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28話

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 テラが洞窟に入ってから2週間が経ちぜルマルは暇を持て余していた。

『なかなか勇者出てこないなー
そろそろ飽きたぞ…』

 ぜルマルが独り言を言っているとメルのいるセラスの剣がぜルマルの前に立つ。

「最近ここらに出るドラゴンってこれなの?」

「そうみたいね…でもロックドラゴンとは聞いてなかったんだけど…」

『おおーお主達が勇者か!なぜ洞窟からでなく歩いて来たのだ?
それとお主達に会いたいという者が居てな』

「口を開けた!やばいブレスが来るぞ!」

 セラスの剣はぜルマルが口を開いた事でブレスを警戒して距離を取る。

『何を逃げているのだ!
ええい!話を聞かんか!』

「マズい!なんか怒ってるみたいだぞ」

「私が大きいの放つからお願いします!」

 メルが声を掛け魔法を放つ為詠唱を始める。
他の者はぜルマルの気を引くために牽制攻撃をする。

『人の話を聞かんとは失礼な奴らめ!』

 ぜルマルはテラと話過ぎた為ドラゴンストーンが無いと人間とは話せない事を忘れていた。
そしてぜルマルは牽制攻撃に怒りセラスの剣に攻撃をする。
尻尾を振り回し攻撃すると魔法使いに直撃する。

「ハイナー!大丈夫か!?」

   ハイナーと呼ばれた魔法使いはピクリとも動かない。

「よくもハイナーを!」

『 お主ら少し待て!
話したい事が有ると言っておるだろうが!』

   しかしゼルマルの声はセラスの剣には伝わらなかった。
怒りにセラスの剣の女戦士アイナが1人ゼルマルに突撃をする。

「やぁぁぁー!」

   アイナは飛び上がり頭上から剣を振り下ろす。
しかしその一撃はゼルマルの前足でアイナ諸共吹き飛ばされてしまう。

『 いい加減にせぬか!
お主らはなぜ話を聞かん!』

「アイナさん大丈夫ですか?」

   メルは魔法の詠唱をやめ仲間の元へと駆け付けていた。

「済まないね…
このロックドラゴンは私達じゃ時間稼ぎすら出来ないみたいね…」

   アイナが弱音を吐いている時ゼルマルに変化があった。

『 いい加減吾輩の話を聞かぬようならブレスで焼き払ってくれるぞ!』

   だがゼルマルの言葉は通じずメルは攻撃態勢を取る。
セラスの剣の他のメンバーは傷付いた者を治療していた。
   その姿を見たゼルマルは話を聞く気がないと激怒しブレスを放つ為大きく息を吸い込む。

「本気のブレスが来るよ!全員避けるんだよ」

   ゼルマルは全力のブレスをセラスの剣目掛けて放った。

   しかしブレスは上空から放たれた何者かの攻撃により地面へと落とされ大爆発する。
ゼルマルが何者が邪魔をしたのかと思い上空を見上げるとそこには1匹のスカイドラゴンが居た。

『アウドラ!なぜ邪魔をする!
こいつらはこちらの話も聞かない愚かな人間共だぞ!』

『全く何をしてるんだい?
その娘は魔王と戦わせる駒だから殺されちゃ困るんだよ。
それにドラゴンストーンも無しに人間と話すことなんか出来るはずが無いだろう』

 アウドラに言われて初めてぜルマルはドラゴンストーンをセラスの剣が持っていない事に気付いた。

『全くあんたはそんな事も忘れてたのかい!
その娘は利用価値があるんだから絶対に殺すんじゃないよ!
もし殺したりしたらマスタードラゴンが黙ってないよ!分かったかい?』

『ちぇっ仕方ない…
じゃあ俺は帰るから後は頼むぜ』

『ちょっと待ちなさい!
あんたには言いたいことが山ほどあるんだから!』

 ぜルマルはアウドラの制止も聞かず飛び去ってしまった。
それを追いかけアウドラも飛び去った。
その間セラスの剣は2体目のドラゴンが現れた事でメルとアイナはどうやってこの場を切り抜けるか考え、2人以外は生きる事を諦めていた。

「飛び去った…スカイドラゴンが私達を助けてくれた…?」

「アイナさんあのスカイドラゴンは前に戦った奴ですよね?
どうして私達を助けてくれたんでしょうか?」

「なんだって構いやしないよ!
とにかく私達が助かったってだけで十分だろ?」

「そうですね…」

(でもあのドラゴンは私の事を見てた…何か私に言いたい事でもあるのかな?
あのドラゴンと最初に戦った時はテラが横に居たから戦えたけど私一人では立ち向かえなかった…)

