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第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―

ミスティアとゴブリン軍団 その一

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 私の名はミスティア、国民からは裏切り者のミスティアと呼ばれている。

 昔は勇者として世界を股にかけ魔物と戦っていたのに、今は男を股にかけ壊れそうな自分と戦っている。
  
 こんな汚れた体の私のどこがいいのだろうか、部下でもある8人の男たちは私の身体を競うように求める。

 8人の男たちは私と絆を深めなければ獣化バルティネスすることが出来ない。

 絆とは真奈美の秘書であるカスミが言っている言葉を借用したが、私と彼らに絆など微塵もない、あるのはただれた肉欲の関係だけだ。
 
 最近は定期的に攻めてくるゴブリンの群れの対処に追われている。

 ゴブリンごときにこの門は壊せないけど、真奈美の命令は門に近寄る者の抹殺及び破壊だ。正直煩わしいのだけど、やらないわけにはいかない。

 その日、私は真奈美に呼ばれて首都の王宮に出向いた。

 二級市民であるグランヘイム王国民は外周側に住んでおり、そこを通るのは正直に言って苦痛だ。

「おい、ミスティアだ、ミスティアがいるぞ! 裏切り者め!」
「この人でなし! どの面下げてこの街に来た!」

 民は私を裏切り者とののしり蔑む、時には石を投げられ水をかけてくる。
 これは罰なのだ、ガリウスを裏切り悲しませたわたしの。

 外周を抜け第二門から中に入ると景色が様変わりする。

 町並みはもうすでにグランヘイムではなく、岩をくりぬいたような建物が所狭しと建っていた。まるで渓谷の中を歩いているようだ。

 この地域にはグランヘイム王国民は一人もいない、すべて日本人だとカスミが言っていた。

 そのせいか銀色の髪の毛が珍しいようで子供達が寄って来ては指を二本だけ立て『ピース、ピース』と私に向けて言ってくる。

 同じように真似をするとすごく喜ぶ、何が楽しいのだろうか?

