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学園編 § 学校生活編
第82話 方針
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大樹もまったくもって面倒なリストを作ったもんだ、そう思いながら、自分のベッドで横になっていた。
僕が淳平と話している間にノリも帰ってきたようだ。
そして、意味深に僕をじっと見てきた。
あ、これは読まれたかな?そう思ったが、淳平だってこいつの能力は知っているし、僕が情報を渡してしまうことだって分かっているはず。注意したところで能力の問題でどうしようもないんだから、悪いとしたらアレを見せた淳平だ、そうある種の開き直りで、僕はベッドに潜り込んだんだ。
リストは、この件に関わっているであろう家の予測と、許容しているであろう家の予測、という2段構えになっていた。
そして、面倒なことに、二人=ノリやゼン の実家も後者にリストアップされていたんだ。
トントン・・
どうやら眠ってしまっていたのか、ノックの音で目が覚めた。
「飛鳥、ちょっといいか。」
声をかけてきたのはノリ。遠慮がちなのも珍しい。普段なら寝ていようが乱入してベッドから引きずり降ろすのにな、などと夢うつつで考える。
トントン・・・
「飛鳥?」
「はぁ。わかった、行くよ。」
僕はトボトボとリビングへ入っていった。
ゼンを合わせて3人、リビングのテーブルでなんか神妙な顔をして座っている。
なんていうか、気まずい。
時計を見るといつの間に部屋に戻ってから2時間も進んでいるようだ。
しばらく無言でいたが、ノリが立ちあがって、キッチンへ。
どうやら簡単な炒め物を作ってきたようで、夕食、ということなんだろう。
黙ったまま3人で黙々と食事をとる。
空気が、重い。
どっちかっていうと、慣れ親しんだ空気だな、なんて、自嘲気味に思う。逆に言えば、最近はなんだかんだで、感情が浮上した状態で食事をとっていたってことかな?と、不思議に思う。
「飛鳥、ちゃんと食べなさい。」
ノリが母親のように言う。といっても、僕には母親の記憶なんてものは一切ないんだけど。
どうやらぼぅっと考え込んでいたようで、ノリの声に顔を上げて彼を見ると、僕の皿を睨んでいるようだ。皿にはさきほどノリが取り分けてくれた野菜炒めが、半分ほど残っていて、箸で所在なげにつついている自分の姿に気がついた。
「あぁ。なんか、もういいや。」
「飛鳥!それを食べないと話が進まない。僕は飛鳥の食事の報告をする義務がある。」
なんだ?その話、まだ生きてるの?
ていうか、ずっと報告とか、してないよな?
遙と会いたくなくなるじゃないか。ただでさえ、面倒なのに。
「遙先生に今から電話しましょうか?」
「やめろよ。」
「じゃあ、それを片付けて。」
いや、そういう話じゃないだろうに・・・そう思ったけど、なんて言うか、目が会ったばっかりの頃みたいに、自信満々で上から目線だ。
さすがにこんなことでマウント取るというのではないんだろうけど・・・
はぁ。
僕は、気の進まないながらも、野菜炒めを胃の中に押し込んだ。
食器を片付けたあと。
「飛鳥。すみませんがあなたの思考を読みました。」
だろうね。今更だ。
「我々は、AAOの術者として、家の期待を背負ってここにいます。」
そりゃそうだ。
「だけど、だからと言ってすべてがその言いなりに請け負うのではなく、これから飛鳥と共にあるにあたり、己のことは己で決めよ。じいさま、幸楽憲右衛門からの言葉です。」
「俺たちは、この任務に当たるにあたって、じいさまに呼ばれて、今ノリが言った言葉を贈られた。その時は意味が分からなかったんだが、おそらくじいさまは今のようなことが起こると思って、こう言ってくれたんじゃないか、俺たちはそう思う。」
「我々の実家が混乱を引き起こそうと画策する、正直あり得ないことではない、僕はそう思ってる。だけど、少なくともじいさまは、そんなことを望んでいない。そして、それは僕もだ。」
「我々は、飛鳥と協力し、この件を解決する。たとえ実家に敵対しようと、だ。横やりを入れてきたら跳ね返す。なんだったら、AAOに報告するつもりだ。」
「信じろ、と言ったところで飛鳥は信じないよね。僕らの言葉どころか、淳平さんのことだって信じてるわけじゃない。それは分かってるんだ。だけど、それでも、僕は、僕らは飛鳥に信じて欲しいと思ってる。この京都の事件、一緒に関わらせて欲しい。」
「俺たちは、どういう形の決着になろうとも、飛鳥につく、実家に敵対しても、AAOの主流と敵対しても、だ。」
二人は交互にそんな風に言いつのった。
その目は真剣で、きっとその心に偽りはないんだろう。
若いな。
僕は、そんな風に思う。
みんなあんたたちの年頃には、そんな風に理想に燃えていたんだけどね・・・
変わっていった多くの彼らの同胞を思い出す。
だが・・・・
「分かったよ。少なくとも頂法寺学園にいる間は、信じるよ。」
そう。
今の間なら、その情熱は本物だ。
今の彼らでは気付かない、大人たちの籠絡でその決意が簡単に覆るかもしれなくとも、今現在の気持ちは、きっと・・・
僕のその思考を読んだのか、ノリはちょっと顔をしかめたね。
自分は変わらない。変わるはずがない、そう思ってるんだよね。
今は、それでいいさ。
「僕の心を見たんだったら分かると思うけど、あんたたちの実家が今回の諸々の件を容認してる可能性がある。が、今はどっちにしても置いておく。これから僕らが調べる必要があるのは、実際に行動してるやつらだ。この裏取りをやれ、というのが淳平の命令だ。僕は子供の方からアプローチする。二人は・・・」
