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もう冒険しかすることがない

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 吉備きびパンのおかげで資源採集をする手間が、
ほぼ無くなってしまった。
 趣味であった宝石収集も大型の鳥がやってくれた。

 もう冒険しかすることがない。
ただ、鬼人文明世界でポロスに怪我をさせてしまったので、
ポロスに相談して行き先を決めることにした。
「あなたが行きたい所なら どこでもお連れいたしましょう」
「吸血鬼文明世界でも?」
「もちろん ただここに帰ってこれなくはなるかもしれないけど」
どうってことないという風にポロスは答えた。
「どうして?」
「彼らは文明世界に属さないものを
取り込むことに長けているんだよ
エルフもだけどねー」
「取り込むって?」
「あなたはこの世界ではどこにでも行けて
どこにいなければいけないということもない
なのに 結局ソフの家に帰ってくる
行動をとるでしょう?」
「それが取り込まれてるっていうの?」
「違うって言えるの?」
否定の言葉は出てこなかった。

「どうする?怖いなら
ミツキのいる世界までで
世界を終わらせてもいいんだよ」

 次の目的地は吸血鬼文明世界に決定した。
ただ血を吸われるのは嫌なので、
ホビット文明世界で護身用のスリングショットを
宝石と交換してもらい、銀鉱石を銀の玉に加工してもらった。

 彼女はポロスに見せびらかす。
「ジャジャ―ン!これで撃たれると吸血鬼も嫌がるでしょ!」
「うん 殺傷能力が低いうえに 地味に痛そうだから 
超嫌がると思う」
 早速、ホビット文明世界の森で練習する。
石で木の幹にしるしを作って、狙って打つのだが、
銀の玉は深い森に消えていった。
「はい 約束どおりのノーコンでーす」
すかさず、ポロスにからかわれた。
「練習すれば上手くなるし!」
「ミツキとか上手そうだから教えてもらえば?
鬼人は弓矢の使い方にも長けてるぜ?」
 
 鳥に吉備パン粉を食べさせて、銀の玉を回収してもらい、
お土産の魚もとってもらって、ミツキの家に行った。

「よう チサト また飯食いにきたのか?」
ちょうどミツキは家にいて、囲炉裏で魚を焼いてくれた。
美味しい。
「いやそうじゃなくて 今日はミツキに飛び道具の
使い方を教えてもらいに来たの!」
「弓ならまだ体が小さいチサトには無理だぞ?」
「違う!これ!」
彼女はぬいぐるみのバックパックから
スリングショットを出して、ミツキに見せた。
 ミツキはそれを手に取って快諾した。
「なんだおもちゃか それならいいぜ」
「おもちゃじゃないし!」 
「はいはい」

 流鏑馬用の的を10メートルくらい離れた場所に立てて、
ミツキはそれをワンショットで決めた。
「こんなんでいい?」
「何で 一回でできるの?」 
「え?………感?」
「ひょっとして 馬で動きながらでも当てられるの?」
「多分な」
次元が違い過ぎて参考にならない。
 
 彼女はその日、ちょっとしょんぼりしてソフの家に帰り、
晩御飯が美味しかったので、元気になって眠った。
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