27 / 158
第二章 真の勇者は異世界人
真奈美の憂鬱
しおりを挟む
これは黒の戦士と戦った後の話。
マナ遮断後に100名ほどの日本人を強制異世界転移させ、この旧グランヘイム王国、現大和神国に住まわせたのだが色々と問題が山積みである。
大和神国はマナ遮断により地球人でも魔族に変わることなく過ごせる。
まずは100名の技術者を選りすぐって異世界転移させた。
選ばれた100人の知識は地球の叡智ノ図書館から離れ、この星の叡智ノ図書館に繋げられた。
つまり、叡智ノ図書館を持つ私は彼らの知識をすべて手に入れることができた。
これにより、欲しかった地球の科学の知識が大量に手に入った。
その私が得た地球の知識を人工生命体にダウンロードした。
人工生命体は思考を並列処理出来るように神の祝福 自己犠牲を持つものをクローニングして研究開発用人工生命体として再構成した。
欠点は睡眠時間が長いことだ。
どうやら思考と実践の両立は疲労がたまるようなのだ。
その疲労はピークに達しミスが目立つようになった。
そこで私は人工生命体を役割分担をさせた。
考えるだけの者、実験するだけの者、雑務をこなす者など業務を細分化させた。
更にそれらを統括するものを作ることによりこ効率は上がりミスもなくなった。
よくSFなどで脳だけを取り出して思考させるようなものがあるが、あれはダメだった。
メンテナンスや装置の維持が大変なのだ、生きてる体を使った方が何百倍も効率が良かった。
そして全ての成果を私に報告するアウトプット用の人工生命体を作り側近においた。
名前がないと不便なのでカスミと名付けた。
彼らは非常に有能であらたな技術を次々と開発していった。
それに引き換え転移者達はワガママがひどかった。
特に有識者を名乗る者たちは厄介だった。
他の星の住人を退けて無理矢理移住するのはおかしい。
現地人を虐げるのは間違ってるなど、地球の倫理観や常識を押しつけようとする。
たかだか数十年しか生きていない若造が私に意見をするのだ、上から目線で。
この星に移住しなければ人類は滅亡すると言っても、他の惑星の原住民を追い出すのは間違っている共存すべきだと言う。
共存などできるわけがない誰が好き好んで自分の住んでいる土地を差し出すというのだ。
どちらの民族も民度が等しく高ければそれもいいだろう。だが片方の民度が低ければそれは絵に描いた餅なのだ。必ず摩擦が起こる。
それに、こいつらは知らない地球人類はこの星では理性も保てなくなり姿も異形になることを。
それを教えても理解しないのだ。有識者を名乗るゴミどもは頭が固い。
ためしに魔族に変えて見せしめに魔族に変えてみせたが、それでも共存を望むという。
コイツラは自分の子供や妻が犯され殺されるまで分からないのだ。
そして侵され殺されたとき初めて共存できないことを認識する。
その時にはもうお前の隣には大事な人は居ないというのに。
話は平行線が続き、面倒なので精神支配することにした。
けれど、私の神の祝福 精神支配は一人限定なのだ。
そこで私は新技術である、ナノマシーンゴーレムの集合体である人形を作った。
その人形を精神支配してナノマシーンに分化させて一体一体を転移者に取り付かせて操る事にした。
この試みは成功した。
ただ、ミスティアのように完全に支配することはできなかった。
私を崇拝するようにさせる事が出来たくらいだが、それで十分だった。
だけれど、そのせいでミスティアの精神支配が消えてしまった。
そのせいで彼女は壊れた。
複数の男に抱かれた事と、自分の体がもう普通の人では無いことでアイデンティティが崩壊してしまったのだ。
もう少し遊ぶ予定だったけど、壊れたなら壊れたで別にどうでもいい存在だった。
今はミスティアよりも面白いものが私の心を揺さぶる。精霊龍、あの伝説のドラゴンが人間に手を貸した。
一万年以上私たちに無関心だったあの精霊龍が静に力を貸しているのだ興奮しないほうがおかしい。あの力があれば地球を救えるかもしれない。
あの悲劇を回避できるかもしれない。
精霊龍の力が欲しい私は切に願った。
まず、私が試したのは魔物を精霊化すること。
実験用にゴブリンを捕まえてこさせ、その魔石を精霊石に変えることから始めた。
この調整は難しかったが古代錬金術や置換型現代科学の応用で完成させることができた。
通常、魔石を抜いた魔物は死んでしまう。それを強制的に生かしたまま魔石を精霊石に変化させ再度体に埋め込んだ。
精霊石を埋め込むとゴブリンは劇的な変化を遂げた。
人の形に変わり始めたのだ、それも美しい少女にだ。
だが、その少女の性能は精霊龍に遠く及ばないものだった。
所詮は人工精霊石と言うことなのだろうか?
