの、珍しがった騎士さんに取られて……その時に落として割れちゃったの」
「……たく迷惑な奴らだな、直せないのか?」
「うん、傷を直せても度がズレちゃうみたいで、歪むよりかまだこの小さなヒビの方が楽だからね。私メガネないと全く見えないし」
「災難だったな……」
落ち込む彼女のメガネを鑑定スキルで見ると、スロットが二つあってその二つに密にアビリティの付与をすることにした。
1つは自動修復。おそらくは修復後にはスロットは空になる。リミットが来るのが主な理由だ。
2つ目は、視力矯正強化。強化された視力は持続する……と思う。リミットは24時間のようで、一日で目が良くなるのなら便利かもって思えた。
ま、実際に効果がどの程度出るのかは分からない。
「それじゃ、委員長」
「うん、羽生くんが残ってくれてよかった」
そんな条件付きのメガネを付けた彼女と別れた俺はまた、アイテムにボーっとアビリティを付与して遊んでいた。
翌日、いつも規則正しい睡眠をとっていた俺を叩き起こすメガネ姿があった。
「起きてよ!羽生くん!」
「……メガネか……あと一時間だけ」
「ふざけてる場合じゃないの!大変なの!」
「……ね、眠いんだ~」
「メガネが直ったの!でも目がおかしいの!」
眠い中でも自身の昨日のできごとを思い出せてしまう。
「あ~そういえば……」
「昨日、羽生くんがメガネに何かしてくれたのよね?」
その言葉でようやく調律士もアビリティのスロットが見えることが理解できた。
「で、どうしたん委員長」
「目の前がグワングワンするの、これじゃ歩き辛くて……元に戻してよ~羽生くん」
……は?何だよ委員長、それ視力が良くなったんだからメガネかけてたらそうなるのは当然だろ。可愛いかよ!天然で可愛いかよ!
「もう~羽生く~ん」
「これ外せばいいじゃん」
俺がメガネを取ると、途端に彼女は冷静に事実確認をしだす。
「あれ?私、メガネかけてないのに、羽生くんの顔がハッキリ見える……」
「そりゃ目が良くなったんだから、メガネかけてたら見えづらいでしょうな。委員長って意外とドジっ子なんだな」
「っっ!わ、笑わないでよ!羽生くん!」
メガネを外した彼女は普通に可愛いかもしれない、でももっと美人になれば、見た目が変われば、彼女だって人間としての感性が変わるだろうし。
左手のやつ……ミサンガか、お~スロット4つある。
彼女が容姿の変化にどんな反応するのか興味はあった。
だから、1、身に着けていると美しくなる・永続的。2、肌が綺麗になる・永続的。3、胸がもっと大きく、形が良くなる・永続的。4、スタイルが良くなる・永続的。これらの効果の程は分かり兼ねます。
そんな適当に綺麗になりそうなアビリティを付与してみた。
「委員長さ、メガネ外したら騎士たちにモテるんじゃね?」
「……別に騎士さんにモテてもな……将来は元の世界で公務員の旦那さんとか欲しいから」
「へ~委員長は安定がお望みで?」
「うん、私の父さんは二-トで小説作家なんだけど、母さんは父さんを支えながら会社勤めをして私の世話もしていたの。でも私が11歳の時に病気で……」
委員長の生い立ちとか、前までだったら興味もなかっただろうけど、今は何か気になるな。
「母さんが亡くなった後は、父さんの両親の下で暮らすことになったの、経済力も生活力もない父さんは、私を育てるのは無理だって絶縁状態のおじいちゃんとおばあちゃんに土下座をして私を預けたの。おかげで私の不安は少し無くなったけど……本当は父さんと暮らしたかった」
「好きなんだな、お父さんのこと」
「うん、母さんが生きていた頃は、休日に清掃のボランティアに三人で参加したり、アパートの花壇の世話も父さんと一緒にしていたんだ……いい経験になるからって、人に花に優しい母さんみたいな人になってほしいって……あれ……ごめんなさい、泣くつもりじゃ……なかったんだけどな」
やべぇ、めっちゃ良い娘やで……委員長。
「ごめんね、羽生くん勝手に盛り上がって……」
「いいや、委員長の、新垣の話聞けてよかったよ」
そうして俺は委員長の可愛いところを知れたことに満足して、ミサンガの事など忘れてその日もアビリティを弄って飯食って風呂入って寝た。
その日、異世界で初めて見た夢に新垣柚夏奈が現れた。
『羽生くん、間違えて一緒のベットに入っちゃった』
ドジっ子。
『服も間違って脱いじゃったの』
まさかそんな属性が俺の直球ドストライクとは思ってもみなかった。
『あん、おっぱい、当たっちゃったね』
当たっちゃったって、当ててるし。
「羽生くん、起きて」
そんな跨って揺するなんて……新垣。
「ねぇってば……羽生くん」
「……柚夏奈」
「なんで呼び捨てなの?羽生くん寝ぼけてる?」
おっと、これは現実?それとも夢?
