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公爵アイザック
シャラリーニャ2
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それはある日の事だった。
筆頭公爵家当主の妻である公爵夫人のシャラリーニャは王妃主催のお茶会に招かれていた。
王妃主催とは言っても、参加していたのは王族血筋の夫をもつ女性親族だけの身内会だ。
現在、王族血筋の男子の中で隠居していないのは、現国王を筆頭に王太子、第二王子、そしてシャラリーニャの夫である公爵、そして息子のギルバートの五人。
少ないように感じるが、全員が全員健康体なので、特に国としては問題視されていなかった。
そして、その五人の中で妻がいるのが現国王と王太子、そして公爵。
つまり、今王妃のお茶会に招かれているのは王太子妃とシャラリーニャだけだった。
その時は、なぜこのメンバーなのか理解できなかったシャラリーニャだったが、話が本題に差し掛かると流石に固まった。
「それは、申し訳ないわね……」
王妃が困ったように王太子妃に謝った。
王太子妃は最近隣国から輿入れしてきたお方で、かなりの美女。
その美女の困り顔と少し戸惑った顔はなかなか庇護欲がそそられた。
しかし、話はそこではない。
「まさか、我が息子が性的ロールプレイが好きだったなんて――」
そんな言葉が王妃から飛び出れば、そりゃシャラリーニャは驚きを通り越して固まるほかない。
ちなみに、性的ロールプレイとはこの国で時折行われる仮装舞踏会とは全く違う趣旨のもので、別の職業や人になりきって行う性行為嗜好の事らしい。初めて知ったと、シャラリーニャ。
「夫のワードローブの奥にひっそりと隠されるようにあった衣装はどれもあらゆる職業の女性服で……始めはご自分で着ていらっしゃるのかと思ってしまいましたが、どうやらわたくしに着せたがっていたようなのです……この間など侍女服を着たわたくしに嫌らしい言葉で攻めていらして。それが少し恐ろしくて涙目になっているわたくしにさらに興奮されてと――おかげで大変な目に合いました」
「あの子ったら!」
「でも、お義母様から聞かされていた変態的な性癖――とまでは言わないようで少し安心いたしましたわ。一応、当初は隠していらしたようですし……。それが、ギルバート様のお言葉で一気に開花してしまったようですが」
「まったく、ギルバートの影響を強く受けているのかしら?」
「え?ギルバート?」
そこでシャラリーニャが驚いたように声を出した。
なぜそこに息子の名前が。
「まあ、シャラリーニャ。もしかしてギルバートの変態性に気付いていないの?」
「いえ……もしかして幼女趣味なのかも知れないと思ったことはございますが――……」
そう、息子は十五の時に五歳のリリアーヌとの婚約を望んでいた。
一時は、幼女趣味なのかと真剣に考えたこともあったが、現在二十五の息子は変わらずリリアーヌを溺愛しているので、それは無かったかと安心していた。
なのに、ここで変態性とは――……
「我が息子に堂々とのたまっていたのをたまたま聞いてしまったんですけどね……なんでも婚約者のパンツを盗んでいるんだとか。隠すから女性にバレた時に問題になるのであって、隠さなければ女性はありのままの自分をそのままを受け入れるしかない、そして堂々としていた方がやましさがない――と言っていたわ。真理を突きすぎてて、唖然としたのよ」
「ある意味究極の言葉ですわ、お義母様――おかげで夫が隠していた性癖というか趣味嗜好が前面に出てきましたが……」
シャラリーニャも呆然。
いや、そもそもパンツを盗む?
