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7 邪悪なカエラ(姉視点)
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「あら、ここは客間だわ……なんでここで寝ているのかしら? あぁ、カエラとおしゃべりをしようとして寝ちゃったんだわ。でも、カエラがいないわ。どこに行ったのかしら」
私は独り言をつぶやきながら、サロンや他の客室を探し回ったけれど、どこにもいなかった。
おかしいわねぇ……
念のため私とケーシー様の夫婦の寝室に行ったら、二つの影がうごめいていた。
「きゃーー!! 誰か、来て!! 泥棒よ、泥棒がいるわ!!」
私が声を限りに叫ぶと、使用人が箒やフライパンを持って集まってきた。
専属執事のウィルは剣まで持ち出して、私の前に出て守ろうとしてくれる。
部屋は薄暗く、それが誰かがわからない。侍女の一人が燭台をかざすと……そこにいたのはカエラと……
「ふふふふ。あーっははは! 私が魅力的だからこんなことになってしまってごめんなさい。でも、私達はずっと愛し合っていたのよ! これは、真実の愛よ」
「……真実の愛なの? ……カエラはこの人を本当に愛しているのね?」
「もちろんよ!」
「わかったわ。こうなった以上はコーリー様とは離婚なさい。その方と結婚するしかないわね」
「本当! 嬉しいわ。ねぇ、ケー……え? えぇーー! なんで、アーサックがここにいるのよ! ケーシー様は? ケーシー様はどこよぉーー?」
初めて相手を確認したかのように焦るカエラ。
「ケーシー様なら、今夜はお仕事の都合で帰らないわよ。カエラ! どういうことかしら?」
カエラは青ざめた顔で泣き始め、アーサックはぼんやりとこの状況を見ている。
「僕、カエラからキャンディスがいつもぶたれているって聞いて、助け出そうとしたんだ。寝ているから起こして一緒に逃げてあげようとしたら、良い匂いがしてそのまま……」
「この香りは……媚薬ですね。おそらく、カエラ様はこれを使ってケーシー様を誘惑しようとして失敗したんでしょうね」
ウィルは汚い物を見るような目でカエラを睨んだ。
「なんでなの? カエラ! 私達は仲の良い姉妹じゃなかったの?」
「仲が良い? よしてよ! いつも自分だけ得しているくせに。ケーシー様は私の婚約者だったから取り戻そうとしただけでしょう?」
「地下牢に閉じこめますか? これ以上、悪さができなようにしたほうがいいです」
ウィルは頭を振りながら呆れてそう言った。
「そうね。そう言えば私の部屋から、たまに宝石がなくなっていたけれど、あれもカエラの仕業なの?」
「あぁ、ちょっとだけでしょう? だって、あの宝石はケーシー様が買ってくれたものじゃない? だったら、本当は私のものになるはずだったでしょう?」
私は、カエラとアーサックを地下牢に閉じ込めさせることにした。ケーシー様の屋敷には、かつて乱世の名残で地下牢がある。今は、食物の貯蔵庫になっていたけれど鍵も厳重にかかるから、ケーシー様が帰るまでそこにいてもらうしかなかった。カエラ達はケーシー様のお屋敷内で犯罪を目論んだ重罪人として処罰されるだろう。
「それにしても、アーサックはなんで屋敷内に入れたのかしら? 門番もいるし屋敷の鍵は厳重にかかっていたはずよね?」
「確かに、なんで潜り込めたかな?」
私とウィルは不思議に思ってクビを傾げた。
連行されていくアーサックが、
「侍女服の女が通していいって、門番に言ってくれたんだ。屋敷のなかにも入れてくれて、キャンディスの寝室も教えてくれたよ。キャンディス、信じて! ほんとに、こんなことするつもりじゃなくて……暴力夫から助けようとしただけなんだ」と、言った。
「どうやら、もう一人裏切り者がいるようですね? 大丈夫ですよ。私がキャンディス様を守ります」
