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4章 守りたい者たちは誰なのか
宣戦布告。
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少女たちは兵士たちに縛られ馬車に詰め込まれ、俺たちも馬車を出すために伊四百型に戻る。
馬車は両サイドの飛行船の中に収納しており、普段は馬ではなく5mは越える戦闘用猪を繋いでいるのだが、さすがにそんなモノで乗り付けたらパニックになりかねないので今回は馬を用意した。
「なあ、スヴィニヤー。あの子達は俺のことを知ってると思うんだ。ケンタなどと言う異世界の名前が俺以外にいるとは思えない」
「と言いますと?」
「ここが俺がいた場所なんじゃないか? もしそうなら俺の記憶の回復を頼みたい」
俺の中にある記憶の残響の青い髪の娘と赤い髪の娘、見た目はだいぶ違うが先程の二人かもしれない。
なぜだかそう感じるんだ。
「かしこまりました」
スヴィニヤーは馬車の窓を開けると手を広げた。
今回は俺を胸に埋めることはなく、緑色の風が舞い光が集まりスヴィニヤーの胸元に光の玉が出来上がる。
「どうだ?」
「……」
俺の問いに答えることなくスヴィニヤーはシンミアを見る。
「どうしたんだ?」
「……そうですね、すべての記憶は今ここにあります」
そう言うと光の玉を俺に見せる。
「そうか、では戻してもらえるか?」
「……戻せません」
「それはどういうことだ」
思い詰めたような表情を見せるスヴィニヤーに俺は少し強めに問い詰める。
「この記憶を戻せばケンロウ様はすべてを捨てて、あの子達を救うために、この世界を捨てるでしょう」
「は? この世界を捨てる? そんな馬鹿な」
「いいえ事実です。それほどあの三人、とくに青い髪の娘と赤い髪の娘には思いを寄せています」
「そんなにか?」
「はい、ケンロウ様がシンミアに対する気持ちと同等かそれ以上です」
シンミアとは喧嘩しながらも生死を共に戦った仲間だ。いまでは妹のように可愛い。
「なんだオレがどうしたって?」
そう言うとシンミアは俺の膝の上に座る。頭を撫でると「んっだよ……」とは言うがとくに抵抗はしない。
「それに今のあなたと、この集めた記憶のあなたでは覚悟が違います。立場が人を作ると言いますが、王と言う立場を続けていたあなたと、小さな店の店主とではその思いや覚悟が全く違うのです」
店主って俺は店を開いてたのか。
「本当に、その記憶を取り戻すと俺はこの世界を見捨てるのか?」
「確証はありませんが、おそらく」
スヴィニヤーは良くしてくれるが俺の部下と言う意識は無い。自分が嫌なこと不利益になることはしない。
つまりここで俺が強行姿勢で俺が記憶を戻せと言っても記憶を戻さないだろう。
スヴィニヤーとの関係が悪くなるのは避けたい。
「分かった、なら記憶は戻さなくて良い」
「英断ですケンタ様、小事より大事をとるのは王の器です」
王の器なんかより、青い髪の少女と赤い髪の少女の記憶を取り戻したいと思ってるから、やはりスヴィニヤーの言うことは正しいのだろう。
「そんなんじゃないよ、ただ今記憶を戻したらこの世界は滅ぶ。そうなったらあの子達も守れないし君たち二人も助けられない。だから今は記憶を戻さないで欲しいと言うだけだ」
「分かりましたではこの記憶は来たる日まで私の胸のなかにしまっておきます」
そう言うと胸の谷間に光の玉を収納した。本当それどうなってんだよ、と今まで何度も突っ込んできてはスヴィニヤーははぐらかすので最近は気にしないようにしている。
そうこうしているうちに馬車は王城へと入り俺たちはそのまま王の間へと連れられた。
普通いきなり王に謁見などあり得ないのだが、よほど追い詰められているのか、それとも、まかりなりにも俺は王だからと言うことで会ってくれるのかもしれない。
一緒に少女たちも王の間に連行されたので面倒がなくていいが一国の王が罪人と同等の扱いとはと苦笑せずにはいられない。
まあ、彼女達の減刑を訴えるにはちょうどよかったけど。
王の間へ通されると王は玉座に座り美女を侍らせていた。
肉を一口食べては床に投げ捨てるを繰り返している。
