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4章 守りたい者たちは誰なのか
黒い飛行体と黄金の戦士。
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「ケンタの情報はあったです?」
クニャラは冒険者ギルドでケンタの情報を集めるサラをさせかすように尋ねる。
「だめだ、あれから半年も経つのにケンタの情報は一切ない。完全に消息が消えてしまった。あの村以外でケンタは現れていないそうだ」
サラはクニャラとレオナに申し訳なさそうに言う。王にも協力を仰いでケンタの情報を得ようとしたが若い王は贅沢三昧で人質のシーファを抱くことしか考えていなかった。
「わたし……。わたし探しにいく」
そう言ったのはレオナだった。経験値が身体の中に入ったその日、クニャラとサラの説明を受けてケンタが生きている可能性があると知ったレオナは今すぐにもケンタに会いに行きたかったのだ。
「レオナだめです、この国は私たちが守らないと滅ぶのです」
「ケンタさんは生産職なんだよ? この国よりも自分の身を守れないじゃない。誰かが助けないとだめなんだよ」
「ケンタは強いです。レオナを救い、私たちを救ってくたです。ケンタを信じるです!」
「……だけど」
「それにクニャラたちがこの国から出たらシーファが王のモノになってしまうのです」
「そんなの、わたしには関係な――」
レオナはその言葉を飲み込む。彼女にとってケンタ以上の存在はこの世に存在しない。
シーファにはなんの感情もない。だが家族であるサラを悲しませるわけにはいかないと、そのためにこの国に残っているのだ。
「それにクニャラたちがいなくなったらケンタの帰ってくる家もなくなってしまうです」
「……わかったわ」
レオナはケンタに会いたい心を押し殺してこの国を守ることにした。
レオナが国を守ると決意すると、若い女の兵士が慌ただしく二人の元に立ち報告する。
「クニャラ様!レオナ様!天使の軍団が攻めてきました。物見の報告によると100万体はくだらないと言う報告です」
「100万体です!?」
ありえない数だった、今まではせいぜい数千、多くても2,3万程度の攻撃だったのだ。それがいきなり100万の軍勢となって、このブレイドオル王国に進軍してきたのだ。
「何体来ても関係ないわ蹴散らせば良いだけ」
二人は高速馬車に乗り戦地へおもむく。そのあまりの敵の数にサラも来ると言っていたのだが。王からの帰還命令により一緒についていくことは叶わなかった。
若い王は臆病なのだ。
おっとり刀で戦地に赴くと敵のあまりの多さに驚愕した。天使の軍団で山が銀色に光っているのだ。
二人の顔には絶望の二文字が浮かんでいた。さすがに100万の敵と戦うのはクニャラ、レオナ共に未知数なのだ。
「魔力が持つか分からないのです」
「でも、それでもケンタさんは50万の軍勢に一人で立ち向かった。100万ならちょうどあなたと私でケンタさんと同じことができるわよ」
脳筋らしいレオナの考えにクニャラは笑う。
「レオナはバカなのです」
「クニャラ、あなたに謝っておきたいことがあるの。あなたに辛く当たってごめんなさい。あなただって辛かったはずなのに」
「良いのです。レオナとは弱いときからの仲間ですし家族なのです」
「うん」
「それにそう言うこと言うう人は戦争で死ぬです」
「うん気を付ける」
そう言うとレオナは親指を立てサムズアップする。だがクニャラはそれに答えずに頭を下げる。
「クニャラもレオナに謝らないといけないのです」
「なに?」
クニャラは握ったままの左手をレオナに差し出した。
「この中にケンタの指輪があるです。死んだと思いたくなくて。これをレオナに渡したらケンタが死ぬと思って持ってるのをレオナには言えなかったです」
「もしかしてそれを拾うためにその火傷を負ったの?」
「ハイです。でも、ケンタがいると思ったです。指輪のところにケンタがいると思って……」
指輪のある左手をクニャラは右手でギュッと握る。その手をレオナはそっと包み込む。
「良いわよ、それはクニャラのよ。クニャラがケンタさんに渡して」
「いいのです?」
「当然じゃない。でも理由がわかったんならいい加減その傷治しなさいよ?」
「これはベラリルト王避けです。強くてかわいいクニャラは狙われるです。ケンタ以外はお断りなのです」
ブレイドオル王国の若き王ベラリルトは女好き、特に幼女が好きな特殊性癖の持ち主なのは公然の秘密なのである。
「プッ、確かにあの糞王ならありえるわね。シーファ狙われてるしね」
そして二人はいつしか抱き合っていた。今までのわだかまりを取り払うように。
「まあ、今はこいつらを倒して生き残らないとね」
「なのです。ケンタが帰ってくるまで負けないのです」
そこからの二人の戦いは、まさに勇猛果敢だった。各個撃破だった時とは違い、二人の連携プレイでいつもより早く楽に天使の軍団を殲滅していった。
しかし圧倒的な数の暴力、クニャラやレオナの魔力がほとんどつきかけていると言うのに敵はまだ半分も減っていない。
「クニャラ様、レオナ様、魔力を回復してください。その間は私たちが引き受けます」