そこには、間違いなく新垣柚夏奈だが、雑誌やテレビに出ているような国民的が付きそうな美女がいて、しかも胸を開けさせた状態で俺に馬乗りしていた。
寝ぼけて見間違えているわけではない、脳裏に昨日のミサンガのアビリティを思い出して、その効果だろうと察する。
「羽生くん、私のミサンガに何かしたの?」
「……昨日アビリティ付けたんだよ」
「もう!勝手なことしないでよ!コレ、私の母さんの形見なんだから!」
「……亡くなったお母さんの?」
まじか、それは申し訳ないことしたな。
「破れちゃったらどうするの!元に戻してよ!」
「あ~アビリティは時間で消えるよ……それより胸どうしたの?」
「……寝てたら、ブラのフロントホックもシャツのボタンも破れちゃって……閉じれなくなっちゃったの……もしかして、これも羽生くんのしわざ?」
俺は肯定の頷きとともに、彼女の頬は膨らむ。
「ブラは変えが無いんだよ……どうしてこんなことするの!」
そこ!気にするところ!そこ!
「顔とか、もしかして気付いていない?」
「顔?」
俺が手鏡を手渡すと、彼女はそれをジッと見つめて「なにこれ」と漏らす。
「これじゃおじいちゃんもおばあちゃんも私だって分からないよ!」
「いやいや、分かるって、新垣が綺麗になったって思うだけだよ」
「分かんないじゃん!こんなに美人になってたらもう私じゃないよ!」
「大丈夫、カワイイし、ほら、胸も大きくなったし、ちょっと身長も伸びたんじゃないかな?」
おそらくは身長も変化しているはずで、俺はあまりに美人になった彼女にドキドキしながらも、落ち着かせようとしつつ自身を落ち着かせたかった。
「ブラはほら、メガネみたく俺がアビリティ付ければ直るし、なんだったらサイズが合うようにするからさ」
「本当?でもシャツは?」
「シャツもシャツも」
「羽生くんってそんなすごいことできるの?」
俺はアビリティのことを彼女に話て、彼女はそれを信じた。
「この胸も顔も、メガネが直ったのも視力が良くなったのも羽生くんの所為ってことなんだね」
「そう、俺がアビリティを付けたから……ごめんな、責任はとるからさ」
「責任って何?ちゃんと男の子として責任とってよ」
「例えば?どうすればいい?じいちゃんばあちゃんを説得する時に立ち会うとか?」
新垣はモジモジしながら、「男の子の責任ってのは」とボソボソと呟く。
「私をお嫁さんにして将来的に償うってことだよ……羽生くん」
「……」
可愛いかよ!
「新垣がそれがいいって言うなら、お、男として責任とるよ!」
「……絶対だよ、私、信じちゃうんだから」
や、やばい、予想外が過ぎるぜよ!地味なメガネっ娘の委員長キャラが、実はドジっ娘で天然でピュア過ぎるハートを持っていたなんて誰が予想できるのか!
