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3 信じていたのに・・・・・・
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「そこをどきなさい。でないとあなたはクビよ」
私はテモーネに言ってみるが、彼女はフフンと笑った。
「私は先代よりベルラッテ侯爵家の侍女長として仕えております。パイヤ男爵家は家格も低く、まして奥様は生粋の貴族ではありません。身の程を知るべきですわ。ベルラッテ侯爵家の侍女長をクビにする権限はありません」
(そんなふうに見くびられていたなんて・・・・・・)
私は唇を噛みしめる。テモーネの後ろにいたメイド達にまで笑われたのはショックだった。
そんな私の肩にそっと手を乗せた人物に私は、はっとして振り返る。
「お母様!」
「うふ。あなたの様子がどこかおかしかったからこっそり馬車でついてきたのよ。お父様もとても心配していたわ。私達が愛する娘の異変に気がつかないと思う?」
「あぁ、パイヤ男爵夫人ですか。カロリーヌ様と一緒にお引き取りください。本日は旦那様から誰も通すなと言いつけられております」
テモーネが高飛車に言う。
「誰も通すなですって? カロリーヌはここの当主夫人ですよ?」
「ですけれど、これは旦那様の命令ですのでお帰りくださいませ」
「テモーネ。良く聞きなさい。この屋敷の真の主が誰だか私が教えてあげましょうね。このベルラッテ侯爵家の事業は、先代が亡くなる少し前から収益が下がりずっと赤字でした。アラディエル様が継いでからはもっと酷くなっていましたよ。その借金、誰が肩代わりしたかご存じ? ベルラッテ侯爵家の事業における実質的経営権が誰にあるのかはご存じ? カロリーヌが嫁いでからこの屋敷の至る所が修繕され、美しく立派になったのは誰のお陰だと思う? 頭があるなら考えなさい。邪魔よ、どきなさい!」
「・・・・・・まさか、パイヤ男爵家からの援助ですか?」
「もちろんですわ。気づくのが遅すぎませんこと? 私の夫は平民出身ですけれど大商人だ、ということをお忘れかしら? カロリーヌが生粋の貴族ではないから何だというの? 身の程知らずはあなたよ。いいことを教えてあげる。あなたの実家はベント伯爵家だったわね? あそこにも夫の商会が巨額の売掛金を持っていますよ。あなたのお兄様に一括返済してもらおうかしら? いつも支払いが遅れてルーズな家だと思っていたのよ」
「え? そんなことは初めて聞きました。ですが、ベント伯爵家はすでに兄が継いでおりますわ。私のやらかしで、実家を制裁するなんて浅ましいとは思いませんか? 貴族のすることではありません」
「あらぁーー、貴族のすることではないの? 平民の夫を婿養子に迎え男爵に据えた私も、あなたの理論でいえば生粋の貴族ではありませんから、貴族のしないことでも平気でできますわ。さぁ、そこをおどきなさい。どこの泥棒猫が娘の嫁ぎ先に入りびたっているのか知りたいわ」
お母様は強い。ぎろりとテモーネを睨み付けると、後ろに退かせてずかずかと玄関に入った。
「テモーヌ、誰か来たのか? 誰も通すなと言っただろう?」
そんな言葉とともに近づいてくる足音。
「泣いてはダメよ。顔を上げて真正面から言うべきことは言わなくてはね」
お母様は励ますように微笑み、私の手をそっと握った。
「え? パイヤ男爵夫人? カロリーヌも? なんでいきなり帰ってくるんだい? 早めに帰ってくるなら連絡ぐらいしてほしい。こちらにも都合があるんだぞ!」
「どうして私が怒鳴られなければいけないのですか? 嫁ぎ先の屋敷に妻が帰ってくるのに夫の許可がいるのですか? ここは私の住まいで、私の屋敷でもあります」
私は意を決して夫の目を真っ直ぐに見つめた。傍らにはお母様がいるし現実から目を背けたくない。
「ちょっとぉーー、アラディエルってばどうしたのよぉーー。早く寝室に戻って来てよぉーー」
