異世界労働戦記☆スキル×レベル☆生産者ケンタ

のきび

文字の大きさ
上 下
62 / 67
5章 魔導戦闘列車エルダートレイン

光の神リュミエール。

しおりを挟む
「ずるいのです」
 お姫様抱っこされているレオナを見てクニャラが呟く。もちろん手は巫女ちゃんの首に巻き付かれたままである。
 すでに舌をだしてグロッキーな巫女ちゃんを助けてあげると、巫女ちゃんはポツリポツリと事情を話す。

 まず、ジャムラと言うのは偽名でシャルラと言うのが本当の名前だと言うこと。
 クニャラ達が所属する小人族ミニムは地下に王国がありシャルラは次期女王で結婚相手の貴族が気にくわないので地上に逃げたそうなのだ。

 地上に出た瞬間、シャルラは天啓を受けた、最初の頃はあまり聞こえなく正確さに欠けていたのだが、それでも言う通りにすれば未来が開けたのだと言う。

「つまり、シーファ達を人身御供にしたのはシャルラ?」
 サラがそう言うと太陽の華フラワーの面々が一斉にシャルラに詰め寄る。ついでにクニャラも大魔人のようにお怒りだ。

「ち、違うのだよ!」
 シャルラは腕をブンブンと振り杖を高々とあげるクニャラから逃げる。

 ゴブリンの時はまだ予言が正確なものではなく、それでいて自分限定で『ゴブリン退治に行っても死なない』程度だったのだそうだ。
 だからこそ神を疑わなかった。
 だけど、俺が戦ったときの戦闘報告を聞き、シャーロンが人身御供になるところだったことを聞いたシャルラは神を疑うようになったとのだ言う。
 そして、神との繋がりを切った。

 そこから途切れ途切れの記憶で、よく分からないのだと言う。
 つまりその時点で脳改造されたと言うわけだ。

「……神様は信用できないのだよ」

「どういう意味ですか」
 スヴィニヤーがイラついた表情でシャルラを睨む。その威圧は人間ごときが神を語るなと言わんばかりである。

「いや、俺もその意見には賛成だ」

「ケンタ様!」
「理由があるんだろケン
 シンミアは俺の言葉の真意を問いただそうと頭をペシペシ叩く。スヴィニヤーは俺が賛同したことに怒りを隠せない。
 同胞を侮辱されるのを許さないようだ。

「まず君たちの仲間の神を侮辱してるわけじゃないと言うのは分かって欲しい」
「ケンタ様、矛盾していますよ」
 神を侮辱しておいて侮辱してないとは確かに矛盾をしている。だが、それは前提条件が間違えているからなのだ。

「二人は生き残っている神を光の神をリュミエールだと思っているんだろ?」

「そうです、それ以外に誰がいると言うのですか」

「女神様は……。あいつは精霊龍デルス・マグラだ、この世界はすでに乗っ取られているんだよ」

「そんな馬鹿な……」

「俺は元々精霊龍デルス・マグラあちら側の人間だ。負けた神が、勝った神がいる世界を支配できるわけがないし、その世界から人を呼べるわけがない」
 例え呼べたとしても、俺はあちらの世界で働かないという理由でこちらの世界に追いやられたのだ。だからこの世界を助けるために来たのとは違う。

「……」

「精霊龍デルス・マグラは俺たちに勝たせる気がない。勝たせる気ならドラゴンライダーをこちらに寄越せば良い、それも歴戦の勇者を」

「それじゃ、なんのためにケンタ様をこの世界に呼んだのですか」

「基本的には意味は無い。暇潰しのデキレースのエッセンスな感じだったのだろうね」
 国取りゲームのように複数プレイで領地を大量にゲットしてからゲームをするように、デルス・マグラは安全に娯楽を楽しみたいのだろう。