「新垣、とりあえず、ブラとシャツ直そうぜ……(めっちゃ見えてるし)」
「あ、うん」
と言いつつ俺の目の前で脱いじゃう新垣マジ天然。
「……ね、羽生くん、私のミサンガも破れないようにできるかな?」
「いや、ミサンガって破れてなんぼじゃなかったっけ?」
「そうだけど、破れないミサンガがあっても、私は良いと思うんだ」
あぁ、可愛いかよ。
完全にもろ見えな状況で、平然と俺のことを見ている彼女は、おそらく容姿が変わろうが環境が変わろうが変わらない優しい娘なんだと思う。
「はい、これで付けてれば自然に直ると思うよ」
「本当に?って言っても、メガネが直ったんだからきっと直るよね……ね、それまでどうやって過ごそうかな」
「このローブ着とけば?一応アビリティも付与しているしさ」
「うん、ありがとう、そうするね」
そうして彼女の胸はようやくローブで隠れてくれた。
それから数時間でブラはサイズが自動的に合って、破れていた部分も修復された。
新垣は俺に、「下のパンツもこれしかないからアビリティ付けて」と笑顔で言い出した時には、また目の前で脱いじゃうのかい?と期待したけど、結果的に彼女は期待通りにスカートを履いたまま脱いで手渡してきた。
手渡されたその脱ぎたてを手に取ると、彼女は笑顔で少しだけ恥ずかしがりながら、「早く返してね」と言う。
その後、スカートにもアビリティを付与して、壊れづらくするためにアビリティ効果時間延長を付与しているから、何とか二日ほどは俺が触らなくてもアビリティ効果が続くようになっている。
「じゃ、毎日一度は羽生くんに下着を渡さないといけないんだね」
「別に脱がなくても、着ているのに触ればいいんだぜ?一瞬だけでもね」
「……羽生くんのエッチ」
「……っ!」
その恥ずかしがる姿は本当に恥ずかしがっていて、彼女が身に着けているか否かで恥ずかしさが変わるのを知ったのはこの時だ。
その日、いつものように調律士として新垣柚夏奈が働いていると、いつもは話しかけてこない兵士や騎士たちが、次々話しかけてきた。
もちろん、彼女だと分かっていなかったこともあるが、一番は彼女が美人になったからなのは間違いない。
「私と結婚してください!」
「え!いや……そういうのは間に合ってます!」
そう言って俺の後ろに隠れると、完全に俺が結婚相手として見られるのだが、責任を取ると言った手前俺は虚勢のままに楯になった。
「……では次に求婚する時は、それなりの持参金を持ってまいります!」
「……お金の問題じゃないんだけどな……」
迷惑そうにそう言う彼女は、その日から何度も騎士や兵士に告白され求婚され、さらには貴族まで出てきて彼女に求婚しだすようになってしまう。
「かなりモテモテだな新垣」
「やだよぉ、怖いだけだよ……羽生くんなら嬉しい?こんなに好きでもない人に言い寄られるの」
……男は美人なら、据え膳食わぬは男の恥という言葉もありまして。
「俺は、新垣に責任をとる必要があるからな、他の女に言い寄られようとも、今は拒否あるのみかな」
「……っありがとう」
頬を赤めて顔を隠す彼女はおそらくは照れているのだろうけど、言った俺の方が照れているのは言うまでもない。
そんな俺と新垣の二人だけの空間に、淀んだ空気を纏い入ってくるのは間違いなく嫌な奴だった。
「新垣柚夏奈、新垣柚夏奈はいるか!」
「……なに?」
現れたのは、妙に整った身形をした男で、新垣はその声の大きさに怯えて俺の後ろへと隠れた。
「新垣柚夏奈とはお前だな、ふむ、確かに、美しいな」
「な、なんなんですか?やだ、羽生くん」
「何ですかおじさん」
もちろん、貴族だろうと分かってはいたけど、悪い奴なのは間違いなかった。
「私の名前はアルデミア・クフェン・アルバンデングブルグ・ナクライアスレムス、アルバンデングブルグとナクライアスレムスの領主をしておる」
「はぁ……(名前の長さは覚えさせたくないからなのか?あんたは魔術師かなんかかい)」
「お前を妻にしてやる、ユカナついてこい」
「……いきなり来てなんですか……」
まったく、貴族ってこういうのなんだなって思い知らされる。
「私は学士のクラスを持っているからな、土地運用や領主としての素質があったのだ、あとは美しい嫁だけいればいい」
「羽生くん、助けて!」
嫌がる新垣の手を掴む長い名前の貴族の手を俺は払いのけた。
「嫌がっているのがわからなんですか?」
「……なんだ貴様は?」
「彼女と同じ世界の人間ですよ、ちなみにクラスは鑑定士です(ドヤっ)」
「魔法士のような法衣まで付けて、珍妙な!この!無礼者め!」
貴族は腰の剣をサッと抜いて振り上げると、周りの兵たちも困惑する。
新垣目当ての兵士や騎士たちの目が貴族を止めるかもと思っていたけど、貴族は迷いなくそれを振り降ろした。
左手を前に出した俺はまさに条件反射でそうした。
自身の法衣についているアビリティなんか当てにもしていなかったからだ。
「死ね!」
あ、死んだな、と俺も思った。
ギン!っと甲高い音が響くと、剣は法衣の随分前で跳ね返り、見えないままに貴族の体を斬り刻んだ。
「ぐはっ!」
あれ?この法衣のアビリティが発動したのか?
