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ドラゴン家族を引き連れて、ルアンド帝国に殴り込め!!
しおりを挟む侍女が渡したカードには
「部屋にいらしてください。二人だけで会いたいです」と書いてあった。
薬で眠っているエリーゼなら抵抗もできまい。感謝しろよ、マリオ王
ズルイーヨ王子はつぶやくと下卑た笑いを浮かべた。
さて、薔薇のカードをもらったマリオ王はエリーゼの部屋へと向かうのだった。
◆◆☆
マリオ王がエリーゼの部屋に入るとエリーゼはベッドに横たわっていた。
艶やかな銀髪が枕の上に広がり、長いまつげはしっかり閉じられ、頬はうっすら薔薇色に染まっている。
「男を誘っておいて、熟睡しているとは!」つぶやきながらマリオ王はそっとエリーゼの頬を手で撫でた。
(眠っている女に手を出す趣味はないからなぁ-)マリオ王は首を横に振ると苦笑しながら部屋を出て行った。
☆
一方、フェルナンド公爵家では、エリーゼが外泊した翌日の朝に来た使者はこう告げた。
「ルアンド帝国のマリオ王がエリーゼ様を拉致したようです。ルアンド帝国の文様のついたナイフが庭園におちておりました。‥もうすでにマリオ王の花嫁にされているかもしれません‥‥」
この世界の強大な力をもつ大国の王のなかには、気に入った女がいると他国の高位貴族の娘だろうと王女だろうと拉致してむりやり王妃や側室や愛妾にする王もいた。
「それ以上言うでない!殺すぞ、人間よ」ロベルトの傍らで聞いていたベルセビュートは獣の咆哮をあげた。
庭園に降り立ち瞬時にドラゴンの姿に変身すると、ロベルトをその背にのせて飛び立った。
「代わりに毒づいてくれて良かった。あやうくあの使者を殺すところだった」
「ふん、おぬしのことは、大抵わかっておるからなぁー我らは友人であろう?」
ロベルトの後ろにはアシャとノアが続き、アシャが耳をつんざくような鳴き声をあげると山々の彼方から50体のドラゴンが現れ列をなして連なった。
「久々の戦争よの。わくわくするぞ!ルアンド帝国など瞬時にすべて焼き尽くしてくれようぞ!」
「それはまずい。ルアンド帝国の民には関係がないことだ。汚い手を使って、エリーゼを手に入れようとしたマリオだけは生かしてはおかないが‥‥」
「女を誘拐するなど、汚い男だ。存分に懲らしめるてあげるといいわ」横に並んだアシャは怒りで目が赤くギラギラと光っている。
「エリーゼ、無事でいてくれ」
ロベルトは心から祈るのだった。
☆
トリスタン王国の王宮では一瞬、全てが闇となりバサバサと羽ばたく力強い音が大地を揺るがすように響き渡っていた。
宮殿の誰もが外に出て、多くは恐怖で気絶し、そうでない者は神に祈り始めた。
ただ一人、気絶も祈りもしない者が一人いた。
この国の王である。
ドラゴンに乗っている人間の剣の紋章が太陽に反射して黄金に煌めいた。
ドラゴンと豹が並び立つ紋章。
なんと、ロベルト卿はドラゴンを家来にしていたとは!
ドラゴンは通常、自分の聖域からはでてこないはずだが。
人間にも関心が薄く、手なずけることは不可能と思われていたのに。
一匹のドラゴンでさえ国を一瞬で滅ぼさせることができるというのに、あの数を率いるとは!
やばい、やばいぞ‥‥まずいことになった。
エリーゼ嬢を騙してルアンド帝国に連れていったことがばれたら‥‥確実に殺されるな。
うっ、に、逃げよう。
バカ息子が勝手にやったことだ。
どこかに隠れて‥‥
トリスタン王国の王はブルブル震えながら、荷物をせっせとまとめて、ルアンド帝国と真逆の方角にある深い森へと逃げたのだった。
多数のドラゴンを率いるロベルトは多くの貴族にも目撃され、フェルナンド公爵家と親好のある貴族は新しい王の誕生があるだろうと期待し、そうでない者は恐怖で気絶しやはりここでも神に祈った。
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