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1 ダリル視点 (理想の婚約者の死)
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1 婚約者の死(ダリル視点)
「ダリル様、貴方のことを心の底から愛しています」
いつも、優しい口調で囁いてくれた婚約者の死に、私は深い悲しみで立ち上がることもできなかった。
私の婚約者のリンダ・ミントは公爵令嬢で、気品のある素晴らしい女性だった。
私のハンカチにしてくれた彼女の刺繍は手が込んでいたし、私の為にいつも淹れてくれたお茶は、私の好みを研究してブレンドされていた。
香りの豊かな紅茶を楽しみたい私は、花のようなフレッシュな香りを好む。リンダは、ダージリンとヌワラエリア、キーマンを上手にブレンドしていた。
そして、たまにはその中にフルーツもいれた。
アップルティーやレモンティーは、甘くして一緒に楽しんだし、リンダの奏でるハープは天上の楽園にいるかのような響きだった。
艶やかな金髪にスミレ色の瞳の美しいリンダは聡明だった。生きていれば、さぞや偉大な王妃になっただろうに・・・・・・
あのような最愛の婚約者を失うなんて、この世に神はいないに違いない。
「ねぇーー。いつまでも、悲しんでいないでさ。私とまた、楽しみましょうよ? もう、リンダもいなくなったのだから、私達は、一緒になれるんじゃないかしら?」
私にしなだれかかってきたルル(リンダの義理の姉)を改めて見つめた。リンダには、似ても似つかない色気ばかりが漂う軽薄な女。なぜ、リンダが生きている時に、このルルに魅力を感じたのか自分でもわからない。
尽くしてくれるリンダがいる一方で、このルルと逢瀬を重ねていた。そして、一時期はこのルルこそが真実の愛の相手とさえ思っていたこともある。
なんて、愚かな私だ。落ち込んで、食欲もない私をさらに打ちのめしたのは、リンダの日記だった。
リンダの父親のミント公爵が、リンダの生前に自分になにかあったら、この日記を私に渡すように頼んだという。
私は、その日記を読んで・・・・・・絶句した。その日記の最後にはこう書かれていたのだった。
ダリル様はルルを愛している。私は、何度もダリル様とルルの逢い引きの様子を目撃した。ずっと、黙っていて、気がつかないふりをしようと思った。けれど、逢い引きの時に聞いた言葉が忘れられない。ダリル様は『真実の愛』だと言っていた。ならば、私は邪魔者だわ・・・・・・眠るように亡くなる薬を私はこれから飲むわ・・・・・・さようなら、ダラス様・・・・・・貴方の幸せをいつまでも願っています・・・・・・
「うわぁあああああああーーーーーーー!! あぁあーーーー!!あぁぁあぁぁーーーーーー!!」
私は、絶叫していた。・・・・・・リンダの死は、自殺なのか・・・・・・そんな・・・・・・違うんだ!
ルルなんて愛してるはずがない! ただの、セフレなんだ・・・・・・やるだけの関係だ・・・・・・愛は確実にリンダにある。ルルとも会っていた卑怯な私がリンダを死に追いやったのか・・・・・・・。
毎日、毎日、夢にでてくるリンダは、私を責めている。恨めしそうな顔をしている時もあれば、天使のように微笑んでいる時もある・・・・・・
本当に愛している人が自分のせいで、自殺したという事実に私は耐えられなかった。
毎日が、苦痛で、食欲もなく眠ることもできなくなった・・・・・・もはや、まともに生活はできなくなっていた。
王である父上の声が聞こえた。
「精神病院に連れて行け。五分ごとに奇声をあげる王太子では国が滅びるわい。廃嫡するしかなかろう」
「ダリル様、貴方のことを心の底から愛しています」
いつも、優しい口調で囁いてくれた婚約者の死に、私は深い悲しみで立ち上がることもできなかった。
私の婚約者のリンダ・ミントは公爵令嬢で、気品のある素晴らしい女性だった。
私のハンカチにしてくれた彼女の刺繍は手が込んでいたし、私の為にいつも淹れてくれたお茶は、私の好みを研究してブレンドされていた。
香りの豊かな紅茶を楽しみたい私は、花のようなフレッシュな香りを好む。リンダは、ダージリンとヌワラエリア、キーマンを上手にブレンドしていた。
そして、たまにはその中にフルーツもいれた。
アップルティーやレモンティーは、甘くして一緒に楽しんだし、リンダの奏でるハープは天上の楽園にいるかのような響きだった。
艶やかな金髪にスミレ色の瞳の美しいリンダは聡明だった。生きていれば、さぞや偉大な王妃になっただろうに・・・・・・
あのような最愛の婚約者を失うなんて、この世に神はいないに違いない。
「ねぇーー。いつまでも、悲しんでいないでさ。私とまた、楽しみましょうよ? もう、リンダもいなくなったのだから、私達は、一緒になれるんじゃないかしら?」
私にしなだれかかってきたルル(リンダの義理の姉)を改めて見つめた。リンダには、似ても似つかない色気ばかりが漂う軽薄な女。なぜ、リンダが生きている時に、このルルに魅力を感じたのか自分でもわからない。
尽くしてくれるリンダがいる一方で、このルルと逢瀬を重ねていた。そして、一時期はこのルルこそが真実の愛の相手とさえ思っていたこともある。
なんて、愚かな私だ。落ち込んで、食欲もない私をさらに打ちのめしたのは、リンダの日記だった。
リンダの父親のミント公爵が、リンダの生前に自分になにかあったら、この日記を私に渡すように頼んだという。
私は、その日記を読んで・・・・・・絶句した。その日記の最後にはこう書かれていたのだった。
ダリル様はルルを愛している。私は、何度もダリル様とルルの逢い引きの様子を目撃した。ずっと、黙っていて、気がつかないふりをしようと思った。けれど、逢い引きの時に聞いた言葉が忘れられない。ダリル様は『真実の愛』だと言っていた。ならば、私は邪魔者だわ・・・・・・眠るように亡くなる薬を私はこれから飲むわ・・・・・・さようなら、ダラス様・・・・・・貴方の幸せをいつまでも願っています・・・・・・
「うわぁあああああああーーーーーーー!! あぁあーーーー!!あぁぁあぁぁーーーーーー!!」
私は、絶叫していた。・・・・・・リンダの死は、自殺なのか・・・・・・そんな・・・・・・違うんだ!
ルルなんて愛してるはずがない! ただの、セフレなんだ・・・・・・やるだけの関係だ・・・・・・愛は確実にリンダにある。ルルとも会っていた卑怯な私がリンダを死に追いやったのか・・・・・・・。
毎日、毎日、夢にでてくるリンダは、私を責めている。恨めしそうな顔をしている時もあれば、天使のように微笑んでいる時もある・・・・・・
本当に愛している人が自分のせいで、自殺したという事実に私は耐えられなかった。
毎日が、苦痛で、食欲もなく眠ることもできなくなった・・・・・・もはや、まともに生活はできなくなっていた。
王である父上の声が聞こえた。
「精神病院に連れて行け。五分ごとに奇声をあげる王太子では国が滅びるわい。廃嫡するしかなかろう」
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