「あいつ、クフェン様に手を出したぞ!」
「兵長!奴らを囲め!無礼罪でひっ捕らえろ!」
今時無礼罪って、と思ったけどここは異世界だった。
「新垣、逃げるぞ」
「う、うん」
新垣の手を握った俺は、法衣のアビリティがちゃんと発動していると分かったから、あえて兵士や騎士たちに突っ込んだ。
振られる剣は全て反射し、攻撃してきた相手は次々に勝手に気を失って倒れた。
「あいつ、どんな魔法だ!」
「ただのアイテム鑑定士じゃないのか?」
兵舎の中を逃げる俺と新垣は、素早く身を隠す場所を探して物置へ駆けこんだ。
息を荒くする新垣に、更に息を荒くする俺も運動が不向きな文化系部活出身らしい姿だった。
特に帰宅部である俺は運動など体育でしかしないほどで、幸運とか不運回避だけじゃなく体力上昇が付けられればと思いつつ息を整えていた。
「俺のアビリティが身体強化も効果が出るならよかったんだけどな……」
「運動できるようにとかは無理だって言ってたよね、羽生くん私よりも体力無いの?」
「面目ない、運動とは縁が無い生活だったから」
そんな会話をしていると、新垣は不意に笑みを浮かべてクスクスと笑い出す。
「ふふっなんか、小学生の頃のかくれんぼしてるみたいで楽しいね」
「小学生……ラノベとか読んでたな……」
「羽生くんっぽいな~」
「新垣はぽくないよな、かくれんぼとか」
「お小遣いとかなかったから、体使って遊ぶことしかしてなかったな」
彼女の性格の良さはその辺からも影響しているのかもな。
彼女が着ている法衣は、おそらくはロリドワーフサイズで、小さすぎるポンチョのように肩が少し隠れる程度のもので、姿を隠したりはできない。
スロットは5つで、中身は俺が着ている法衣の劣化版のようなアビリティが付いている。
「俺は新垣の楯になれるからさ、新垣は何か人を殺さないで無力化する武器が欲しいね」
「そうだね、私ビックリしたもの、羽生くんったら斬られちゃうかと思ったら全然平気なんだもの」
「俺も正直驚いてるんだよ、本当に機能しないアビリティだったと思ってたからね」
「……私、分かってて守ってくれたと思ってた。ごめんなさい、命がけだったんだね」
「責任とる、そう言ったからには俺だって命だってかけるさ。ちなみに、新垣が美人になったからじゃないぜ、むしろ……」
むしろ、ドジっ娘がトリガーになったってことは間違いない。
「むしろなに?羽生くん?」
「……足音だ、それも」
重々しい足音は、間違いなく重装備だろうし、騎士とは圧みたいなものが違う。
「この足音……王様の側近についていた近衛重騎士だと思う」
「なんでそんなのが出てくるんだ……新垣、この指輪付けてみてくれ」
「え?指輪……エ、エンゲージリングとか?」
恥ずかしがりながら受け取る彼女に、俺はすぐに意図を説明する。
「それには聴覚強化が付いててさ、鼓膜保護とかも付いているから、でも俺が使っても身体強化系は反応しないからさ」
「……だ、だよね、うん、分かってる。外の様子を聞けばいいんだよね?」
そうして新垣が外の様子を俺に伝え出す。
「……今いるのは王側近の近衛重騎士たちで、アルバなんとかって貴族が重症で王が私と羽生くんに捕縛命令を出したって言ってる」
「まじか……このまま捕まったらあっちの土俵で勝手に裁かれて、新垣は無理やりにでもあの貴族の奥さん、悪ければドレイって可能性もある」
「……私、そんなの嫌」
「分かってる、市宮とか新野とかが帰ってくるまでこの街から出るべきかもな、四人は北側へ向かったらしいから、帰る時も北からだろうし、北の町にでも身を隠すしかないな」
「羽生くん、すごいなぁ頼りになる」
「頼りにしてもいいぜ、でもあてにはしないでくれ。期待には応えられないのが俺クオリティだからさ」
