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40話

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   テラは天の導きと共に地上を目指す。
イングベルトから言われた限界まで下に潜るというのは一旦止めてこの洞窟に起きている事を解明するために地上に戻るのが先決だとテラは考えていた。
   休憩部屋に居た全部で5パーティー全てがバスティアンが洞窟に異変が起きている事を伝えると一緒に地上へと戻る事を選択した。

「7階には強力な水弾を放つモンスターが湖の中に居るので気をつけて下さい。
出来る限り湖から影になるような所を探して進みましょう」

   テラがそう言うと皆が頷き階段を上がって7階へと戻る。
7階に戻るとモンスターの姿はなく壁沿いをモンスターに見つからないように静かに歩を進める。
半分程来たところでテラ達の後ろから悲鳴が上がる。

「どうしたんだ!
モンスターが現れたのか?」

   バスティアンが後方のパーティーに確認するとどうやら湖の中なら魚型モンスターキラーフィッシュがいきなり飛び出してきて攻撃してきたらしい。
飛んできたモンスターはどれも雑魚モンスターばかりだったらしく警戒する必要はないモンスターだった。

「ふう驚かせやがって」

「でも今の悲鳴を聞いてあの水弾を飛ばすモンスターが現れるかもしれませんから警戒して下さい」

「そうだよバスティアン!
テラの言う通りあのモンスターは厄介だから警戒しとこう」

「そうだな。
リヒャルダお前の周りは俺達が警戒するからお前は常に湖を見ててくれ」

「わかったよ!
こういうのは斥候であるあたいの役目だからね」

   天の導きはリヒャルダを中心に湖への警戒を強めていたがその時は突然来た。

「みんな!水弾が来るから伏せて!」

   天の導きとテラはリヒャルダの指示通り伏せるとその上を水弾が通過していく。
湖の方を見ると前にテラ達を攻撃してきた首長竜のようなモンスターがそこには居た。

「あの水弾は強力だよ…みんな岩場の影に隠れて階段を目指すよ」

「リヒャルダ!別にこちらからも攻撃して良いよね?
オトマール僕が詠唱中飛んできた水弾を防いでくれる?」

「任せとけレギナルト!
キングリザードマンの時みたいな事には絶対にしねえからな!」

 オトマールは張り切って盾を構える。

「オトマール!レギナルト!あれがお前らの手に負える相手じゃないのが分からないのか!」

 バスティアン大声を出して2人を止めるがオトマールは気が高ぶっているのかモンスターに目を向けたまま反応しない。
レギナルトは…

「僕なら大丈夫だよ!良いから見てて」

 モンスターが他のグループも攻撃し始めこちらに水弾が飛んでこない間にレギナルトは火の攻撃魔法をモンスターに向かって発動する。
しかしレギナルトが使える最上の攻撃魔法をモンスターは飛んでくることに気付くと水弾を魔法にぶつけ相殺してしまう。

「そんな…僕の魔法が簡単に相殺された…」

 レギナルトがショックを受けている間にもモンスターはレギナルトに向かって水弾を放ち始める。

「レギナルト!前を見ろ!」

 リヒャルダが大声でレギナルトに声を掛けるがレギナルトはショックのあまりリヒャルダの声が届かない。
水弾が近づいてくる中テラは支援魔法で防御力アップを天の導きと自分に掛ける。
賢者であるミリアムが薄い膜のようなシールドを張るが水弾はシールドを簡単に破りレギナルトへと向かっていく。

「おいおい凄え威力だな…」

 レギナルトにぶつかると思われた瞬間オトマールがレギナルトの前に立ち水弾を防ぐ。
しかし水弾の一撃で盾は大きく凹んでしまっている。

「レギナルト!これは何度も防げそうもねえ!
俺が防いでる間に逃げろ!」

「オ、オトマール…でも僕の最高威力の魔法と同レベルの水弾から逃れるなんて…」

「ちっ!めんどくせえ!
オトマールも逃げるぞ」

 バスティアンがレギナルトを背負い走り出す。
だがオトマールはその場で盾を構えたまま動かなかった。

「俺はお前らが安全な所に行くまでここで防いでやる!
さっきみたいな思いはしたくないんだよ!」

 天の導きや他のパーティーが水弾から逃れようと走って逃げる中オトマールはその場で盾を構えて動かないでいた。

「オトマール!お前も逃げるんだ!
そいつは俺達の勝てる相手じゃない!」

「悪いなリーダー勝てなくても男にはやらねえといけねえ時があるんだよ!
俺みたいな万年Cランクの戦士を仲間に誘ってくれて嬉しかったぜ!」

 モンスターからオトマールへと水弾が次々に放たれる。
水弾がオトマールの盾へと着弾すると盾は吹き飛ばされオトマールの体へと着弾していく。

「うぉぉぉぉぉーーーーー」

 オトマールは大声を出し水弾の威力になんとか耐えようとするが水弾の威力に負けて壁まで吹き飛ばされてしまう。

「オトマーーール!!!」

「バスティアン今戻ったら危ないよ!」

 戻ろうとするバスティアンをリヒャルダが身を挺して止める。
そんな中テラは1人オトマールの元へと駆け寄る。
モンスターの注意がオトマールではなく他のまだ安全圏に至ってないパーティーに向いていると判断した為だ。

