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1章 変態紳士二度目の異世界転移

違いのわかる男ケンタは間違えない。

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 吹き飛ばされたゼクスは完全にのびていた。

 やり過ぎた。というかなんで俺こんなに強いんだ? レベル1だよな?

 そう言えばさっきレオナとクニャラの二人をなんなく両脇に抱えたっけ。

 考えられるのは一つ、エルダートレインのステータスが適用されているということだろうか。

 エルダートレインの俺のステータスは完全生産系だ筋力や体力に全振りの頭の悪い仕様だ。

 筋力の量で持てるアイテムの量の絶対数が変わるエルダートレインでは生産職で筋力がないのは死活問題なのだ。

 吹き飛ばされたゼクスが生きているか脈と呼吸を診て確認した。脈もあるし息もしている。正直それ以上は分からない。だって俺医者じゃないし……。

 のびているゼクスの身体を起こしほほを殴る。よくドラマとかアニメとかでそう言う起こし方してるよね?

 ”バシ! バシ! バシ!”

 しかし何度頬を叩いても起きなかった。……どうしよう。

「トドメとか容赦ないわね……」

「やばいな」

 ホットパンツの女の子と全身鎧の男が俺がトドメを刺したと思いドン引きしている。

 違うんやよ? ただ意識を回復させようとしただけなんやよ? 俺はゼクスを担ぎ上げるとギルドの中へ連れていきテーブルの上に寝かせた。

「すみません、ここまでする気はなかったんですが」

「……いや、トドメ指して……」
「……やばいな……」

 ぐう、視線が痛い。まるでパーサーカーを見るような目じゃないか。いやそんな目は知らないけどさ。

「今回のことはゼクスの自業自得です。むしろ仲間が無礼を働き申し訳ありませんでした」

 シャーロンさんが俺に頭を下げて謝る。

 美人なだけじゃなくて理知的なのか、好感度上がるわ。あなたが冒険者辞めたらぜひ俺の嫁にしたいくらいです。

「いいえ、こちらも大切な娘達を侮辱されカッとなってしまて。申し訳ないです」

「た、大切? あ、その人たちはあなたの――」

「大切な人です」

 俺がそう言うとシャーロンさんは力なく崩れ落ちそのまま呆然自失となる。俺がシャーロンさんを助け起こそうとすると、クニャラとレオナに腕を取られ押さえつけられた。胸に……。

「わたし、大切な人です?」
「私もですか?」

 両手に花とはこのことだろう。腕に当たる膨らみを堪能したいところだがシャーロンさんも心配だ。

 おれは二人に”大切な仲間だよ”と言うと、なぜかまた背中を殴られた。痛いよマジで?
 それを聞いたシャーロンさんもなぜか正気に戻り「大切な仲間ですか、そうですかと言ってギルドの外に出ていった」

 あんな状態で外に出て大丈夫か?

「よしっ!!!」

 まるで誰かがガッツポーズをしているかのような掛け声が響き渡ると。シャーロンさんがスッキリした顔でギルドに戻ってきた。体調もよくなったようですっかりニコニコだ。

「取り乱してすみません」

 取り乱した? 

 そうか仲間があんな状態だ取り乱しても仕方がない。

「俺のせいですみません」

 俺はシャーロンさんに頭を下げて謝る。

 もちろんゼクスを倒したのは悪いとは思っていないが、仲間を倒してしまったことについては謝っておこう。とりあえず謝る文化ザ・日本人、俺。

「き、気づいてらしたんですか」

 そう言うとシャーロンさんは顔を真っ赤にしてうつむく。

「ええ、本当にすみません、仲間が倒されたら誰でも取り乱しますよね」

「え!?、あ、……はい。そうですねまさかゼクスが倒されるとは思わなかったので」

 俺に倒されたゼクスは元々鍛冶師だったそうで師匠と喧嘩し転職して拳闘士に転職ジョブチェンジしたのだと言う。そしてゼクスの現在のレベルは35だそうなのだが、そんなに簡単に仲間の能力ペラペラしゃべっても良いのだろうか。
 まあ、つまり俺の腕力は最低でもレベル35以上はあると言うことだな。