 街行く人の髪の毛はすべて黒色で顔は皆幼い、年齢を聞くと私より幼い容姿の者が私よりも年上で驚かされる。

 日本人と言うのは年をとりにくい種族のようだ。

 王宮に到着すると、私を改造したカスミが出迎えてくれた。

 カスミは私に敬意を表して接してくれるが、あの9人と交わるように言ったのはカスミだ、わだかまりはすぐに無くなるものじゃない。

「ミスティアお久しぶりです」

「そうね、それでなんの用?」

 今回呼ばれたのは2か月前の黒の戦士との戦いで失った獣人の補充だと言う。

 補充などいらない。だいたい補充なら送りつければ良いのに、わざわざ呼び出したと言うことはまた何かの実験をしようとしているのかもしれない。

「ではこちらへ、真奈美さまがお待ちです」

 カスミの後をついていくとベッドが一つだけおいてある部屋につれてこられた。

 真奈美はまだいていない、30分ほど待っていると真奈美が男を一人連れてやってきた。

 顔はマスクをしているので見えない。

「お待たせしましたねミスティア」

 私は返事をせずにそっぽを向く。真奈美の顔を見ると我を忘れて襲い掛かりそうになる。

「あらあら、そんな態度をされると、いじめたくなっちゃうじゃないですか」

 何を今さら、散々いじめておいて、いじめたくなるもないものだ。

 真奈美はいやらしい笑みを浮かべ私を恫喝する。
 
「まあ、良いでしょう今日はガリウスを忘れられないあなたにプレゼントです」

 真奈美が指を鳴らすと、その男はマスクを外した。

「ガリウス……」

 私はとっさに腕を前に組み身体を隠す。

「ああ、安心してくださいこの子は私が作った人工獣人デザインワーウルフ10号でニグルと言います」

 その男はガリウスそっくりで、まるで兄弟、いや本人そのものが私の前に現れたのだ。

「なんでガリウスにそっくりなのよ……」

「ガリウスを忘れられないあなたのために作ったのですよ? もっと喜んでください」

 また始まった、真奈美は私の嫌がることが好きなのだ。わざと私が嫌がることをして反応を楽しんでいる。

「……最悪ね」

「こいつを抱けば良いのか?」

 ガリウス似の男は私を見てはつまらそうに言う。まるでガリウスに侮蔑のまなざしを投げられているようで身体がこわばる。

「ええそうです、あなたのお好きなようにお抱きなさい」

 真奈美はニグルの背中を押し私を抱くように指示をする。

「いやよ、近づかないで」
 
 私はニグルから逃げるように後ずさる。

「何をそんなにいやがるのです、あなたの待ち焦がれたガリウスですよ」

 何がガリウスなものか、ガリウスはこんな表情はしない。

 一度たりとも私を蔑むような眼では見ない、ランスロットとキスをした時でさえ。

 それなのにニグルはガリウスの顔で侮蔑のまなざしを私に向けながら近づいてくる。

「いやよ、誰に抱かれても良いけどこの人は嫌!」

 その私の言葉にニグルは舌打ちをする。

「おいふざけるなよ、俺だってお前みたいな中古女はお断りなんだよ。嫌だけど真奈美様の命令だから嫌々抱いてやるんだ」

 ニグルはそういい捨てると私の頬をたたき、倒れた私のお腹を蹴りつける。何度も何度も。

 私はそのままひざまずき真奈美に懇願する、

「お願いします。なんでもしますから、この人とだけはお許しください」

 真奈美は私に寄り添い頭をなでる。

「男と交わって快楽に溺れぬように声ひとつ出さないよう我慢している。そんなあなたのためにデザインした人口生命体なのですよ。ちなみにその子の体臭はあなただけに効く媚薬効果があります。溺れてしまいなさい」

「お願いします、この人だけは嫌」

「むかつく女だな……。いや気が変わったわ、お前今日から俺無しじゃいられない体にしてやるからな」

「真奈美様、こいつ今から抱いても良いですか?」

「お好きになさい。ミスティアその子に抱かれなさい、拒否すれば今から一秒毎にグランヘイム国民が一人ずつ死にます。」

 真奈美はそう言うとカウントを始めた1秒一人死亡、2秒二人死亡と。

「やめて、するわ……だからやめて」

 それでも真奈美はカウントをやめない。

 私はニグルに抱きつき服を脱がそうとするがニグルは私の手をはらう。

「おい、散々嫌だと言っておいて今さら簡単に抱いてもらえると思うなよ? 抱いてほしいなら土下座をしてお願いしろ」

 守らなければいけない人たちがいる。

 私の矮小なプライドと汚れた体で守れるならば安いものだ。

 私は言われたとおりに土下座をして、お願いをした。

「お願いします、私を抱いてください」

 私は額を床に擦りつけてお願いをした。屈辱なんてない、今更なくすものもない。

 黒の戦士の言葉が頭をよぎる『俺が君を必ず助けるから』私は助けてもらえるような人間じゃない。

 最愛の人を裏切り、あまつさえ傷つけた愚かな女だ。

「ふん、お願いの仕方がなってないが時間はある、ゆっくり調教してやるよ」

 調教でもなんでもすれば良い。

 ニグルは土下座をしている私の頭を踏みつけ高笑いをしていた、

◆◇◆◇◆◇

 半日が経ち私とカスミはミスティアの様子を見に移動した。

「真奈美様少しやり過ぎではないでしょうか?」

 カスミが私の行いに対して疑問を口にするのは珍しい。

「やり過ぎとは?」

「ミスティアの事です、あそこまでする必要はあるのですか」

 何をいうのかと思えば、そもそも男たちと交わうように進言したのはあなた達でしょうに。

 それを言うと、あれは力の授与のため必要な儀式であり、いじめる事とは違うという。

 人間の感情が分からない人口生命体の言いそうなことだわ。

 好きでもない男に無理やり抱かれて喜ぶ女などいるものか。

「だいたいミスティアなど、ただのモルモットで情をかける相手じゃない」

 元々ミスティアは私のおもちゃだ、それをどうこうしようが文句を言われる筋合いはない。

「ミスティアを私達は自分達の子供のように思っております。ですのであまり酷いことをされるのは精神衛生状良くありません」

 言うに事欠いて子供か、子供を産めない人口生命体が親の情を持つというの?

「それに、一人の男にいつまでも引きずられるよりも新しい男を作った方が良いでしょうに、私はその手伝いをしているだけよ」

「ご自分を棚にあげて?」

「廃棄されたいの?」

「……申し訳ございません」

 部屋の扉が開くとニグルがミスティアの髪をつかみこちらに引きずりながらニコニコとした笑顔で寄ってくる。

「真奈美様! 俺、こいつ気に入りましたよ。声上げないように耐えてるのがいじらしくて落としたくなりました」

 馬鹿な女ね、耐えれば耐えるほど男の心をくすぐると言うのに。

「そう、好きになさい」

 そう言うと白濁液まみれのミスティアの髪の毛を引っ張り私に見せる。

 汚ならしいわね。

 私は鼻を手で覆うとその場をあとにした。




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