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4 肌の色なんて関係ないわ!

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だって、フェルゼン様は肌の色が均一でないだけだもの。肌の色をそれほど気にするなんてナンセンスだ、そう思う私は前世の記憶があるからなのかしら? 

リッチ候爵家の侍女達は、あからさまに怯えた顔をフェルゼン様に見せていた。
フェルゼン様にお茶を出す侍女の手は震え、おまけにその手には分厚い手袋をしている。
「なぜ、そのような手袋をしているのです?」
私はそう言いながらもリッチ公爵夫妻も同じように手袋をしていることに気がついた。そして私にも手袋をするようにとフェルゼン様は勧めたのだった。

「僕の皮膚病が移らないためだよ。君もしてくれ。僕達は結婚しても形だけの夫婦になるだろう。夜会や舞踏会には一人で出席させてしまうかもしれない・・・・・・」
悲しそうな表情で言ったフェルゼン様。この世界ではこのような肌は認められないのかしら? でも、少なくとも私は認めるわ!

「私には手袋は必要ありませんわ!」
私は肩をすくめてその手袋を近くのゴミ箱に放り投げた。


フェルゼン様のお顔も手も均一な肌の色ではない。普通の肌色のところどころが雪のように白く輝いていた。白斑と呼ばれるものだと思う。

それは病気の一種かもしれないけれど尋常性のものは命に関わることもなかったはずだし色素異常は感染するものではない。それよりもフェルゼン様の白斑は綺麗な模様のようで美しくさえあった。

――そうよ! 前世でも色素異常症のモデルさんが驚くほど素敵だったのを覚えている。人と違うことを嘆くことなく自信を持って生きているその姿勢に心を打たれたことがあったわ。

「フェルゼン様、お庭がとても綺麗ですのね? 案内していただいてもよろしいですか?」
私は手を差し出してにっこりと微笑んだ。

フェルゼン様は慌てて手袋をしようとなさるけれど、私はその手袋もヒョイと取り上げてゴミ箱に放り投げた。
「こんなもの、もう必要ありませんわ!」
私はしっかりとフェルゼン様と手を繋いで庭園へとお散歩に出かけるのだった。

「あらあら、新しい婚約者のお嬢さんにもう尻に敷かれているわ。でも、とてもいいことね!」
リッチ侯爵夫人は嬉しそうに笑っておっしゃった。

私達が庭園をお散歩している間中、フェルゼン様はお顔が真っ赤だった。
「このような肌だから僕は女性と話したことも手を繋いだこともないんだ。ごめんよ。どうしたらいいかわからない」

それでも、一輪の薔薇を手折って私の髪にさしてくれた。震える手で・・・・・・

「全く大丈夫ですわ。それにしてもリッチ候爵家の薔薇はポピンズ候爵家よりも種類が多くて大輪ですわね。それにとてもいい匂い! あぁ、今日はなんて良い日かしら!」

「うん。今日は最高に良い日だ」
フェルゼン様はとても嬉しそうに微笑んだのだった。美青年の微笑みって半端ない威力なのよ。私は心の中で『眼福、眼福』といいながら拝んだのだった。
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