「親を探る。」
「ああ。頼んだ。」
こうして、僕らの方針は決まった。
僕が淳平と話している間にノリも帰ってきたようだ。
そして、意味深に僕をじっと見てきた。
あ、これは読まれたかな?そう思ったが、淳平だってこいつの能力は知っているし、僕が情報を渡してしまうことだって分かっているはず。注意したところで能力の問題でどうしようもないんだから、悪いとしたらアレを見せた淳平だ、そうある種の開き直りで、僕はベッドに潜り込んだんだ。
リストは、この件に関わっているであろう家の予測と、許容しているであろう家の予測、という2段構えになっていた。
そして、面倒なことに、二人=ノリやゼン の実家も後者にリストアップされていたんだ。
トントン・・
どうやら眠ってしまっていたのか、ノックの音で目が覚めた。
「飛鳥、ちょっといいか。」
声をかけてきたのはノリ。遠慮がちなのも珍しい。普段なら寝ていようが乱入してベッドから引きずり降ろすのにな、などと夢うつつで考える。
トントン・・・
「飛鳥?」
「はぁ。わかった、行くよ。」
僕はトボトボとリビングへ入っていった。
ゼンを合わせて3人、リビングのテーブルでなんか神妙な顔をして座っている。
なんていうか、気まずい。
時計を見るといつの間に部屋に戻ってから2時間も進んでいるようだ。
しばらく無言でいたが、ノリが立ちあがって、キッチンへ。
どうやら簡単な炒め物を作ってきたようで、夕食、ということなんだろう。
黙ったまま3人で黙々と食事をとる。
空気が、重い。
どっちかっていうと、慣れ親しんだ空気だな、なんて、自嘲気味に思う。逆に言えば、最近はなんだかんだで、感情が浮上した状態で食事をとっていたってことかな?と、不思議に思う。
「飛鳥、ちゃんと食べなさい。」
ノリが母親のように言う。といっても、僕には母親の記憶なんてものは一切ないんだけど。
どうやらぼぅっと考え込んでいたようで、ノリの声に顔を上げて彼を見ると、僕の皿を睨んでいるようだ。皿にはさきほどノリが取り分けてくれた野菜炒めが、半分ほど残っていて、箸で所在なげにつついている自分の姿に気がついた。
「あぁ。なんか、もういいや。」
「飛鳥!それを食べないと話が進まない。僕は飛鳥の食事の報告をする義務がある。」
なんだ?その話、まだ生きてるの?
ていうか、ずっと報告とか、してないよな?
遙と会いたくなくなるじゃないか。ただでさえ、面倒なのに。
「遙先生に今から電話しましょうか?」
「やめろよ。」
「じゃあ、それを片付けて。」
いや、そういう話じゃないだろうに・・・そう思ったけど、なんて言うか、目が会ったばっかりの頃みたいに、自信満々で上から目線だ。
さすがにこんなことでマウント取るというのではないんだろうけど・・・
はぁ。
僕は、気の進まないながらも、野菜炒めを胃の中に押し込んだ。
食器を片付けたあと。
「飛鳥。すみませんがあなたの思考を読みました。」
だろうね。今更だ。
「我々は、AAOの術者として、家の期待を背負ってここにいます。」
そりゃそうだ。
「だけど、だからと言ってすべてがその言いなりに請け負うのではなく、これから飛鳥と共にあるにあたり、己のことは己で決めよ。じいさま、幸楽憲右衛門からの言葉です。」
「俺たちは、この任務に当たるにあたって、じいさまに呼ばれて、今ノリが言った言葉を贈られた。その時は意味が分からなかったんだが、おそらくじいさまは今のようなことが起こると思って、こう言ってくれたんじゃないか、俺たちはそう思う。」
「我々の実家が混乱を引き起こそうと画策する、正直あり得ないことではない、僕はそう思ってる。だけど、少なくともじいさまは、そんなことを望んでいない。そして、それは僕もだ。」
「我々は、飛鳥と協力し、この件を解決する。たとえ実家に敵対しようと、だ。横やりを入れてきたら跳ね返す。なんだったら、AAOに報告するつもりだ。」
「信じろ、と言ったところで飛鳥は信じないよね。僕らの言葉どころか、淳平さんのことだって信じてるわけじゃない。それは分かってるんだ。だけど、それでも、僕は、僕らは飛鳥に信じて欲しいと思ってる。この京都の事件、一緒に関わらせて欲しい。」
「俺たちは、どういう形の決着になろうとも、飛鳥につく、実家に敵対しても、AAOの主流と敵対しても、だ。」
二人は交互にそんな風に言いつのった。
その目は真剣で、きっとその心に偽りはないんだろう。
若いな。
僕は、そんな風に思う。
みんなあんたたちの年頃には、そんな風に理想に燃えていたんだけどね・・・
変わっていった多くの彼らの同胞を思い出す。
だが・・・・
「分かったよ。少なくとも頂法寺学園にいる間は、信じるよ。」
そう。
今の間なら、その情熱は本物だ。
今の彼らでは気付かない、大人たちの籠絡でその決意が簡単に覆るかもしれなくとも、今現在の気持ちは、きっと・・・
僕のその思考を読んだのか、ノリはちょっと顔をしかめたね。
自分は変わらない。変わるはずがない、そう思ってるんだよね。
今は、それでいいさ。
「僕の心を見たんだったら分かると思うけど、あんたたちの実家が今回の諸々の件を容認してる可能性がある。が、今はどっちにしても置いておく。これから僕らが調べる必要があるのは、実際に行動してるやつらだ。この裏取りをやれ、というのが淳平の命令だ。僕は子供の方からアプローチする。二人は・・・」
「親を探る。」
「ああ。頼んだ。」
こうして、僕らの方針は決まった。
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