足りないなら補えばいい。
私には知識がある、この世界には魔剣や神剣などの超兵器があるのだ、その力を利用しようと考えた。
もちろん魔剣や神剣は自家製だ。誰が作ったともしれぬものを信用するほど馬鹿じゃない。
そうして私はその実験体に没頭した。私の全身全霊をかけて改造を施した。
その結果私では制御できない程に強力になってしまった。
だが元がゴブリンなせいだろうか家族意識が強く、強くしてくれた私を家族と思っているようだった。
だけど不安要素は全て取り除く。
戦えば負けないが相当な痛手を被る。
残念だけど廃棄処分にすることにした。
そんな時、秘書のカスミがミスティアの報告をしてきた。
精神支配から自分を取り戻したミスティアは、勇者のときの自分と快楽に溺れる自分との整合性がとれなくなり、ただ一日中叫んだり泣いたりしていた。
それがどういうことか最近は落ち着きを取り戻したと言うのだ。
◆◇◆◇◆◇◆
ー思考盗聴によるミスティアの心境ー
なんで、こんなことに。
私はただガリウスはすごい人だってみんなに知って欲しかっただけなのに。
なんどもランスロットに助けられるうちに、彼に好意を持っていた。
王族を死なせてしまったとき彼は身を呈して私を庇ってくれた。
あのとき私は彼を好きになってしまったのかもしれない。
そして私はランスロットと婚約していた。
あのとき私は喜んだ。
とても嬉しかった、これで貴族になれると喜んだ。
なんで? 貴族になりたかったわけじゃないのに。
クロイツが幼馴染みのことは良いのかと聞いてきたとき、なぜかガリウスの顔は思い浮かばなかった。
それほど貴族になれるのが嬉しかったのだろうか?
だけど、それからだったクロイツの言う幼馴染みが気になり出した。
ガリウスと言う幼馴染み、忘れるはずがないのに。
忘れていた。
なぜだか私の頭の中からガリウスのことがポッカリと抜け折りていた。
自分の想いをはっきりさせるために、村に戻ることにした。
ガリウスに会うために。
城塞都市でガリウスに会ってキスを見られたとき、私はそのときガリウスに軽蔑の眼差しをした。
他人の情事を覗き見る野暮なやつだと。
ガリウスだと気づかずに。
彼は今にも泣きそうにして逃げていった。
そのとき、私は思い出したガリウスが好きだと言うことを。
ランスロットは彼を情けない奴だと嘲笑した。
私はランスロットの頬を叩いた。
ランスロットは驚いていたが私はその場で婚約を破棄した。
何をしていたんだ私は、ただガリウスの凄さを世に知らしめたかっただけなのに。
だけど、次の日親友のクロイツがガリウスを好きになったと言いにきた。
私は困惑した、確かに私はガリウスを裏切りランスロットと婚約した、だけど、クロイツとガリウスが……嫌。
クロイツに私はガリウスを奪わないでと言ったが、恋は戦争よと言って聞いてくれない。
それに私にはランスロットがいるでしょうと言われ、婚約は破棄したと言ったが、ならこれでライバルねと言うだけで引いてくれないのだ。
私はランスロットを好きになってガリウスを裏切ったそんな私がクロイツをとめることなどできない。
クロイツはそれだけ言うと転移して王都に帰っていった。
私はすぐに城塞都市を出た。
夜だろうが関係ないすぐにでもガリウスに会いたい。
王都に着くと私は王城に招聘された。
今はそれどころではないのにと思いながらも、逆らうことはできなかった。
王から直々に私は王国連合で勇者に選ばれたと公布された。
私はそれがガリウスの力だと言う事を説明した。
だけど皆の反応は冷たいものだった。
ガリウスがストラトス家の当主を殺し逃亡したと言うのだ。
あり得ない、私はガリウスの無罪を主張した。
しかし、ブカロティ様はガリウスが当主を殺したと言う。
ブカロティ様は私に嘘はつかない。
ガリウスが殺したのだ。
その夜、私の勇者襲名を祝うパーティーが開かれた。
婚約破棄のことをブカロティ様に報告した。
