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序章
プロローグ
しおりを挟む職人が住んでいたのは東南の端くれの古びた家だった。
職人の残りの人生は短かった。
職人は1人だった。
妻を二年前に亡くし、娘をひと月前に亡くした。
二人とも同じ病気だった。
職人は最後に遺作として時計を作った。
あの楽しかった頃に、貧しいながらも家族3人で仲良く過ごしていた頃に、戻りたい。
そう願いながら。
時というのは実に残酷である。
時間が進むにつれ、大切なものがなくなる。
三つ目の時計を作り終えた時、老人は微笑んだ。
それは安堵の笑みだった。
東南の時計職人は息を引き取った。
彼の作った時計は海を超え、至るところに渡った。
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