「ふふっ羽生くんのそういうところ……」
そこまで言った彼女はその瞬間に口籠って、顔を隠してしまう。
「新垣?」
「……待って、少しだけ受け止めたいから」
何を?と思う俺は、藁にも縋る想いで指輪に幸運とか神の加護とかをアビリティとして付与してみた。
しかし、そのアビリティは効果時間すら表示されず、効果が発動していないことを意味していた。
「やっぱ無理か……さて、やれることはやった、これ以上兵士が集まる前に、強行突破して逃げますか」
「うん、行こう太一くん」
「へ?」
「や、ち、違うの、なんか、羽生くんって呼ぶのおかしいなって、お互いに命預け合ってるわけだしさ」
「確かに一理ある、苗字で呼んでるのって、他人行儀だしな……準備はいいか柚夏奈」
「……はい」
その時、俺たちが強く手を握り合っていたのは恐怖からか、それとも人肌が恋しかったからかは後になっても分からない。
俺と柚夏奈が木箱だらけの倉庫を出ると、剣を手に持つ重騎士たちがすぐに攻撃してきた。
「男は殺せ!女は捕らえろとの命令だ!」
「デッドオアアライブかよ!」
振り降ろされる剣は大剣で、ランクA相当のアイテム。
「太一くん!あれ、私のエンチャントが付いてる!気を付けて!」
と言われても、避けられないし、受けるしかできないのが俺の今の立場なんだけど。
ガィン!と音が響くと、その瞬間に重騎士が勝手に倒れていく。
「……何が起きているんだ!」
「あんたらは知らないのさ」
「何をだ!」
「チートって言葉をさ!」
本当に、チートみたいな状況だよな。
「おい!兵長殿が到着したぞ!」
兵長?もしかして、あの王様の横に立っていた大きなおっさんか!
その予想とは違い、現れたのは重騎士だった。
「貴様ら、ザコ一人に何をやっているか!……お、女、なんだあの美しい女は!」
「あれは新垣柚夏奈という調律士のクラスを有する女です。アルバンデングブルグ・ナクライアスレムス領主様が妻にとおっしゃっている方です」
「……あのバカ領主の嫁だと?そんな勿体ないことができるか!捕らえて俺の屋敷で飼ってやる!」
「それは、め、命令違反でありますが」
「知らん!お前たちが黙っていれば伝わらんことだろ!」
勝手に盛り上がって柚夏奈に厭らしい目を向ける兵長を前に、俺は緊張しながら立ち塞がった。
「柚夏奈に手を出す前に、俺を倒せなきゃなおっさん!」
「……子どもが図に乗るな!」
かなりの迫力だった、柚夏奈がいなかったら降参していたところだ。
でも、剣を振り降ろした側勝手に倒れてしまうと、俺は思わず柚夏奈の手を握って駆けだしてしまう。
「今だ!駆け抜けるぞ!」
「うん!」
と勢いよく走り出してみたものの、追いつこうと思えば誰でも追いつける程度の移動速度で、剣を振り上げて振り降ろす時間は余裕であったからか、俺たちが通り過ぎた道には次々に負傷兵たちが並ぶことになった。
重騎士たちも最初は普通に斬りつけてきたけど、途中から自身に出せる最強の技、スキルで攻撃し出してしまい、俺のアビリティが反射でより深く傷付くだけだった。
兵舎を出る頃には、兵舎内は大騒ぎになっていて、門を守る兵士たちも俺たちから逃げるようになっていた。
「近衛重騎士たちが全滅したそうだ!」
「ば、化け物か!」
「て、手を出すなよ!藪蛇はごめんだからな!」
俺と柚夏奈が通り過ぎるのをただ見ているだけなのは賢明な判断だと思うけど、どうせなら野次馬たちも離しておいて欲しかった。
人だかりに向けて走ることになり、兵士たちの噂を聞いた街の人たちは俺たちが向かうと災害時の無秩序な逃走のように人の波を作った。
「き、気を付けて!子どももいるんだから!」
と声をかける柚夏奈の優しさは、逃げる人たちには聞こえるはずもなく。