騎士団の者たちが二人を引かせ、その間に敵を押さえる。二人と違い強くない騎士団の者たちではあったが模造品とは言え魔法の装備を装着しているので多少は時間が稼げる。
「大丈夫クニャラ?」
「魔力がカラカラなのです。レオナこそ大丈夫なのです」
「ケンタさんがくれた二本の剣がなかったら死んでるよ」
そう言うとレオナはフフフと笑う。
その笑みには絶望の二文字は無い、必ず生き残ろと言う強い意思が感じられる笑みだった。
二人は体を休め魔力を回復させるが騎士団がすぐに押され出す。魔力回復薬を飲むが、たいして魔力は回復していない。
「そろそろ行かないとだめね」
「なのです」
二人の魔力は微量しか回復していない。だが二人は戦場へおもむく。ケンタのように。
生産職なのに自分達を守ってくれたケンタのようにと。
「あんたらだけに行かせないよ」
そう言って二人の肩を掴んだのはサラ・ゴメスティリス・パラドンナだった。
その後ろにはシャーロンやシーファまでいる。
「なんで?」
「国王、いやベラリルトだね、あいつをぶん殴ってきたよ。あんな奴は国王じゃない」
「大丈夫なの?」
「家族を失ってまで貴族の地位を守りたくない」
「そうです、私はまだ家族にさせてもらってないんですから」
「だね、ケンタさんには恩を返せてないしね」
シャーロンやシーファ、太陽の華の面々も集まり天使の軍団を迎え撃つ。
だがここで戦えるのはクニャラとレオナ、サラの三人だけである。シーファとシャーロンが強いと言っても武装的に無理があるのだ。
次第に数の暴力の前に押され出す。クニャラの魔力が切れたとき敵の猛攻を押さえきれず防衛線は決壊する。
「もう魔力がつきるです!」
クニャラの杖にはレオナやサラのように特殊スキルはない。故に魔力がつきたら戦力外になってしまうのだ。
「私も魔力がつきるわ」
「私もだ」
三人の魔力がつきてクニャラが戦闘に参加できなくなると天使の軍団は待ってましたとばかりに三人を襲う。
しかし、太陽の華のメンバーが集まり三人を守るように防御の陣をとる。その後ろでレオナが剣を掲げる。
「ケンタさんに会うまで死ねないのよ”アローレイン”!」
光の矢が敵を貫く。しかし、それは焼け石に水で敵の進軍は止まらない。
もう終わりかと、空を仰ぎ見るみんなの目に巨大な黒い飛行体が目に入る。
「なにあれ」
「新手か?」
飛行体の先端から大量の筒が発射され地表に当たる前に割れるように開いた。
その中には大量の小さな筒が入っており、それが射出されると地表の天使の軍団を一瞬で凍らせた。
黒い飛行体から三体の小さな飛行体が飛び出て上空を旋回する。
「竜?」
その三体の飛行体は超高速で飛び天使の軍団を射出物で破壊する。その三体の飛行体の上に人が乗っているようにも見える。
「すごいのです」
「なにんにせよ味方のようだ」
「話してる暇はないわよ」
呑気に話しているクニャラとサラにシーファの注意喚起の声が飛ぶ。
氷の攻撃や射出物を抜けた天使の軍団が疲弊したクニャラたちを襲うその時、上空を舞う三体の飛行体から三人の人が飛び降りる。
”ドスン”
クニャラたちと天使の軍団の間にそいつは降り立った。爆音と土煙の中にいたのは金色のフルメイルを着込んだ男だった。
クニャラは冒険者ギルドでケンタの情報を集めるサラをさせかすように尋ねる。
「だめだ、あれから半年も経つのにケンタの情報は一切ない。完全に消息が消えてしまった。あの村以外でケンタは現れていないそうだ」
サラはクニャラとレオナに申し訳なさそうに言う。王にも協力を仰いでケンタの情報を得ようとしたが若い王は贅沢三昧で人質のシーファを抱くことしか考えていなかった。
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「ケンタは強いです。レオナを救い、私たちを救ってくたです。ケンタを信じるです!」
「……だけど」
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「それにクニャラたちがいなくなったらケンタの帰ってくる家もなくなってしまうです」
「……わかったわ」
レオナはケンタに会いたい心を押し殺してこの国を守ることにした。
レオナが国を守ると決意すると、若い女の兵士が慌ただしく二人の元に立ち報告する。
「クニャラ様!レオナ様!天使の軍団が攻めてきました。物見の報告によると100万体はくだらないと言う報告です」
「100万体です!?」
ありえない数だった、今まではせいぜい数千、多くても2,3万程度の攻撃だったのだ。それがいきなり100万の軍勢となって、このブレイドオル王国に進軍してきたのだ。
「何体来ても関係ないわ蹴散らせば良いだけ」
二人は高速馬車に乗り戦地へおもむく。そのあまりの敵の数にサラも来ると言っていたのだが。王からの帰還命令により一緒についていくことは叶わなかった。
若い王は臆病なのだ。
おっとり刀で戦地に赴くと敵のあまりの多さに驚愕した。天使の軍団で山が銀色に光っているのだ。
二人の顔には絶望の二文字が浮かんでいた。さすがに100万の敵と戦うのはクニャラ、レオナ共に未知数なのだ。