ブカロティ様は破棄するのはやめた方が良いという。
そう言われ何度も説得された、ブカロティ様と話をすると心が落ち着く。
私はブカロティ様の言う通り婚約破棄は思いとどめた。
貴族になるチャンスなのだ。
犯罪者であるガリウスのために失うのは惜しい。
あのときは何故か惜しいと思った。
その晩、私はランスロットに抱かれた。
それが当然だと思った。
操を散らしてしまった。
その後ブカロティ様の命で、私達はガリウスの足取りを追った。
ガリウスは初心者冒険者だから国を抜けることはできないが、クロイツと一緒にいるので国境を抜けることができる。
早く捕まえないと。
街道を馬で駆けると、杖で体を支えているガリウスが居た。
たった一人で。
ガリウスを見たとき、私は彼を助けたいと思った。
だけどガリウスは私を責める。
そしてクロイツを殺したと言う。
ガリウスは悪に染まった。
殺すしかない。
なんで殺す? 私は世界よりもガリウスの方が大事なのに。
勇者と認められ新しい剣を賜った。
この剣を抜くと力がみなぎる。
私はガリウスの右腕と右足を切り取った。
何て事をしてしまったんだ、私はこんなことをしたかったんじゃない。
そして私はガリウスに見せつけるようにランスロットとキスをした。
何をしているんだ私は……。
その時上空から黒いドラゴンが降ってきた。そのドラゴンはガリウスを守るように立ち私達を睨む。体が震える。
むかし戦ったことがある古代龍よりも遥かに強い力を感じる。
そのドラゴンはガリウスを助けた。
良かった、あのままだったらガリウスを殺していた。
ガリウス討伐を失敗した私は、ブカロティ様預かりとなった。
そして私は貴族達に抱かれた。
ブカロティ様がそうした方がいいと言うからだ。
私は快楽に溺れていった。
この時の私はガリウスのことが頭になかった。
私は快楽の虜になった。
私は汚れた。
いつの間にか、なにも考えられないようになっていた。
拒否することもできなくなっていた。
取り返しのつかないことをしてしまった。
そして私は獣になった。
私の中にあんなものがいるなんて。
こんな私じゃガリウスに会えない。
ガリウスに好きと言ってもらう資格なんてない。
死にたい、でも死ねばこんな私でもガリウスは悲しむだろう。
彼はそう言う人だ。
せめて生きて償おう。
ガリウスにあんな顔をさせたこと。
ガリウスに心を傷つけたこと。
ガリウスを殺そうとしたこと。
償おう、この体が朽ちるまで。
抗おう、この命つきるまで。
◆◇◆◇◆◇◆
「あの状態から回復しましたか、中々に強い精神ですね」
確かにこれなら私の精神支配から度々回復するはずですね。
まあ、私が精神支配をして操っていたことにはまったく気がついていないようですが。
少し興味が出てきましたね。
「アクセス」
私は人工生命体達と精神を共有した。
『ミスティアの精霊化実験をシュミレート』
『㌸㌑㌔㍓㌏㌆』(人工生命体収束言語)
『施術方法は実験体1号に準ずる』
『㍉㍑㌢㌧㌢㌧』(人工生命体収束言語)
『成る程こうなりますか、魔物との融合が精霊石の力により精霊には変化するが亜人の血もあるために実験体1号のようにはなりませんか』
『㍆㌋㌉㌏㌉㌸㌾㌋㌞㌹㌅』(人工生命体収束言語)
『ふむ、狼人の護衛を作り彼女と絆を結ばせるですか、しかし、それではまた壊れるのではないですか?」
『㍆㌋㌋㌆㌨㌰㌣㌈』(人工生命体収束言語)
『なるほど、旧グランヘイム王国の国民を人質にするですか。では、ミスティアの精霊化はあなた達に任せます。』
『㍊㌉㌊㌉㌈㍋㍋』(人工生命体収束言語)
私は実験体3号に取りかかります。
◆◇◆◇◆◇◆
私の体は更なる獣へと改造された。
許さない。
私の体を返して、私の全てを返して。
さらに私は10人の男達と関係を持つように迫られた。
その男達のパワーアップの為に必要だからだと言うのだ。
私には関係ない、当然拒否した。
