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第二章 真の勇者は異世界人

守るべき者と捨てるべき者

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「助かったのか?」

 ミリアスが命が助かった事に安堵あんどのため息を漏らす。

 助かった? 本当に?

 なぜ精霊鬼フィリィアは私達を殺さないで撤退したのか?

 まだもう一段強くなるようなことを言っていたのに。

 そもそも、あのままでも勝てなかった。

 だからこそ、私達を見逃す理由はない。

 精霊神である精霊龍メルティナ。神よりも永い時を生きてきたとされるいにしえのドラゴン。

 彼女が現れなければ、私たちは死んでいた。

 だが、彼女はどう考えても精霊鬼フィリィアの仲間だ。

「メルウスはあんなスゴイ連中を仲間にしたから……。私達みたいな弱い仲間はいらなくなっちゃったんだね」

 マリアは捨てられた、子犬のような顔をして自虐の言葉を口にして自らを蔑む。

「馬鹿じゃないのかお前は、兄貴がそんな事で俺達から離れるわけないじゃないか」

 ミリアスが馬鹿なことを言うなとばかりに、マリアの妄言をたしなめる。

「でも」

「でも、じゃない。兄貴はそんな人間じゃない」

「そうだね、メルウスはそんな人じゃなかったよね」

 ミリアスはマリアが納得したのを確認すると、ウンウンと頷き満足するとそのまま意識を失い前のめりに倒れた。

 マリアがそれを抱き締めて倒れるのを支えた。

「無理させ過ぎたね。ありがとう」

 マリアからミリアスに労いの言葉が贈られた、マリアも成長したのだろう。

「マリア様、ミリアス、何をなさっているんですか……」

 その声の主は、鬼の形相をしたサラスティだった。

 ミリアスに出てくるなと言われて隅に隠れていたところ、戦闘音が無くなったことからテントから出てきたら浮気現場を発見したと言うところか。

 いや、浮気じゃないけどね。

 そして現在修羅場です、サラスティは人の話を聞かない娘のようね。

 彼女の言い分は抱き締めなくても良いでしょう、倒れるまま倒れさせれば良かったと言う。

 いや、打ち所悪いと死ぬからね?

 マリアは″仲間を助けただけだ、戦いもしないで奥に隠れてた人間がガタガタ言うな。″と言って一蹴した。

 額面通りの言葉を、そのまま投げつけた。

 隠れてろって言ったのはミリアスだからね。

 それで責められるのは筋違いだけど、普通なら心配でテントから出てきても良いはず。

 出たら出たで足手まといになるから、懸命な判断ではあるけどね。

 言い方が言い方なのでサラスティも引くに引けなくなるし。

 まあまあ、となだめるミリアスは二人からボコボコ殴られる。

 相手をののしるたびに、一発殴られるのである。

 マリア、あんたミリアス殴るの楽しんでるでしょ……。


「ふん、もういいわ。で、お姉様、私達のパーティーは解消するんですか?」

 マリアは意地悪だ、聞かなくてもわかるだろうに。

 えて意地の悪い質問をする。

 まあ、言葉にしないと伝わらないこともある、ちゃんと言葉にして言おう。

「私が悪かったです、二人は大事な仲間です。掛け替えのない親友であり、家族です。だからずっと一緒にいてください」

 私は二人の目を見て強く手を握った。強く強く握った。二度と離さないように。

「当たり前です。どこまでも一緒ですよ、お姉様」

「まあ、兄貴にフラれたら俺が第二婦人にしてやるから、安心しなよマイラ姐」

 そう言うと眉間をポリポリと掻く。

 ミリアスがメルウスの真似をしてるのがおかしくて、三人で大笑いした。

 その後、第二夫人という言葉に怒髪天のサラスティさんがミリアスを拷問したのは言うまでもない。



『ケンケン、今の私でもハコブネに行かなきゃダメ?』

『いや、今のあるじは我を見いだしてから今まででの中で一番精神が安定している。これならばハコブネに行く必要はない』

『そう、みんなのお陰だね』

『そうだな』

 でも、本当にガリウス様は私を殺そうとしたのだろうか。

 分からないことを考えても仕方ない。

 なるようになれだ。

 ただこの二人だけは何があっても絶対に守ろう。

 ガリウス様を敵に回しても……。





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