子どもがこける様子に彼女は足を止めようとしたが、俺が引っ張ってそれを拒んだ。
「俺たちがいるからこの慌てようなんだ、近寄ったりしたら怪我じゃすまなくなるだろ!」
「そ、そうだね」
彼女は俺の言葉に悲しげに俯くと泣いているようだった。
俺が強ければ、こういう時の為のアビリティを付与しておけば、そういう考えが頭に浮かんではいたが、今は逃げることに集中するため首を振って頭の隅へ追いやった。
北側へと逃げて行くと、やはりと言うかなんというか、門の前に既に大勢の兵士や騎士がいた。
いわゆる内地という場所に当たる王都は、魔物や魔王軍との戦いもないから、いざってなったら王都内の兵士騎士は俺たちを捕まえるために動かせるから、嫌でも大軍になってしまうわけだ。
「普通に通れるけど、かなりの兵士が傷つくよな」
「そうだね、できれば傷つけたくないもんね」
そう言う柚夏奈が落ちている枝を握りしめて殴る気満々なところがもはや愛おしい。
「そういえば、話てなかったけど、俺のアイテム鑑定士としてのチートはさ」
「チートって何?英語かな?」
おっと、そこからとなると面倒だな。
「ん~裏技って分かる?」
「あ~!知ってる、ハンバーガーが安く買える奴だよね!」
クーポンは裏技ではない、でも愛おしいから突っ込まない。
「で、俺はアイテムのアビリティスロットが開いていたら、好きな言葉を入れて、その言葉の意味することが発生させられるんだ。さっきから兵士や騎士たちが倒れているのは、スロット5に付けた全敵対行為反射のおかげなんだよ」
「凄いね!普通のアイテム鑑定士には使えない技ってことだよね」
「そういう事、柚夏奈はさ、そういうの無いのかな?調律士だっけ?」
彼女は少し上を見ながら考えるように言う。
「私、装備に強化をつけられるけど、自分で持つ物にならいくらでもつけられるの」
「普段はどうなんだ?他の調律士との違いとか」
「ん~あんまりないと思うな、自分が持つ武器だけいくらでも効果を上げたり、範囲とか威力とか増しましにできるの、牛丼みたいに」
牛丼、分かる、安いしな……チェーン店で食べたことはないけど。
「牛丼はともかく、十分チートな能力ではある、俺の能力と合わせれば十分柚夏奈は最強になれるわけだな」
「そ、そうなの?」
「あとは武器だよな、スロットが多くて、武器としては粗雑品な調律士でも装備できるものがいいんだけど」
そう思いつつ、柚夏奈を見ると、急に大きくなった胸を抱えるようにして腕に乗せると、溜息混じりに本音を吐露した。
「重い……疲れるな……これ」
「……ごめんな、まさか本当に大きくなるなんて思ってなかったから」
「え!や、やだ、聞いてたの?恥ずかしいな……もう」
「……今度胸が軽くなるアビリティを付与してあげるよ」
「本当!絶対だからね!本音を言うと、正直大きすぎるのこれ」
確かに、大きすぎる、もう、暴力に近いインパクトがある。
「今度、太一くんも持たせてあげるよ」
「……」
天然って恐ろしい、完全に照れさせにきてるのに、無意識とかもう暴力でしかない。
そんな二人でコソコソとしていると、人目を引くのは必然で、一人の兵士に見つかってしまう。
「む!いたぞ!ここにいたぞ!」
「やばい、逃げるぞ!柚夏奈!」
「うん!」
傷つけないようにと逃げた先は、街の片隅の倉庫らしき建物が並ぶ一角で、完全に行き止まりのそこに追い詰められた俺たちは、いよいよ戦うしか選択できなくなった。
「行き止まり!どうしよう!太一くん」
「武器……これはどうだろうな……そ、装飾品の剣って名前すらないのか」
倉庫の建物の前に掛けられていた飾りの剣は、名前も空欄でステータスも無いも同然だった。
「でも、スロットは3つある」
俺は咄嗟にその剣にアビリティを付与して柚夏奈に手渡した。
