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とある傭兵の半生~6~
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「GUGYAAAAAAAAAA!!」
ゴブリンどもの咆哮が聞こえる。手に持った枝を盾にたたきつける。左右で肩を並べ後ろから支えられ、盾兵は敵の攻撃を受け止めいなし、はじき返す。
「うおおおおおあああああああああああああああああああああ!!」
ゴブリンどもに負けぬように声を上げ、足並みをそろえて押し返す。
「前列交代!」
「「応!!」」
もはや何度目かわからない交代命令を下す。
檄を飛ばす声は枯れてきて、声を張り上げるたびに喉の奥に血の味を感じる。時間の感覚もあいまいで、何時間戦っているのか、まだ1時間もたっていないのか? それとももうすぐ半日経つのか?
間違いないことは、今戦うことをやめれば、俺たちはこいつらの餌になるということだけだ。
「かかれ! かかれ! 叩け! 叩け!」
「「応!!」」
兵たちの応えはまだ力強い。
「前列交代!」
「「応!!」」
ゴブリンたちは無数の躯を築いてなお向かってくる。
いつまで戦えばいいのか。先行きが読めない状況に兵の士気も下がりつつある。
さらに悪い知らせが来た。
「隊長、物資がもう……」
「あとどれくらい戦える?」
「交代2回分くらいです」
「わかった。ご苦労」
半数の兵で防壁を作り、残り半数で遠隔攻撃を加えて敵の手数を減らす。だが、敵の攻勢を受け止めきれなくなる。遠からず待っているのは戦線の崩壊だ。
背中に冷たい汗が伝い始めた。手立てを考えるが、そんな都合よくいけば苦労はない。破局の時がじりじりと背中に迫っていることを感じながら当面の手を打つ。
すなわち機を見て交代の命令を下し、敵に切り込んで押し返す作業だ。
交代1回分の物資を使い切り、もう後がない。そんな時だった。首筋に冷たい気配を感じる。戦況から目を離さ威内容にして周囲を伺うと……明らかに異質な男がいた。
「ほう、気づくか。なかなか……」
「何者だ?」
この状況で不審な人間が俺のところにいると周囲にわかると兵が動揺する。ぎりぎりのところで繋ぎとめている戦況が崩壊しかねない。
「ふむ、状況を読む力もある。よかろう」
「……目的は?」
「わが主に役立つかを見極めることだ」
「んで、どうなんだ? 俺たちは助けてもらえるのか?」
「クク。面白い男だ。いいだろう。100数える間持ちこたえるのだ。そのあとは……お前の思うようにせよ」
「……いいだろう。このまま戦っていてもじり貧だ。貴様にかけよう、だが……」
「だが?」
「俺を騙したのであれば、地の果てまでも追い詰めて貴様を討つ」
「クハハハハハ、よかろう。では、作戦開始と行こうか」
どうする、ただ持ちこたえていてもじり貧の状況は変わらない。それこそ100待つ間もなく瓦解するだろう。ならば……死中に活を求める。
「者ども! 援軍が来るぞ! 今こそ反撃の時だ!」
「「おう!」」
それこそ、物資の補給に回っていた支援兵も動員して投石をさせる。
恐ろしかった。ここで一つの判断ミスが、俺のみならず全ての兵の命運を破滅へと追い込む。
だが、座していても勝ちはない。故に俺は数を数えつつ、その段階での戦術をくみ上げる。
「全軍横陣を組め! そのうえで全軍防御! 援軍が来るまで持ちこたえろ!」
「「応!!」」
援軍という言葉に疲労していた兵たちが奮い立つ。
「後方支援兵! 俺の周囲に集まれ!」
「「応!!」
「俺の合図で敵陣にありったけの飛び道具を叩き込むのだ!」
「「応!!」
前線の兵が増えたことによって押し込まれていた戦線を押し戻す。盾の隙間から槍を衝き込みゴブリンどもを叩き伏せる。
作用には反作用が伴う。敵はゴブリンとはいえ指揮官がいる。面の攻勢に対して有効なのは点の反撃だ。
敵がどこを狙ってくるか。指揮官の性格にみよるが、おそらく中央突破を狙う。
3体のホブゴブリンが陣頭に立ち、突撃を仕掛けてきた。
「ぬおおおおおおおおおおお!」
ケネスが陣頭に立って押し返すが、3体のホブゴブリンでは分が悪い。何とか渡り合うが、徐々に押し込まれる。
「弓兵! 援護せよ!」
伏兵ももはや意味をなさない。なので、総攻撃前に本陣に引き上げさせていたのだ。
ケネスが渡り合っているのと別の個体に射撃が集中する。そのうちの一矢が目を射抜いた。
そこの機を逃さず俺が切り込んで一体を仕留める。
だが、敵もさるもので、攻勢が跳ね返されつつあると見るや、増援を叩きつけてきた。
徐々に中央が押し込まれ、横一線の陣列は弓なりに変形していく。
「いまだ! 放て!」
本陣の兵たちが全力で投石、弓攻撃を始めた。この時点でカウントダウンはのこり10。
「があああああああああああああああああああ!!」
獣じみた叫び声をあげて切り込む。俺の振るった大剣は過たずホブゴブリンの首を飛ばした。
ほぼ同時にケネスもホブゴブリンを打ち倒す。
そうして攻勢を押し返し、横一列の陣を復元したところで……彼らはやってきた。
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
甲高い声が響き渡る。
敵陣の背後には騎馬が迫っていた。
ゴブリンどもの咆哮が聞こえる。手に持った枝を盾にたたきつける。左右で肩を並べ後ろから支えられ、盾兵は敵の攻撃を受け止めいなし、はじき返す。
「うおおおおおあああああああああああああああああああああ!!」
ゴブリンどもに負けぬように声を上げ、足並みをそろえて押し返す。
「前列交代!」
「「応!!」」
もはや何度目かわからない交代命令を下す。
檄を飛ばす声は枯れてきて、声を張り上げるたびに喉の奥に血の味を感じる。時間の感覚もあいまいで、何時間戦っているのか、まだ1時間もたっていないのか? それとももうすぐ半日経つのか?
