（完）妹の婚約者を誘惑したと言うけれど、その彼にそんな価値がありますか？

ジョセフィーヌの恋の行方

サミュエル様は国外追放？ お仕置き？その１

　倒れかかったサミュエル様に王様と王妃様は、冷たい眼差しを向けていらっしゃいます。

「この国では、男性同士の結婚は認めてはいない。だが、ラオンダ国は認めているそうだ。そこの国民になるといい。ラオンダ国は、確かルドレア女侯爵とも繋がりが深いな。ジョセ、ルドレア女侯爵が経営している事業の一つは、あの国と盛んに貿易をしていたな？　あそこの国なら、治安もいいし、気候も穏やかだったなぁ？」

「えぇ、あそこは、とてもいい国ですね。いつも、気温は春のようで同性愛者の方々に対する差別も一切ありませんね」

　私は、賛同しましたが、これは体の良い国外追放でしょうかね。けれど、サミュエル様は喜びの表情を隠しきれません。確かに、治安も気候も良いです。一年中が春のように暖かく、さまざまな果物が豊富に収穫できる夢のような国です。だからなのでしょうか、国民の誰もがのんびりしていて、農業関係以外はあまり発展していません。生活水準はかなり低く、ほとんどの国民が農業に従事している国ですよ。

　グレンディス・ブレイ公爵家で育てられたお坊ちゃまに、耐えられるとは思いませんが･･････。
王様も、王妃様も、そのことだけは、おっしゃらないのでした。

「あぁ、とてもいいですね！　是非、そこに永住したいです。ジョセフィーヌ様、先ほどはとても失礼なことを言ってしまった。申し訳ない」

　まぁ、いいんですよ。あのフレーク男爵の血が入っているのは事実ですからねぇ。それに、人がどう思おうと、それはその方の自由なので責める気はありません。

「全く、謝る必要はありませんよ。本当に移住したいのですか？　あちらは、貴族制度もなく王制でもなく、なんというか･･････素朴な･･････」

「あぁ、それこそ理想だよ！　そこが、農業が盛んなことだけは知っている。晴耕雨読って知っているかい？　そんな暮らし方は、憧れだよ」

「はぁ、そうですか？　あの、そこの国民になりたいのですか？　でしたら、一番手っ取り早いのは、現地の方と結婚することですけれど･･････」

「あぁ、わかった！　母上には、事後報告にしよう。行く前に報告すると止められそうだ」

　サミュエル様は、もう行く気まんまんで、興奮したように小鼻をピクピクさせていましたよ。
なんだか、ウサギさんみたいで、可愛いです。

「おぉ、早速、行くと良い！　儂が許す。うん。そこに永住して、幸せになりなさい。もう、この国には帰ってこなくていいからなぁー」

「はい！」

　え？　あのぉ、これって、国外追放？　じゃないですよねぇ？　あそこの国には知っておかねばならない注意点がいくつもありますのに･･････なにも、聞かないで行ってしまいましたよ？　　

　まぁ、そのお話は、また明日にでもいたしましょう。

「やぁ！　ジョセ。しばらくぶりだね」

　あら、セオドア第三王子様が、いらっしゃいました。この方とは、あまりお話をしたことはありませんが、私を見つめて、にっこりしたのでした。