しかしコイツらはグランヘイム王国の民達を人質にとったのだ。
皆は生きている、魔物と融合して今は外周居住区をうろうろしている。
私が言うことを聞けば皆を人間状態にしてもとの生活を送らせると言うのだ。
私は勇者だ皆を見捨てることはできない。彼らの提案を飲むしかなかった。
それから1年程した頃、周辺諸国がこに国に攻めてきた。
攻めてくるお題目はいくらでもあるだろう。
私達は数十分で彼らを葬った。
もう少しで完全制圧するというところで邪魔が入ったなんなんだあの黒の戦士は。
実験体1号を助けたばかりかその力を自分のものとした。
だが私は既に精霊化した化物だ精霊から力を借りているやつになど負ける訳がないと思った。
だけど黒の騎士はガリウスの技で実験体一号の怪我を治した。
私は自分の体を隠すようにその場から動けなくなった。
見られたくない。ガリウスに汚れた私を見られたくない。
ガリウスは渡しを助けると行った裏切った私を。
私は自分を隠すためにガリウスと戦った。
戦いの最中黒の戦士の兜が落ちた。その顔はガリウスじゃなかった。
今思い出しても震えが止まらない。
あれは人間じゃなかった。
この世のものじゃない。
私はいつの間にか跪いていた。
神に対峙した愚かな人間のように。
死の恐怖が私を支配した。
いや、存在そのものが無くなる気さえした。
だが彼は私にはなにもしなかった。
あの技はガリウスのものだった。
あの優しい声もガリウスだった。
でも違った。黒の戦士とは何者なの? ガリウスじゃないの?
私はまた生き延びた。
そして今日も男達と絆を深め会う。
マナ遮断後に100名ほどの日本人を強制異世界転移させ、この旧グランヘイム王国、現大和神国に住まわせたのだが色々と問題が山積みである。
大和神国はマナ遮断により地球人でも魔族に変わることなく過ごせる。
まずは100名の技術者を選りすぐって異世界転移させた。
選ばれた100人の知識は地球の叡智ノ図書館から離れ、この星の叡智ノ図書館に繋げられた。
つまり、叡智ノ図書館を持つ私は彼らの知識をすべて手に入れることができた。
これにより、欲しかった地球の科学の知識が大量に手に入った。
その私が得た地球の知識を人工生命体にダウンロードした。
人工生命体は思考を並列処理出来るように神の祝福 自己犠牲を持つものをクローニングして研究開発用人工生命体として再構成した。
欠点は睡眠時間が長いことだ。
どうやら思考と実践の両立は疲労がたまるようなのだ。
その疲労はピークに達しミスが目立つようになった。
そこで私は人工生命体を役割分担をさせた。
考えるだけの者、実験するだけの者、雑務をこなす者など業務を細分化させた。
更にそれらを統括するものを作ることによりこ効率は上がりミスもなくなった。
よくSFなどで脳だけを取り出して思考させるようなものがあるが、あれはダメだった。
メンテナンスや装置の維持が大変なのだ、生きてる体を使った方が何百倍も効率が良かった。
そして全ての成果を私に報告するアウトプット用の人工生命体を作り側近においた。
名前がないと不便なのでカスミと名付けた。
彼らは非常に有能であらたな技術を次々と開発していった。
それに引き換え転移者達はワガママがひどかった。
特に有識者を名乗る者たちは厄介だった。
他の星の住人を退けて無理矢理移住するのはおかしい。
現地人を虐げるのは間違ってるなど、地球の倫理観や常識を押しつけようとする。
たかだか数十年しか生きていない若造が私に意見をするのだ、上から目線で。
この星に移住しなければ人類は滅亡すると言っても、他の惑星の原住民を追い出すのは間違っている共存すべきだと言う。
共存などできるわけがない誰が好き好んで自分の住んでいる土地を差し出すというのだ。
どちらの民族も民度が等しく高ければそれもいいだろう。だが片方の民度が低ければそれは絵に描いた餅なのだ。必ず摩擦が起こる。