「柚夏奈、その剣なら人を傷つけることなく無力化できるぞ!」
「え!本当に!分かった!早速使ってみるね!」
そう言って剣を構えた柚夏奈の前に、近衛重騎士よりも綺麗な鎧を身に着けた男が現れる。
「たく、聖騎士である俺を呼び出して何かと思えば、うん、確かに美人な娘さんだ、惚れた!」
「おいおい、聖騎士って奴かよ」
俺は内心、魔法障壁とかで防がれてしまう可能性があるのではと考えてしまう。
聖騎士は魔法が使える上に、スキルという技まで使える。クラスの中ではチート級のクラスだが、それに対して俺のアビリティは有効な攻撃手段になるだろうか、そんな不安はあった。
「男は殺せだったな、近衛重騎士なんかにはもったいない美女だな……結婚しよう!新垣柚夏奈!」
「も、もう間に合ってますから!」
「柚夏奈、それはどういう――」
俺が言い終わる前に、聖騎士はその剣を俺に振り下ろしていた。
「ぐはっ、なんだ!まさか攻撃を反射しているだと!ヒール!」
反射されたダメージが魔法で即時回復された!しかも様子見で手加減してきたから、致命的なダメージには程遠い。
「一撃で勝手に倒れてくれればよかったんだけどな」
俺には攻撃手段がない、時間をかけて俺にも分からない弱点を突かれるのが最悪な結果だ。
ゲームのバグやエラーも、視点を変えることでしか気付けないこともある。
「属性を付与した剣ならどうだ!くっ毒の魔法では!間接的な攻撃は反射されないかもしれないな!」
聖騎士は基本魔王軍と戦っている、おそらくは休養で王都にいたんだろ、さすがに戦い慣れているだけあって、次から次へと試行錯誤してくる。
「太一くん!今助けるからね!」
不格好に振り上げられた剣をそのまま振り降ろすだけの柚夏奈は、自身で範囲拡大をエンチャント付与しているから離れていてもその剣を振りさえすればいいと考えていた。
「えい!」
つるはしでも振り降ろすが如く、その剣は振り降ろされた。
「そんな距離で剣を振るうか!美女よ!」
そんなことを吐く聖騎士も、まさか柚夏奈の剣の効果が何かまでは理解できなかったらしい。
パン!と風船でもはじけたかのような音が響くと、聖騎士とその後ろに並ぶ騎士や兵士たちが全員真っ裸になってしまう。
「きゃ!やだ!なんでぇ?」
柚夏奈は恥ずかしそうに視界を隠す。
聖騎士も兵士も騎士たちも全員が持っている武器で自身の大事な部分を隠すと、俺は柚夏奈の手を握って駆けだした。
「今なら走り抜けられる!」
「太一くん!この剣なんなの!」
「敵を全裸にすることができる、ってアビリティと、相手が傷つくことはないってアビリティを付与しておいたから、柚夏奈の効果上昇やら範囲拡大やらで全員が裸になったんだよ」
「ん~もう!」
顔を真っ赤にして怒る柚夏奈に走りつつ笑いながら街の北へと抜ける門をくぐった俺は、その道中の兵士たちも裸になっていたことから、この辺一帯の兵士や騎士が全裸になっているのだろうと思うと、さらに笑いが込み上げてきた。
全武装解除とした方がよかったかな、それなら全裸になること無く武器も奪えたわけだしな。
「もう!太一くんの所為だよ!」
「はいはい!」
ま、柚夏奈のこの表情が見れただけでこっちが正解だったんだろうな。
恥ずかしいやらおかしいやらで複雑な表情の柚夏奈と一緒に、目的の北側の町を目指して俺は走り続けた。
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一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
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