俺はその行動の意味がまったく理解できなかった。国は食糧難のはずだが国の代表足る国王が食料を無駄にしていると言うのはどういうことだ。
「よくぞ参った新国家の、あーなんといったかな?」
王がそう言うと隣の者が耳元で囁く。
「ああ、そうそうウルフレッド王国な、しかし奇妙な名じゃな」
そう言いながら骨付きの肉を一口噛っては投げ捨てる。
「ベラリルト王陛下、確かこの国は飢えていると聞いたのですが。そのように食材を無駄にしてもよろしいのですか?」
「はッ? 五月蝿いわい! 貴様誰に向かって吠えておる!」
怒鳴るベラリルト国王は俺に食べかけの肉を投げつける。肉は鎧に当たり地面にぼとりと落ちる。
「てめぇ! 犬に何すんだ!」
シンミアが足をドスンとすると城が揺れ砂ぼこりがパラパラと落ちる。
「なんじゃ!?」
シンミアの一撃で王が焦って玉座から滑り落ちてキョロキョロと辺りを見回している。
土属性で石に干渉したのかな。さすがに城を揺らすほどの力はシンミアにはないからな。
「すみません配下の者が失礼をしました」
オレが謝ると王は「痴れ者が、許すのは今回だけじゃぞ」と勝ち誇ったように見下ろす。
「どうじゃシーファよ我のことを惚れ直したろ。新国家のウルフなんとかとか言う国でさえワシに膝ま付き許しをこうのじゃぞ。いい加減ワシのものになれ」
急に俺からそっぽを向くと色の白い少女に対し訳の分からないことを言い出す。いや、本当なんだこいつは意味がわからないぞ。
「申し訳ありませんが、それは何度もお断りしたはずです」
「ぐぬぬ、見て分からぬか。我は偉大な王なのじゃぞ。お前は我にしたがうべきじゃ」
「何度も申しますが私には心に決めたかたがいます」
「お主がそう言う覚悟なら、こちらにも考えがある。お主の家とサラの家をとりつぶす。いや親類共々死刑じゃ!」
「お戯れを」
「何が戯れか! そやつはワシを殴り飛ばしたのだぞ。国王であるワシを! どちらにしろサラは死刑じゃ助けたければワシのものになれ」
「……」
この茶番劇いつまで見させられるんだ。一国の王を放っておいて、いたいけな少女に自分のものになれ?
馬鹿なのかこいつ。
「ときに、その青髪の娘はなんじゃ?」
「はっ! 魔導騎士団のクニャラでございます」
「クニャラ? あの化け物のか?」
「はっ! そうでございます。回復薬で回復したとのことです」
そう言うと兵士は青い髪の少女の顔を王が見やすいようにアゴをあげさせる。
「ほう、これはなかなかに美形よな。よし貴様もワシの妾にしてやろう」
「お断りなのです!」
「貴様! 平民風情が王に逆らうか!」
骨付きの肉を青髪の少女に投げつけるが、俺は青髪の少女の前に立ち当たるのを防ぐ。
「なんじゃ貴様は、さっさと荷物を置いてこの国から出ていけ」
一国の王に言う言葉じゃないな。それに黙って聞いていれば言いたい放題。
「お前は命を懸けてこの国を守ったこの娘達に礼ではなく暴言を吐くのか」
「はっ、昨日今日出来たばかりの国の王が誰にものを言っておる。我が国は1000年以上続く由緒ある国ぞ!」
「そうか、由緒があるのか」
「そうだな頭が高い頭を下げよ!」
「ならば我が国はお前の国に宣戦布告する」
「は? 何を言って」
「聞こえなかったのか宣戦布告だ24時間後に攻撃を加える。生きたくば戦え。だが俺は徹底的に叩き潰す。この国が世界からなくなるまで磨り潰してやる」
「な、何をばかなことを」
俺はアイテムバッグからゴールデンハンマーをとりだし王の目の前に叩きつける。
叩きつけられた床はヒビが入り崩れ落ちる。
「ヒッ!」
王は情けなく玉座にすがり付くとなさけなく震える。
「スヴィニヤー、ブレイドオル兵の諸君のHPとMPを回復させろ」
「はい、かしこまりました」
スヴィニヤーが生命の舞いを躍り精霊の舞いを踊ると捕らえられているブレイドオルの兵士の娘達が回復する。
「スヴィニヤー拘束を解いてやれ」
一陣の風が舞い少女達の縄を切り裂く。
「さて諸君、戦争は23時間48分後に開始される、急いで戦の準備をしたまえ、この国を滅ぼしたくないならな」
俺は指輪を青髪の娘に返すと、きびすを返した。
「ケンタ!」
「ケンタさん!」