それに、こいつらは知らない地球人類はこの星では理性も保てなくなり姿も異形になることを。
それを教えても理解しないのだ。有識者を名乗るゴミどもは頭が固い。
ためしに魔族に変えて見せしめに魔族に変えてみせたが、それでも共存を望むという。
コイツラは自分の子供や妻が犯され殺されるまで分からないのだ。
そして侵され殺されたとき初めて共存できないことを認識する。
その時にはもうお前の隣には大事な人は居ないというのに。
話は平行線が続き、面倒なので精神支配することにした。
けれど、私の神の祝福 精神支配は一人限定なのだ。
そこで私は新技術である、ナノマシーンゴーレムの集合体である人形を作った。
その人形を精神支配してナノマシーンに分化させて一体一体を転移者に取り付かせて操る事にした。
この試みは成功した。
ただ、ミスティアのように完全に支配することはできなかった。
私を崇拝するようにさせる事が出来たくらいだが、それで十分だった。
だけれど、そのせいでミスティアの精神支配が消えてしまった。
そのせいで彼女は壊れた。
複数の男に抱かれた事と、自分の体がもう普通の人では無いことでアイデンティティが崩壊してしまったのだ。
もう少し遊ぶ予定だったけど、壊れたなら壊れたで別にどうでもいい存在だった。
今はミスティアよりも面白いものが私の心を揺さぶる。精霊龍、あの伝説のドラゴンが人間に手を貸した。
一万年以上私たちに無関心だったあの精霊龍が静に力を貸しているのだ興奮しないほうがおかしい。あの力があれば地球を救えるかもしれない。
あの悲劇を回避できるかもしれない。
精霊龍の力が欲しい私は切に願った。
まず、私が試したのは魔物を精霊化すること。
実験用にゴブリンを捕まえてこさせ、その魔石を精霊石に変えることから始めた。
この調整は難しかったが古代錬金術や置換型現代科学の応用で完成させることができた。
通常、魔石を抜いた魔物は死んでしまう。それを強制的に生かしたまま魔石を精霊石に変化させ再度体に埋め込んだ。
精霊石を埋め込むとゴブリンは劇的な変化を遂げた。
人の形に変わり始めたのだ、それも美しい少女にだ。
だが、その少女の性能は精霊龍に遠く及ばないものだった。
所詮は人工精霊石と言うことなのだろうか?
足りないなら補えばいい。
私には知識がある、この世界には魔剣や神剣などの超兵器があるのだ、その力を利用しようと考えた。
もちろん魔剣や神剣は自家製だ。誰が作ったともしれぬものを信用するほど馬鹿じゃない。
そうして私はその実験体に没頭した。私の全身全霊をかけて改造を施した。
その結果私では制御できない程に強力になってしまった。
だが元がゴブリンなせいだろうか家族意識が強く、強くしてくれた私を家族と思っているようだった。
だけど不安要素は全て取り除く。
戦えば負けないが相当な痛手を被る。
残念だけど廃棄処分にすることにした。
そんな時、秘書のカスミがミスティアの報告をしてきた。
精神支配から自分を取り戻したミスティアは、勇者のときの自分と快楽に溺れる自分との整合性がとれなくなり、ただ一日中叫んだり泣いたりしていた。
それがどういうことか最近は落ち着きを取り戻したと言うのだ。
◆◇◆◇◆◇◆
ー思考盗聴によるミスティアの心境ー
なんで、こんなことに。
私はただガリウスはすごい人だってみんなに知って欲しかっただけなのに。
なんどもランスロットに助けられるうちに、彼に好意を持っていた。
王族を死なせてしまったとき彼は身を呈して私を庇ってくれた。
あのとき私は彼を好きになってしまったのかもしれない。
そして私はランスロットと婚約していた。
あのとき私は喜んだ。
とても嬉しかった、これで貴族になれると喜んだ。
なんで? 貴族になりたかったわけじゃないのに。
クロイツが幼馴染みのことは良いのかと聞いてきたとき、なぜかガリウスの顔は思い浮かばなかった。
それほど貴族になれるのが嬉しかったのだろうか?
