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アレクシス、掃除をする / 愛人が来たけれど娼婦じゃなさそう
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*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚便利なモップ(アレクシス王女視点)*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
さてと、私は今日から、悲しい境遇だったかわいそうな王女という肩書きは捨てる。ついでに、役立たずの出戻り王女という汚名も返上しよう。だって、もう王女ではないのだから。
私は朝早く起きて、侍女達のところに行く。
「新入りなんでしょ? だったら、トイレ掃除はあなたがやりなさい? やり方は教えてあげるわ」
アデリーという年配の侍女が、親切に教えてくれ、どこでも雑巾一枚で掃除するのだと言った。便器のなかも素手で掃除をするらしい。侍女が、このようにしていたとは知らなかった。
「ありがとう! 助かるわ」
私は、掃除のコツを教えてもらって得をした気分になる。今までがお姫様だったからって、これからはお掃除だってできないといけないと思う。廊下も雑巾で水拭きすると、手がかじかんで水の冷たさで白くなる。この広い範囲を雑巾一枚でするなんて、とても大変だわ。
私が、必死で床に膝をつき掃除をしていると、ワイアットが大きなため息をついて私を見下ろしていた。
「貴女は、この広い廊下をたった一人で、しかもその雑巾で拭いていたのか?」
「えぇ。見てください。結構、綺麗になったでしょう?」
「はぁーー。ここはモップで掃除するのだ。モップが収納されている場所は知っているか?」
モップ? そんなものは、知らない。私は、雑巾だってついさっき初めて触ったのだから。王族だった時には、掃除の風景など気にとめたことはなかった。侍女達も、私が見ていないところでお掃除をしていたと思う。いつも綺麗に片づけられた部屋しか見たことはないのだから。
「あぁ、これでバケツに水をくんで、あら勝手にモップが絞れるなんてすごい! なんで、このようなものがあると教えてくれなかったのかしら?」
「まぁ、あれだな・・・・・・新入りの洗礼ってやつだな。こんなことはやめて妾の立場でいた方がよほど楽だと思うがね」
ワイアットが、冷笑しながら去っていく。新入りの洗礼ってなんだろう?まぁ、気にしないことにしよう。
それより、このモップは使いやすいし広範囲を掃除できて便利だ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚愛人が来たけれど娼婦じゃなさそう(アデリー視点)*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、この屋敷で働いてちょうど2年になる。当主のワイアット様はとてもお優しく私の孫のぜんそくの薬をいつもわけてくださる。かなり高価なもので、使用人のお給料では手が届かないものだった。
「いつも、頑張ってくれているお礼だから」
そうおっしゃりながら、私達、使用人にお給料の他に必要なものを支給してくださるのだ。だから、ここの使用人達の結束力は固いし、ワイアット様に対する忠誠心は強いのだった。
ワイアット様は騎士団長だったが、今は実業家で大成功し大富豪となっている。なんでも、婚約していた美貌の王女様に貧乏が原因で振られた過去があるらしい。だからなのか、ワイアット様には女っ気が、さっぱりなかった。
女性の友人すら一人も訪ねてこない。私は、ワイアット様に伺ったことがあった。
「結婚なさらないのですか?」
使用人風情が、このようなことを聞いて申し訳なかったと思う。
「結婚はしないよ。本気で好きな女性にはもう会えないから」
悲しそうにおっしゃるワイアット様は、私の息子と同じ歳だ。つい、不敬ながら母親のような気持ちになってしまった。ここは、なんとか私がお支えし、良い奥様をお迎えしていただかなければいけないと固く心に誓った。
そう思っていた矢先、妾になる女が来ると噂が広まった。そして、ワイアット様も使用人を集めておっしゃったのだ。
「これから、私の妾、呼び方が良くないな。愛人。まぁ、どちらでもいい。そのような女性が来る。私はこの女性を妻に迎える気はない。ただ、そのような立場の女性というだけだ。よろしく頼む」
この言葉から、私達はこれからやってくる女が娼婦なのだと結論づけた。ワイアット様が、娼婦の誘惑に溺れただれた関係に踏み込んでしまったのだ。
これは、なんとかして、この女を追い出さなければ。私達、使用人は作戦会議を開きその下品な女を待ち構えていたのだ。
なのに・・・・・・愛人として来たはずの女はなぜか侍女として働くとワイアット様に言ったらしい・・・・・・娼婦じゃないのか?・・・・・・美しい気品のあるあの女性は何者なのだろう?