「しつこいぞ小娘ども。我はケンロウ、この国を破壊するものだ!」
俺は振り向かずに言い放った。振り向いてしまえばこの演技を台無しにしてしまうから。
馬車は両サイドの飛行船の中に収納しており、普段は馬ではなく5mは越える戦闘用猪を繋いでいるのだが、さすがにそんなモノで乗り付けたらパニックになりかねないので今回は馬を用意した。
「なあ、スヴィニヤー。あの子達は俺のことを知ってると思うんだ。ケンタなどと言う異世界の名前が俺以外にいるとは思えない」
「と言いますと?」
「ここが俺がいた場所なんじゃないか? もしそうなら俺の記憶の回復を頼みたい」
俺の中にある記憶の残響の青い髪の娘と赤い髪の娘、見た目はだいぶ違うが先程の二人かもしれない。
なぜだかそう感じるんだ。
「かしこまりました」
スヴィニヤーは馬車の窓を開けると手を広げた。
今回は俺を胸に埋めることはなく、緑色の風が舞い光が集まりスヴィニヤーの胸元に光の玉が出来上がる。
「どうだ?」
「……」
俺の問いに答えることなくスヴィニヤーはシンミアを見る。
「どうしたんだ?」
「……そうですね、すべての記憶は今ここにあります」
そう言うと光の玉を俺に見せる。
「そうか、では戻してもらえるか?」
「……戻せません」
「それはどういうことだ」
思い詰めたような表情を見せるスヴィニヤーに俺は少し強めに問い詰める。
「この記憶を戻せばケンロウ様はすべてを捨てて、あの子達を救うために、この世界を捨てるでしょう」
「は? この世界を捨てる? そんな馬鹿な」
「いいえ事実です。それほどあの三人、とくに青い髪の娘と赤い髪の娘には思いを寄せています」
「そんなにか?」
「はい、ケンロウ様がシンミアに対する気持ちと同等かそれ以上です」
シンミアとは喧嘩しながらも生死を共に戦った仲間だ。いまでは妹のように可愛い。
「なんだオレがどうしたって?」
そう言うとシンミアは俺の膝の上に座る。頭を撫でると「んっだよ……」とは言うがとくに抵抗はしない。
「それに今のあなたと、この集めた記憶のあなたでは覚悟が違います。立場が人を作ると言いますが、王と言う立場を続けていたあなたと、小さな店の店主とではその思いや覚悟が全く違うのです」
店主って俺は店を開いてたのか。
「本当に、その記憶を取り戻すと俺はこの世界を見捨てるのか?」
「確証はありませんが、おそらく」
スヴィニヤーは良くしてくれるが俺の部下と言う意識は無い。自分が嫌なこと不利益になることはしない。
つまりここで俺が強行姿勢で俺が記憶を戻せと言っても記憶を戻さないだろう。
スヴィニヤーとの関係が悪くなるのは避けたい。
「分かった、なら記憶は戻さなくて良い」
「英断ですケンタ様、小事より大事をとるのは王の器です」
王の器なんかより、青い髪の少女と赤い髪の少女の記憶を取り戻したいと思ってるから、やはりスヴィニヤーの言うことは正しいのだろう。
「そんなんじゃないよ、ただ今記憶を戻したらこの世界は滅ぶ。そうなったらあの子達も守れないし君たち二人も助けられない。だから今は記憶を戻さないで欲しいと言うだけだ」
「分かりましたではこの記憶は来たる日まで私の胸のなかにしまっておきます」
そう言うと胸の谷間に光の玉を収納した。本当それどうなってんだよ、と今まで何度も突っ込んできてはスヴィニヤーははぐらかすので最近は気にしないようにしている。
そうこうしているうちに馬車は王城へと入り俺たちはそのまま王の間へと連れられた。
普通いきなり王に謁見などあり得ないのだが、よほど追い詰められているのか、それとも、まかりなりにも俺は王だからと言うことで会ってくれるのかもしれない。
一緒に少女たちも王の間に連行されたので面倒がなくていいが一国の王が罪人と同等の扱いとはと苦笑せずにはいられない。
まあ、彼女達の減刑を訴えるにはちょうどよかったけど。
王の間へ通されると王は玉座に座り美女を侍らせていた。
肉を一口食べては床に投げ捨てるを繰り返している。
俺はその行動の意味がまったく理解できなかった。国は食糧難のはずだが国の代表足る国王が食料を無駄にしていると言うのはどういうことだ。
「よくぞ参った新国家の、あーなんといったかな?」
王がそう言うと隣の者が耳元で囁く。