間違いないことは、今戦うことをやめれば、俺たちはこいつらの餌になるということだけだ。
「かかれ! かかれ! 叩け! 叩け!」
「「応!!」」
兵たちの応えはまだ力強い。
「前列交代!」
「「応!!」」
ゴブリンたちは無数の躯を築いてなお向かってくる。
いつまで戦えばいいのか。先行きが読めない状況に兵の士気も下がりつつある。
さらに悪い知らせが来た。
「隊長、物資がもう……」
「あとどれくらい戦える?」
「交代2回分くらいです」
「わかった。ご苦労」
半数の兵で防壁を作り、残り半数で遠隔攻撃を加えて敵の手数を減らす。だが、敵の攻勢を受け止めきれなくなる。遠からず待っているのは戦線の崩壊だ。
背中に冷たい汗が伝い始めた。手立てを考えるが、そんな都合よくいけば苦労はない。破局の時がじりじりと背中に迫っていることを感じながら当面の手を打つ。
すなわち機を見て交代の命令を下し、敵に切り込んで押し返す作業だ。
交代1回分の物資を使い切り、もう後がない。そんな時だった。首筋に冷たい気配を感じる。戦況から目を離さ威内容にして周囲を伺うと……明らかに異質な男がいた。
「ほう、気づくか。なかなか……」
「何者だ?」
この状況で不審な人間が俺のところにいると周囲にわかると兵が動揺する。ぎりぎりのところで繋ぎとめている戦況が崩壊しかねない。
「ふむ、状況を読む力もある。よかろう」
「……目的は?」
「わが主に役立つかを見極めることだ」
「んで、どうなんだ? 俺たちは助けてもらえるのか?」
「クク。面白い男だ。いいだろう。100数える間持ちこたえるのだ。そのあとは……お前の思うようにせよ」
「……いいだろう。このまま戦っていてもじり貧だ。貴様にかけよう、だが……」
「だが?」
「俺を騙したのであれば、地の果てまでも追い詰めて貴様を討つ」
「クハハハハハ、よかろう。では、作戦開始と行こうか」
どうする、ただ持ちこたえていてもじり貧の状況は変わらない。それこそ100待つ間もなく瓦解するだろう。ならば……死中に活を求める。
「者ども! 援軍が来るぞ! 今こそ反撃の時だ!」
「「おう!」」
それこそ、物資の補給に回っていた支援兵も動員して投石をさせる。
恐ろしかった。ここで一つの判断ミスが、俺のみならず全ての兵の命運を破滅へと追い込む。
だが、座していても勝ちはない。故に俺は数を数えつつ、その段階での戦術をくみ上げる。
「全軍横陣を組め! そのうえで全軍防御! 援軍が来るまで持ちこたえろ!」
「「応!!」」
援軍という言葉に疲労していた兵たちが奮い立つ。
「後方支援兵! 俺の周囲に集まれ!」
「「応!!」
「俺の合図で敵陣にありったけの飛び道具を叩き込むのだ!」
「「応!!」
前線の兵が増えたことによって押し込まれていた戦線を押し戻す。盾の隙間から槍を衝き込みゴブリンどもを叩き伏せる。
作用には反作用が伴う。敵はゴブリンとはいえ指揮官がいる。面の攻勢に対して有効なのは点の反撃だ。
敵がどこを狙ってくるか。指揮官の性格にみよるが、おそらく中央突破を狙う。
3体のホブゴブリンが陣頭に立ち、突撃を仕掛けてきた。
「ぬおおおおおおおおおおお!」
ケネスが陣頭に立って押し返すが、3体のホブゴブリンでは分が悪い。何とか渡り合うが、徐々に押し込まれる。
「弓兵! 援護せよ!」
伏兵ももはや意味をなさない。なので、総攻撃前に本陣に引き上げさせていたのだ。
ケネスが渡り合っているのと別の個体に射撃が集中する。そのうちの一矢が目を射抜いた。
そこの機を逃さず俺が切り込んで一体を仕留める。
だが、敵もさるもので、攻勢が跳ね返されつつあると見るや、増援を叩きつけてきた。
徐々に中央が押し込まれ、横一線の陣列は弓なりに変形していく。
「いまだ! 放て!」
本陣の兵たちが全力で投石、弓攻撃を始めた。この時点でカウントダウンはのこり10。
「があああああああああああああああああああ!!」
獣じみた叫び声をあげて切り込む。俺の振るった大剣は過たずホブゴブリンの首を飛ばした。
ほぼ同時にケネスもホブゴブリンを打ち倒す。
そうして攻勢を押し返し、横一列の陣を復元したところで……彼らはやってきた。
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
甲高い声が響き渡る。
敵陣の背後には騎馬が迫っていた。
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