まぁ、何者でもいい。奥様にはなれない女をここに置いておくわけにはいかない。私達は、ワイアット様に幸せな結婚をしていただき、そのお子様達の世話がしたいのだから・・・・・・・
「どこでも、この雑巾一枚で掃除してください。新人はトイレとここの廊下全部です!」
ふん! できるわけがない。モップでだって疲れるのに雑巾なんかで拭ききれるわけがないのだ。すぐに音を上げて出て行くに違いない。
さてと、私は今日から、悲しい境遇だったかわいそうな王女という肩書きは捨てる。ついでに、役立たずの出戻り王女という汚名も返上しよう。だって、もう王女ではないのだから。
私は朝早く起きて、侍女達のところに行く。
「新入りなんでしょ? だったら、トイレ掃除はあなたがやりなさい? やり方は教えてあげるわ」
アデリーという年配の侍女が、親切に教えてくれ、どこでも雑巾一枚で掃除するのだと言った。便器のなかも素手で掃除をするらしい。侍女が、このようにしていたとは知らなかった。
「ありがとう! 助かるわ」
私は、掃除のコツを教えてもらって得をした気分になる。今までがお姫様だったからって、これからはお掃除だってできないといけないと思う。廊下も雑巾で水拭きすると、手がかじかんで水の冷たさで白くなる。この広い範囲を雑巾一枚でするなんて、とても大変だわ。
私が、必死で床に膝をつき掃除をしていると、ワイアットが大きなため息をついて私を見下ろしていた。
「貴女は、この広い廊下をたった一人で、しかもその雑巾で拭いていたのか?」
「えぇ。見てください。結構、綺麗になったでしょう?」
「はぁーー。ここはモップで掃除するのだ。モップが収納されている場所は知っているか?」
モップ? そんなものは、知らない。私は、雑巾だってついさっき初めて触ったのだから。王族だった時には、掃除の風景など気にとめたことはなかった。侍女達も、私が見ていないところでお掃除をしていたと思う。いつも綺麗に片づけられた部屋しか見たことはないのだから。
「あぁ、これでバケツに水をくんで、あら勝手にモップが絞れるなんてすごい! なんで、このようなものがあると教えてくれなかったのかしら?」
「まぁ、あれだな・・・・・・新入りの洗礼ってやつだな。こんなことはやめて妾の立場でいた方がよほど楽だと思うがね」
ワイアットが、冷笑しながら去っていく。新入りの洗礼ってなんだろう?まぁ、気にしないことにしよう。
それより、このモップは使いやすいし広範囲を掃除できて便利だ。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚愛人が来たけれど娼婦じゃなさそう(アデリー視点)*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、この屋敷で働いてちょうど2年になる。当主のワイアット様はとてもお優しく私の孫のぜんそくの薬をいつもわけてくださる。かなり高価なもので、使用人のお給料では手が届かないものだった。
「いつも、頑張ってくれているお礼だから」
そうおっしゃりながら、私達、使用人にお給料の他に必要なものを支給してくださるのだ。だから、ここの使用人達の結束力は固いし、ワイアット様に対する忠誠心は強いのだった。
ワイアット様は騎士団長だったが、今は実業家で大成功し大富豪となっている。なんでも、婚約していた美貌の王女様に貧乏が原因で振られた過去があるらしい。だからなのか、ワイアット様には女っ気が、さっぱりなかった。
女性の友人すら一人も訪ねてこない。私は、ワイアット様に伺ったことがあった。
「結婚なさらないのですか?」
使用人風情が、このようなことを聞いて申し訳なかったと思う。
「結婚はしないよ。本気で好きな女性にはもう会えないから」
悲しそうにおっしゃるワイアット様は、私の息子と同じ歳だ。つい、不敬ながら母親のような気持ちになってしまった。ここは、なんとか私がお支えし、良い奥様をお迎えしていただかなければいけないと固く心に誓った。
そう思っていた矢先、妾になる女が来ると噂が広まった。そして、ワイアット様も使用人を集めておっしゃったのだ。
「これから、私の妾、呼び方が良くないな。愛人。まぁ、どちらでもいい。そのような女性が来る。私はこの女性を妻に迎える気はない。ただ、そのような立場の女性というだけだ。よろしく頼む」
この言葉から、私達はこれからやってくる女が娼婦なのだと結論づけた。ワイアット様が、娼婦の誘惑に溺れただれた関係に踏み込んでしまったのだ。
これは、なんとかして、この女を追い出さなければ。私達、使用人は作戦会議を開きその下品な女を待ち構えていたのだ。
なのに・・・・・・愛人として来たはずの女はなぜか侍女として働くとワイアット様に言ったらしい・・・・・・娼婦じゃないのか?・・・・・・美しい気品のあるあの女性は何者なのだろう?
まぁ、何者でもいい。奥様にはなれない女をここに置いておくわけにはいかない。私達は、ワイアット様に幸せな結婚をしていただき、そのお子様達の世話がしたいのだから・・・・・・・
「どこでも、この雑巾一枚で掃除してください。新人はトイレとここの廊下全部です!」
ふん! できるわけがない。モップでだって疲れるのに雑巾なんかで拭ききれるわけがないのだ。すぐに音を上げて出て行くに違いない。
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