だけど、それからだったクロイツの言う幼馴染みが気になり出した。
ガリウスと言う幼馴染み、忘れるはずがないのに。
忘れていた。
なぜだか私の頭の中からガリウスのことがポッカリと抜け折りていた。
自分の想いをはっきりさせるために、村に戻ることにした。
ガリウスに会うために。
城塞都市でガリウスに会ってキスを見られたとき、私はそのときガリウスに軽蔑の眼差しをした。
他人の情事を覗き見る野暮なやつだと。
ガリウスだと気づかずに。
彼は今にも泣きそうにして逃げていった。
そのとき、私は思い出したガリウスが好きだと言うことを。
ランスロットは彼を情けない奴だと嘲笑した。
私はランスロットの頬を叩いた。
ランスロットは驚いていたが私はその場で婚約を破棄した。
何をしていたんだ私は、ただガリウスの凄さを世に知らしめたかっただけなのに。
だけど、次の日親友のクロイツがガリウスを好きになったと言いにきた。
私は困惑した、確かに私はガリウスを裏切りランスロットと婚約した、だけど、クロイツとガリウスが……嫌。
クロイツに私はガリウスを奪わないでと言ったが、恋は戦争よと言って聞いてくれない。
それに私にはランスロットがいるでしょうと言われ、婚約は破棄したと言ったが、ならこれでライバルねと言うだけで引いてくれないのだ。
私はランスロットを好きになってガリウスを裏切ったそんな私がクロイツをとめることなどできない。
クロイツはそれだけ言うと転移して王都に帰っていった。
私はすぐに城塞都市を出た。
夜だろうが関係ないすぐにでもガリウスに会いたい。
王都に着くと私は王城に招聘された。
今はそれどころではないのにと思いながらも、逆らうことはできなかった。
王から直々に私は王国連合で勇者に選ばれたと公布された。
私はそれがガリウスの力だと言う事を説明した。
だけど皆の反応は冷たいものだった。
ガリウスがストラトス家の当主を殺し逃亡したと言うのだ。
あり得ない、私はガリウスの無罪を主張した。
しかし、ブカロティ様はガリウスが当主を殺したと言う。
ブカロティ様は私に嘘はつかない。
ガリウスが殺したのだ。
その夜、私の勇者襲名を祝うパーティーが開かれた。
婚約破棄のことをブカロティ様に報告した。
ブカロティ様は破棄するのはやめた方が良いという。
そう言われ何度も説得された、ブカロティ様と話をすると心が落ち着く。
私はブカロティ様の言う通り婚約破棄は思いとどめた。
貴族になるチャンスなのだ。
犯罪者であるガリウスのために失うのは惜しい。
あのときは何故か惜しいと思った。
その晩、私はランスロットに抱かれた。
それが当然だと思った。
操を散らしてしまった。
その後ブカロティ様の命で、私達はガリウスの足取りを追った。
ガリウスは初心者冒険者だから国を抜けることはできないが、クロイツと一緒にいるので国境を抜けることができる。
早く捕まえないと。
街道を馬で駆けると、杖で体を支えているガリウスが居た。
たった一人で。
ガリウスを見たとき、私は彼を助けたいと思った。
だけどガリウスは私を責める。
そしてクロイツを殺したと言う。
ガリウスは悪に染まった。
殺すしかない。
なんで殺す? 私は世界よりもガリウスの方が大事なのに。
勇者と認められ新しい剣を賜った。
この剣を抜くと力がみなぎる。
私はガリウスの右腕と右足を切り取った。
何て事をしてしまったんだ、私はこんなことをしたかったんじゃない。
そして私はガリウスに見せつけるようにランスロットとキスをした。
何をしているんだ私は……。
その時上空から黒いドラゴンが降ってきた。そのドラゴンはガリウスを守るように立ち私達を睨む。体が震える。
むかし戦ったことがある古代龍よりも遥かに強い力を感じる。
そのドラゴンはガリウスを助けた。
良かった、あのままだったらガリウスを殺していた。
ガリウス討伐を失敗した私は、ブカロティ様預かりとなった。
そして私は貴族達に抱かれた。