「そんな馬鹿な」

「それなら、なぜ六神ではなく五神しか復活させないのか」

「それはリュミエール様が生きているから……」
 スヴィニヤーは自分で言った言葉が確信がないものであることに気がつき語尾が弱くなる。

「君たちが住んでいた場所にいた神は俺があちらの世界で会った神だ。つまりリュミエールじゃない」

「グッ、ではリュミエール様はどこにいるのですか!」

「確証はないけど巫女のシャルラがそうなんじゃないかと思う」

「そんなわけ、確かに光の力を感じますが、リュミエール様の力はこんなものじゃありません」

「うん、だとしても君たちも本当の力はそんなものじゃないんだろ? そしてリュミエールは羽を引き裂かれたといっていた。力を奪われた可能性もあるんじゃないか?」
 それにシャルラは人間だ。神が転生して力を失った可能性もある。


「……無くはないです」

「だからデキレースの為に敷かれたレールを歩くんじゃなくて女神様、精霊龍デルス・マグラの度肝を抜く形で戦いの準備をしないと勝てないと思う。それには光の神リュミエールの復活が先決だね」

「待つのだよ」

「なにか疑問でも?」
 俺の話にシャルラが待ったをかける。もちろん自分自身に関する話だ。腑に落ちないこともあるだろう。

「私がその光の神と言うことは敬われて当然なのだよね?」

「……まあ、そうだね」

「なら働かなくて良いのだよね?」

 その言葉にみんなズッこける。シャルラにとって世界の命運よりも働かないことが優先なのだ。

「ダメに決まってるのです!」
「ぐえ~なのだよ」
 空気を読めない発言にシャルラの首を絞めるクニャラが背中をこちらに向けると背中に白い羽が見えた。
 だが俺の方へと逃げてくるシャルラを追いかけるために背中が反対を向き見えなくなる。

「おい、そこの青い髪のやつ背中をよく見せてみろ」
 シンミアの乱暴な言葉にクニャラは驚きシャルラを追うのをやめる。

「ごめん、この子口は悪いけど良い子だから、クニャラ悪いけど背中見せてくれ」

「いいのですよ」
 戸惑いながらも背中を見せるクニャラの背中には千切れた羽の残骸が三対あった。

 シンミアが下に降りてクニャラの前に跪く。同じくスヴィニヤーも。
 シンミアが降りたせいかクニャラの背中の羽の残骸は見えなくなった。

「どういうことだシンミア」

「こいつがリュミエール様だ、そっちのピンク頭は力を内封してるだけだ」

「ご記憶はございますかリュミエール様」
 跪くスヴィニヤーが頭をあげてクニャラに敬語を使う。あの人間をなんとも思わないスヴィニヤーがこんなことを冗談でやるとは思えない。
 クニャラが光の神リュミエールの生まれ変わりなのだ。

「クニャラはクニャラなのです」

「ええと、と言うことはシャルラは神じゃないから楽はできないと言うことなのかな?」
 俺の側でシャルラが空気を読めない発言をしてスヴィニヤーをイラつかせる。

「と言うか殺して力をリュミエール様に返していただかないといけませんね」
 スヴィニヤーが手を大きく振り上げると腕に緑色の風がまとわりつく。

「ダメなのです! シャルラ姐は殺させないのです」
「くにゃら~」
 シャルラの前に立ち大きく手を広げ庇うクニャラにシャルラは足元にすがり付き泣く。
 俺もスヴィニヤーの腕を取り、その拳を振らせないようにした。

「焦るなスヴィニヤー、俺みたいに背負えば力使えるんじゃない?」
 俺がそう言うとシャルラは急いでクニャラの背中に乗る。
 自分の存在価値を示さないと殺されるからだろう。
 クニャラの背中に乗るとシャルラの存在が不安定になり六枚の光の羽根へと姿を変えた。
『これはなんなのだよ!』

 シャルラが羽になった瞬間、クニャラのレベルが限界を突破して185になった、貯まっていた経験値が解放されたのだ。
 そして地面が大きく鳴動して、城があった場所から黒色の巨大な物体が顔を表す。
 それはこの世界にあるはずのない存在、魔導戦闘列車エルダートレインだった。




しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

処理中です...