イレーヌが涙を流して私をそっと抱きしめたのだった。
「その侍女の顔は?」
「暗くてよく見えなかったよ」
ウィルの問いかけにアーサックは眉尻を下げてそう言った。
私は独り言をつぶやきながら、サロンや他の客室を探し回ったけれど、どこにもいなかった。
おかしいわねぇ……
念のため私とケーシー様の夫婦の寝室に行ったら、二つの影がうごめいていた。
「きゃーー!! 誰か、来て!! 泥棒よ、泥棒がいるわ!!」
私が声を限りに叫ぶと、使用人が箒やフライパンを持って集まってきた。
専属執事のウィルは剣まで持ち出して、私の前に出て守ろうとしてくれる。
部屋は薄暗く、それが誰かがわからない。侍女の一人が燭台をかざすと……そこにいたのはカエラと……
「ふふふふ。あーっははは! 私が魅力的だからこんなことになってしまってごめんなさい。でも、私達はずっと愛し合っていたのよ! これは、真実の愛よ」
「……真実の愛なの? ……カエラはこの人を本当に愛しているのね?」
「もちろんよ!」
「わかったわ。こうなった以上はコーリー様とは離婚なさい。その方と結婚するしかないわね」
「本当! 嬉しいわ。ねぇ、ケー……え? えぇーー! なんで、アーサックがここにいるのよ! ケーシー様は? ケーシー様はどこよぉーー?」
初めて相手を確認したかのように焦るカエラ。
「ケーシー様なら、今夜はお仕事の都合で帰らないわよ。カエラ! どういうことかしら?」
カエラは青ざめた顔で泣き始め、アーサックはぼんやりとこの状況を見ている。
「僕、カエラからキャンディスがいつもぶたれているって聞いて、助け出そうとしたんだ。寝ているから起こして一緒に逃げてあげようとしたら、良い匂いがしてそのまま……」
「この香りは……媚薬ですね。おそらく、カエラ様はこれを使ってケーシー様を誘惑しようとして失敗したんでしょうね」
ウィルは汚い物を見るような目でカエラを睨んだ。
「なんでなの? カエラ! 私達は仲の良い姉妹じゃなかったの?」
「仲が良い? よしてよ! いつも自分だけ得しているくせに。ケーシー様は私の婚約者だったから取り戻そうとしただけでしょう?」
「地下牢に閉じこめますか? これ以上、悪さができなようにしたほうがいいです」
ウィルは頭を振りながら呆れてそう言った。
「そうね。そう言えば私の部屋から、たまに宝石がなくなっていたけれど、あれもカエラの仕業なの?」
「あぁ、ちょっとだけでしょう? だって、あの宝石はケーシー様が買ってくれたものじゃない? だったら、本当は私のものになるはずだったでしょう?」
私は、カエラとアーサックを地下牢に閉じ込めさせることにした。ケーシー様の屋敷には、かつて乱世の名残で地下牢がある。今は、食物の貯蔵庫になっていたけれど鍵も厳重にかかるから、ケーシー様が帰るまでそこにいてもらうしかなかった。カエラ達はケーシー様のお屋敷内で犯罪を目論んだ重罪人として処罰されるだろう。
「それにしても、アーサックはなんで屋敷内に入れたのかしら? 門番もいるし屋敷の鍵は厳重にかかっていたはずよね?」
「確かに、なんで潜り込めたかな?」
私とウィルは不思議に思ってクビを傾げた。
連行されていくアーサックが、
「侍女服の女が通していいって、門番に言ってくれたんだ。屋敷のなかにも入れてくれて、キャンディスの寝室も教えてくれたよ。キャンディス、信じて! ほんとに、こんなことするつもりじゃなくて……暴力夫から助けようとしただけなんだ」と、言った。
「どうやら、もう一人裏切り者がいるようですね? 大丈夫ですよ。私がキャンディス様を守ります」
イレーヌが涙を流して私をそっと抱きしめたのだった。
「その侍女の顔は?」
「暗くてよく見えなかったよ」
ウィルの問いかけにアーサックは眉尻を下げてそう言った。
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