「あなたは拳闘士から転職ジョブチェンジして鍛冶師になられたんですか?」

「すみません記憶喪失でよく分からないのですよ」

 椅子に座ると両サイドをクニャラとレオナが座り俺の腕を掴む。まるで連行される宇宙人の気分だが。ゼクスみたいなヤンキーに脅されて怖かったのだろうから仕方がないか。

 だがシャーロンさんの顔がまるで怒っているかのようになり二人を見る。

「ずいぶん仲がおよろしいんですね?」

「この町に来る途中知り合ったのですが、娘みたいなものですよ」

 シャーロンさんにそう言うと二人は俺の脇腹をつねる。

 娘はダメなのか? 異世界だから結婚も早そうだしこの年齢差だと孫の方がよかったのか?

 女性は自分を若く見て欲しいと言うのもあるから俺の娘じゃ、としより過ぎると言うことなのだろ。すまないねぇ~、おじいちゃん配慮が足りなかったよ。

 まあ、シャーロンさんの顔も優しい笑顔になったし、きっとお腹でも痛かったんだろう。あれ波があるからな。

「記憶喪失ですか? それでしたら王都の巫女様なら治療できると思いますよ。なんなら私から巫女様にお願い致しますが?」

 は? ちょ、何いってんの? 

 治療なんかしたら嘘だって一発でばれちゃうじゃない。それだけは断固拒否でござるよ。

「いいえ、私のよう下賎の者の治療に巫女様の手を煩わせるなどできませんから」

 まあ巫女ちゃんがどんな娘かは知らないけど。きっとはかまが似合う黒髪美人なのだろう? 

 いやさっき鎧の筋肉だるまがロリコンって罵倒されてたな。幼女か!? なんだ守備範囲外ですお帰りください。

「あ、お仲間大丈夫ですかね?」

 俺を話をごまかすようにゼクスの容態を心配した。

「え? ああ、あんなのは放っておいてもいいんですよ、自業自得ですし」

 さっき仲間がやられたときの茫然自失した態度が、まるでなかったかのようにゼクスをぞんざいに扱う。

 照れ隠しかな? 男は筋肉だるまとゼクスだけ筋肉の方はロリコンつまりゼクスはシャーロンさん狙いなのだろう。

 さっきの態度を見ててもわかる、あれは惚れた女性に対する男の態度だった。俺は人の心がわかる男だ間違えることはない。

「でも、彼氏なんでしょうし。少しは心配してあげた方が良いですよ」

 俺は少し強めに言った。さすがに彼氏を放置するとか可愛そうだからな。昨日の敵は今日も敵だ。まあ友にはなれないなゼクス君とは。

「なっ! 違います! こんな奴は彼氏じゃありません!」

 シャーロンさんが立ち上がるとすごい剣幕で俺に抗議をする。
 分かってますよシャーロンさん照れ隠しですね? 大丈夫、大丈夫、素直になればいいんです。さすれば道は開けよう。俺は心の中で仏のポーズをして生暖かい目で見守った。

 なにか気にくわなかったのかシャーロンさんは寝ているゼクスをバコンと叩くと外へと飛び出した。

 その衝撃でゼクスは目が覚めシャーロンさんをあたふたと追いかける。

「おぼえてりょ! この落とし前はきっちりつけてやるからな!!」

 そう捨てセリフをのこしギルドを後にした。噛んだね? 噛んだよね?

 筋肉だるまとホットパンツ娘は手を前にだし俺に謝るポーズをすると二人を追いかけていった。

 4人の冒険者がいなくなりギルドに静寂が訪れる。

「まるで嵐だな」
「です」
「そうですね」

 ギルドの受付から大笑いが聞こえてきた。ゴメスさんがお腹を抱えて大笑いをしている。

「どうしたんですか?」

「いや、とうへんぼくって本当にいるんだなと思ってね」

 そう言うと俺を見てはまた笑った。
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