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魔法学園編(本編)
116.フレンダ・アルストロメリア⑤
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魔女キルケーが戦場に現れた。
それによって意識を失ってしまうフレンダ。
レイブ達は騎士団員達と協力して怪我人の手当てをした。
今回の襲撃での負傷者は37名、死者3名。
その内の一人が、レイブ達の案内をしてくれたマレクだった。
そして一行は、倒れたフレンダの眠る部屋に集まっていた。
「全員揃ったな」
レイブが言う。
彼の周りには、リルネット達チームメンバーとマッケンが集まっていた。
同室のベッドではフレンダが眠っている。
「皆、辛い事をいうようだけど落ち込んでいる暇は無い。早急に状況把握と打開策を考えよう」
「うん……」
レイブの声かけにリルネットだけが答えた。
他の皆は黙ったままだが理解はしている。
だからこそ黙ってレイブの方へ視線を向けた。
レイブは視線が自分に集まった事を確認してから話し始める。
「それじゃ、最初にこっちの被害だけど……それはさっきマッケンさんから報告された通りだ。死者を含めた被害者は40名。決して少なくは無いが極端に多いわけじゃない。今日の襲撃の規模からして、この被害者数なら戦う事はできる。ただ問題なのは、眼に見える被害がこれだけだって事だ」
「精神面の被害ですね?」
アリスが言う。
「そうだ。今回の襲撃者はネクロマンサーだった。すでに死人とは言え、何回も人間を殺す感覚を味わって平気な奴なんていない。いくら訓練を積んだ団員でも同じだよ」
「その通りだ。現に確認した所、騎士達の半数に鬱症状のようなものが見受けられた。彼らはとても戦えるような状況じゃない」
マッケンの調べた状況によれば、次も戦える者は半数以下。
その半数でも次戦えば、戦闘中に戦意を喪失する可能性も考えられる。
となると……
「最悪の場合、ここにいるメンバーだけで戦わないといけないかもしれないな」
「マジかよ? それはさすがにきついぞ」
「わかってるよグレン。それにここにいるメンツだって同じリスクを持ってる。俺達だけで戦う状況は避けたい。そのためには……」
「魔女本体を倒す―――――」
リルネットが閃いたように言う。
「正解だ」
死霊魔法は死者の魂を遠隔操作する魔法だ。
確かに強力な魔法ではあるが、術者本体を倒せば解除される。
こちらの被害を最小限で終わらせるためには、少しでも早く魔女を討伐するしかない。
「そのためには彼女の力が必要だ」
レイブが視線をベッドに向ける。
皆の視線も同じ方向へ移動する。
視線が集まった先にはフレンダが眠っていた。
「レイ、フレンダ先輩どうなっちゃったの?」
「何しても起きないっすよ」
「何かの魔法にかかっているのでしょうか?」
「ああ。先輩は今、キルケーが持つ固有魔法によって眠らされているんだ」
「固有魔法? 特異魔法の事?」
リルネットが首を傾げて言う。
「少し違う。皆も知っていると思うけど、特異魔法は特定の人物にしか使えない特別な魔法のことだ。だけど特別と言っても条件さえ満たせた他者が行使する事もできる。対して魔女の用いる固有魔法は、文字通り魔女固有の魔法……魔女本人にしか使えない魔法なんだ」
そして七大罪の魔女達は、それぞれに一つ固有魔法を持っている。
自身が背負う大罪の名を冠する魔法。
キルケーの場合『嫉妬』と呼ばれる固有魔法だ。
「【嫉妬】の魔女キルケー、七大罪の一人……聞いた事無かったな」
「だろうな」
七大罪の魔女が活動していたのは、今より数百年以上前だ。
今では4人になっているし身を潜めていたらしいから、現代で知っているのは俺とエレナくらいだろう。
加えて【嫉妬】の魔女に関しては情報が一番少ない。
特に固有魔法については予想の域を出ていなかった。
「それで結局先輩は大丈夫なのか?」
「ああ、今の所はな。おそらく先輩は今、悪夢を見せられている」
「悪夢だって? お前あの魔女の魔法がわかるのか?」
グレンが尋ねる。
それに肯定で返したレイブ。
今まで予想でしかなかった魔女の能力……でも今回の一件でハッキリした。
固有魔法『嫉妬』の能力は――――――
「相手の意識を悪夢の中に閉じ込め壊す―――――それがキルケーの能力だ」
「意識を閉じ込める? 間違いないのか?」
マッケンが聞く。
レイブは縦に首を振る。
「これは所謂【干渉魔法】の亜種と呼べる魔法です。相手の意識に干渉しトラウマを呼び起こす。そして相手を夢の中に閉じ込め、永遠にトラウマから生み出した悪夢を見せ続ける。おそらく発動条件は相手と眼を合わせることだったんでしょう」
キルケーはフレンダと眼を合わせていた。
その直後に彼女は倒れた。
他にも条件はある可能性はあるが、直接の発動は眼を合わせることで間違い無さそうだ。
そして問題はその解除方法にある。
「反魔法で解除できないのか?」
「それはもう試したよ。結果はこの状況を見ればわかるだろ?」
質問したグレンも察した。
「ねぇレイ、このままだとどうなるの?」
心配そうな顔でリルネットが聞く。
「精神が完全に壊れれば最後、二度と目覚めないだろうな。最悪そのまま肉体も死ぬかもしれん」
「そんな……」
暗い雰囲気になる一同。
そんな中でアリスが言う。
「助ける方法は無いのですか?」
皆の視線が再びレイブに集まる。
レイブは真剣な顔でこう答えた。