「ああ、そうそうウルフレッド王国な、しかし奇妙な名じゃな」
そう言いながら骨付きの肉を一口噛っては投げ捨てる。
「ベラリルト王陛下、確かこの国は飢えていると聞いたのですが。そのように食材を無駄にしてもよろしいのですか?」
「はッ? 五月蝿いわい! 貴様誰に向かって吠えておる!」
怒鳴るベラリルト国王は俺に食べかけの肉を投げつける。肉は鎧に当たり地面にぼとりと落ちる。
「てめぇ! 犬に何すんだ!」
シンミアが足をドスンとすると城が揺れ砂ぼこりがパラパラと落ちる。
「なんじゃ!?」
シンミアの一撃で王が焦って玉座から滑り落ちてキョロキョロと辺りを見回している。
土属性で石に干渉したのかな。さすがに城を揺らすほどの力はシンミアにはないからな。
「すみません配下の者が失礼をしました」
オレが謝ると王は「痴れ者が、許すのは今回だけじゃぞ」と勝ち誇ったように見下ろす。
「どうじゃシーファよ我のことを惚れ直したろ。新国家のウルフなんとかとか言う国でさえワシに膝ま付き許しをこうのじゃぞ。いい加減ワシのものになれ」
急に俺からそっぽを向くと色の白い少女に対し訳の分からないことを言い出す。いや、本当なんだこいつは意味がわからないぞ。
「申し訳ありませんが、それは何度もお断りしたはずです」
「ぐぬぬ、見て分からぬか。我は偉大な王なのじゃぞ。お前は我にしたがうべきじゃ」
「何度も申しますが私には心に決めたかたがいます」
「お主がそう言う覚悟なら、こちらにも考えがある。お主の家とサラの家をとりつぶす。いや親類共々死刑じゃ!」
「お戯れを」
「何が戯れか! そやつはワシを殴り飛ばしたのだぞ。国王であるワシを! どちらにしろサラは死刑じゃ助けたければワシのものになれ」
「……」
この茶番劇いつまで見させられるんだ。一国の王を放っておいて、いたいけな少女に自分のものになれ?
馬鹿なのかこいつ。
「ときに、その青髪の娘はなんじゃ?」
「はっ! 魔導騎士団のクニャラでございます」
「クニャラ? あの化け物のか?」
「はっ! そうでございます。回復薬で回復したとのことです」
そう言うと兵士は青い髪の少女の顔を王が見やすいようにアゴをあげさせる。
「ほう、これはなかなかに美形よな。よし貴様もワシの妾にしてやろう」
「お断りなのです!」
「貴様! 平民風情が王に逆らうか!」
骨付きの肉を青髪の少女に投げつけるが、俺は青髪の少女の前に立ち当たるのを防ぐ。
「なんじゃ貴様は、さっさと荷物を置いてこの国から出ていけ」
一国の王に言う言葉じゃないな。それに黙って聞いていれば言いたい放題。
「お前は命を懸けてこの国を守ったこの娘達に礼ではなく暴言を吐くのか」
「はっ、昨日今日出来たばかりの国の王が誰にものを言っておる。我が国は1000年以上続く由緒ある国ぞ!」
「そうか、由緒があるのか」
「そうだな頭が高い頭を下げよ!」
「ならば我が国はお前の国に宣戦布告する」
「は? 何を言って」
「聞こえなかったのか宣戦布告だ24時間後に攻撃を加える。生きたくば戦え。だが俺は徹底的に叩き潰す。この国が世界からなくなるまで磨り潰してやる」
「な、何をばかなことを」
俺はアイテムバッグからゴールデンハンマーをとりだし王の目の前に叩きつける。
叩きつけられた床はヒビが入り崩れ落ちる。
「ヒッ!」
王は情けなく玉座にすがり付くとなさけなく震える。
「スヴィニヤー、ブレイドオル兵の諸君のHPとMPを回復させろ」
「はい、かしこまりました」
スヴィニヤーが生命の舞いを躍り精霊の舞いを踊ると捕らえられているブレイドオルの兵士の娘達が回復する。
「スヴィニヤー拘束を解いてやれ」
一陣の風が舞い少女達の縄を切り裂く。
「さて諸君、戦争は23時間48分後に開始される、急いで戦の準備をしたまえ、この国を滅ぼしたくないならな」
俺は指輪を青髪の娘に返すと、きびすを返した。
「ケンタ!」
「ケンタさん!」
「しつこいぞ小娘ども。我はケンロウ、この国を破壊するものだ!」
俺は振り向かずに言い放った。振り向いてしまえばこの演技を台無しにしてしまうから。
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