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第三部【凍える雨の下で・・・】
序章 《後継者》
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「何だって!?」
彼は『仕事』の資料を見て、素っ頓狂な声をあげた。組織のエージェント『G』から受け取ったUSBメモリに記録されていた、今回の任務についての資料を確認していたのだが、彼が驚いたのは今回仕事をやる上でコンビを組む相手である。
『任務遂行に当たり、Blood painのサポートと監視を行え』
それが組織から与えられた今回の『仕事』である。そんな馬鹿な・・・、Blood painは・・・、美浦みどりはもう死んでいる・・・。彼は資料を読み込むと、そこには二代目Blood painとの記載があった。この時、美浦みどりの死後、二年の月日が流れていた。その間、組織で新たなBlood painが造られたという事なのだろうか?
資料によると、二代目Blood painの名前は緋月牡丹。まだ肉体年齢は十歳の少女だとの事だ。資料の写真を見ると、不自然な程に色白で、見る者を魅入らせる様な妖艶な瞳をした少女の姿が写っていた。
「オイオイ、マジかよ・・・」
彼にとって、Blood painとの作戦行動は忘れ難いものとなっているだろう。そんな彼に、新たなBlood painの存在が明らかにされたのだ。心中穏やかで無いのは想像に難くない。
資料に書かれた情報によると、先代の失敗から、二代目Blood painは、強固なマインドコントロールをかけており、彼女が持つDNA、精神素養等の検証も兼ねた任務となっているらしい。
「懲りねぇヤツらだなぁ・・・」
先代Blood pain、美浦みどりは、組織に『適合者』としては失敗作と判断された。それ故に処分指令が下されたのだが、新たに二代目を現場に投入するという事は、『能力』自体は高く評価されていたという事なのだろう。実際、使いようによっては、かなり有用な人材と言える筈だ。Blood painの持つ血流制御の『能力』は、現場に物証を何一つ残す事無く、ターゲットを抹殺する事が出来るのだから、暗殺任務には打って付けだと言えるだろう。
「しかし・・・、こんなガキが、実戦で役に立つのか?」
彼は新しく与えられた任務に対し、少し苛立ちを感じていた。『仕事』とはいえ、体よく子供のお守りを頼まれた様なものである。
「ダリぃ任務だぜ・・・・・・」
彼は一人呟き、溜め息を吐いた・・・。
「Air edge、資料で確認しているだろうが、彼女が緋月牡丹。新しいBlood painだ」
『G』にそう紹介されたが、事前に写真で見たよりも、より一層不気味な目をしている。そこはかとなく赤みがかった虚ろな瞳は、まるで吸血鬼かのようなイメージを想起させた。
「・・・よろしくお願いします」
彼女はそう、淡々と彼に挨拶をする。感情を一切表わさない、まるで造り物のような、人間では無いかのような不気味さを醸し出していた。
「なぁ『G』、こんなガキが本当に実戦で役に立つのか?」
彼は眉間に皺を寄せ、『G』に毒づく。『適合者』としてカテゴライズされているという事は、組織で必要最低限の戦闘訓練は受けているのだろうが、まだ幼い十歳の少女だ。彼が訝しむのも無理は無い。
「その点については問題無い。仮にも『適合者』としてナンバリングされている以上、必要なカリキュラムは全てクリアしている。だからこその実戦投入だ」
『G』はそう言っているが、信頼に足る根拠にはならない。こんな幼い少女が『適合者』として現場で暗殺任務に就けるのか、彼は疑問を抱いていた。
そもそも、任務を伝達するエージェントが『J』から『G』に変わった事にも疑問が残る。後任の『G』に対して不満がある訳では無いが、『J』は今何をやっているのか?組織内で何かあったのだろうか?彼の知らぬ所で何らかの動きがあったのは確実だろう。これも憶測の域を超えないものだが、組織内で何らかのゴタゴタがあったのだとしたら、彼はとばっちりを受けるのを極力避けたいと思っていた。
そして、彼は徐に背後から銃を抜き出し、彼女の眉間にピタリと照準を合わせる。だが、彼女は微動だにせず、虚ろな目をしたまま身動き一つしなかった。
「本当にコイツ、役に立つんだろうな?」
そう問い糾す彼に『G』は、
「彼女を試そうとしても無意味だ。彼女には必要な時に、必要なアクションを実行するよう、強固なマインドコントロールをかけてある。第一に、君の事は敵対者として認識していない。先代・・・、美浦みどりのような無駄な行動はしないだろう」
『G』がそう説明している間も、彼女は眉一つ動かさず、平然としている。まるで自分には一切関係が無いかのような、彼が起こしたアクションも、何の脅威でもないかのような、泰然自若とした雰囲気だ。
「そうかよ・・・。なら構わねぇ。オイ牡丹、サッサと『仕事』に行くぞ」
彼はそう、吐き捨てるように言い、彼女を促す。そして、彼と彼女の奇妙なコンビでの『仕事』が始まった・・・。
彼は『仕事』の資料を見て、素っ頓狂な声をあげた。組織のエージェント『G』から受け取ったUSBメモリに記録されていた、今回の任務についての資料を確認していたのだが、彼が驚いたのは今回仕事をやる上でコンビを組む相手である。
『任務遂行に当たり、Blood painのサポートと監視を行え』
それが組織から与えられた今回の『仕事』である。そんな馬鹿な・・・、Blood painは・・・、美浦みどりはもう死んでいる・・・。彼は資料を読み込むと、そこには二代目Blood painとの記載があった。この時、美浦みどりの死後、二年の月日が流れていた。その間、組織で新たなBlood painが造られたという事なのだろうか?
