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1 目が覚めたら・・・

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私は、ゆっくりと瞼を開けた。薄暗い部屋のなかは、見慣れないものばかりだった。この天蓋付きベッドも、窓辺に設置された猫足の鏡台も、全てが初めて見るものだ・・・

扉をノックする音がしたが、扉の外から聞こえてくる声も聞き覚えのない声だ。

「王女様、大丈夫でございますか?」

え? 私に呼びかけているのかしら? 王女様だって・・・すごく素敵な呼びかけなのだけれど、私は普通の高校生でパパはサラリーマンだしママは専業主婦だ。公団に住んでいる、どちらかと言えば、あまり裕福ではない部類の高校生なのに。

「王女様、入らせていただきますよ?」

白いエプロンをつけ、くるぶしまで裾が長い黒いドレスを着たお姉さんが、入ってきた。手には、カップを乗せたトレーを持っている。

「お身体は痛くありませんか? 医者は、軽い脳しんとうだと言っていました。全く、どんなに心配したことか・・・」

私より、少し年上だと思われる女性が話しかけてきた。

「脳しんとう・・・私って・・・ごめんなさい・・・教えていただけませんか? 私は、誰でしょう?」

「え? えぇーー! 貴女はホィットニー王国の王女様でいらっしゃいます」

「・・・あ。そ、そうなのね? えっと、それで、貴女は?」

私は、狼狽しているその女性に、恐る恐る尋ねた。

「王女様、しばらく、こちらに大人しく寝ていらっしゃってくださいませね」

努めて落ち着いた口調で私にそう言って、部屋を出て行くと、途端に大きな声で騒ぎ始めた。

「王女様が大変です! イヤナぁーー! エスタぁー! もう一度、医者を呼んで! 王女様は、ご自分が誰だかわからないですってぇーー」

「「えぇーー!」」  「「大変、たいへん! 医者と薬師と、おまじない師、もう、片っ端から呼びましょう」」

廊下で複数の声とバタバタと走る音がして、なにか、すごいことになっている。

そのなかでも、ゆっくりと落ち着いた歩幅で歩いてくるような靴音が響き、その落ち着いた靴音が、ピタリと私のいる部屋の前で止まった。


ーーコン。コン。ーー


ゆっくりと扉が叩かれて、私は声を上げた。

「はい? どなた様でしょうか? どうぞ、お入りになってください」

私のその言葉に、白い扉があき、姿を現したのは王子様だった・・・金髪と海より深い色のブルーの瞳。

「あぁ、ここは夢の国だわ。だって、こんな綺麗な男の人なんて見たことがないもの・・・」

私が、思わず、そう漏らすと、その男性は冷たく言った。

「今日は、なにに、なったつもりでいるんです? 記憶をなくしたふりとは! 」

うわぁ。この男性って、ものすごく綺麗なお顔なのに、言うことは酷い・・・


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