「さあ怪我人を治療したら町に戻るよ!
いくら連戦の後だからってあの体たらくを見せてくれたんだ…
町に戻ったら覚悟しときなさい!」

 ここに来るまでセラスの剣はモンスターとの連戦を強いられて魔法使いや賢者は既に魔力が切れかかっていたのだ。
だから先程の戦闘では魔法が使えなかったのだが、アイナにはそんな事は通じず帰ったら地獄のような訓練が待ち受けているのだった。



 一方その頃テラは洞窟内でとてつもない地響きと揺れに驚いていた。

「さっきの凄い揺れはなんだったんだろう?
こんな地下で地震なんて…もし洞窟が崩れたらひとたまりもないぞ」

 先ほどのぜルマルのブレスが地表に当たった事で洞窟内は激しく揺れていた。
その揺れのせいで洞窟内のモンスターは動揺し暴れ出していた。
テラが居るのは地下15階の広場なのだがモンスターはAクラスが出現しておりテラにとって一筋縄では行かない相手ばかりだった。
そのモンスター達が暴れまわっている為テラは岩の隙間に隠れていた。

「どうしようかなそろそろ僕じゃ倒せないモンスターばかりになってきたし戻ろうかな…
でもぜルマルさんから連絡はまだないし…どうしよう…」

 テラが小声で呟いているとモンスターがテラが隠れている岩にぶつかり岩が動き出しテラの姿を露わにする。
そこにはキラービーネの上位種Aランクのキングビーネが宙に浮いていた。

「まずい!キングビーネだ!逃げないと…」

 しかし反対側には同じくAランクのジャイアントグリズリーが待ち受けていた。
両側をモンスターに挟まれてしまったテラは正面の広場に向けて走り出す。
2体はテラには目もくれずに戦いを再開した。
先程岩が動いたのはキングビーネに攻撃されたジャイアントグリズリーがぶつかった為だったのだ。
 テラは自分の方にモンスターが向かって来ない事を確認すると再び別の岩の陰に身を隠すのだった。
2体のモンスターは上空からキングビーネが一方的に攻撃を仕掛けジャイアントグリズリーが腕を振り回すがキングビーネには当たらなかった。
いつしかジャイアントグリズリーはキングビーネの毒が身体に周りその場から動けなくなってしまった。
そこへキングビーネが止めを刺そうとジャイアントグリズリーの頭目掛けて突っ込んでいく。
その時ジャイアントグリズリーは大きく口を開きキングビーネのお尻に噛みつく…が口の奥を針に刺され絶命する。
キングビーネもジャイアントグリズリーに噛みつかれたせいで虫の息になっていた。
 テラはその一部始終を見ておりキングビーネの元へと歩を進める。
そして短剣で頭を攻撃しキングビーネに止めを刺した。

「棚ぼたで食料を手に入れられたけど怖かった…
こんなの僕じゃ2匹も相手に出来ないもんね」

 テラはジャイアントグリズリーの肉を状態異常回復の魔法を使いながら食べようと思い手頃なサイズに切り刻んでいく。
それが終わるとテラはその場をすぐに後にする。
他のモンスターが匂いに釣られてやってくるのを恐れたからだ。

「それにしてもここら辺は強いモンスターばかりだし一回引き返そう」

 テラは休憩を取り来た道を引き返し始める。
しかし来た時に使った階段が見当たらない…
必死に探すがどこにも階段が見つからずにテラは慌てる。

「おかしいな…絶対にあそこから降りてきたはずなのになんでないんだ…
ここまで宝箱もないし絶対にこの洞窟はおかしい。
師範に聞いたのとあまりにも違い過ぎるし一体ここは…」

 テラがぶつぶつ独り言を話している間に再びキングビーネが前方に現れる。
急いで隠れようとするが見つかってしまいテラは仕方なく戦闘態勢に入る。

「クレイニードル!」

 牽制にクレイニードルを連発するがキングビーネの表皮を削るだけで効果は薄いようだ。
キングビーネに近づかれてしまいテラは短剣でお腹の部分を攻撃する。
しかしクレイニードルと同じように皮に僅かばかりの傷を付けるだけだった。
その間にキングビーネもテラを針で攻撃するが、テラは毒をすぐに状態異常回復の魔法を使用して回復させる。
30分程経ち疲れてきたキングビーネの頭部をテラが短剣で攻撃しようやく決着が着く。

「やっぱり強いな…なんとか勝てたけど危なかった…
もう引き返したいけど階段が見つからないんだよなぁー
とにかくここに居ても始まらないし動かないとね」

 そうこうしている内に下へと降りる階段が見つかりテラは恐る恐る下へと降りて行くのであった。
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