資料によると、二代目Blood painの名前は緋月牡丹。まだ肉体年齢は十歳の少女だとの事だ。資料の写真を見ると、不自然な程に色白で、見る者を魅入らせる様な妖艶な瞳をした少女の姿が写っていた。
「オイオイ、マジかよ・・・」
彼にとって、Blood painとの作戦行動は忘れ難いものとなっているだろう。そんな彼に、新たなBlood painの存在が明らかにされたのだ。心中穏やかで無いのは想像に難くない。
資料に書かれた情報によると、先代の失敗から、二代目Blood painは、強固なマインドコントロールをかけており、彼女が持つDNA、精神素養等の検証も兼ねた任務となっているらしい。
「懲りねぇヤツらだなぁ・・・」
先代Blood pain、美浦みどりは、組織に『適合者』としては失敗作と判断された。それ故に処分指令が下されたのだが、新たに二代目を現場に投入するという事は、『能力』自体は高く評価されていたという事なのだろう。実際、使いようによっては、かなり有用な人材と言える筈だ。Blood painの持つ血流制御の『能力』は、現場に物証を何一つ残す事無く、ターゲットを抹殺する事が出来るのだから、暗殺任務には打って付けだと言えるだろう。
「しかし・・・、こんなガキが、実戦で役に立つのか?」
彼は新しく与えられた任務に対し、少し苛立ちを感じていた。『仕事』とはいえ、体よく子供のお守りを頼まれた様なものである。
「ダリぃ任務だぜ・・・・・・」
彼は一人呟き、溜め息を吐いた・・・。
「Air edge、資料で確認しているだろうが、彼女が緋月牡丹。新しいBlood painだ」
『G』にそう紹介されたが、事前に写真で見たよりも、より一層不気味な目をしている。そこはかとなく赤みがかった虚ろな瞳は、まるで吸血鬼かのようなイメージを想起させた。
「・・・よろしくお願いします」
彼女はそう、淡々と彼に挨拶をする。感情を一切表わさない、まるで造り物のような、人間では無いかのような不気味さを醸し出していた。
「なぁ『G』、こんなガキが本当に実戦で役に立つのか?」
彼は眉間に皺を寄せ、『G』に毒づく。『適合者』としてカテゴライズされているという事は、組織で必要最低限の戦闘訓練は受けているのだろうが、まだ幼い十歳の少女だ。彼が訝しむのも無理は無い。
「その点については問題無い。仮にも『適合者』としてナンバリングされている以上、必要なカリキュラムは全てクリアしている。だからこその実戦投入だ」
『G』はそう言っているが、信頼に足る根拠にはならない。こんな幼い少女が『適合者』として現場で暗殺任務に就けるのか、彼は疑問を抱いていた。
そもそも、任務を伝達するエージェントが『J』から『G』に変わった事にも疑問が残る。後任の『G』に対して不満がある訳では無いが、『J』は今何をやっているのか?組織内で何かあったのだろうか?彼の知らぬ所で何らかの動きがあったのは確実だろう。これも憶測の域を超えないものだが、組織内で何らかのゴタゴタがあったのだとしたら、彼はとばっちりを受けるのを極力避けたいと思っていた。
そして、彼は徐に背後から銃を抜き出し、彼女の眉間にピタリと照準を合わせる。だが、彼女は微動だにせず、虚ろな目をしたまま身動き一つしなかった。
「本当にコイツ、役に立つんだろうな?」
そう問い糾す彼に『G』は、
「彼女を試そうとしても無意味だ。彼女には必要な時に、必要なアクションを実行するよう、強固なマインドコントロールをかけてある。第一に、君の事は敵対者として認識していない。先代・・・、美浦みどりのような無駄な行動はしないだろう」
『G』がそう説明している間も、彼女は眉一つ動かさず、平然としている。まるで自分には一切関係が無いかのような、彼が起こしたアクションも、何の脅威でもないかのような、泰然自若とした雰囲気だ。
「そうかよ・・・。なら構わねぇ。オイ牡丹、サッサと『仕事』に行くぞ」
彼はそう、吐き捨てるように言い、彼女を促す。そして、彼と彼女の奇妙なコンビでの『仕事』が始まった・・・。
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