「方法はある」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
次回更新は12/1(土)12時です。
現在キャラ文芸大賞用の作品を執筆中です。
11/30の20時に投稿予定でいます。
ぜひぜひお気に入り登録、投票お願いいたします。
それによって意識を失ってしまうフレンダ。
レイブ達は騎士団員達と協力して怪我人の手当てをした。
今回の襲撃での負傷者は37名、死者3名。
その内の一人が、レイブ達の案内をしてくれたマレクだった。
そして一行は、倒れたフレンダの眠る部屋に集まっていた。
「全員揃ったな」
レイブが言う。
彼の周りには、リルネット達チームメンバーとマッケンが集まっていた。
同室のベッドではフレンダが眠っている。
「皆、辛い事をいうようだけど落ち込んでいる暇は無い。早急に状況把握と打開策を考えよう」
「うん……」
レイブの声かけにリルネットだけが答えた。
他の皆は黙ったままだが理解はしている。
だからこそ黙ってレイブの方へ視線を向けた。
レイブは視線が自分に集まった事を確認してから話し始める。
「それじゃ、最初にこっちの被害だけど……それはさっきマッケンさんから報告された通りだ。死者を含めた被害者は40名。決して少なくは無いが極端に多いわけじゃない。今日の襲撃の規模からして、この被害者数なら戦う事はできる。ただ問題なのは、眼に見える被害がこれだけだって事だ」
「精神面の被害ですね?」
アリスが言う。
「そうだ。今回の襲撃者はネクロマンサーだった。すでに死人とは言え、何回も人間を殺す感覚を味わって平気な奴なんていない。いくら訓練を積んだ団員でも同じだよ」
「その通りだ。現に確認した所、騎士達の半数に鬱症状のようなものが見受けられた。彼らはとても戦えるような状況じゃない」
マッケンの調べた状況によれば、次も戦える者は半数以下。
その半数でも次戦えば、戦闘中に戦意を喪失する可能性も考えられる。
となると……
「最悪の場合、ここにいるメンバーだけで戦わないといけないかもしれないな」
「マジかよ? それはさすがにきついぞ」
「わかってるよグレン。それにここにいるメンツだって同じリスクを持ってる。俺達だけで戦う状況は避けたい。そのためには……」
「魔女本体を倒す―――――」
リルネットが閃いたように言う。
「正解だ」
死霊魔法は死者の魂を遠隔操作する魔法だ。
確かに強力な魔法ではあるが、術者本体を倒せば解除される。
こちらの被害を最小限で終わらせるためには、少しでも早く魔女を討伐するしかない。
「そのためには彼女の力が必要だ」
レイブが視線をベッドに向ける。
皆の視線も同じ方向へ移動する。
視線が集まった先にはフレンダが眠っていた。
「レイ、フレンダ先輩どうなっちゃったの?」
「何しても起きないっすよ」
「何かの魔法にかかっているのでしょうか?」
「ああ。先輩は今、キルケーが持つ固有魔法によって眠らされているんだ」
「固有魔法? 特異魔法の事?」
リルネットが首を傾げて言う。
「少し違う。皆も知っていると思うけど、特異魔法は特定の人物にしか使えない特別な魔法のことだ。だけど特別と言っても条件さえ満たせた他者が行使する事もできる。対して魔女の用いる固有魔法は、文字通り魔女固有の魔法……魔女本人にしか使えない魔法なんだ」
そして七大罪の魔女達は、それぞれに一つ固有魔法を持っている。
自身が背負う大罪の名を冠する魔法。
キルケーの場合『嫉妬』と呼ばれる固有魔法だ。
「【嫉妬】の魔女キルケー、七大罪の一人……聞いた事無かったな」
「だろうな」
七大罪の魔女が活動していたのは、今より数百年以上前だ。
今では4人になっているし身を潜めていたらしいから、現代で知っているのは俺とエレナくらいだろう。
加えて【嫉妬】の魔女に関しては情報が一番少ない。
特に固有魔法については予想の域を出ていなかった。
「それで結局先輩は大丈夫なのか?」
「ああ、今の所はな。おそらく先輩は今、悪夢を見せられている」
「悪夢だって? お前あの魔女の魔法がわかるのか?」
グレンが尋ねる。
それに肯定で返したレイブ。
今まで予想でしかなかった魔女の能力……でも今回の一件でハッキリした。
固有魔法『嫉妬』の能力は――――――
「相手の意識を悪夢の中に閉じ込め壊す―――――それがキルケーの能力だ」
「意識を閉じ込める? 間違いないのか?」
マッケンが聞く。
レイブは縦に首を振る。
「これは所謂【干渉魔法】の亜種と呼べる魔法です。相手の意識に干渉しトラウマを呼び起こす。そして相手を夢の中に閉じ込め、永遠にトラウマから生み出した悪夢を見せ続ける。おそらく発動条件は相手と眼を合わせることだったんでしょう」
キルケーはフレンダと眼を合わせていた。
その直後に彼女は倒れた。
他にも条件はある可能性はあるが、直接の発動は眼を合わせることで間違い無さそうだ。
そして問題はその解除方法にある。
「反魔法で解除できないのか?」
「それはもう試したよ。結果はこの状況を見ればわかるだろ?」
質問したグレンも察した。
「ねぇレイ、このままだとどうなるの?」
心配そうな顔でリルネットが聞く。
「精神が完全に壊れれば最後、二度と目覚めないだろうな。最悪そのまま肉体も死ぬかもしれん」
「そんな……」
暗い雰囲気になる一同。
そんな中でアリスが言う。
「助ける方法は無いのですか?」
皆の視線が再びレイブに集まる。
レイブは真剣な顔でこう答えた。
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