寝室の方からしてきた女の声は・・・・・・カサンドラだった。
私はテモーネに言ってみるが、彼女はフフンと笑った。
「私は先代よりベルラッテ侯爵家の侍女長として仕えております。パイヤ男爵家は家格も低く、まして奥様は生粋の貴族ではありません。身の程を知るべきですわ。ベルラッテ侯爵家の侍女長をクビにする権限はありません」
(そんなふうに見くびられていたなんて・・・・・・)
私は唇を噛みしめる。テモーネの後ろにいたメイド達にまで笑われたのはショックだった。
そんな私の肩にそっと手を乗せた人物に私は、はっとして振り返る。
「お母様!」
「うふ。あなたの様子がどこかおかしかったからこっそり馬車でついてきたのよ。お父様もとても心配していたわ。私達が愛する娘の異変に気がつかないと思う?」
「あぁ、パイヤ男爵夫人ですか。カロリーヌ様と一緒にお引き取りください。本日は旦那様から誰も通すなと言いつけられております」
テモーネが高飛車に言う。
「誰も通すなですって? カロリーヌはここの当主夫人ですよ?」
「ですけれど、これは旦那様の命令ですのでお帰りくださいませ」
「テモーネ。良く聞きなさい。この屋敷の真の主が誰だか私が教えてあげましょうね。このベルラッテ侯爵家の事業は、先代が亡くなる少し前から収益が下がりずっと赤字でした。アラディエル様が継いでからはもっと酷くなっていましたよ。その借金、誰が肩代わりしたかご存じ? ベルラッテ侯爵家の事業における実質的経営権が誰にあるのかはご存じ? カロリーヌが嫁いでからこの屋敷の至る所が修繕され、美しく立派になったのは誰のお陰だと思う? 頭があるなら考えなさい。邪魔よ、どきなさい!」
「・・・・・・まさか、パイヤ男爵家からの援助ですか?」
「もちろんですわ。気づくのが遅すぎませんこと? 私の夫は平民出身ですけれど大商人だ、ということをお忘れかしら? カロリーヌが生粋の貴族ではないから何だというの? 身の程知らずはあなたよ。いいことを教えてあげる。あなたの実家はベント伯爵家だったわね? あそこにも夫の商会が巨額の売掛金を持っていますよ。あなたのお兄様に一括返済してもらおうかしら? いつも支払いが遅れてルーズな家だと思っていたのよ」
「え? そんなことは初めて聞きました。ですが、ベント伯爵家はすでに兄が継いでおりますわ。私のやらかしで、実家を制裁するなんて浅ましいとは思いませんか? 貴族のすることではありません」
「あらぁーー、貴族のすることではないの? 平民の夫を婿養子に迎え男爵に据えた私も、あなたの理論でいえば生粋の貴族ではありませんから、貴族のしないことでも平気でできますわ。さぁ、そこをおどきなさい。どこの泥棒猫が娘の嫁ぎ先に入りびたっているのか知りたいわ」
お母様は強い。ぎろりとテモーネを睨み付けると、後ろに退かせてずかずかと玄関に入った。
「テモーヌ、誰か来たのか? 誰も通すなと言っただろう?」
そんな言葉とともに近づいてくる足音。
「泣いてはダメよ。顔を上げて真正面から言うべきことは言わなくてはね」
お母様は励ますように微笑み、私の手をそっと握った。
「え? パイヤ男爵夫人? カロリーヌも? なんでいきなり帰ってくるんだい? 早めに帰ってくるなら連絡ぐらいしてほしい。こちらにも都合があるんだぞ!」
「どうして私が怒鳴られなければいけないのですか? 嫁ぎ先の屋敷に妻が帰ってくるのに夫の許可がいるのですか? ここは私の住まいで、私の屋敷でもあります」
私は意を決して夫の目を真っ直ぐに見つめた。傍らにはお母様がいるし現実から目を背けたくない。
「ちょっとぉーー、アラディエルってばどうしたのよぉーー。早く寝室に戻って来てよぉーー」
寝室の方からしてきた女の声は・・・・・・カサンドラだった。
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