ブカロティ様がそうした方がいいと言うからだ。
私は快楽に溺れていった。
この時の私はガリウスのことが頭になかった。
私は快楽の虜になった。
私は汚れた。
いつの間にか、なにも考えられないようになっていた。
拒否することもできなくなっていた。
取り返しのつかないことをしてしまった。
そして私は獣になった。
私の中にあんなものがいるなんて。
こんな私じゃガリウスに会えない。
ガリウスに好きと言ってもらう資格なんてない。
死にたい、でも死ねばこんな私でもガリウスは悲しむだろう。
彼はそう言う人だ。
せめて生きて償おう。
ガリウスにあんな顔をさせたこと。
ガリウスに心を傷つけたこと。
ガリウスを殺そうとしたこと。
償おう、この体が朽ちるまで。
抗おう、この命つきるまで。
◆◇◆◇◆◇◆
「あの状態から回復しましたか、中々に強い精神ですね」
確かにこれなら私の精神支配から度々回復するはずですね。
まあ、私が精神支配をして操っていたことにはまったく気がついていないようですが。
少し興味が出てきましたね。
「アクセス」
私は人工生命体達と精神を共有した。
『ミスティアの精霊化実験をシュミレート』
『㌸㌑㌔㍓㌏㌆』(人工生命体収束言語)
『施術方法は実験体1号に準ずる』
『㍉㍑㌢㌧㌢㌧』(人工生命体収束言語)
『成る程こうなりますか、魔物との融合が精霊石の力により精霊には変化するが亜人の血もあるために実験体1号のようにはなりませんか』
『㍆㌋㌉㌏㌉㌸㌾㌋㌞㌹㌅』(人工生命体収束言語)
『ふむ、狼人の護衛を作り彼女と絆を結ばせるですか、しかし、それではまた壊れるのではないですか?」
『㍆㌋㌋㌆㌨㌰㌣㌈』(人工生命体収束言語)
『なるほど、旧グランヘイム王国の国民を人質にするですか。では、ミスティアの精霊化はあなた達に任せます。』
『㍊㌉㌊㌉㌈㍋㍋』(人工生命体収束言語)
私は実験体3号に取りかかります。
◆◇◆◇◆◇◆
私の体は更なる獣へと改造された。
許さない。
私の体を返して、私の全てを返して。
さらに私は10人の男達と関係を持つように迫られた。
その男達のパワーアップの為に必要だからだと言うのだ。
私には関係ない、当然拒否した。
しかしコイツらはグランヘイム王国の民達を人質にとったのだ。
皆は生きている、魔物と融合して今は外周居住区をうろうろしている。
私が言うことを聞けば皆を人間状態にしてもとの生活を送らせると言うのだ。
私は勇者だ皆を見捨てることはできない。彼らの提案を飲むしかなかった。
それから1年程した頃、周辺諸国がこに国に攻めてきた。
攻めてくるお題目はいくらでもあるだろう。
私達は数十分で彼らを葬った。
もう少しで完全制圧するというところで邪魔が入ったなんなんだあの黒の戦士は。
実験体1号を助けたばかりかその力を自分のものとした。
だが私は既に精霊化した化物だ精霊から力を借りているやつになど負ける訳がないと思った。
だけど黒の騎士はガリウスの技で実験体一号の怪我を治した。
私は自分の体を隠すようにその場から動けなくなった。
見られたくない。ガリウスに汚れた私を見られたくない。
ガリウスは渡しを助けると行った裏切った私を。
私は自分を隠すためにガリウスと戦った。
戦いの最中黒の戦士の兜が落ちた。その顔はガリウスじゃなかった。
今思い出しても震えが止まらない。
あれは人間じゃなかった。
この世のものじゃない。
私はいつの間にか跪いていた。
神に対峙した愚かな人間のように。
死の恐怖が私を支配した。
いや、存在そのものが無くなる気さえした。
だが彼は私にはなにもしなかった。
あの技はガリウスのものだった。
あの優しい声もガリウスだった。
でも違った。黒の戦士とは何者なの? ガリウスじゃないの?
私はまた生き延びた。
そして今日も男達と絆を深め会う。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる