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幸せな未来にーー最終回
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「なに? いま、すぐ謁見の間にお通ししなさい」
お父様は、大国のドミニ王国からの使いに顔色が青くなり、私も何事かと心配になった。
「アレクシス王女様にお会いしたいとのことです」
侍従の言葉に私は、頷き皆で謁見の間に急ぐ。コルトン王の側近だった男が私に跪き、用向きを伝えた。
「アレクシス王女様、お久しぶりですね。そろそろ、幸せが見つかった時期でしょうか?」
「・・・・・・」
どういうことなのだろう? 首を傾げていると、その男が証文を広げて言った。
「コルトン王の遺言では、娘のように思っていたアレクシス王女様が結婚することがあったなら、その祝いとしてドミニ王国の南の豊かな島を譲るという言葉が記されておりました。この島はそれほど広くありませんが、フルーツが豊富に育ち真珠の生産地としても有名な観光地のひとつになっています」
「まさか・・・・・・」
「ふふふっ。コルトン王は、とても安らかに亡くなりましたよ。最後の時間を娘と過ごせて最高に幸せだったと」
私は、その言葉に号泣したのだった。これほどまでに思っていてくださったのが有り難かった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
私はケネディ王国とその南の島の女王になった。豊かな島は、いつでも私に癒やしを与えてくれた。
今も、私はワイアットとの間にできた王女3人とこの南の島に来ている。毎月、訪れるこの島の夕暮れはとても美しい。ワイアットはいつもここには来ない。
「この南の島はアレクシスだけの楽園だからね。そこにいていいのは、アレクシスと私達の愛娘だけだろう。そこには、多分コルトン王が透明な姿で見守っていると思う。間違いない。一回だけ、一緒にそこに行った時コルトン王が夢に出てきた」
「馬鹿馬鹿しい! 私の夢には出てこないわよ!」
「夢のなかで、『私のノルブを金で買おうとするとは、この愚か者が!』と怒鳴られた」
ノルブ・・・・・・コルトン王が私につけた愛称だ。アレクシスと呼ぶことが多かったが、特に機嫌の良いときは宝物という意味を持つ『ノルブ』と呼ばれた。これは、コルトン王と私しか知らないはず・・・・・・
死してもなお、私を守ってくださって、ワイアットに夢の中でお仕置きをしてくれたのかもしれない。そんな、あり得ない話も、この夢のような美しい南の島では信じられる。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
空が、薄桃色に徐々に染まり、淡い藍色と重なり交わる。末娘のかわいい頬が夕暮れの弱まった光に照らされ、その愛らしい顔をますます可愛らしく見せていた。
末娘の名前はスカーレット。亡くなったコルトン王の第二王女と同じ名前を付けた。そうして、この子はコルトン王の甥の息子と婚約者になっている。
「アレクシス王女の娘を妻に迎えた者がドミニ王国の真の王になる。その遺言が現実になる時、ハーレムは解体し殉死の悪しき慣習は無効とする」
コルトン王の遺言の一部だ。偉大な王は、殉死を悪しき慣習と言った。まさに、その通りだと思う。私は、これから歴史が大きく変わり女性が生きやすくなることを願う。この世界はきっとこれから、もっと、もっと良くなるに違いない。
完
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
ご愛読、ありがとうございました。
なお、私、青空(サチマル)のTwitterは下記でございます。
よろしければ、フォローしてくださいませ。
@bluesky1170
お父様は、大国のドミニ王国からの使いに顔色が青くなり、私も何事かと心配になった。
「アレクシス王女様にお会いしたいとのことです」
侍従の言葉に私は、頷き皆で謁見の間に急ぐ。コルトン王の側近だった男が私に跪き、用向きを伝えた。
「アレクシス王女様、お久しぶりですね。そろそろ、幸せが見つかった時期でしょうか?」
「・・・・・・」
どういうことなのだろう? 首を傾げていると、その男が証文を広げて言った。
「コルトン王の遺言では、娘のように思っていたアレクシス王女様が結婚することがあったなら、その祝いとしてドミニ王国の南の豊かな島を譲るという言葉が記されておりました。この島はそれほど広くありませんが、フルーツが豊富に育ち真珠の生産地としても有名な観光地のひとつになっています」
「まさか・・・・・・」
「ふふふっ。コルトン王は、とても安らかに亡くなりましたよ。最後の時間を娘と過ごせて最高に幸せだったと」
私は、その言葉に号泣したのだった。これほどまでに思っていてくださったのが有り難かった。
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私はケネディ王国とその南の島の女王になった。豊かな島は、いつでも私に癒やしを与えてくれた。
今も、私はワイアットとの間にできた王女3人とこの南の島に来ている。毎月、訪れるこの島の夕暮れはとても美しい。ワイアットはいつもここには来ない。
「この南の島はアレクシスだけの楽園だからね。そこにいていいのは、アレクシスと私達の愛娘だけだろう。そこには、多分コルトン王が透明な姿で見守っていると思う。間違いない。一回だけ、一緒にそこに行った時コルトン王が夢に出てきた」
「馬鹿馬鹿しい! 私の夢には出てこないわよ!」
「夢のなかで、『私のノルブを金で買おうとするとは、この愚か者が!』と怒鳴られた」
ノルブ・・・・・・コルトン王が私につけた愛称だ。アレクシスと呼ぶことが多かったが、特に機嫌の良いときは宝物という意味を持つ『ノルブ』と呼ばれた。これは、コルトン王と私しか知らないはず・・・・・・
死してもなお、私を守ってくださって、ワイアットに夢の中でお仕置きをしてくれたのかもしれない。そんな、あり得ない話も、この夢のような美しい南の島では信じられる。
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空が、薄桃色に徐々に染まり、淡い藍色と重なり交わる。末娘のかわいい頬が夕暮れの弱まった光に照らされ、その愛らしい顔をますます可愛らしく見せていた。
末娘の名前はスカーレット。亡くなったコルトン王の第二王女と同じ名前を付けた。そうして、この子はコルトン王の甥の息子と婚約者になっている。
「アレクシス王女の娘を妻に迎えた者がドミニ王国の真の王になる。その遺言が現実になる時、ハーレムは解体し殉死の悪しき慣習は無効とする」
コルトン王の遺言の一部だ。偉大な王は、殉死を悪しき慣習と言った。まさに、その通りだと思う。私は、これから歴史が大きく変わり女性が生きやすくなることを願う。この世界はきっとこれから、もっと、もっと良くなるに違いない。
完
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なのか様🍰☕
(^-^✿) (_ _✿)(^-^✿) (_ _✿)うんうん
描写は、確かにあまりしなかったですね・・・・・・
こちらは、確かに早く終わらせすぎて、もっと続きが読みたかったという方が他にもいらっしゃいました。
すみません。また、暇を見て再開するかもしれません。
コメントいただき、ありがとうございました‘٩꒰。•◡•。꒱۶’
お兄さん、要らないことばかりするクズなんですが、2人が早くくっつくきっかけを作ったのかも?と。少しだけ思ってしまいました。
それにしても本当にコルトン王に娘として愛されてたんですね。ワイアットの夢にまで出て来て叱ってくれるだなんて。そして、島は亡くなった第二王女に残すつもりのものだったのでしょうね。
kunoenokou様🍰☕
兄も少しは役だったいたということでしょうか?(..;)
クズな兄・・・・・・
そうですねぇーーこのような権力者に愛されたアレクシス王女様は果報者ですね😊
コメントいただき、ありがとうございました‘٩꒰。•◡•。꒱۶’