一体……
「シャラリーニャは、もしかして公爵の事も何も気付いていないのかしら?……王族の血を引く男に嫁いだのだから、きっと王族の男どもの変態性を理解しているものだとばかり……」
困ったわねと、王妃が呟く。
それに王太子妃も頷いた。
「シャラリーニャ様、ここで話されることは他言無用です。ですので、はっきり申し上げますが、公爵は胸フェチでしてよ」
「え?え?」
「わたくし、これでも人の視線には敏いのですが、あの方、女性の一番初めに目につくところが胸なんですの。一瞬ですし、あのお顔でしょう?気付いている方はほぼ皆無かと思いますが。そして、シャラリーニャ様のお胸は、公爵にとって崇拝の的――そんな美しさを持っているのですわ」
「わたくしは、胸に執着するくらいはまだ可愛いものだとは思います。どう思いまして?」
「わたくしも同意見ですわ。下手な性癖より、男の欲求としてはまともです」
「むしろ、ギルバートの婚約者の方に同情してしまうわ」
「全くもってその通りですね。まだ成人前でしょう?まさか、婚約者にパンツを盗まれ、それを使われているなんて……それを聞いてわたくしの夫の方がよっぽどマシだと思ってしまいましたわ」
王妃と王太子妃に好き勝手に言われている夫と息子の性癖。
息子の事はともかく、夫の事は言われれば確かに――と思う所が多々ある。
結婚直後の初夜での事。
その後の妊娠、出産後の事――……
筆頭公爵家当主の妻である公爵夫人のシャラリーニャは王妃主催のお茶会に招かれていた。
王妃主催とは言っても、参加していたのは王族血筋の夫をもつ女性親族だけの身内会だ。
現在、王族血筋の男子の中で隠居していないのは、現国王を筆頭に王太子、第二王子、そしてシャラリーニャの夫である公爵、そして息子のギルバートの五人。
少ないように感じるが、全員が全員健康体なので、特に国としては問題視されていなかった。
そして、その五人の中で妻がいるのが現国王と王太子、そして公爵。
つまり、今王妃のお茶会に招かれているのは王太子妃とシャラリーニャだけだった。
その時は、なぜこのメンバーなのか理解できなかったシャラリーニャだったが、話が本題に差し掛かると流石に固まった。
「それは、申し訳ないわね……」
王妃が困ったように王太子妃に謝った。
王太子妃は最近隣国から輿入れしてきたお方で、かなりの美女。
その美女の困り顔と少し戸惑った顔はなかなか庇護欲がそそられた。
しかし、話はそこではない。
「まさか、我が息子が性的ロールプレイが好きだったなんて――」
そんな言葉が王妃から飛び出れば、そりゃシャラリーニャは驚きを通り越して固まるほかない。
ちなみに、性的ロールプレイとはこの国で時折行われる仮装舞踏会とは全く違う趣旨のもので、別の職業や人になりきって行う性行為嗜好の事らしい。初めて知ったと、シャラリーニャ。
「夫のワードローブの奥にひっそりと隠されるようにあった衣装はどれもあらゆる職業の女性服で……始めはご自分で着ていらっしゃるのかと思ってしまいましたが、どうやらわたくしに着せたがっていたようなのです……この間など侍女服を着たわたくしに嫌らしい言葉で攻めていらして。それが少し恐ろしくて涙目になっているわたくしにさらに興奮されてと――おかげで大変な目に合いました」
「あの子ったら!」
「でも、お義母様から聞かされていた変態的な性癖――とまでは言わないようで少し安心いたしましたわ。一応、当初は隠していらしたようですし……。それが、ギルバート様のお言葉で一気に開花してしまったようですが」
「まったく、ギルバートの影響を強く受けているのかしら?」
「え?ギルバート?」
そこでシャラリーニャが驚いたように声を出した。
なぜそこに息子の名前が。
「まあ、シャラリーニャ。もしかしてギルバートの変態性に気付いていないの?」
「いえ……もしかして幼女趣味なのかも知れないと思ったことはございますが――……」
そう、息子は十五の時に五歳のリリアーヌとの婚約を望んでいた。
一時は、幼女趣味なのかと真剣に考えたこともあったが、現在二十五の息子は変わらずリリアーヌを溺愛しているので、それは無かったかと安心していた。
なのに、ここで変態性とは――……
「我が息子に堂々とのたまっていたのをたまたま聞いてしまったんですけどね……なんでも婚約者のパンツを盗んでいるんだとか。隠すから女性にバレた時に問題になるのであって、隠さなければ女性はありのままの自分をそのままを受け入れるしかない、そして堂々としていた方がやましさがない――と言っていたわ。真理を突きすぎてて、唖然としたのよ」
「ある意味究極の言葉ですわ、お義母様――おかげで夫が隠していた性癖というか趣味嗜好が前面に出てきましたが……」
シャラリーニャも呆然。
いや、そもそもパンツを盗む?
一体……
「シャラリーニャは、もしかして公爵の事も何も気付いていないのかしら?……王族の血を引く男に嫁いだのだから、きっと王族の男どもの変態性を理解しているものだとばかり……」
困ったわねと、王妃が呟く。
それに王太子妃も頷いた。
「シャラリーニャ様、ここで話されることは他言無用です。ですので、はっきり申し上げますが、公爵は胸フェチでしてよ」
「え?え?」
「わたくし、これでも人の視線には敏いのですが、あの方、女性の一番初めに目につくところが胸なんですの。一瞬ですし、あのお顔でしょう?気付いている方はほぼ皆無かと思いますが。そして、シャラリーニャ様のお胸は、公爵にとって崇拝の的――そんな美しさを持っているのですわ」
「わたくしは、胸に執着するくらいはまだ可愛いものだとは思います。どう思いまして?」
「わたくしも同意見ですわ。下手な性癖より、男の欲求としてはまともです」
「むしろ、ギルバートの婚約者の方に同情してしまうわ」
「全くもってその通りですね。まだ成人前でしょう?まさか、婚約者にパンツを盗まれ、それを使われているなんて……それを聞いてわたくしの夫の方がよっぽどマシだと思ってしまいましたわ」
王妃と王太子妃に好き勝手に言われている夫と息子の性癖。
息子の事はともかく、夫の事は言われれば確かに――と思う所が多々ある。
結婚直後の初夜での事。
その後の妊娠、出産後の事――……
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