「魔力が持つか分からないのです」
「でも、それでもケンタさんは50万の軍勢に一人で立ち向かった。100万ならちょうどあなたと私でケンタさんと同じことができるわよ」
脳筋らしいレオナの考えにクニャラは笑う。
「レオナはバカなのです」
「クニャラ、あなたに謝っておきたいことがあるの。あなたに辛く当たってごめんなさい。あなただって辛かったはずなのに」
「良いのです。レオナとは弱いときからの仲間ですし家族なのです」
「うん」
「それにそう言うこと言うう人は戦争で死ぬです」
「うん気を付ける」
そう言うとレオナは親指を立てサムズアップする。だがクニャラはそれに答えずに頭を下げる。
「クニャラもレオナに謝らないといけないのです」
「なに?」
クニャラは握ったままの左手をレオナに差し出した。
「この中にケンタの指輪があるです。死んだと思いたくなくて。これをレオナに渡したらケンタが死ぬと思って持ってるのをレオナには言えなかったです」
「もしかしてそれを拾うためにその火傷を負ったの?」
「ハイです。でも、ケンタがいると思ったです。指輪のところにケンタがいると思って……」
指輪のある左手をクニャラは右手でギュッと握る。その手をレオナはそっと包み込む。
「良いわよ、それはクニャラのよ。クニャラがケンタさんに渡して」
「いいのです?」
「当然じゃない。でも理由がわかったんならいい加減その傷治しなさいよ?」
「これはベラリルト王避けです。強くてかわいいクニャラは狙われるです。ケンタ以外はお断りなのです」
ブレイドオル王国の若き王ベラリルトは女好き、特に幼女が好きな特殊性癖の持ち主なのは公然の秘密なのである。
「プッ、確かにあの糞王ならありえるわね。シーファ狙われてるしね」
そして二人はいつしか抱き合っていた。今までのわだかまりを取り払うように。
「まあ、今はこいつらを倒して生き残らないとね」
「なのです。ケンタが帰ってくるまで負けないのです」
そこからの二人の戦いは、まさに勇猛果敢だった。各個撃破だった時とは違い、二人の連携プレイでいつもより早く楽に天使の軍団を殲滅していった。
しかし圧倒的な数の暴力、クニャラやレオナの魔力がほとんどつきかけていると言うのに敵はまだ半分も減っていない。
「クニャラ様、レオナ様、魔力を回復してください。その間は私たちが引き受けます」
騎士団の者たちが二人を引かせ、その間に敵を押さえる。二人と違い強くない騎士団の者たちではあったが模造品とは言え魔法の装備を装着しているので多少は時間が稼げる。
「大丈夫クニャラ?」
「魔力がカラカラなのです。レオナこそ大丈夫なのです」
「ケンタさんがくれた二本の剣がなかったら死んでるよ」
そう言うとレオナはフフフと笑う。
その笑みには絶望の二文字は無い、必ず生き残ろと言う強い意思が感じられる笑みだった。
二人は体を休め魔力を回復させるが騎士団がすぐに押され出す。魔力回復薬を飲むが、たいして魔力は回復していない。
「そろそろ行かないとだめね」
「なのです」
二人の魔力は微量しか回復していない。だが二人は戦場へおもむく。ケンタのように。
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「あんたらだけに行かせないよ」
そう言って二人の肩を掴んだのはサラ・ゴメスティリス・パラドンナだった。
その後ろにはシャーロンやシーファまでいる。
「なんで?」
「国王、いやベラリルトだね、あいつをぶん殴ってきたよ。あんな奴は国王じゃない」
「大丈夫なの?」
「家族を失ってまで貴族の地位を守りたくない」
「そうです、私はまだ家族にさせてもらってないんですから」
「だね、ケンタさんには恩を返せてないしね」
シャーロンやシーファ、太陽の華の面々も集まり天使の軍団を迎え撃つ。
だがここで戦えるのはクニャラとレオナ、サラの三人だけである。シーファとシャーロンが強いと言っても武装的に無理があるのだ。
次第に数の暴力の前に押され出す。クニャラの魔力が切れたとき敵の猛攻を押さえきれず防衛線は決壊する。
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「私もだ」
三人の魔力がつきてクニャラが戦闘に参加できなくなると天使の軍団は待ってましたとばかりに三人を襲う。
しかし、太陽の華のメンバーが集まり三人を守るように防御の陣をとる。その後ろでレオナが剣を掲げる。
「ケンタさんに会うまで死ねないのよ”アローレイン”!」
光の矢が敵を貫く。しかし、それは焼け石に水で敵の進軍は止まらない。
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「すごいのです」
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氷の攻撃や射出物を抜けた天使の軍団が疲弊したクニャラたちを襲うその時、上空を舞う三体の飛行体から三人の人が飛び降りる。
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