「テラ!あんたも危ないよ!」

「大丈夫です!」

 リヒャルダの声にテラは大丈夫と返事をしたが実際はそんな事はなくテラはモンスターの注意がこちらに向いたらどうしようとドキドキしていた。
なんとかモンスターに気付かれる事なくオトマールの元へと辿り着くと回復魔法を掛ける。
 しかしオトマールは反応なく動かないのでテラは担いで運ぶことにした。
だがオトマールは全身鎧を纏っておりテラには重くスピードが出ない。
そうこうしている内にモンスターの目に入る冒険者がテラとオトマールしか居なくなってしまう。

「グギャァァァー」

 モンスターは咆哮を上げテラに向けて水弾を放つ。

「くっ!躱せない!」

 テラが目を瞑り直撃を覚悟していると横から飛んできた火の玉が水弾を相殺する。

「テラ君急ぐよ!」

 バスティアンが水弾と共にテラ達に駆け寄り一緒にオトマールを担いで運んでいく。
そこにモンスターは水弾を放ってくるがレギナルトと他パーティーの魔法使い達が水弾に向けて魔法を放ち水弾を逸らしてくれる。
魔法使い達の支援によりテラ達はなんとか階段へと続く岩の陰まで逃げ切る事が出来た。

「全くテラは無茶してくれるよ!
でもテラもオトマールも無事で良かった…」

「テラさん本当にありがとうございます」

 リヒャルダとミリアムがテラに声を掛けてくるがテラは返事をせずオトマールを横にしてオトマールの身体を確認している。

「すいません…僕が助けに行くのがもう少し早ければ…」

 テラの言葉に天の導きはぎょっと驚く。

「テラ君…オトマールはどうなんだい?
生きてるんだろ?」

 バスティアンの言葉にテラはゆっくりと口を開く。

「生きてはいますがもう戦う事は出来ないと思います…
僕の魔法では命を取り留めるのが精一杯でこれ以上は…」

「そんな…ミリアム本当なのか?」

 バスティアンはパーティーメンバーの賢者ミリアムに声を掛ける。
ミリアムはオトマールの身体に触れ確認して回復魔法を使う。

「テラさんの言う通りだと思います…
念のため私も回復魔法を使ってみたのですがダメでした…
むしろテラさんだからここまで治せたのだと思います…」

「オトマール…僕が勝手な事言ってモンスターに攻撃なんか仕掛けたからこんな事に…」

 レギナルトがオトマールの容態を聞いて顔が青ざめて行く。
バスティアンは信じられないと言った顔をして立ち尽くしている。
テラはどうする事も出来ずオトマールの事を見つめている。
 テラは自分の力不足を悔いている。
オトマールの身体は内臓や骨がぐちゃぐちゃになっておりテラの回復魔法で内臓や骨を治すことが出来ても場所がずれてしまった内臓や骨の位置までは治せなかったのだ。

「みんな…聞いてくれ…」

 いつの間にか目を覚ましていたオトマールが小さな声で話し始める。

「オトマールさん!なんですか⁉」

 テラの声を聞いて天の導きは全員テラの方を向く。

「オトマールが目覚めたのか?」

「オトマールさんが何か話したいようなので皆さん近くに来てください」

 テラは天の導きをオトマールの傍へと集める。

「みんなありがとな…死ぬ覚悟だったのにどうやら助かったみたいだな…
でもさっきまでの話を聞くとどうやら俺はここでリタイアみたいだな…」

「オトマール!僕が絶対に凄い回復術師を探して治してみせるから一緒にまた冒険しようよ!」

「レギナルト…悪いな俺が全部防いでやるって言ったのに…」

「そんな事ないよ!僕達は誰も怪我してないんだからオトマールは立派に防いでくれたよ…」

 オトマールはレギナルトの言葉に顔を少しだけ上下させる。

「リーダー悪いが俺はここに置いていってくれ。
この身体じゃみんなの足手纏いになっちまうだろうから頼む」

「ダメだよ!オトマールも一緒に地上に行くんだ!
そんな事僕が絶対に許さないから!」

「レギナルトの言う通りだ!お前は俺達の仲間なんだから絶対に見捨てたりしないぞ!」

「リーダー…」

 その後天の導きは話し合いオトマールの鎧を捨てバスティアンが背負って運ぶ事に決めた。

「リーダー危なくなったら俺の事は置いて行ってくれ」

「そんな事は絶対にしないから安心しろ」

バスティアンの言葉に天の導きとテラは頷く。

「本当に馬鹿な奴ばかりだぜ…」

 オトマールは涙を隠す為そっぽを向いてしまった。
テラはイングベルトに回復魔法についても教わらねばいけないと痛感していた。
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